記者会見要旨
(2025年7月29日(火) 16:30~17:25 於:消費者庁記者会見室)
発言要旨
(中川委員長)
本日は、まず、各部会の報告から行います。
7月の事故調査第二部会では、「スポーツジム等におけるパーソナルトレーニングによる事故及び健康被害」の報告書作成に向けて審議を行ったということです。第一部会は休会です。
本日の調査委員会では、「スポーツジム等におけるパーソナルトレーニングによる事故及び健康被害」について審議を行いました。また、新規の調査案件も決定いたしました。この2つについてこれからお話しをしたいと思います。
まず、継続的に審議を行っています「スポーツジム等におけるパーソナルトレーニングによる事故及び健康被害」についてですが、報告書の構成案について報告を受け、審議を行いました。今回、表題の変更も含めて調査の射程を明確化することを本日検討いたしました。
まず、表題ですが、単純に「パーソナルトレーニングにおける事故」と改めることにいたしました。今、スポーツジム等としておりますけれども、マンションの一室で行われるものもありますので、誤解を防ぐという意味でスポーツジム等というのを外します。それから、健康被害というものも外すことにいたします。食事指導による健康被害も調査の対象としておったのですけれども、トレーナーの食事指導と生命・身体被害の発生についての因果関係の特定はかなり困難であるということで、調査が拡散しないようにこれは外すことにいたしました。
それから、調査の射程、すなわちパーソナルトレーニングの定義ですけれども、これについては1対1、パーソナルですから個別的な指導をする要素があるということが実質的な定義です。1対1はもちろん入ってきます。それから、1対少数のトレーニング、スモールグループという言葉を今日の会議では使いましたけれども、そういったものまで入ってきます。つまり、どこまでが少数かというと、個別に見て、あなたはこれは負荷が重すぎるといったようなことが言える範囲の人数です。10人だと無理かなと思いますけれども、5~6人ぐらいまでかなというイメージで、そこまでを含める、そういう形でパーソナルトレーニングを定義いたします。まだ定義の文章化までは決まっておりませんが、今申し上げたような考え方で定義を決めていこうということになりました。
調査対象となる消費者の範囲についても具体的に議論を行いました。1月の記者会見で中高年を念頭に置くと申し上げました。それに対して、皆様から中高年だけなのかという御質問がありました。もちろん中高年のリスクが一番高いことは確かなのですが、実際の事故調査を行っていく段階では、年齢で区切ってもデータの質という意味では広く取ったほうがいいだろうということで、20代以上の大人という形で広げて調査対象にしております。ですので、この辺りも以前の狭い捉え方から拡大して、20代以上の大人に対するパーソナルトレーニングを対象とすることにいたしております。
そのほか、例えばオンラインの運動サービスも、これが個別的、先ほど言ったパーソナルトレーニングの定義に当てはまるものであれば、普通そうだと思いますけれども、であれば、これも取りあえず対象に入れる。それから、AIが搭載された機器を使用したトレーニングであっても、AIといっても別にAIが先生なわけではなくて、結局トレーナーが主導している限りにおいて、これもパーソナルトレーニングであろうということで、AIと書いてあろうがなかろうが対象に含めます。
他方で、いわゆるアスリートの方たちに向けたものは含まない。調査を健康増進目的のものに限定しますので、技能を向上させるといったものは対象外である。整体、ストレッチも対象外、医業類似行為も対象外という形で、どこまでを事故の対象とするのかについて明確にする議論をいたしました。ボディビル、ボディメイクといったものは区別が難しいので一応含めておこうとか、ヨガ、ピラティスなども含めておこうということで、かなり広いといえば広いことになります。結局パーソナルであるということを一つのキーワードにして対象を確定していくということを確認いたしました。
事故原因なのですけれども、今のところ分かっているところでは、何といってもトレーナーの知識不足だろうと。トレーナーの知識レベルがばらばらで、いろいろなレベルの人がいるということです。もともとパーソナルトレーニング、個別の運動指導は実はかなり前からあるので、昔からやっている人はかなりの知識といいますか、何をしてよい、何をしてはいけない、どのような点に気を付けるかは分かっているのだけれども、それが共有されている状況にはほど遠い。知る人ぞ知るという状態である。現在、我々が見ているような急速にパーソナルトレーニングという産業が拡大したことに伴って、先ほど申し上げたような知識のばらつきが生じているのだろうということです。
そうすると、知識をどのように確定していくか、まとめていくか、それをどのように普及させていくかという話になります。以前ここで取り上げた案件だと、立体迷路が似ています。木材の腐朽という知識が共有されていないというか、体系化されていない、共有化されていないということで、自分の考えで立体迷路を造っているところが壊れたというお話をしましたけれども、それと似たものになる可能性が高いと考えております。
