記者会見要旨
(2025年3月27日(木) 16:45~17:07 於:消費者庁記者会見室)
発言要旨
(中川委員長)
本日は、まず冒頭に公開のヒアリングを行いました。これはフォローアップ事案として「トランポリンパーク等での事故」についてのものです。意見先となった経済産業省、スポーツ庁及び消費者庁の担当者をお招きいたしました。
経緯ですが、当委員会では、令和5年4月20日に経済産業大臣に対し、再発防止対策を踏まえた安全の取組の要請支援やトランポリンパークの安全性を確保するためのシステムの構築に対する支援を意見しました。また、文部科学大臣に対しては、公益財団法人日本体操協会に施設運営者への技術的な知識の習得、リスク認識の支援等の協力を促すことを意見いたしました。消費者庁長官へは、消費者に対し、トランポリンパークを含むトランポリンでの遊戯一般の危険性を分かりやすく周知すること等をそれぞれ求めました。
本日、各省庁から取組状況について御報告をいただきました。公開ですので御覧になった方もいらっしゃると思いますけれども、経済産業省からは、100社超の日本でトランポリンパークを行っている業者をリスト化して、それに基づいて情報を周知し、今後速やかに、直接各社に対してトランポリンパークの設備運営についての国際規格に準拠することを求めていくという施策を行ってまいりたいという報告がございました。
それから、スポーツ庁からは、先ほど申し上げた日本体操協会に依頼をして、技術的な援助をトランポリンパークの運営に対して行ったということです。参加者が少ないという課題がありましたので、それは経済産業省のリストを用いて、今後更に改善をしていくということでした。
消費者庁からは、トランポリンの危険については周知をしているということでした。どの程度の人々が見ているか分かりませんが、たまたま委員の1人から、自分の広島の友人としゃべっていたら知っていたということがありました。危険であるという認識を周知するということについては、徐々にではあるけれども、進んでいるのではないかと思いました。
総じて取組としては、こちらが考えていたこと、あるいはそれ以上のことをやっていただいているという印象を私は受けました。今日はヒアリングだけを行い、次回の委員会で取組状況等について詳細に検討して、それぞれの省庁に対して、こちらからどのように評価したかという通知をしたいと考えております。
その後、本日は個別事案といたしまして、「住宅の窓及びベランダからの子どもの転落事故」及び「スポーツジム等におけるパーソナルトレーニングによる事故及び健康被害」について審議をいたしました。
まず、転落事故につきましては、お手元にあると思いますけれども、報告書が出るまでの間、まずは転落事故が普通に起きてしまうという危険の周知のための方策といたしまして、第17号の一葉を発出することを決定いたしました。御覧になったとおりであり、窓からの転落事故、すなわち腰高窓、それから、ベランダの転落事故、上の図は1歳、下の図は3歳の子があります。どちらも年齢的によじ登ったりしないだろうと、特に1歳については思われるかもしれませんが、足掛かりがあるとこんなに簡単に事故につながるということをイラスト化したものです。
裏面を御覧いただきますと、窓やベランダの近くに物が置かれていませんかということで、「足掛かり」という言葉を使っております。例えば室外機の上によじ登ることがあり得ますし、プランターとかその他によじ登ることはあり得る。そして、室内であればベッドとか椅子が足掛かりになります。今日も委員から発言がありまして、ベッドを窓のそばに置かないほうがいいけれども、離すことがそもそも不可能だ、そんな広い部屋に住んでいる人は多くないという発言です。そうすると、窓の鍵をしっかりとかけるしか方法がない。そのようにして、まずは足掛かりを置かない、そうは言っても全ては無理で、足掛かりとなってしまうベッド等を置かざるを得ない場合、窓を開けないようにするということしか方法はない。
これから窓を開ける暖かい季節になってきます。開けてしまうとロックが効かないわけですから、本当に非常に危ない状態であることを認識していただくしか方法がないわけです。そういった認識を持っていただこうというのがこの一葉です。
1点修正があります。その下に八藤後先生のコラムがありますが、八藤後先生のタイトルが微妙に間違っておりまして、教授と書いてありますが特任教授が正しいタイトルであります。特任を入れていただくようにお願いをいたします。
本日は、この一葉を決定した後、内容について、特に何が再発防止策かを確認・検討いたしました。建築基準法に沿った建築であることは当然なのですが、ただ、建築基準法は別に子どもの転落防止を目的として基準を定めていないことは確認いたしました。そうすると、それに上乗せをする必要があるだろう。では、何を上乗せするのかといっても、上乗せもそんなにいろいろなことができるわけではなくて、例えばベランダの手すりを子どもがつかみにくいようなものにするということが一つはある。そういった任意の基準というのが既にあります。それから、手すりの格子の幅が子どもの頭よりも狭いといったことも必要である。建築基準法よりは厳しい基準にということになります。
これを法令化するのかというところについては、今のところ、法令化までは無理だろうと考えています。法令化を求めるとすると、転落防止には役に立つけれども、完全ではなく、結局は足掛かりがあればそれでも転落してしまう。100%法令化で対策できるわけではない。かつ建物の値段が上がるかもしれない。そうすると、それを国民が受け入れるかという問題でありますので、そこについて私たちが判断してしまうのはいきすぎだろうということで、今のところ、法令化まで求めるのは、私たちの責任でできることではない。
