記者会見要旨
(2021年2月18日(木) 16:35~17:00 於:消費者庁12階 全省庁共用1208特別会議室)
発言要旨
(中川委員長)
お待たせいたしました。本日の会議の概要についてお話をいたします。
本日の調査委員会では、先ほど公開で審議を行ったとおり、マンションの機械式立体駐車場で発生した事故の国交省に対する追加意見を取りまとめました。
この事故については、以前、2014年に設備の安全設計の面からの報告書を取りまとめ、意見を具申したところですが、その後、フォローアップをしておりました。その中で、2018年12月以降にこの立体駐車場を使用中に自動車が落下したという事故の申出3件がありました。これは物損が2件、そして、捻挫が1件という合計3件でありますけれども、これについて検討していたところ、さらに安全設計以外に保守点検についても意見を具申するべきではないかということになりました。
それで今回取りまとめたわけですが、柱は2つありまして、1つはワイヤロープの認証基準が不十分なところがあるのではないかということです。いわゆる静荷重だけ考えている認証基準なのですけれども、設備動作が考慮されていないということで、その点も考慮した認証基準にしていただくということがまず必要である。これが1点目です。
もう一点は、ワイヤロープも含みますが、様々な定期交換部品があります。定期交換が推奨されているのですが、交換が適切にされていない。今回であれば、推奨時期を大幅に超えて継続使用されているものがありました。そこで、当たり前のことではあるのですが、しかし最も有効に事故を防ぐ方法として、所有者をはじめとする関係者,すなわち所有者及び管理事業者、保守点検事業者において、そのリスクをちゃんと認識していただく。ここまで来たらこんなに危ないことになるのだというリスクを認識していただいて定期交換をしていただくための施策、工夫をしていただくということをお願いしています。これが2点目です。
以上が、本日のマンションにおける機械式立体駐車場で発生した事故についての追加意見の具申です。
ちなみに、この意見具申は、昨年12月に決定いたしました発信力の強化に向けた考え方のうちでの「意見具申権限の活用」であり、報告書を取りまとめずに簡易な根拠資料で意見具申に至るというものです。それの第一号ということになります。
次に、本日の調査委員会では、学校の施設または物品により発生した事故等に係る事故等原因調査についての経過報告を取りまとめました。
これは調査を開始した令和2年2月から1年以内に調査を完了することが困難であるということで経過報告を取りまとめたものです。これも今回公表することになります。
中身については既にお話をしておりますとおり、あまり調査が進められておりません。コロナ禍も一つの大きな原因でございますので、今日は特に内容についてはお話をすることは省略をさせていただきます。
そのほか、自動ドアによる事故の報告書案、新規選定事案候補、申出事案などについて審議を行いました。
続いて、部会の動きについて委員長代理からお願いいたします。
(持丸委員長代理)
遠隔から失礼いたします。委員長代理の持丸でございます。
今月、開催した部会の議論を御紹介いたします。
製品等事故調査部会では、ハンドル型電動車椅子を使用中の事故のフォローアップ、それから、新規選定候補事案の事前調査に関する審議を行いました。
私が部会長を務めますサービス等事故調査部会では、自動ドアによる事故の報告書案について審議を行いました。
私からの報告は以上になります。
質疑応答
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問
読売新聞のイシイと申します。
本日、フォローアップを出したマンションの機械式立体駐車場の件なのですけれども、発信力強化で意見具申権限を使った、調査を経ないで意見を出すという第1号ということですけれども、今回、改めてフォローアップを出したことによって、実際に作業等もかなり簡略化されて、今後のまたいろいろな発信ができるという期待もあると思うのですけれども、今回1発目をやってみて、一つの何か手応え等、また、課題等があれば教えてください。
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答
(中川委員長)
まず、どのぐらい早くなったかということなのですが、単純に何回審議したかで考えますと、半分です。機械式立体駐車場については、2014年の報告書は10回審議がかかりました。今回は5回です。ただ、5回といっても、前回お話ししたように、本当は1月に出す予定でしたので、4回で済むはずだったのです。