以上が本日パーソナルトレーニングについて議論した状況です。
次に、新規の調査事案について決定いたしました。これは「車椅子使用者を自動車で送迎中の事故」というものであります。
本件は、車椅子を使用している消費者を車椅子に乗せたまま自動車で送迎中に発生する事故を調査対象といたします。送迎時の急ブレーキ、他車との衝突時等の衝撃によりまして、車椅子使用者が死亡する事故が発生しております。全国的な統計は確認できておりません。ただ、2025年に入って、3月、6月、そして、7月に事故が発生しております。
事故の例は皆さんのお手元の資料の4~5ページに記載しております。これはどういう事故なのかということですけれども、一言で言うと、チャイルドシートの車椅子版と考えてください。子どもを安全に自動車で運ぶために、チャイルドシートをどの向きでどのように設置させるか、ベルトをどうかけるか、赤ちゃんが飛び出さないようにどう設置するかということが非常に工夫されてきています。それと同じことが今度は車椅子を使った大人にも言えるはずなのです。車椅子をどのように車の中に固定し、車椅子と一緒にどうやってベルトをするのか、チャイルドシートと同じように車椅子自体の強度はどうなのかということが実は非常に重要なはずなのですが、これについてそもそもほぼ何も決まっていないという状態である。
チャイルドシートからの類推で分かりますように、車椅子を乗せて衝撃を浴びると、乗っている人は当然飛び出すわけです。これでは危ないに決まっているだろうと思われますが、事故数としては今のところはっきりしない。先ほど言ったように、例えば今年に入って3件ぐらいしか報道ベースではないのです。けれども、潜在的にヒヤリハットは相当あるのではないか。これから増えるのではないか。そもそも事故数自体が把握されているかどうかも分からない。車椅子での事故という形で統計が取られていないので、事故数を含めて闇の中というところなのです。
もう少し詳しく説明しておきますと、皆さんにお渡しした新規案件の資料の最後の11ページを御覧ください。普通に車椅子でない場面で乗って、座って、そして、シートベルトをしている絵があります。これは法的義務として我々はシートベルトをしなくてはいけません。これが車椅子になったらどうなるか。自動車の固定されたシートに座っている人がシートに固定された状態を、今度は車椅子に座っている人に落とし込むとどうなるかというと、その前の10ページです。
これは国土交通省が差し当たり標準的な案、標準的にはこうなるのではないかを示した図です。標準的というのは、その人の体型によっても違うかもしれないし、車の構造によっても違うかもしれない。いろいろなバリエーションがあるかもしれませんけれども、先ほど見た11ページの態勢を車椅子バージョンに落とし込むと、これぐらい必要である。
10ページのポイントは3つぐらいありまして、ここに書いてあるのは1~2つなのですが、一つは車椅子自体の固定、チャイルドシートでいうところの固定です。これは下からベルトで固定されているものがあります。車の床面から車椅子自体が動かなくなっている。これが1点目の車椅子の固定です。もう一つは、体にシートベルトが適切にかかっていることです。このシートベルトは普通の人用ではなくて車椅子用なのです。どうかけるかということが重要で、かけ方が変だと首に引っかかるとか、お腹・内臓を破裂させるかもしれない。チャイルドシートでいうと子どものどこを押さえるかに当たります。
シートベルト、それから、車椅子の固定という2点を言いましたが、3点目はここに書いていないのですけれども、車椅子自体の構造の強度です。これが足りないと、衝撃によって車椅子が破壊される。チャイルドシート自体の構造強度と同じ問題です。
ということで、車椅子の人を自動車で運ぶ場合には、まさにチャイルドシートと同じ、少なくとも3点ぐらい考えていなくてはいけないのですが、それについて先ほどのガイドラインはあるのですけれども、固定することが法的義務になっているかというと、どうもそうではなさそうだ。車椅子を自動車に乗せて移動する場合は、そもそもシートベルト義務があるのかどうかもはっきりしない。固定する義務があるのかどうかもはっきりしない。
その一方で、義務があればいいというわけでもない。義務付けによって、今度は、車椅子の人は誰も運べませんということは、これもまた大問題です。
今のところは法的義務として検討はされていないということです。辛うじてあるのは、国土交通省による取りあえずこのようにやってはどうかというお勧めの案というのが、このガイドラインなのです。
例えばこれをプランAといたしますと、これ以外のプランB、あるいはプランCもあるかもしれないのですが、どこまでバリエーションがあるのかもまだ明らかではない。ガイドラインについては、車椅子の強度がどれだけなくてはいけないかということは書かれていない。これは国土交通省ですから車の所管省庁であって、車椅子は恐らく経済産業省ということで、これだけ見ても所管官庁が違うわけですので、統合的な事故対策がなかなか取りにくいだろうと危惧されます。
ということで、今回、事故数自体は報道ベースで見る限り多くはないが起きていて、そもそも統計数がはっきりない。でも、定性的に考えれば起きていてもおかしくない事故である。これから事故数が増えるのではないか。
