記者会見要旨
(2021年4月22日(木) 12:30~12:50 於:消費者庁12階 全省庁共用1214特別会議室)
発言要旨
(中川委員長)
では、本日の会議の概要として2点、お話をしたいと思います。
1点目は、神奈川県内の幼稚園で発生したプール事故のフォローアップとして、動画を公表いたします。これは今日中の公表を予定しています。
この動画は、昨年12月の調査委員会で決定されました発信力の強化の考え方に沿ったものでして、調査委員会から直接消費者の皆様に対して発信する活動の一環です。
この基になりましたのは、2014年6月に公表した事故等原因調査報告書です。神奈川県内の幼稚園児のプール活動中の死亡事故を受けたものです。この報告書では、内閣府、文部科学省、厚生労働省に対して意見具申をいたしました。
報告書をまとめる過程で、幼児のプール遊びについてどのような注意をする必要があるのかについて、私たちが得た知識がありますので、ノウハウの一番重要な部分を消費者安全調査委員会から直接皆さま向けに発表したものです。
一言で言うと、監視の仕方です。監視に本当に専念してくださいということです。これは、常識的な考え方の間違いを指摘したものです。幼稚園であれ保育所であれ、先生方はみんな一生懸命やろうとされているので、監視をしながら、ついほかの作業もしてしまう。つまり子供の面倒も見てしまう。これが監視の死角を招きます。そのため監視役の人は監視しかしないことが何より大切です。いい人になっていろいろなことを手伝うのではなくて、むしろ監視しかしないという役割分担をすることこそが常識であることを、幼稚園、保育所等の関係者の皆様、それから保護者の皆様にも知っていただきたいという趣旨で動画をつくりました。20分足らず、18分ぐらいだったと思いますけれども、それぐらいの長さです。
まずは監視に専念することがいかに重要かということ。その上で監視のポイント、何を見るのかについてもこの動画では説明しています。監視のポイントもなかなか教わる機会がないと思います。どこを見るのか、例えば静かに溺れることもある、溺れるときは騒いでいるだけではないということも含めて、常識的には死角となるようなところに焦点を当てて説明をしております。
ぜひ、保育所、幼稚園、認定こども園の保育者だけではなくて、保護者にも見ていただきたいと思います。消費者庁のYouTubeにも掲載いたしますので、ぜひご覧いただきたいと思っております。
以上が1点目です。
2点目は、前回行った水上設置遊具による溺水事故のフォローアップの続きです。前回は、経済産業省の取組に対する評価を取りまとめずに、今回、改めてまとめることにいたしました。
先月公開ヒアリングを行った経済産業省からの報告のあった取組結果について、次のように評価をすることを本日決定いたしました。
3点にわたります。
まず1点目ですが、私たちの報告書の意見といたしまして、事故の再発を防止するための体制の構築をしてほしいということを申し上げました。
それに対して、先月、経済産業省から、「水上設置遊具の安全に関するガイドライン」をつくった上で、関連する業者、事業者団体に周知をした。今後は地方公共団体にも周知をしていきたい、そのような御発言がございました。
これについて、確かに協会の存在は分かるのですけれども、そこにいる事業者が誰で、それから協会にいない事業者に対してはどうするのかといった具体的な指導体制についてなお確認を求めたいと思っております。
2点目ですが、意見の中で、設計の安全基準、すなわち水上施設に潜り込んだ人が浮かび上がったけれどもそのまま水上施設の下で溺れてしまうというのは設計がおかしいのではないかということを指摘しました。それから見張り、どのように見張っていくのかというサービスの部分も指摘し、製品安全の部分とサービスの部分に分けて意見を出しました。
それに対して、経済産業省からはガイドラインをつくりましたということであったのですが、そのガイドラインを拝見いたしますと、まずリスクを軽減するための設計に関するガイドライン、つまり安全設計に関する指針が示されていないと判断をいたしました。ですので、ここは引き続き意見のとおりやっていただきたいという評価です。
他方、サービスの部分、見張りという部分については一定程度は書かれております。ですが、問題はその実効性です。例えばどのように訓練するのか。先ほどビデオの話をいたしましたけれども、助けると言っても、水上施設の下に潜り込んだ人をそう簡単に助けられるのか。どのように見張り、どのように助けるのか、その訓練をどうするのかということも含めると、具体的にどのようにサービス面でのガイドラインに書かれていることを実行できるのかも、今後の課題として、さらにお尋ねしたい、あるいは取組を求めてまいりたい、としました。これが2点目の評価です。
評価の3点目でございますが、報告書の意見では、応急的な再発防止策、新たな設計の製品が出てくるまでの間、取りあえずどうするかにつき、先ほど2点目として申しましたように、ガイドラインでは設計の安全基準が全くないということですので、その意味では製品自体はまだ危険なままである。そして、見張り等のサービスについても、具体的にそれが実効的にできるのかはよくまだ分かりませんので、引き続き今年も応急的な再発防止策の実施についてはやっていただくことになる。今年も実施してくださいと求める。つまり、昨年で済んだわけではないという評価にいたしました。
