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記者会見要旨
(2020年10月8日(木) 12:10~12:30 於:消費者庁12階 全省庁共用1208特別会議室)

発言要旨

(中川委員長)
第5期消費者安全調査委員会の委員長を務めることになりました、中川丈久でございます。
私は、まず平成22年、消費者庁の事故調査機関の在り方に関する検討会において委員を務めさせていただきました。ほぼ10年前です。
その後、平成24年に創設されました調査委員会の第1期及び第2期の委員を務めさせていただきました。畑村委員長が初代委員長でございまして、畑村イズムというものを目の前で拝見いたしました。そのときは9つの事案について再発防止策の検討、関係行政機関に対する意見の在り方について議論に参加させていただきました。
そして、この9月までの第4期におきまして委員長を務めさせていただきました。3つの事案について報告書の取りまとめに携わりました。特にとしまえんの水上設置遊具による溺水事故の件では、迅速な対応が必要ということを考えまして、調査委員会一丸となって速やかな公表をすることができたと考えております。
これらの経験から、これからの2年間、第4期までの実績を引き継ぎつつ、創設時からの環境の変化等もございますし、調査委員会がこれまでいろいろ気づいてきた課題等もございますので、委員の方々とともに考えながら、事故の未然防止、拡大防止、被害の軽減のために様々な作業をしていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
本日の会議の内容ですが、まずは消費者安全法第21条第3項に基づきまして、私から持丸委員を委員長代理として指名し、御了解をいただきました。
また、本日は新しい委員にお入りいただいての初めての会合でしたので、委員の方々にこれまでの経験、本委員会での抱負などもお一人ずつお話しいただきました。ここは公開をしていたところです。
その後、非公開ですが、これまでの審議状況について確認を行った後、今後の新規事案選定に関する議論を行いました。今日はまだ様々な意見を皆さんから伺った段階で、新規案件の選定には至っておりません。
私からは以上です。
今日は特に持丸さんからはないですか。

(持丸委員長代理)
ありません。

質疑応答

NHKのアキヤマです。
本日は大臣のものがあった関係で、私が出席できなくて大変恐縮なのですけれども、引き続きまた2年、中川委員長、持丸委員含めて引き継がれると。また、新しい委員の方が参加されてということだと思うのですけれども、改めて新しい体制で、最初の委員会の中での御挨拶でも中川委員長が情報発信の仕方なども含めて新しい形をとおっしゃっていましたが、新体制で特にやっていきたいことはどういったところかということを教えていただけないでしょうか。

(中川委員長)
委員会での挨拶とも重なりますけれども、2つお話をできるかなと思います。
1つは、今、社会にある事故のうち、どの辺りを攻めているのかをわかりやすく示せないかということです。例えば今、幼児同乗中の自転車事故について調査していますけれども、調査ですから対象を特定しなければいけないのですが、他方で個々の調査結果の発表を見ると,ばらばらに見えるのではないか。いろいろなものをつまみ食いしているように見えると思いますので、もう少しマッピングといいますか、安全調査委員会として社会の様々な事故の類型のうち、ここを今進めていて、次にここにいくのだと。幼児に関するもの、高齢者に関するもの、それから、みんなに関するもの。みんなに関するものも、モーターがあるものやそうでないもの、いろいろありますよね。それを攻めていっていて、幼児同乗中とあるけれども、実は自転車そのものについて考えているんだという感じで、より私たちの調査の背景にある問題関心も分かっていただくような説明の仕方をできないかと考えております。これが1点です。
もう一点は、今日、非公開の審議の中でもよく出てきたし、私からも申し上げたのですけれども、フルメニューの調査と委員の一人がおっしゃっていましたが、フルメニューではないタイプのこともやっていいのではないかということです。今まで本当に膨大な調査をして、シミュレーションもやって、リスク分析もやって、そして、5センチぐらいはありそうな報告書を作るというのが調査のやり方だったのですが、そこまでやらなくても、例えば原因はもう分かっている事故だけれども、誰も動かない。あるいは、業界で共有すればいい安全基準らしきものもある程度分かっているのに、やる事業者もいればやらない事業者もいる。それに対してもうちょっとプッシュできないかと。そういうものはフルメニューの調査には入らないのですが,しかしそれも我々の仕事としてやっていいのではないかという問題関心です。
いつも議論しているのですけれども、それをアウトプットするのがそもそも我々委員会の所管としてあるのかというところが法律的に分からなくて、今調整しているのです。もし、そこをたくさん出していくことになると、これはかなりの数、ふだんいっぱい議論していますので、それを報告書と呼ぶのかそうでないのか自体が法的に未整理なのですけれども、そういう形でアウトプットを増やしていけないかと思っております。今までフルメニューのものだけをアウトプットして出してきたのですが、それ以外にもたくさん問題意識をもって検討していますので、この期の課題として,それを何らかの形で出していくという方向にできないか努めようと考えております。