明確な法規制がそもそもない。さらに、分野横断的、幾つかの省庁が同時に対策しないとうまくいかない。今、国土交通省は、車の構造、それから、シートベルトをどこにつけるか、どうやって固定するか。それから、経済産業省は、車椅子の構造、車に乗せるならこんな強度が要る。それから、これは厚生労働省になるのですかね、例えば介護施設の職員さんがどのようなところに気を付けなくてはいけないか、どの程度の固定が必要なのかといったことの周知ということになると、厚生労働省かどうか今は分かりませんが、担当省庁からしていただく必要がある。幾つかの省庁が同じ方向を向いて同時に対策しないと、対策にならない。どこかが抜けては意味がないのです。
そういう意味で、このままでは対策がなかなか進まないだろう。そういうときには消費者庁がやるしかないということで、消費者安全調査委員会としてこの事故を取り上げることにいたしました。
恐らく埋もれた事故といいますか、対策が必要なことに気付かなかった事故といってよいかもしれません。ちょうど子ども転落もそうかもしれません。子ども転落について、それは親の不注意だからと言ってしまうと、対策が必要な事故という認識ではなくなってしまって埋もれてしまう。そうではないということを前回申し上げましたけれども、今回、車椅子なのだから危なくてもしょうがないと思っているようでは事故対策がされないわけで、これはチャイルドシートと同じように技術的対策をやるべきなのではないか、できるはずではないかと考えたわけです。ですので、これも埋もれた事故から対策しなくてはいけない事故に変えていきたいと考えまして、取り上げることにいたしました。
先ほど事故数が少ないと言いましたけれども、とはいえ、20年以上前からずっと起き続けているわけで、子どもの転落事故と一緒でこれは無視できないものだろう。今後どんどん増えていくだろうと考えております。
本件は申出を受けた調査ではございません。その意味で我々が自発的にといいますか、テーマとして発見したものであります。消費者安全調査委員会設立10周年のときに、活動報告書におきまして留意すべき事故の類型として挙げたものの一つです。高齢者・障害者等の要配慮者の予見可能な誤使用による事故、個別の事情や状況に応じてカスタマイズされることを前提とした製品等による事故、複数の事業者が介在する製品やサービスにおける事故に相当します。この複数の事業者は、複数の省庁と言ってもいいかもしれません。そうしたわけで、私たちが対応すべきと考えて、新規の案件として決定した次第でございます。
私からは以上です。
質疑応答
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問
日本経済新聞の藤田です。
今の車椅子の送迎中の事故についてお伺いしたいのですけれども、これは車椅子を車に設置するだとか、シートベルトをつけるというのは、一般的には送迎する介護とか病院施設のスタッフの方が責任を持ってやっているという理解でいいですか。
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答
(中川委員長)
それが多いのではないかと想像しています。まだ全ての事案を見ているわけではないのですけれども、そう簡単にできるものではないと思います。例えば家族がこれをやろうと思うと、結局、介護施設の車がこのように対応をしていることが多いと思いますので、多分個人で持っている車ではないのではないか。こういうことができるものがないのではないか。何か事務局からお答えいただくことはありますか。
(事務局)
介護送迎サービス等に使われているものに関しては、介護事業者等がされているかと思います。障害を抱えているお子さんとかがおられる場合には、家族がされているケースはあるかもしれません。 - 問 分かりました。そうだとすると、一定の介護に対して知識がある方がつけたり、設置したりする場面が割とあるのかなと思います。それでもこういう事故があるのは、仮に注意をしてしっかり巻いたつもりであっても対策しきれていないような、埋もれるような構造になったりとか、車側なのか、車椅子側なのか分からないのですけれども、そのように見ていらっしゃって調査するという理解でいいのでしょうか。
-
答
(中川委員長)
車椅子の固定が難しいとか、10ページを見ていると、国土交通省のガイドラインですけれども、かなり難しそうといいますか、車椅子を固定するだけでも作業量が多そうだなという感じがします。他方で、これは情報が行っているかもしれませんが、ワンタッチでできるような車も最近開発されているらしい。入れればカチッと車のほうで押さえてくれる。ただ、それに対応する車椅子でなくてはいけないと思います。そうすると、例えば今のガイドラインではとても、家族はもちろんとして介護職員でも難しいのであれば、解決策になっていないということになるのです。