とはいえ、何かやったほうがいいには決まっている。これがなかった結果として転落しているとみられる事例もあるので、任意基準ではあるけれども、事業者に対して、できるだけそういったことに十分に配慮してほしいというような周知、あるいは例えば補助金です。補助金のメリットがあるのは事業者というのか、あるいは住まわれる方かもしれません。補助金事業を進めていただくことが一つの方策になるだろう。
最終的には鍵かな。先ほど申し上げたように、窓を開けてしまうと、そこから先は事故を防ぎようがないので、保護者が見張っているしかないということになります。上乗せのガイドラインをできるだけ頑張りましょう、鍵も取り付けやすいものを開発して付けてもらいましょうというだけで対策として100%かというと、決してそんなことはない。窓を開けてしまえば終わり、鍵を解除できれば終わりということでありますので、そういう状況であるということをお伝えするしかないのではないか。それ以外の方策はないのではないかと考えているところであります。
夏頃のまとめを意識しておりますが結構忙しいです。もう4月で、5月でほぼ決まってしまわなければ夏に間に合いませんので、かなり急ピッチでやっております。
本日取り上げたもう一つが、「スポーツジム等におけるパーソナルトレーニングによる事故及び健康被害」の審議です。
今回は幾つか具体的な事案についての検討などを行いました。それに基づいて報告書の骨子等について事務局の案を示していただき議論しました。今日はいろいろな意見が出たところでとどまっておりますので、これ以上の詳細は差し控えさせていただきます。
最後に、各部会の報告ですが、3月の事故調査第一部会では「住宅の窓及びベランダからの子どもの転落事故」、第二部会では「スポーツジム等におけるパーソナルトレーニングによる事故及び健康被害」の審議及び「トランポリンパーク等での事故」のフォローアップの審議を行ったということでございます。
今日は、一葉をもう一つ決定いたしました。これは16号、先ほどの17号の1個前になりますけれども、エッセンシャルオイルです。これを皮膚に塗布した後、皮膚障害が発症したという事故が散見されていますということで、何に気を付けるかということを端的に記したものです。1内容確認。何が入っているのかの記載が商品にあるかどうか、怪しげなものもありますので、まず内容を確認する。2薄めてください。原液を使うなんてもってのほかです。3光毒性というものもある。紫外線に当たるだけで皮膚にダメージを与える成分を光毒性と呼びますが、こういったものがありますので、その場合は紫外線に当たらないように、窓から光が入ってきますので、その点に気を付けてください。以上の3点に集約して、気になる場合は医療機関を受診してくださいということで、軽く見ないでくださいといったことを書いたものであります。
本日の委員会の審議は以上です。
質疑応答
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問
朝日新聞の大村です。
一葉の転落事故のほうでお伺いしたいのですけれども、裏面のほうで、子どもの窓やベランダからの転落事故の大半で、足掛かりと呼ばれるものが確認されていますということで記事に書かれているのです。この大半というのはどれくらいの割合なのか、できれば分かっているだけでも、何か具体的な数字があるとありがたいのです。
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答
(中川委員長)
これは事務局で分かりますか。
(事務局)
報告書の公表がまだでございますので、詳細についての説明は差し控えさせていただきたいと思っております。ただ、大半というところでございます。 - 問 半数以上とか、何か目安があると言いやすいのですけれども、大半というのは非常に漠とした言葉なので。
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答
(事務局)
漠としたところしか言えないというのが現段階で、まだ報告書を公表していない段階ですので、件数といったものはなかなか言いがたいところがあります。
(中川委員長)
数があったほうがインパクトがあるということですよね。 - 問 せめて過半数とか、少なくとも過半数とか、そういう言い方では駄目ですか。
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答
(中川委員長)
半分以上かどうかというのは数えていましたか。
(事務局)
件数のカウント自体の作業を進めておりますが、ダブルチェックなど、まだ正確なところができていないというところではあるので、その点でなかなか申し上げにくいところもあります。
(中川委員長)
そうすると申し訳ないですけれども、「大半」という表現でいけないでしょうか。読者のイメージ的に「大半」というとほとんどではないかと感じる人が多いかな。まだ責任を持って言えないという事務局の気持ちも分かりますので、「大半」という言葉でおっしゃるとおり、半分ちょっとかなみたいな、私はそう感じるところですけれども、ほとんど、8~9割というイメージもあるのです。それはそういう形で読者の想像を膨らませていただくというのはどうでしょう。8割くらいかな、私はそういう印象を持っているのですが、いずれにせよ数値化できないので、「大半」という言葉を現状では利用していただく。夏を待っていただく。