(持丸委員長代理)
冒頭申し上げたのですけれども、私からも、重複するかもしれませんが、2つ問題意識がありまして、1つは生活様式の変化ということです。コロナで生活様式が変化するというと、多分事故がすごく変わるのだろうと思っています。コロナとは関係ないですが、オフィスに入っているブラインドが家庭に入るという生活様式の変化が起きると、ベッドサイドにブラインドがあって、ブラインドの紐が子供の首にひっかかってしまうというオフィスでは絶対に起きない事故が起きる。これは過去にあったことです。同じように、生活様式が変化すると、今、我々が思いもよらなかった製品が組合せで使われたり、使用時間が長くなったり、いろいろな形で事故が顕在化してくるのではないかと思っておりまして、そこにきちんと目を光らせていきたいと思っているのが一つ。
もう一つは、同じ話なのですけれども、私は法律はよく分からないのですが、テレワークが進むと、労務事故と消費者事故の区別が微妙になってくるようなことが起きる。私の経験でいくと、前、ホームオフィスと呼ばれるところで、シュレッダーを使ったら子供が手を突っ込んでしまったと。これも、オフィスに子供はいないのですが、そういうことが起き得る。同じようなことが起こり得るのかなという気もしておりまして、その辺りも少し拡大した消費者事故として見ていかなくてはいけないかなと思っております。これが1点目です。
もう一点は、先ほど申し上げましたように、国際的な動きとして消費者事故調査ガイドラインというものの、つまり、事故調査のやり方そのものを国際標準に上げていこうという動きがありまして、ISOにPC、Project Committee の329というものが発足いたしました。これは日本主導でつくった新しい委員会で、私が国際議長を仰せつかっておりまして、これから結構な国の参加が表明されているのですが、それとともに、この消費者事故調査というものをどうやって進めていくのかというような理念やガイドラインをつくっていくことになります。日本の我々のこういうところでやっている方法論も参考にしながら、いろいろな国と合意を形成して発信していくのですが、ある意味では、我々のやっていることを国内だけではなくて国際的にも知らしめていくというのでしょうか、そんなような機会にもなっていくかなと思っております。
ちょうどこれに2年ぐらいかかるということは、この消費者安全調査委員会とは別枠ではありますけれども、たまたま同じぐらいの期間でそれを進めていくことになるかと思っておりますので、その辺の連携も図りながら委員長代理として務め上げてまいりたいと思っております。
持丸からは以上です。

(NHKのアキヤマ)今のに関連するわけではないのですけれども、伺いたいのが、窒息事故でつい先日も幼稚園でブドウを詰まらせたという事案が報道されたりしているのですけれども、原因自体は明らかになっていて、その対策も明らかになっているものがある。そういうものであると本来だと事故調が扱うのかという議論になるとちょっと違うのかもしれないとは思うのですが、今の中川委員長のお話などを伺っていると、明らかではあるけれども不十分なところがあるのであれば何がしか関わるというか、何か動いていけないかという点でいうと、そういったものも今後関わり得るものとして入ってくるのでしょうか。

(中川委員長)
おっしゃるとおりだと思います。今日も、窒息ではないですけれども、まさに似たような事故が検討対象にあがりました。原因は明らかだし、ただ、対策をどうするかとなると、窒息のほか、飲み込んで消化器に入ったものも含めて、喉に入るものも含めて、もう少し広げて考えると、子供が飲んだら危ないものが家にはたくさんあるわけです。それいついて対策をどういうふうにするかについて、結局誰がするのかということも含めて、横断的に解決策を考える場というのは我々しかないのではないか。だから原因が分かっているからもはや調査の必要なし,我々の仕事ではないとは言わないほうがいいのではないかということです。分厚い調査報告書ではなくて、もっと簡易なもの,だけれども、我々委員会しかできないということであれば外部に出していけないかという問題関心です。
この問題関心は第4期途中から出てきて、委員の皆さん同じことをおっしゃいます。そのようなことは委員会としてできるのではないか、と言うのだけれども、調査委員会の設定を定める法律のうち、どこに位置付けるのだというところがどうしても行政組織としては整理しなければならずので、そこが整理しきれないまま、今、第5期に来ています。第5期ではさすがにこれはやってみようという雰囲気にはなっています。おっしゃるようなことをやる可能性はあると思います。

(持丸委員長代理)
私からも。
広い意味でいくと、それも原因なのだと思っているのです。私が関わった例でいきますと、プールの排水溝に子供が吸い込まれてしまう事故というのは物すごく長く起きておりまして、答えは、排水溝のところに茶こしのような半球状のネットをつければいいのです。ところが、ネットをつければいいということで、平らなネットをつけると、吸い込まれないけれども、吸いついて窒息してしまうのです。実はそういう対策をしたところもあって、あわやという事故も起きていたりしたのです。
不幸にして、本当に奥まで吸い込まれた重大事故が埼玉県で起きたとき以降、急速に調査が進んだのですけれども、機械的対策は分かっているのですが、どうして正しい対策案が起きないのかというのは、予算の問題なのか、問題意識が現場に伝えられていないのか、対策案が伝えられていないのかということをずっと調べていくと、そのときはとにかく問題意識というか事故に関するリスクがまず伝わっていないのです。めったに事故が起きないので、そんなことが起きたということを知らないということです。しかも、それに対する対策案が少なくとも末端までは伝わっていないケースが結構あったのです。また、伝わったがやる気がないということではなくて、このときは伝達にどうも十分ではないことがあったのではないかと。私の記憶に間違いがなければ、当時は文部科学省さん等を中心にかなり徹底した動きをして、もちろん部分的に予算の措置もあったのかもしれませんけれども、直したという経緯があります。
そういう意味では、物理的な対策が分かっていても、それが現場に実装できないのにはまだどこかに何か原因があるのです。そういう意味では、原因は事故が起きる原因なので、ブドウが小さいということだけが原因ではなくて、それがどうして繰り返されている、社会的な知識がなぜ現場にいかないかということの原因なので、もしかしたら中途に何か障壁があることを明らかにしていくことも重要なのかなと思っているのです。