なので、最低限こういう規格、使いやすいものをつくっていかなくてはいけないとか、固定はこのぐらいでいいのだけれども、ベルトのほうが大事だと思うのです。ベルトは必ずこのようにしてくれとか、そこら辺の知識さえもない状態なのです。先ほど申し上げたように、11ページを車椅子に落とし込んだら10ページになるのではないかという、それだけで終わってしまっているので、これがつけやすいとか、本当にこれで安全なのかとか、それから、今、このぐらいの体の大きさの人になっていますけれども、もう少し小さい人とか、あるいは背骨がもっと弱っている人とかだと、逆にこのシートベルトでは危ないのではないか。そういう細かい知識も分からない状態で、現状は何も分からないと言ってもいいぐらい、事故数をそもそも把握できていないのです。
ですので、まずはどういう選択肢があるのかということを調べる必要があります。どういう固定の仕方があるか、閉め方というのはどれだけバラエティがあるのか、それともないのかということ。その上で、それをやりやすくするにはどういう方法があるのか。法的義務にするということもあるかもしれませんが、多分全部法的義務にすると恐らく大変なことになるだろうということは今から想像しています。そうすると、こんな選択肢があって、やりやすいものはこれですとか、最低限これだけやってくださいという切り分けができないかということになるのではないかと思っています。
転落事故などもそうですけれども、あれも法的義務ではなくて、取りあえず改修のための助成金に応募してください、いろいろなお金の補助がありますから、国土交通省に応募してくださいという意見具申にしました。同時に、最低限、鍵を閉めるとか、それだけはやってくださいと、何もかもではなくて、保護者は最低限これをしてくださいと言いましたけれども、似たようなものになるのかなと思っています。
現状ではそもそもガイドラインがそんなに知られていないようであるし、このガイドラインの実施自体が非常に難しいのではないかなと一見してそう思うわけですので、普及はしないだろうと。普及できるような知識、やり方、ノウハウを発見してつくっていって、それを今度はどのように制度化に落とし込んでいくか。補助金なども含めて、そういう感じで考えていくのではないかなと想像しております。 - 問 こういった事故は数十年前からあるということなので、新しい問題ではないと思うのですけれども、例えば責任の所在がはっきりしないとか、今でも明確に示されていないというのは、何か背景的なものがありますか。
-
答
(中川委員長)
事故が起きて訴訟になっているかどうか、私は知らないのですけれども、法的な責任という意味では訴訟、ないしは、司法的処理をどうしているかというのは、私は分かりませんが、事務局、何か情報はありますか。
(事務局)
報道では刑事事件になっており、運転手が自動車運転処罰に関する法令で処罰されているところは報道されているところかと存じます。
あと、委員長に御発言いただいているとおり、この件は様々な省庁と様々な製品が関わっているので、どれが悪いのか分からないまま、事故原因も分からないまま来ているというところに尽きるのかと思っております。
(中川委員長)
その事件で固定をしていたかどうか。
(事務局)
ドライバーが固定なりして、不十分なまま発進をして、そして、事故を起こしてけがをしてしまったというところになります。事故事例、通しの4ページ目の報道情報にあるようなところですが、(2)、(3)など、ベルトが手すりの上に通されていたまま送迎をして急停止をしたというところで、車椅子から脱落したというようなところで、そうすると、手すりの上にベルトを通した方の過失というような形で、刑事事件としては処理をされていると認識しております。
(中川委員長)
ということは、車椅子を自動車に固定させなくてはいけないということ自体は司法的な判断として、これは刑事事件の過失ということで処理されていることは、もっと注目されてもいいはずです。
(事務局)
行政規制としては存在せず、事故が起きたときに後から過失が、自動車を送迎する際には当然ドライバーとしては同乗者にシートベルトを適切につける義務があったがつけなかったというところの事後の刑事の処理だけはされている状況かと思います。
(中川委員長)
ここでこうした法的問題を議論するのは変ですが、車に固定することは法的義務ではないけれども、刑事責任を負わせられているのは法的に大丈夫かなという感じもします。これは最近の判決ですか。だからかもしれませんが、本来、そうであれば、行政の国土交通省なども動いてもおかしくはないはずですが。我々が取り上げるとなったら、これから動いてくれるかもしれません。それはそれで非常にすばらしいことなのですが、先ほど申し上げましたように、経済産業省の車椅子の構造も含めて考えないといけないだろう。
それから、単に固定しやすい、介護の外部産業のほうから見てもやりやすいというようなことも必要だということまで国土交通省が配慮してくれるかもしれないし、してくれないかもしれないので、そこら辺は複数の目で見て、あるべきガイドラインを作れるようにするべきなのだろうなと思います。 - 問 最後に1点、簡単なことを。今年に入って2025年以降は3月と6月と7月に発生していることを確認とあるのですけれども、これは事故が今年に入って3件発生していることを確認しているということで大丈夫ですか。
-
答
(中川委員長)
そうだと思います。 - 問 例えば3月に5件ぐらい発生しているとか、そういうことはないのですか。今年に入って、3月、6月、7月、それぞれ1件ずつ確認されているという理解でいいでしょうか。