そもそも、これを初めに検討し始めたときは報告書をまとめずに意見具申をするということができないのだろうかということを委員会で言い始めており,それが最初の2回ぐらいです。その後、昨年12月に発信力強化の文書をまとめましたので、それらの回数を除くと,実質的に今後は恐らく3回ぐらいでもできるのではないかと思っています。というわけで、かなりのスピードアップができるのではないか。
もう一つ、このように早く意見具申をすることの意義なのですけれども、先ほど申し上げましたように、我々はいろいろな事故を見ておりまして、今日も議論になったのですが、所有者においてなすべきことをなすということが実は一番早くて一番効果的である。別に難しいことをするわけではないのですけれども、どうしても定期交換にしても後回しになってしまう。それは定期交換しないことによってどういう事故が起きるかという情報をもっていないので、ついつい大丈夫かなと思ってしまう。これはどうしても、みんなにある心理ではあるのですけれども、こういう様々な事故について実際の事故の事例とともに皆様にお示しすることによって、物を持っている人、所有者自体が安全意識について情報を得て行動してもらうという文化に持っていくような一つのきっかけになるかなと思っております。こういうことを数多く出していくことが重要かなと思っております。
もし、委員長代理から何かございましたら、お願いします。
(持丸委員長代理)
ニッチな報告書を出すのと併せて、今回、特にこれは以前出したものについての新たに発生した事故に関する追加ですので、すごくシャープに絞れているということもあって、こういう新しいパスができてきたのは何よりで、世の中で事故が増えてきている、あるいは減り切っていないことについて、いち早く皆さんに情報をお伝えして対策を考えていただけるようになっていくのはいいのではないかと思っております。
要点を絞って議論しましたので、別に議論がおろそかになっているということではなくて、シャープに議論が進められたかなと思っております。
私からは以上です。 - 問 例えば、今後の課題がもしあれば教えてください。こういうところがなかなか難しかったとか、今後はこうしたらもっとうまくいくのではないかとか、あればお願いします。
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答
(中川委員長)
今はまだ1回目ですから、課題というよりもどんどんやっていこうということぐらいしか感想はないのです。報告書をまとめずに意見を出すということについての課題ということであれば、今のところは特に課題意識は持っておりません。
それとは別に、これは報告書案は作りませんが、やはり意見ですので、フォローアップはしていきます。したがって、フォローアップが言わば本番ということになりまして、先ほど申しましたように、今回、所有者に対する意識づけということを工夫していただきたいということをお願いしたわけですけれども、それは単に通知したということでは駄目です。どういうふうにすれば所有者に意識を持っていただけるのかの工夫、消費者に届くような施策というものを考えていただきたいということですので、フォローアップのほうが我々としても大変になってくるし、意見を言われたほうも大変だろうという意味での課題はあると思っております。
以上です。
(持丸委員長代理)
持丸です。
今回1件目なのですが、これから先を考えると今回の事案は、さっきも言いましたように、最初、もともとは我々が調査して、追加で何か起きて、シャープに何かやりましょう。そうではないような事例が発生したときに、調べてみたら複雑だったというケースがあって、その場合は厄介でもしっかりした調査をしなければならないという切替えが必要になってきます。
もしかしたら逆があるかもしれなくて、結構複雑な事案だと思ってやってみたら、要するにここの規制をやればどうということはないのではないかとなったときは、まだないですけれども、逆を返すと、調査を少し縮めて、早めにこういう簡易な報告書を出すという、少し柔軟にその辺りがこれからできていくといいかなと。課題認識というよりも、これを基盤にしてそんなことを感じております。 -
問
共同通信のクニエダです。
国交省の立体駐車場の重大事故情報を見ますと、2007年以降44件の人身事故が起きていて、中身を見ますと、開口部からの落下とか既存不適格というのですか。2014年に報告書が出されていますけれども、それ以降も結構事故が多発していて、今回、保守点検の部分で非常に良い意見だと思うのですが、こういった部分についても今後何か意見をまとめたりとか、そういったことはあるのでしょうか。
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答
(中川委員長)
お答えいたします。
