記者会見要旨
(2025年6月24日(火) 16:45~17:31 於:消費者庁記者会見室)
発言要旨
(中川委員長)
本日は、最初に各部会の報告から行います。
6月の事故調査第一部会では、「住宅の窓及びベランダからの子どもの転落事故」、今日、後でお話しする案件ですが、これの報告書等公表に向けた審議を行いました。
また、第二部会では、「スポーツジム等におけるパーソナルトレーニングによる事故及び健康被害」の報告書作成に向けた審議を行ったということでございます。
本日の調査委員会ですが、報告書の審議といたしまして、「住宅の窓及びベランダからの子どもの転落事故」及び「スポーツジム等におけるパーソナルトレーニングによる事故及び健康被害」の2事案について審議を行いました。
「スポーツジム等におけるパーソナルトレーニングによる事故及び健康被害」について、本日は報告書の構成、あるいは個別の論点についていろいろ検討いたしましたが、詳細は来月の記者会見でお話しをしたいと思います。
本日は、「住宅の窓及びベランダからの子どもの転落事故」について、調査委員会において決定して公表いたしました。これについて時間をかけて御説明をしたいと思います。
まず、調査対象でありますけれども、調査対象は6歳未満の子どもが窓及びベランダから転落し、死亡した事故です。134件が対象です。過去32年分です。
事故傾向でありますけれども、恒常的に発生をし続けております。件数が多いわけではありませんが、しかし、毎年発生しております。転落事故防止のために保護者ができることについては、政府広報、報道機関、民間事業者などから様々な発信がございますが、しかし、事故は続いております。
この事故を調査した結果でございますが、窓からが42件、ベランダが92件であります。事故発生時の保護者の在宅と不在は半々です。在宅が65件で不在宅が55件です。在宅のほうがやや多いというような結果であります。
そして、我々は調査の結果、事故の発生プロセスを解明いたしました。まずはここで我々が作りましたCGを流したいと思います。長いほうだけ流します。
(動画再生)
では、事故の発生プロセスの説明に戻ります。
まず重要なのは子どもの特性です。6歳未満の子どもの特性として、頭の重心が重い。そして、歩き始めますので、運動機能が発達すると限界に挑戦したくなる。挑戦によってどんどん体が発達していくわけなので自然なことなのですが、限界に挑戦したがる。最後に、墜落等の危険を知らないことも特性です。
先ほどのプロセスについてはCGで示したとおりですが、これも3つぐらいに分かれます。
一つは、とにかく窓が開くというプロセスがあります。窓が開いている、ないしは鍵を開けてしまう、あるいはよじ登って鍵を開ける、そういう形で窓が開く。
もう一つのプロセスは、ベランダがある場合ですけれども、ベランダの手すりをよじ登る。
最後が、身を乗り出すということです。
この3つのプロセスで事故が起きますので、これをハード的に、つまり何らかの製品、あるいは設計で止めようとするならば、考え方としては先ほど言った3つのプロセスのどれかを止めればいいわけです。
例えば窓の鍵が子どもの手の届かないところにある、あるいは子どもが開錠しづらい構造にする、ないしは例えば顔認識、保護者しか開けられないようにするといった設備をつくる。
それから、ベランダに関していうと、よじ登れない高さにする、ないしは近くに足掛かりを置かない、あるいはつかみにくい構造にする。
最後に、ベランダや窓から外に出ないようにする、身を乗り出せないようにするために、例えば窓格子をつけるとか、ベランダにネットをつけるとか、こういった機能を持っている住宅、ないしは製品の後付けによって転落防止をした住まいができて、かなり防げるはずである。ここまでは論理的に考えられます。
現状はどうなのかということなのですが、第一に、このような対策をしろという法制・法令上の義務はありません。現在、例えば建築基準法というあらゆる建物が守らなくてはいけない法令上の義務がありますが、それを始めといたしまして、子どもに特有の転落プロセスに対応した法制上の対応はございません。