ないしは、もし数字が必要ならば、例えば来月、再来月、報告書でそこまでまとまるようであれば言えるかもしれません。それのほうがいいですか。今、急に言われて、後で訂正というのは非常に格好悪いので、取りあえず来月。 - 問 九州でも先日事故が起きていて、後を絶たないので、危険な状態だということはあれなので、それにインパクトを持たせるために、リアルな情報でないと響かないと思うので御検討いただけたらと思います。
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答
(中川委員長)
分かりました。我々も忘れないようにします。 -
問
NHKの佐々木です。
今、大村さんが聞かれたところと同じなのですけれども、この大半というところの数字は、前のページにある東京消防庁の事故の件数のうちの大半ということですか。
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答
(中川委員長)
私の理解では、我々が把握している全事故ということなので、東京都には限らないというところです。 -
問
分かりました。ありがとうございます。
あと、今日の検討とかでも、どういう再発防止が必要かというところで、最終的に鍵をかけるみたいな話になったかと思います。これまで検討されてきた方向性みたいなものは変わらないということでよろしいですか。
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答
(中川委員長)
今日の議論の中で、まさに八藤後先生が書かれている「親の責任ではない」というのが出発点です。この「親の責任ではない」という言葉をどう捉えるか。先ほどの鍵は結局親が取り付けたり操作したりするしかないのですけれども、親だけの責任ではないというのは、親も含むけれども、みんなでやらなくてはしょうがない。そのみんなというのは事業者も入ってくる。事業者は建築基準法だけ守っていればいいわけではない。居住者の全てではないにしても、子どもがいる世帯はいるので、それに対する対応がハード的にできていることが望ましいですよねという問いかけなのです。
記者の皆さんに問題視してほしいのは、子どもの転落を防止することの法令化を我々はなぜ諦めたかということなのです。みんなが納得しますかという話なのです。納得すべきかどうかというのを我々が決められる問題ではないと思います。
事故の原因は分かりましたけれども、対策として、では、値段がすごく上がるかもしれない、建築基準法にこういった転落の追加の基準を義務として全てのマンションに求める。子どもがいるマンションは特定できません。そこで全てのマンションに追加の基準を守らせよということを、国民として求めるならば、それは是非やるべきだと思いますが、ただ、恐らく反対はあるだろう。子どもはすぐに大きくなりますし、もっと安く買えたということもあるかもしれない。ということなので、そこは私たちの手に余る国民の選択の問題ではないかというわけです。 ニューヨーク市の事例を以前にお話ししました。ニューヨーク市も最初は任意でやっていた。ニューヨーク市だけの個別事情があったのかもしれないのですけれども、最終的に10年以上の時間をかけて法令化したのです。この問題はそういう一足飛びにいかないところがありまして、ニューヨーク市以外ではそういうことをやっているのを聞かない。
先般、私はヨーロッパに行ってきましたけれども、アパートを借りていたので、自分が泊まっているアパートの窓を調べてみました。上しか開かないようにも、横に全開もできる窓でした。ただこの切り換えは大人でなくてはできない。ただ、これが全部の建物でそうなっているかというと、付近を見回すとそうではない。古い建物にはそういう窓はついてなさそうでした。なかなか法令化というのは難しいのかなと感じております。
そこのところ、国民として子どもをどう守るかということ、それは事業者も含めてなのですけれども、法令化を避けるのであれば、任意ではあるけれども、意識を高く持ってやってほしい。事業者のほうはできるだけ任意基準に沿った形で、値段とどう折り合うかということです。それから、親御さんのほうも鍵を付けるのは自分でしかできない。それから、できるだけ足掛かりとなる物を窓やベランダに持っていけないようにする。これは建物の問題ではありません。そういった形でしか防ぎようがないものなのではないかという、私たちとしてはちょっと苦々しい結論です。
このような結論でよいのかどうかの議論をしていただくことで、この問題についての意識が広がっていくのではないか。賛成・反対、両方あると思うのですけれども、賛成・反対を考えることによって、大前提として転落するものだという認識が広がっていくのではないかと思います。そこは我々を批判していただいて全然構いません。腰抜けだと言って構わないので、むしろ議論をしていただくことがとても重要だと思います。ですので、報告書が出来上がるよりもかなり早めにこういったことを記者の皆さんにお伝えしているわけなのです。いろいろと議論のきっかけをつかんでいただければとてもありがたいです。長くなりました。 -
答
(事務局)
1点、お詫びと訂正をお願いします。
先ほど委員長から一葉のNo16について御紹介がありましたが、私の認識不足で間違ったお伝え方をしてしまいまして、光毒性のところは「ひかりどくせい」と呼ぶようです。申し訳ございません。お詫びして訂正いたします。