国土交通省の資料を拝見いたしました。私の理解するところでは、そこで起きている生命身体事故というのは、2014年の我々の報告書で求めた安全設計がされていないものについて起きた事故です。ですから、まさに我々はそういう事故に対して、設計面では人と、動くものをちゃんと区別しましょう、そういう設計にしましょうということを言ったわけです。それがされていないので、ある意味、事故が起こるべくして起きているということだろうと思います。
そうしますと、我々の報告書に沿って設計されたものであれば、つまり新しいものであれば事故は起きにくいはずで、もしそれで事故が起きたのであれば、我々は再度調査ということになるだろうと思います。何か報告書で見落としをした可能性が出てくるということになると思います。今のところはそういうものは出ていないと理解しておりますので、2014年の報告書について見直すということは考えておりません。それがまず一点です。
もう一点は、では、今ある安全設計がされていないものをどうするか。これは,消費者安全の世界では常に大問題で、我々が一番頭を悩ませて、先ほども言ったように結局、所有者にどうしてもらうかということなのです。そこを中期的課題として考えているところです。ですので、そういう意味での問題意識は非常に強く、極めて強く持っております。ただ、妙案がないので、すぐに意見を出すわけではありませんが、しかし、考えているところです。
委員長がどう考えているかという問いに対しては、そのようにお答えしたいと思います。 - 問 2014年の報告書に基づいて安全設計されていないものというのは、したがって、それ以前にできたものということでいいのですか。
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答
(中川委員長)
はい。それ以前にできたものだと考えております。つまり、国交省が対応していただいた。それに業界が従っていないということではなくて、それ以前からあるものだと理解しております。逆に言うと、もし、国交省が新しい施策を打ち出したのに業界が従っていないということがあるようであれば、それはフォローアップで問題にしなければいけないことだと思います。 -
問
朝日新聞のカネタと申します。
今、所有者への意識づけというキーワードが出ていたかと思うのですけれども、今回、この立体駐車場に関して言いますと、例えば分譲マンションでしたらマンションの管理組合とか、そういう意思決定する機関というか、組織があると思うのですが、そういう方々に改めて注意喚起のメッセージなどがありましたらよろしくお願いします。
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答
(中川委員長)
これは、まず製造者からマンション管理組合等にどういう情報が伝わっていくか。それがあまり伝わっていないのではないかと思っておりますので、まずは立体駐車場の製造業者等からマンション管理組合等に対して,どのくらい簡単に事故が起きてしまうのか、車が破壊されるとそこに人が乗っていたら生命・身体事故になりますなどというリスク情報を共有していただきます。例えば外壁などは多くのマンションは計画を立てて保全していると思うのですが、それと同じような問題として、資産価値を守るために立体駐車場についてもきちんと定期交換をしましょうという意識が普通のものとして定着することを願っております。
(持丸委員長代理)
持丸です。
私からも補足をしますと、例えは良くないのですけれども、部品に関してある種の年限とかも決まっているわけです。そういうものに対して、保守交換をしてくださいと。ただ、これは法律で定まっているとか、そういうことではないわけです。
専門的には正常性バイアスというのですが、「いや、でも、うちは大丈夫だろう」という、皆さんが賞味期限が切れていたとか消費期限が切れていても「大丈夫、大丈夫。1日ぐらいどうってことないから」というのが5年でも10年でもどうってことないからみたいになってしまうと非常に具合が悪くて、昨日は起きないのですけれども今日は起きるかもしれないというのがこの手のことなのです。
やはりそういうところの、今ありましたリスクを、中間に入っている事業者の方々からも的確に伝えていただいて共有していく安全文化なのですけれども、そういうものをやはりつくっていかないと、簡単に買い換えるものではないので、なかなか入替えが進まないかなという気は我々も強く思っているところではあります。 -
問
NHKのアキヤマです。ありがとうございます。
今のと同じ流れにはなるのかもしれないのですけれども、報告書のときも、安全文化の醸成ではないですけれども、継続的に安全性を高めていくというところは触れられていると理解はしていたのですけれども、明確には今回指摘したようなところが報告書では説明し切れていなかったという意識をお持ちで今回、意見としてスピーディーに出されたということなのか。