第二に、子どもの転落を防止する対策の仕方をまとめた文書は存在します。幾つかあるのですけれども、最も包括的と思われるものが、国土交通省の国土技術政策総合研究所の「子育てに配慮した住宅と居住環境に関するガイドライン」といわれるものです。これは2018年に最初のバージョンが発表されております。
このガイドラインの中身は、例えば掃き出し窓の位置を子どもが届かないところにするとか、ベランダの手すりの高さ、ないしは形状をつかみづらいようにするとか、あるいは斜めにして登りづらいようにする、あるいは手すりと手すりの間の間隔、それを11センチ未満、子どもが出られないようにするとか、あるいはベランダの手すりから室外機の場所を離すといった、先ほどハード的に対処できると言ったことと同じことが書かれております。
このガイドラインどおりにしていれば、我々の検討によりますと、先ほど申し上げた134件の事故は恐らく全て防げた可能性が高いという結論です。つまりガイドラインの中身は非常に適切であると考えております。しかも、このガイドラインを用いた工事についての支援の事業もございます。
国の主たる支援策でありますが、子育て支援型共同住宅推進事業というものが2021年に開始しております。対象は賃貸住宅の新築及び改修です。分譲マンションの新築は対象に入っておりませんが、分譲マンションの改修が対象になっています。そして、その支援要件として、先ほど申し上げたガイドラインにある、窓及びベランダからの転落防止対策と同じ内容のことを必ずしろと書いてあります。
というわけで、法制上の義務はないのですけれども、どうすればいいかという知識は国土交通省の研究所がまとめており、そして、国土交通省の支援事業もあるという状態です。そのほか、自治体なども支援事業があるようでございます。
しかしながら、我々が問題と考えたのは、これらの情報や支援が全く活用されていない。全くというと言いすぎかもしれませんが、非常に活用度が低いというところです。
まず、支援事業ですけれども、始まった2021年から現在まで約4年、累計で1,800戸について支援事業があったということです。これが多いのか少ないのかということなのですけれども、6歳未満の子どもがいる世帯数が令和2年の国勢調査だと400万世帯、そのうち共同住宅が仮に200万だとして、これを母数にすると1,800戸というのは0.09%ということですから、多いとは決して言えないだろうと考えております。
また、そもそも先ほど申し上げた知識、どのような対策を取ればいいかという知識を書いたガイドラインですけれども、これも住宅産業においてみんなが知っている状態になっていない。そもそもこのガイドラインは、先ほどのタイトルから分かるように、子育てに配慮した住宅と居住環境に関するあらゆる事故対策を網羅したものです。非常に網羅性が高いです。その一部にこういった子ども転落防止対策が含まれている。逆に言うと、名称として子ども転落防止のためのガイドラインと書いてあるわけではなくて、その一部に書いてある。情報として埋もれている可能性がある体裁になっております。
住宅産業がこういったガイドライン、あるいは支援事業を知って活用するように顧客に勧めているかというと、どうもそういう事情もないと我々は考えております。もちろん一部の事業者が子ども転落に対応した住宅を供給しているという情報はございます。ただ、それが住宅産業全体として子ども転落防止は自分たちの課題でもあると考えているかというと、とてもそうは思えないということです。
これは一つの例でありますけれども、マンションのモデルルームを考えていただきたいと思います。テラスにおしゃれな椅子とテーブルが置いてある。これはいいのですけれども、これは先ほどのCGで見ていただいたとおり、まさにそれが足掛かりになるのです。あるいはベランダに室外機を置いてあるのだけれども、室外機がまさに手すりのすぐそばである。これも転落プロセスが始まっているような状態なのです。
それから、先ほど流したCGの1件目ですけれども、例えば部屋の間取りとして、ベッドが窓のそばにくっつけて置いてある。これは実際に非常に多いと思うのですけれども、そうすると、先ほどのCGのとおり、子どもがそこで寝ていて、窓が開くならば、これは転落必至、たまたま子どもが動かなかったから転落していないという状況です。モデルルームだけではなくてチラシとかもです。住宅産業において子ども転落に関する意識は高いとは言えないのではないかという懸念を持っています。