以上3点が、経済産業省の取組結果に対する評価ということで今日決定をし、安全委員会の事務局から経済産業省に対してお伝えすることです。
この水上設置遊具なのですけれども、たまたま昨年も今年も新型コロナの関係であまり人々が動いていないため稼働していないようですが、もし新型コロナがなければこれは非常に人気のエンターテインメントになると思います。
ですので、まさに今のうちに経済産業省におかれましてガイドラインをより徹底したものにしていただいて、来年の夏に間に合うようにしていただければと思っております。
以上2点が、本日お話しできることのメインです。
その他、自動ドアによる事故の報告書案の検討、申出事案の検討などを行いました。
今日の会議は以上です。
続いて、部会の動きについて、委員長代理からお願いいたします。
(持丸委員長代理)
今日は遠隔から失礼をいたします。委員長代理の持丸でございます。
今月、開催いたしました部会の議論を紹介したいと思います。
製品等事故調査部会では、歩行型ロータリー除雪機による事故のフォローアップ、それから新規選定事案候補について審議を行いました。
私が部会長を務めますサービス等事故調査部会では、自動ドアによる事故の報告書案の審議、それから幼稚園で発生したプール事故のフォローアップ動画について。水上設置遊具における溺水事故のフォローアップへの検討。さらに、子供による医薬品誤飲事故のフォローアップについて審議を行いました。
私からの報告は以上になります。
質疑応答
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問
共同通信のササキと申します。
動画の件なのですけれども、動画の対象というか、主には幼稚園とか保育園とか、教育、保育施設でのプールの話だと思うのですけれども、さっき水上設置遊具のお話でもちょっとありましたけれども、コロナ禍ということもあって御自宅で空気を入れるタイプを御自宅で使うお子さんも結構多いかと思うのですけれども、そういうときにもこういったような注意点は準用できるのかなと思うのですけれども、その辺りはいかがですか。
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答
(中川委員長)
先ほど申しましたように、幼稚園とか保育所だけではなくて保護者の方にも見ていただきたいということで、YouTubeに掲載をいたしております。
確かに、家で水遊びをする分には目の前で子供が1人か2人なので、多分大丈夫だとは思うのですけれども、とはいってもちょっと目を離すとか、本当に一瞬で非常に不幸なことが起きるということですので、保護者にも見ていただきたいと思います。その意味では、全ての方ということになろうかと思います。 -
問
読売新聞のイシイと申します。
今の点をもう少し具体的にお聞きしたいのですけれども、つまり子供は1人か2人だから例えば死角が出るとか、1人を見ている間に2人目が何かあってもそこは分かると思うのですけれども、今、言っていた目を離すこともある。ここについては保護者へのメッセージとしては、つまり子供が家庭用のビニールプールで遊んでいるときは、そのときは子供から目を離さないと。ここは事故調としてもしっかり伝えていきたいということなのでしょうか。
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答
(中川委員長)
おっしゃるとおりで、例えばお昼ご飯の準備をしながら子供を遊ばせておこうとすると危ないということなのです。何かのついでに一人で全部やろうと思うことはよくあると思います。しかし、本当にぺたっと監視の目をつけておかなければいけないということなのです。
そこくらい大丈夫じゃないかというのが恐らく今ある常識的な感覚だと思うのですけれども、そうではないということをお伝えするビデオです。
以前に別の動画として、幼児同乗自転車についてのものがございました。あれも意外なところでいろいろな事故が起きていることを示したものでした。消費者に危険を伝えるには、安全に関する常識的感覚を変えていただくことが必要だと我々は考えています。素人考えで、これでいいのではないかと思っているところが、そうではないという知識をいかに共有していただくかということです。
変な喩えかもしれませんが、我々日本ではマスクを当然のようにやりますが、国によってはどうもそうではない。これも、日本では普段から少し調子が悪いとマスクをするのは当然だという、別に誰が教えたわけではないですけれども、常識的な知識があるわけです。そういう知識をいかに私たちから発信できるかというのが、事故調としての発信力強化の非常に重要なことかなと思います。
ですので、省庁に意見をするだけではなく、安全調査委員会も自ら、できるだけ分かりやすい形で情報発信をやっていこうとわけです。
余談ですけれども、本日の会議で、ビデオとは別の話題のときでしたが、委員の1名から、消費者の皆さんに当事者意識を持ってもらえるような発信の仕方、当事者意識を喚起するような発信の仕方をしないといけないという言葉がありました。とてもいい言葉だと思うのですけれども、これは私自身の問題だと思うような発信の仕方を工夫していきたいと思います。
話を元に戻しますと、今回のターゲットは、プールに関して言うと保育所、幼稚園、認定こども園だけではなくて、保護者という意味で、結局子供を遊ばせている人は全員ということになります。 -
問
分かりました。ありがとうございました。