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答
(事務局)
それぞれ1件ずつということで問題ありません。 -
問
NHKの佐々木です。
今回の調査を通じて、今、統計もないところということですので、事故がどのようにして起きるのか、多分いろいろなケースがあるのではないかなと思うのですけれども、それぞれのパターン、事故の原因のパターンに応じた対策・対応だったり、あるいは安全基準、どこに対する安全基準かというのもこれから議論があると思うのですが、イメージとしてどういうものを提言として示したいかというのを改めてもう1回伺いたいです。あと、この調査のまとめはいつ頃をめどに提示していきたいかというのがあれば教えてください。
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答
(中川委員長)
イメージとしては皆さんのお手元にある10ページのガイドラインのもっと詳しいバージョン、つまりこれは一つしか書いていないのですけれども、これをもう少しバラエティがあるような、これでもいい、あれでもいいというものというバリエーションが得られないか。それから、車椅子の構造を加えたものという辺りです。どのような固定、シートベルト、車椅子構造が必要なのかということの分かりやすいパターン化になっていくのかと思います。多分、事故の類型ごとにというよりも、恐らく人の類型といいますか、体の大きさであるとか、それから、先ほど言った背骨が弱いとか、そういう状態別となると想像しております。
いつ頃かというのは分かりません。まず、事故数を調べるところからして大変そうです。例えば消防の救急出動はかなり詳細に状況が記録されていますので、そういうところをしらみ潰しに見ていくのかとか、そういうことを考えております。それで結構時間がかかりそうです。一個一個見ていくわけですから。
他方で、チャイルドシートの経験があるので、ある程度事故情報さえ集まれば、対策は割にさっと出てくるのではないかという期待もあって、1年半か1年でうまくいけたらいいですけれども、情報の集まり具合によるので分からないです。あと、もしかして諸外国でちょうどいいものを出している国があれば、これは非常に話が早いのですけれども、今のところそこまで調査していないので分かりません。そういうところに左右されますので、ラッキーに行けば1年でできると思いますが、それぐらいしか今のところ言えないです。 -
問
共同通信の新為です。
かなり細かいところをお聞かせいただきたいのですけれども、今年に入ってからの3件というのは、4ページの事例に載っている2つと、もう1個、7月の事例というのは、町田市の事例ですか。
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答
(事務局)
そのとおりです。 - 問 もう1点、事例が5つ挙がっているうちの一番上の長崎県の事例です。車椅子を乗せた車と書いてあると思うのですけれども、これもいわゆるワンボックスカーのようなタイプと理解してよろしいですか。
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答
(事務局)
ワンボックスカーかどうか、こちらはここにある以上の特定はできないです。ここの記載が全てになります。 - 問 前提として、車椅子をそのまま載せられる車という認識でいいわけですね。
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答
(事務局)
そのとおりです。 -
問
読売新聞の竹田です。
確認です。事故自体は全部死亡事故を対象とするということでよかったですか。死亡事故に関する調査を網羅的に転落死と同じようなイメージでされるという形で理解としては合っていますでしょうか。
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答
(中川委員長)
死亡に限定ではないのではなかったか。生命・身体事故ですから。 - 問 では、けがの具合とかを問わず、車椅子を乗せた送迎車による事故の調査をされるという理解ですか。
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答
(中川委員長)
そうです。広く取ったほうがデータはそろいます。事故があったけれども、たまたまけがをしなかったというのであれば、なぜけがをしなかったかということも参考になりますので、そこは広く取る予定です。 - 問 あと、20年以上前からこういった事故が発生している中で、国のガイドラインもやや古いというか、前のものだというお話があったと思います。例えば民間のいわゆる全国の福祉協議会とか、いろいろな団体があると思うのですけれども、そういったところとかも含めて、車椅子を送迎車に乗せるときの注意点とか、ガイドラインとかをうまくまとめているようなものは、民間のものを含めても国土交通省のガイドラインぐらいしかないという状況なのでしょうか。
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答
(中川委員長)
この点はどうですか。
(事務局)