まとめますと、子ども転落防止の対策について知識と支援はあるけれども、使われていない。なぜならば、子ども転落防止の旗振り役がいない、誰が子ども転落防止対策を推進するのかについて、行政にもリーダーがいない、産業界にもいない、こういう状況であろうと思います。
行政の場合、子どもの転落防止に、例えば国土交通省は確かに建物という関係では関係する省庁です。それから、経済産業省は転落防止のためにいろいろな建具をつくる、窓であるとか、あるいは鍵であるとか、そういった製品という意味では所管の官庁です。それから、この問題についてはこども家庭庁というのが所管官庁です。このようにいくつも所管官庁があるので、いわゆる隙間事故ではありません。しかし、では、誰が全体の音頭を取って進めていくのかということになると、みんなそれぞれやることはやっていると思いますけれども、連携していない状況であると思います。隙間型の事故ではなく、いわばリーダー不在型の事故と我々は考えております。
住宅産業のほうも、先ほど申し上げたように、特に統計的な指標があるわけではありませんが、子ども転落事故を自分たちのビジネス上の課題であるとは思っていない、当事者意識は持っていないと考えざるを得ないと思います。ここで住宅産業と申しますのは、中心としてはいわゆるマンション供給事業者、いわゆるマンションデベロッパーが中心ですが、設計事務所であるとか、デベロッパーの設計部門、ハウスメーカー、建材什器メーカーなどを含みます。様々な企業が皆さん頭に浮かぶと思いますが、そういった産業全体が課題感をどこまで持っているかというと、非常に低いのではないかと考えております。
行政にリーダー役がいない、住宅産業にも旗振り役がいない。これはなぜかといいますと、根本的な事故原因としては、私たちが子どもの転落事故はいつでもどこでも簡単に起きるという認識が共有されていない。めったに起きないのだというのは思い込みだと私たちは考えるわけですが、子ども転落事故は今そこにある危険だと、どこにでもあるのだという認識がない。もう一つは、子ども転落は親の注意の問題であると考えているのではないか。この2つが根本的な原因ではないかと考えております。
したがって、行政も住宅産業も自分たちの問題である、自分たちが何とかしなくてはいけないのだという当事者感が育まれないのが根本的な原因ではないかと考えております。
そこで、委員会といたしましては、まずはリーダー役、一つの省というよりも国土交通省、経済産業省、こども家庭庁が三つ巴となって保護者等の意識も高めながら、それが住宅産業のほうにも伝わり、住宅産業のほうから今度は逆に保護者にも伝えるという形で、先ほどのガイドラインの知識、それから、支援策がまずは使われるような状態をつくっていくのが先決だろうと考えております。行政と住宅産業と保護者の三者が連携して子ども転落防止に取り組む仕組みを現実に動かしていくということが、私たちの今差し当たってやるべき対策であろうという結論であります。
仮に、これでは生ぬるい、うまくいかないということであれば、最終的には法制化も含めたかなり厳しい対策の検討に移らなくてはいけないと思っております。
皆様のお手元にあろうかと思いますが、概要をまとめたペーパーの5ページを御覧ください。「終わりに」というところで、第1フェーズ、第2フェーズという言葉があります。
今回、私たちが結論として申し上げることは、先ほど申し上げた経済産業省と国土交通省とこども家庭庁のリーダーシップによって、行政、住宅産業、保護者の三者が連携して、ガイドラインの活用、それから、支援事業を活用してほしいということですが、これが第1フェーズです。取りあえず今あるものをちゃんと活用していきましょうということです。
しかし、それではうまくいかないということであれば、第2フェーズと書いておりますけれども、先ほどこのようなハード対策をすればよいといったことについての法制化にも踏み込んでいかなければ事故は減らないと考えております。
今回は第1フェーズのみ意見をするということです。