もう一点、今の発信力強化のところについてお聞きしたいのですけれども、もともと動画をつくるというのは昨年の夏に決定をしていて、つまり昨年末の発信力強化以前には動画をつくること自体は決まっていたと思うのですけれども、また一方で動画作成自体はこの間の電動アシスト自転車以前もなくはないという中で、今回、発信力の強化を受けて、以前だったらここまではしなかったけれども、今回ここまでやったのだというプラスアルファの部分というと、どういうところになるのでしょうか。YouTubeの発信のところでしょうか。
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答
(中川委員長)
プラスアルファは、恐らく、事務局全体の心構えが、当然こうした発信をする可能性を探るのだという方向に、12月に取りまとめた結果、明確になったということだと思います。
おっしゃていただいたとおり、前からこういう発信はやっていたのですが、そんなに積極的にやってきたわけではない。動画をつくる基になる情報は事故関係者から調査で得た情報ですので、そういう情報を自由に使って外部向けに再利用していいのかというところも、以前は議論がなかったわけではないです。
もちろん利用するにあたり事故関係者からも同意が必要なのですけれども、調査して報告書を出して対策をつくって省庁にやってもらうために使うだけではなくて、今後これは事故調から消費者に直接発信するように使うかもしれないことを常に考えながら行動していく、そういう意識が常に行き渡るようになったという意味では、12月の発信力強化でまとめたのは意味があったかと思います。
もともとあった素地をさらに強化したのに役だったということです。 - 問 分かりました。ありがとうございました。
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答
(持丸委員長代理)
持丸です。追加でよろしいでしょうか。
(持丸委員長代理)
保護者の方にもぜひ見ていただきたいというポイントですが、今、委員長からあったとおりなのですけれども、しっかり目を離さないでというのは以前も言っていたのですが、目を離さないやり方がこの動画の中には入っております。例えば御家庭でたらいみたいなプールを置いて楽しむのも結構なのですが、お母さんやお父さんが見ている場所と、プールの間に何かがあると死角ができてしまうのです。プールをどこへ設置するのかというのが一つのポイントになっているということです。
もう一つは、お子さんが1人ではなくて兄弟で遊んでいるときに、ふざけて沈めてしまったりすることがあります。これもこの動画の中とか、前回の死角の中に入っていたりしまして、そういうことがあり得るのだということをちゃんと知って、事前に注意をしておくとか、そういうような視点をぜひ見ていただきたい。
もう一つ、これは分からないのですが、本格的に保育園や幼稚園でしっかり注意をしてくださいと言った場合に、人手が足りないことが起きるかもしれず、その場合に保護者の方々にも、もちろん保育園が主体的にやるのですけれども、ぜひ見守りで協力してくださいと。そうでないと、子供にプール遊びさせることができませんということもあり得るかもしれません。
そういう意味では、預けた先に任せきりではなくて、ぜひ見ていただいて、こんな見方をしなければいけないのだなと知っていただくのがいいかなと思っております。
以上です。 -
問
NHKのアキヤマです。
ちょっと話題が変わるのですけれども、先日駐車場で作業されている作業員の方が二酸化炭素で亡くなる事故がありまして、必ずしも消費者が被害に遭った事故ではなくて、どちらかというと労働災害に近いとは思うのですけれども、従前から事故調で扱っている駐車場というテーマでの死亡事故というところで広く捉えると、関心が高い話題ではあるのかなと受け止めておりまして、今後、そういう二酸化炭素の消火設備に関しても検討されるとかというのは今、委員長としてはどのようにお感じになっていらっしゃいますでしょうか。
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答
(中川委員長)
これは委員会では検討していませんが、まずあの事故に関して言うと、消費者庁からは職員は派遣していないと聞いております。
作業員の事故で、一般の消費者が立ち入らないところでの事故あろうという前提。なのですが、ただ誤作動で消火設備が動いたという事故でした。そして二酸化炭素放出型ということです。
もし、二酸化炭素放出型のタイプが作業員しか入らないところにしか設置しては駄目という規制があるのであれば、多分こちらとしてはそれ以上何もすることはないのですが、そんな規制がないかもしれない。もしなかったならば一般の、例えば平面の駐車場で二酸化炭素放出タイプが消火設備で使われているのであれば、消費者事故は当然起きうる話です。そのため、そこら辺の規制がどうなっているか、消防庁に問合せをしているところです。
そのお答えを踏まえて、消費者事故にもなり得るのであれば、これは当然こちらとしては予防的に検討しておく必要があるということです。
ちなみに、こういう立駐のものは消費者事故のデータバンクには載っていないと聞いています。やはり、これは消費者事故ではないと切り分けたのだと思いますが、具体の事故としてはそうだったかもしれないけれども、消費者事故に広がる可能性はありますので、そこを今、見てもらっているところです。