資料の6ページの注意喚起等というところの項目を御覧ください。(1)から(4)まで、個別の自動車及び車椅子の説明書、また、行政機関等の注意喚起、資料に掲載しております国土交通省のガイドライン、最後、業界団体の実車講習、日本福祉車輌協会の講習会を御紹介させていただいておりますが、福祉車輌協会のほうでマニュアルなど、ホームページで紹介されているところなどはあると認識しております。 -
問
ありがとうございます。
あと、いろいろ御説明いただいている中で細かい点で恐縮ですけれども、11ページのお話とかというのは、いわゆる警察庁が所管されている道路交通法の話なのかと思うのですけれども、シートベルトの話とかになってくると、この部分での大きな話、改正とかいった話にもなるのかなと思います。そういうレベルまで、シートベルトについての義務化というと難しいというお話もあったと思うのですけれども、そういったところまで視野に入ったりしているようなものではあるのですか。
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答
(中川委員長)
御質問は道路交通法の改正にもつながるかということですね。それはあり得ますけれども、ただ現在、明らかに危険であるにもかかわらず道路交通法上改正されていないということは、考えていなかったか、あるいは考えたけれども、なかなか義務付けが難しい、どうすれば安全かという知識がまだそんなにないし、それから、義務付けてしまうと、今度は逆に非常に困る人が出てくるということもあったのではないかと想像します。ということですので、警察庁も関係しています。ただ、警察庁に意見を言うかとなると、今のところ、そう簡単にいくかなという感覚は持っています。 -
問
日本消費経済新聞の相川です。
今、バリアフリー整備ガイドラインを見ているのですが、これは移動等円滑化基準に基づいて公共交通事業者等が高齢者とか障害者を始め、多様な利用者のニーズに応えるための整備の在り方を具体的に示した目安であるとあるのですが、固定することができるステージが備えられていること自体が義務と解釈してよろしいのでしょうか。
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答
(中川委員長)
御質問の趣旨は、ガイドラインが義務付けていると理解しているかということですか。 - 問 はい。
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答
(中川委員長)
ガイドラインですからそうではないと思います。このようにすると安全だと、差し当たり国土交通省の考え方という御提案みたいな性質です。 - 問 円滑化基準には何も書かれていないということですか。
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答
(中川委員長)
そうです。 - 問 それと、公共交通だけが対象なので、例えばデイサービスとかを運営している事業者、あるいは病院とかの車両は対象外で、要するに介護、福祉タクシーだけが対象になっているということでよろしいでしょうか。
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答
(中川委員長)
そう書いてありますけれども、先ほど言ったように法的義務ではないので、ほかの人がやる義務がある、ない、そういう問題ではないです。これは国土交通省所管の業界に対して発信しているだけで、いろいろな介護サービスなどは国土交通省の所管ではないと思いますので、差し当たり言っていないだけではないかと想像しております。いずれにせよ、これは義務ではなくてお勧めですので、それ以外の人がやるのはもちろん自由ですし、逆に公共交通機関がやらないということも、別にやらなかったら法的責任を取られるわけではない。ただ、本当にこう考えられるという提案を国土交通省はしているだけです。 - 問 実は福祉車両とかのホームページにいっぱい出ているのです。このガイドラインもそうなのですけけれども、リフトの角度とか、巻き上げのベルトについてとか、いろいろ細かく書かれているのですが、固定の仕方とか、シートベルトについても確かに記述が何も見られないということで、全くそれがないので、今後、新たに何らかの形のものを提案していきたいというお考えでよろしいでしょうか。
-
答
(中川委員長)
まさにそのとおりです。 -
問
毎日新聞の中村です。
今のガイドラインと規制のところに関連した質問ですけれども、ガイドラインであって規制とか義務とかは現状ないということなのですが、これまであった事故の事例を見ていると、運転者の方が恐らく過失で刑事罰に問われている例ということで、今のところ調べている範囲では、基本的に固定をするのは、もしかしたら、家族であったり、介護事業者の方が固定している例もあるかもしれないけれども、一義的には運転者が基本的には義務を負っている例が事例としてはあるという理解で合っていますか。
-
答
(中川委員長)
先に事務局の理解を聞きましょう。
(事務局)
正確なところが分からないという前提での発言になりますが、固定していない、ベルトを十分につけていない状況で走行していた場合、運転手に過失が出てくる。つけなかったことではなく、不十分な状態で同乗者を発進させていると、運転手の問題になってくると思います。