具体的な意見内容に移ります。お手元の4ページの5というところを御覧ください。まず、国土交通省に対しては、ガイドライン及び支援事業をもっと産業界に周知してほしいということです。逆に言うと、先ほど申し上げたように、住宅産業こそが子ども転落防止に大きな役割を果たせるという当事者意識を持つよう、国土交通省から働きかけてほしいという趣旨です。そして、国土交通省はガイドラインの周知、そして、支援事業の利用拡充をすべく、積極的に働きかけてほしい。支援事業を利用して支援金をもらうのは住んでいる人なので、住宅産業からするとお客さんです。お客さんに勧める、子ども転落の防止ということも考えなくてはいけませんということを、住宅産業のほうから顧客ないし消費者のほうに勧めてほしいということです。
そして、支援事業については、今あるものをまずは私たちとしては勧めてほしい。活用度が非常に低いのです。もちろんこれについて十分かという問題もあります。先ほど言ったように、分譲住宅の新築は対象外というのは結構大きなハードルかと思います。
それから、その他、賃貸住宅についても、賃貸住宅のオーナーに対して支援をするのですが、その代わり、お金をもらった場合には子どもがいる人にしか貸しては駄目という、かなり厳しい要件がありますので、それが本当に合理的なのかということも含めて考えてほしいと思います。そうしたことが重要なのですが、そこにいくためにも、まずは周知、使っていただくような働きかけを国土交通省としてはしていただきたいというのが意見の第一です。
2番目の意見が、今度は経済産業省に対するものであります。国土交通省の先ほど言ったガイドライン、それから、支援策ですが、特にガイドラインのほうを補充する立場で経済産業省は行動してほしい。まずはガイドラインの実施を容認するような製品、例えば子どもが開きにくい錠といっても、実は現状あまりないのです。なければ、そういったものをつくる。それから、窓格子も非常に不細工なもので使ってくれない。デザイン性もあり、かつ、窓を開けて涼しい風を入れるというようなこととも両立するような製品をつくることによって、ガイドラインを守りやすくしてほしいという意味で製品開発です。
それから、ガイドラインに書かれていない、それ以外のいろいろな転落防止の工夫もあり得るはずですので、そういったものも開発してほしい。こういう転落防止のビジネスを経済産業省のほうから働きかけてほしいというのが2番目です。
関係団体に働きかけてほしいと書いてございますが、例えばキッズデザイン協議会というNPO団体があります。ここはいろいろな住宅関連のメーカーが参加しているところでありますので、そういった建材、住宅関連機器のメーカーにきちんとメッセージが届く、そういった子ども転落防止の器具を使う、窓の構造であるとか、あるいはベランダは建具ではないかもしれませんが、網戸の構造であるとか、そういった様々な部分について子ども転落防止の対策がされていますということがビジネスチャンスであると理解してほしいと考えております。
最後が、こども家庭庁長官に対する意見です。これは専ら子どものすぐそばにいる保護者であるとか、祖父母であるとか、あるいはママ友とか、パパ友とか、近所の人です。つまり子どもが自分の家に来る可能性がある人に対して、子どもは簡単に転落するということを知ってもらう。そして、法令上は何の手当も現在はありません。多くの建物は支援策を使わずに何もしていない裸の状態である。したがって、子どもが転落しても何の不思議もないという状態で我々は住んでいるのですと、そういった発信を効果的にしてほしいと思っております。
その助けとして先ほどお見せしましたCGを作りました。また、チェックリストを作っております。これは皆様のお手元の最後から2枚目になると思いますけれども、カラーで子どもの転落事故防止のためのチェックリストを作っておりまして、理念は先ほど申し上げた転落のプロセス、こんな簡単に落ちます。まずは何をしてはいけないのか、これは結構やっている方が多いのではないかと思います。窓のそばにベッドがあるというのは普通のことであります。そんなに広い家はなかなかないと思いますので、窓はガチガチに閉めなくてはいけないとか、そういった形で対策をしていただく。これが子どもの周辺にいらっしゃる方ができることです。これをこども家庭庁からいろいろなルートを使って周知してほしいということであります。