やはりこうやってどんどん事故が起きれば、さらに高い安全性のために言い続けていくという気概というか、思いみたいなところを改めて委員長に伺えたらと思うのですけれども、これは第一歩ではあるとは思うのですけれども、初めてのことではなくてずっと蓄積されてきた事故調の思いみたいなものであって、あくまでも1号であるけれども初めてではないという思いなどはお持ちなのか。その辺りを聞かせていただけないでしょうか。
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答
(中川委員長)
まず、2014年の報告書と今回の関係で申しますと、2014年の場合はまさにこれは製造業者に対してのメッセージでしたので、安全文化と言っても、それはプロに対する安全文化、安全について既に意識をお持ちの方に対してさらにこういう視点も持ってくださいというメッセージでした。要するに、安全でないものがあった場合、使用者が不注意であったというものではなくて、まず設計者、作るほうで対応することから考えるべきだという発想からのものです。
それに対して、今回出したものは、とはいえ、所有する側もやるべきことはありますねという意味での安全文化です。そういう意味で、前回の報告書に足りなかいところがあったというわけではなく、前回の報告書で問題にしていなかったこと、その射程外にあったことについて、メーカーではなく、所有しているマンション管理組合等において,簡単にできるのに、やっていないことがあるということに申出事案で気づいたので,意見を追加したということになります。これが1点目です。
2点目ですが、安全文化と言いますか、所有者についてもう少し意識づけをしてほしいというのは最近、この委員会が何度も言い続けていることではないかと思います。一番分かりやすいのは太陽光発電のケースです。あれは法律で設置者が事業者であると明確に書いてあるので、消費者ではなくて事業者としてちゃんと責任を持って安全にしてくださいということを言いやすかったのです。他方,今日の立体駐車場だと、確かに購入した側という立場に立てば所有者は消費者なのですけれども、しかし、それを設置していろいろな人が使っている以上は、事業者とは言いませんが、重い責任は負っているのではないか。そうすると,製造者だけではなくて、今、持っている人たちにも意識をしていただかないと、しかも非常に当たり前のことをするだけでこれだけ効果が違うのではないか、すごく大きく違うのではないかということを伝えたいということです。
前回の自転車もそうですね。結局、自転車のオーナーさんたちが少し気をつければこれだけ違うのだということですので、やはり全体として安全を実現しようとしていくと、メーカーももちろんなのですが、それを使用する側もそれなりに、つまりあくまで簡単なことに限られるにしても、意識を持っていただくことが必要です。このように両方から攻めていくという意味で、今までさんざん委員会として発言していることの繰り返し。これを立体駐車場の場合でも言っているということになろうかと思います。
以上です。
(持丸委員長代理)
持丸です。
ちょっと違う観点から申しますと、基本的には委員長の言うとおりなのですけれども、立体駐車場を前回出したときの一番大きな観点というのは、我々、ほかに事例があるかな。
業務用に使われていたものが民間用に使われたケースが典型例なのです。何を言いたいかと言うと、つまり、普通は倉庫管理者という人がいて、その人が立体駐車場を操作して出し入れしていた。今でも大きなところはそうですね。それが自分でやる。昔、エレベーターはエレベーターを運転する人がいて、自分でやらなかったのですが、それが自分でやるようになった。それに伴って、教育を受けた人がしっかり安全管理をするように設計されていたものをあまり考えずに民生に持ってきているような安全管理上の問題が本質的にあったのです。
まずはそれをしっかり直さないことには、これからどんどん民生用が増えていくのに、一番根元の安全管理設計がプロがやるようなことを継承し過ぎているということで、普通の人が両手に傘を持ってやっても安全になるように、ちゃんと隔離するようにという基本的なところを入れたというのが前回です。そのときも既存不適格の話は既に議論がされておりまして、でも、そんな隔離ができないようなシチュエーションは、例えばこんなアイデアでもという中の一つに継続的な保守も必要ですということを入れておりました。
いろいろガイドラインが変わって、新規の中でそういうものが減ったら、今度はそのとき抑え切れなかった保守の部分の事案が、前からあったのですけれども、ほかのものが減ったので相対的に目立ってきたので、そこをさらに強調して減らすというのが今回のメッセージと理解していただくのがいいかと思います。 - 問 大変分かりやすく、ありがとうございました。
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答
どうもありがとうございました。失礼します。