(中川委員長)
これは法的な話ですので、ここで議論してもしょうがないのですが、ドライバーの責任であるかという御質問だと思います。それはあり得る疑問だと思います。だから、これがドライバーなのだけれども、介護施設の事業者が持ってきたもので、ドライバーは固定も含めて仕事の中に入っているのであれば、ドライバーは要するに固定する役割をちゃんとしなかったということなのかもしれません。そこら辺の詳細は、私は今分かりません。
逆に言うと、家族が輸送する場合、ドライバーの責任になるから、たまたま運転を頼んだ人の責任になるかというと、そうではない可能性もあるだろう。取り付けたはずの人がちゃんとやってなかったというと、それは車に乗っていない取り付けた人の責任になるかもしれませんが、いずれにせよ、これが誰の責任なのかというのは、かなり難しい問題だと私は思います。ドライバーだからではなくて、どういう立場のドライバーだったのかというところは、法的責任としては恐らく密接に関係すると思います。
ただ、我々がやりたいのはそういうことではなくて、そもそもどう設置することが望ましいのか。かつ、みんなができそうな設置方法、つまり難しすぎないような、十分に安全であるというものは何なのかということを探すことが私たちの仕事です。それがきちんと見つかった後、それが世の中に周知された後、事故が起きたら、我々の出した基準違反ということは過失だと言いやすいと思うのですけれども、現状、それがはっきりしていない状態ですので、まずは誰が悪いかではなくて基準を見つける。このガイドラインのもっと詳細バージョン、あるいはもっといろいろな類型に分けたバージョンを見つけることが今回の調査目的です。
プラス、それを見つけた後、では、それをどうやって伝えていくか。単に注意喚起では誰も聞いてくれないので、事業者にはこういう周知をする、消費者にはこういう周知をする、という分けた感じでみんなに知らせていくということを考えています。
もう一度言うと、基準をどうやって、ガイドラインの詳細化をどうやってやるか。もう一つの柱は、どうやってみんなに確実に伝えていくか。この二つの柱、毎回どの案件でもこの二つがいつも課題になっています。前半は結構できるのですけれども、後半がなかなか難しい。周知するというのはいつも難しいです。
我々が基準を出して周知された段階で、ここの締め忘れはこの人が悪いとかいうのは、その後に出てくる問題だと思います。できる人がやってなかったというところが法的責任を問われます。というところで、お答えになっていますか。 - 問 ありがとうございます。
-
問
日本消費経済新聞の相川です。
別件でよろしいでしょうか。マンションからの転落事故について質問させてください。7月8日に沖縄市のマンションの9階から4歳の男の子が転落した事故なのですが、建築基準法の1m10cmを超える1m20cmの柵によじ登って誤って転落したという報道がされています。事故調で報告をした直後の事故であり、これについて長時間かけて報告書をまとめた直後にこういう事故が起きたということで、中川先生はどのように受け止められていらっしゃるのか、お教えいただきたいと思います。
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答
(中川委員長)
やはり起きたかと正直思っております。非常に痛ましい事故です。前回発表したときにも申し上げたとおり、子ども転落事故はいつでもどこでも起きます。変な言い方ですが、今は私たちは裸の状態で住んでいます。子どもを転落から誰も守ってくれていない状態、すぐに起きてしまう状態。なぜかというと、建築基準法上、子どもがどういう挙動を起こすかということを想定した防御策の義務付けがないことを前回強調しました。防御策をしようと思ったらいろいろな基準を変えなくてはいけなくなって、かなり値段も上がるだろうということで、我々としても建築基準法を変えようとまでは言っておりませんでした。防御策となるような修繕をしていく。それから、施錠をするための、子どもが開けられないような錠をつくっていくということを言ったわけです。
逆に言うと、しかし、それはすぐにできるわけではなくて、現状のままだと起きて当然の事故です。やはり起きたかと思いました。当該事故については、現在、我々も情報収集中なので、完全には分かっておりませんが、今のところ分かった情報を見る限り、私たちの報告書がまさに示したとおりの起き方をしたようです。我々の報告書に対応するよう対策が施された建物であれば起きなかったと思います。ですので、報告書で書いたことを関係省庁に素早くやっていただきたいと思います。消費者の皆さんにももう一度注意喚起といいますか、いつでもどこでも簡単に起きる事故だという意識を持っていただきたいと思います。本当にそれに尽きます。 -
問
実は参院選の日本維新の会の公約に、転落事故防止で建築基準法規制の見直しを検討するというのが入っていて把握したのですが、何年も検討していて結局注意喚起しかできなかった。ここのところがいつまでたっても同じことなのではないか。
報告書にもいろいろ書いてありましたけれども、ただ、本当にあの報告書の言い方で本当にそれが進むのですか。