以上が今回の意見であります。
あと、一葉です。消費者事故調から、随時、直接消費者に対するメッセージとして、今回の報告書のエッセンスを一葉として出しております。一葉では事故が簡単に起きるということを強調した形で事故のプロセスを書いております。
以上で本日の報告書の説明を終わりたいと思います。私たちのメッセージは非常に重要なものかと思います。先ほど根本的な事故原因と申し上げましたが、社会で誤解がある、思い込みがあることが一番の原因。だから、行政でもリーダー役がいないし、産業界も当事者がいないと申し上げました。
もう一度申し上げますと、一つは、子ども転落は今すぐそこにある危険である。いつでもどこでも起きるという認識を持っていただきたい。何の対策もされていないのですということです。子どもは高いところによじ登ったりしないだろうというのは思い込みです。
2点目は、子ども転落は親の注意で対応できる問題ではないということです。親が注意すれば防げるというのは思い込みです。これは事故調査の非常に基本的なことなのですけれども、人間の注意力に頼ると事故は起きるのです。これは職場の安全向上で重要な考え方です。そういったところでは人間の注意では事故が起きる。一応プロのはずなのですけれども、それでも起きるということで、ハードという言葉を使いますが、いかに設計であるとか、製品の機能によって事故が起きないようにするかということをやってきました。その結果、日本の職場は非常に安全になっていると私は聞いております。
ところが、職場が家庭に変わると一転して、親の注意だという昭和の根性論みたいな、注意すれば何とかなるという考えに変わってしまう。いや、実は何ともならんというのが、実際のこの事故が起き続けていることの結果が示しているところです。親の注意の問題だ、注意すれば防げるという思い込みをなくしてほしいという、この2点が最大のメッセージです。
その上で、住宅産業には、繰り返し申し上げますけれども、一部の住宅事業者は対応していらっしゃるようです。ただ、まだ一部にとどまっております。全体として、子ども転落防止の住宅供給、建具の供給に熱心であったとは言えないと思いますので、意識改革を進めたいと考えております。
その上で、保護者の方には先ほどのチェックリストを是非使っていただきたい。最低限自分ができる、これだけだったら注意できるところを絞り込んで、最低限の手順を自分なりに決めて、窓を閉めるであるとか、鍵をかけるであるとか、足掛かりを置かないとか、本当に一つ二つぐらいに限定して、必ず実行できることを大いに絞り込んで対策をしていただきたいと考えております。
私からは以上です。
質疑応答
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問
日本経済新聞の藤田です。
事故件数134件、私の聞き間違いだったのかもしれないのですけれども、この計算は31年分で、2024年までの31年間の件数ということで合っていますか。
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答
(中川委員長)
32年です。1993年から2024年なので、93年も入れて32年ということではないかと思います。 -
問
32年分ですか。分かりました。
もう1点、先ほど国土交通省の事業の活用度合いが低いというお話があったのですけれども、低いという状況を表している数値として、累計1,800戸とおっしゃったかと思うのです。世帯数900万世帯で、そのうちマンション世帯が幾つあると想定するとおっしゃいましたか。その辺りの数字をもう一度教えていただけないでしょうか。
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答
(中川委員長)
これは本当に完全なざっくりとした単なる推測ですので、半分、200万世帯と考えると、1,800戸割る200万戸ということですので、かなり小さいなということです。100万を母数にしても一緒です。 - 問 200万世帯というのは、何の半分と捉えていらっしゃいますか。
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答
(中川委員長)
令和2年の国勢調査によると、6歳未満の子どもがいる世帯数が約400万、358万ですけれども、それを仮に共同住宅が200万とすると、戸建てが半分、共同住宅、アパート、マンションが半分とすると200万、そういうざっくりとした計算です。 -
問
ありがとうございます。
国土交通省の事業に関連してお伺いするのですけれども、既に国土交通省はガイドラインを作って、その活用を推進するための補助事業もあるということで、一見すると、やれることはやっているような気がするのですけれども、それでも活用が低いというのは、どういうところに理由があったり、原因があったりするとお考えでしょうか。
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答
(中川委員長)
原因は数がまだ少ないということです。それから、ここからは私の推測になるのですけれども、数が少ない理由としては、分譲マンションの新築が対象外であること、多分ここが一番重要だと思うのですけれども、対象外です。対象外になる理由は、恐らく、誰が住むか分からないから、6歳未満の子どもがいないかもしれないではないかということだと思うのですが。
これについては、そういう捉え方をしてよい問題なのかという疑問があります。誰が住むかもしれないからこそ、支援の対象にするべきではないのかと思うのです。子どもが遊びに来るかもしれないし、孫が遊びに来るかもしれないし。それから、もちろん転売があるわけです。ちょっと厳しすぎるのではないかという気がするのです。しかし、私たちの意見としては今回はそこまで踏み込んでおりません。予算の問題もあると思います。新築の分譲マンションまで対象とすると、逆にわっと来て、とてもではないけれども予算が足りないということもあるかもしれません。そこは工夫の仕方があると思いますが、いずれにせよ、1,800戸というのは桁的に少ないのではないか。もう10倍ぐらいはいってほしいという感じがします。
それから、そもそも知られていないというところです。指標で示すのはなかなか難しいのですけれども、我々の事務局がいろいろ調べた結果、実は関係者があまり知らない。あれ?という感じなのです。まさにひっそりとやっている支援事業です。私たちとしては、こんないいものを何でもっと推し進めないのかと思うのですけれども、一番肝心の住宅産業のほうが知らない。つまり、保護者にこれをしてというのは結構難しいのです。
私たち一人一人はいろいろな注意喚起を受けますけれども、そのほとんどに関心がない。だけれども、自分が何かを買おうとするタイミングで、家の安全性に関する情報が来ると非常に関心を持つのです。ということは、住宅を買う、あるいは住む、例えば不動産情報誌であるとか、住宅情報を出す事業者であるとか、あるいは賃貸オーナーに対して建物の建築の提案をする住宅メーカーとか、こういったところから、例えばこんな転落防止策がありますということを言っていただくと、自分事になりますから消費者は急に関心を持つわけなのです。そういうタイミングで情報を出さないとうまくいかないでしょう。
それから、先ほど経済産業省、国土交通省、こども家庭庁、三つ巴と申し上げたのは、こども家庭庁は様々なルートで、今言ったこういうガイドラインがあって支援策もありますという情報を流す。多くの人は自分事ではないから聞き捨てられると思います。でも、それもしている。
他方で、今度は国土交通省を通じて、住宅産業から消費者に向かって、保護者に向かって、こんなのもありますと、あるいは賃貸オーナーに向かって、こんなものがありますということを提案してもらう。そういう二重の形で情報を周知していただく。
経済産業省については、そういう製品があるということ、製品をつくれば宣伝をしますから、子ども転落の製品があるのだと、それで気付く人もいるかもしれない。
こういう三つ巴で、子ども転落というのはどこでも起きて、そして、親の責任ではなくて製品的に対応すべき問題なのだということを伝えてもらうことによって、支援策の利用も上がってくるだろう。こういう様々なところで動きをつくらないと、国土交通省が支援事業をやりましたというだけでは実績にいかない、実質的に使ってもらえる人が増えないと私たちが考えたわけです。 - 問 最後に1点、産業界の動きが鈍いというのは、産業界が問題自体の認識を全くしていないとか、こういう問題があるということが分かっていないのか。それとも、分かっているのだけれども、何か躊躇するような理由とかがあるのか。その辺りはどのようにお考えか教えていただけないでしょうか。