-
答
(中川委員長)
ほぼそこの議論に時間を費やしたといってもいいぐらいです。最終的には第1フェーズ、第2フェーズに分けることとしました。第1フェーズとして、取りあえず補助金の申請、それから、注意喚起するとなりました。建築基準法を変えなくていいのかという意見はもちろん何人かからありました。我々が悩んだのは、これは消費者安全調査委員会が決めてよいことなのか、決められることなのかということなのです。建築基準法を変えるのであれば、例えばベランダは基本的に設置禁止、ないし一定以上の大きさがなければ禁止とか、窓は子どもが開けられないような仕組みにということになります。ということは、ベランダで物干しができなくなる、風が欲しくても窓を開けにくくなるということを全世帯に義務付けるということになりますが、それで果たして国民の皆様は大丈夫か。つまり大反対されるのではないか、まさに子どもの親が反対するのではないかということなのです。
我々の住まい方として、夏には、今は暑すぎてそうでもなくなりましたけれども、暑くなってきたら窓を開ける、風を通す、そして、衣類等を外で干す、日に当てる、そういう生活スタイルです。これをかなり制限しないことには完全に子ども転落の防止ができない。もちろん一部はできます。ベランダの高さをもっと高くするとか、柵を義務付けるというのはできます。
ただ、それをするとなると、新築からです。既存建物では多少、手を持つところぐらいの改修はできるかもしれません。それから、窓はどうするかということになると、開かないようにする。あるいは上のほうしか開かないようにすることになると、そんなことは嫌だと言われるのではないか。もちろん建築費も上がるということで、かなり大きな決断になるのです。それを我々委員会がしてよいのか、できるのか。つまり提案したところで世論の反対で消えてしまうのではないか。だとしたら、世論に分かってほしいということで、これをやらないと事故は起き続けますということを理解していただきたいというところで、今回は第1フェーズに止めるという結論になったのです。
あれは別に日和ったわけでも何でもなくて、むしろ国民の問題ですと申し上げているつもりなのです。そこを維新がやってくれるのであれば、是非それは頑張っていただきたいと思いますが、最初に出てくる反対は国民からだと思います。もっと快適に過ごしたい、窓を開けたい、物を干したい、なぜそれがいけないのだという反対。これは我々の生活習慣ですから、それとの関係でなかなか簡単に法改正が進まないのだろうと考えております。
ただ、事故が多く続くのであれば、さすがにこれはどちらが大事ですかという話になります。子どもの命か、それとも、窓を開けて風を通すことか、どちらが大事ですかという話になる。それはどこかで我々の生活慣習を変えるということですから、政治的に決断していただく必要がある。そういうかなり重大な問題があるのです。だから、我々の一存で法改正しろとまでは言えないだろう。手すりの高さをもっと高くしろぐらいは言えるかもしれませんが、それだけでは一部しか解決にならないのです。やるのだったら包括的にきちんとした対応をしなければ、ワンセットでやるべきだろう。そうなると、相当我々の生活は変わると考えまして、苦渋の決断でああいうところで第1フェーズで落ち着かせたということです。いかがでしょうか。 - 問 子どもの能力が高くなっていることはあるのかもしれませんが、自分が転落したことで死んでしまうということが想像できない年齢で、挑戦したいという気持ちがある年代で、本当に今120cmを超えてしまったという事実がある。そのことからだけでも何とか対策を少しずつ打っていくみたいなことを考えていかないと、事故調の報告を見て、取りあえずベランダのそばに何か置いてはいけないと思って片付けた人もいるかもしれない。その状態でも、細かくあの報告書の中に、4歳児の場合は基準を超えても手が届くかもしれないと書いてあります。それで本当に落ちて死んでしまったというのが直後に起きてくると、もう少しこの事故を踏まえて何かできる対策を一つでも取ったほうがいいのではないかというような考え方にはならないのかなと思って質問しました。
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答
(中川委員長)
この事故は、そこに書いてある第2フェーズ、つまり法制化に向けての我々の手がかりになるかもしれません。やはり事故は起き続けるということですから。例えばワンセットではなくて、せめて手すりの高さだけでもできないかという話で少しずつ。今のところ建築基準法は、そもそも子どものためという発想ではない。私もなぜなのかよく理解できないのですが、子どものためという発想になっていない。それがおかしいのではないかと詰められないかと思っています。フォローアップにおいてです。
それに対する回答を見ながら、第2フェーズ、さらには2番目の意見具申、そういう可能性は国土交通省の対応によっては出てくるかもしれません。国土交通省も問題意識を持っていらっしゃると思いますが、今のところなかなか動いてくれないような雰囲気を私は感じております。しかしそれでは駄目なのではないかということは、私たちが言うだけではなくて、メディアの皆さんも是非言っていただきたいと思います。