-
答
(中川委員長)
産業界にアンケートをしたわけではありませんけれども、知っていることは知っていると思います。転落していることも当然知っていると思います。ところが、自分たちが対応しなくてはいけない問題かということについては、正面からそう言うと、いや、そんなことはないと反論されるかもしれませんが、私たちの調査した体感では、自分たちの問題ではないと思っていると言わざるを得ないと聞いております。
ただし、それは恐らくだけれども、産業界からすると、なぜならば顧客が言ってこないからだという理由もあると思います。対策すれば当然ながら多少値段は上がります。だから、支援策があるのです。結局こちらからわざわざ高いものを提案したところで、何でそんなことをする必要があるのですかと、逆にお客さんに叱られるという反論は当然産業界からあると思います。なので、その背景にあるのは、保護者のほうも子どもが転落することを認識していないことにあります。
それから、もしかしたら産業界、あるいは保護者のほうも、親が注意すれば何とかなるから、そんなことにお金をかける必要はないと思っているのかもしれません。
そういったところが原因で、先ほど言った2つの認識、子ども転落というのはめったに起きないという誤解、それから、親が注意すれば何とかなるという誤解が社会にも産業界にもあるので、結局この活用に至っていないと考えたわけです。 -
問
共同通信の新為です。
今回分析された32年分の事故は、いずれも死亡したケースだと思います。転落に関しては、転落がすなわち死亡につながりやすい事故という傾向もあるのかなと思うのですけれども、死亡に至らなかったけれども、事故になったケースというのは、体感でもいいのでどれぐらいあるのか。
-
答
(中川委員長)
これは事務局からお願いできますか。
(事務局)
こちらについては一葉のほうを御覧いただければと思います。一葉の裏面のほうで、植松先生という方にコラムを御担当いただいておりまして、こちらのほう、WHOのピラミッドという形で、死亡者1名に対して傷害を負った子どもが何人かというところの人数の割合で示しているかと思いますので、こちらのほうを御参考にしていただければと思います。 - 問 あと、これは件数でカウントされていて、死亡者の数だともう少し増えるとなっているのですが、具体的に人数は出ますか。
-
答
(事務局)
具体例を出しますと、近年、双子のお子さんが転落したということがあります。なので、人数ベースで言いますと、134件よりは多いですが、さほど多くなるわけではないという認識です。
(水流部会長)
もう一つ、死亡に至らなかった場合、例えば救急車で運んでいって、これが転落事故であったというような報告の仕組みが今うまくできていないのです。だから、本当はもしかすると、死亡の場合は警察が動きますので、案件として数が分かるしメディアも取り上げるのですけれども、けがをした、大丈夫だったというような件数は一切分かっていないので、死亡という数に対して、実際に転落している数というのは、本当はもっと多い可能性がかなりあって、でも、親御さんにとっては、とにかく無事でよかったで終わっているかもしれないということ。
それから、子育てをしている世帯だけが問題ではなくて、お子さんが遊びに行くお家であるとか、おじいちゃん、おばあちゃんのお家、1件ございました。病気だったので、おじいちゃん、おばあちゃんに子どもを預けて、お母さんが働きに行った。そのときに、おじいちゃん、おばあちゃんの家の窓から落ちたというのがあります。
皆さん、自分のところには子どもがいないからということでは終わらない案件なのだということで、社会全体で子どもが窓から転落しないようにするというようなハード的な措置も含めて、それから、ソフト的には、そこの家に子どもが来たときに注意しなくてはいけないことにも該当するようになりますので、その辺はみんながかなりマインドセットを変えないといけない内容になっております。