堀井消費者庁長官記者会見要旨
(2025年12月11日(木) 14:00~14:23 於:中央合同庁舎第4号館6階消費者庁記者会見室/オンライン開催)
発言要旨
冒頭2件ご報告させていただきます。まず1点目は、いわゆる見守りネットワーク、消費者安全確保地域協議会における警察との連携についてでございます。お配りさせていただいた資料1点目の関係ですが、本年3月18日に閣議決定をされました「第5期消費者基本計画」におきまして、高齢化・単身世帯化のさらなる進行により、配慮を要する消費者への対応を強化する必要があることから、地域において日常的に消費者と接する機会のある多様な主体が連携して、見守り活動の活性化等に取り組んでいくこととしております。そのためには、消費者安全確保地域協議会を形成して、多様な主体の参画を図ることが必要でございます。個人の生命、身体及び財産の保護を任務として、消費者と接する機会も多く、かつ消費者被害に関して、手口や類型等の情報を有する警察が構成員として参加をすることは、被害の未然防止・拡大防止、救済のために極めて重要であると考えています。そしてこの度、警察庁と消費者庁では、見守り活動の活性化のために、地域において消費者行政と警察の連携を深めていくことが重要であることから、両庁で、本日付で通知及び通達を発出したところでございます。まず、警察庁からは、各都道府県警に対しまして、各地の警察本部及び警察署が協議会の構成員として参加することを検討することや、他の構成員が見守り活動を行う際に有用な情報の提供など、協議会への協力に努めること等が示されています。また、消費者庁からでございますが、都道府県消費者行政部局に対しまして、協議会への警察署等の参加が進展するように、警察本部との連携強化に努めていただくとともに、管内市区町村の消費者行政担当部署に対しましても、所在する警察署等に協議会への参加や協力を働きかけるよう、周知を呼び掛けているところでございます。今回の両庁の通知及び通達を契機としまして、各自治体における消費者行政部局と警察との連携が強化されて、地域の見守り活動の活性化が一層進むようにということで考えて期待しておるところでございます。
2点目でございますが、こちらも配らせていただいたもう一つのほうの資料です。令和7年度第3回消費生活意識調査の結果についてでございます。今回の調査は、今年の11月に、「消費者志向経営」をテーマとして行ったものでございまして、昨年度に続いて2回目の調査となります。この調査結果の詳細は後ほど担当のほうから説明をさせていただきたいと思いますが、お配りしている資料にございますように、各調査項目について、昨年度とおおむね同水準の結果となっています。消費者志向経営に取り組む企業への印象については総じて好意的でございました。また、企業の商品・サービスに対する購入意向や価格許容度については上昇しておるところでございます。一方で、企業が「消費者志向経営」に該当する取組を行っていることについての認知度は、約15%にとどまっていまして、引き続き消費者志向経営の推進に努めていきたいと考えています。なお、この消費者志向経営に関しましては、毎年度、優良事例に対する表彰を行っています。本年度は、8月8日から募集を開始し、10月17日に締め切ったところでございますが、多数のご応募をいただいております。現在選考中でございまして、受賞者の公表につきましては令和8年1月下旬頃、そして表彰式は2月頃に開催ということで予定をしております。
質疑応答
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問
日本消費者新聞の渡瀬と申します。
「消費者志向経営」の調査に関連して2点質問させてください。今回の調査結果における取組の認知度、前年同様というか低い水準だったと思うのですけれども、この受け止めについてお聞きしたいのが1点、あともう1点は、消費者法制度のパラダイムシフトを踏まえた消費者契約法の検討が始まりましたが、ソフトローの活用には関係事業者との共創協働が欠かせないと。その原動力となるのが、消費者志向経営の普及・拡大・定着だと思っておりますが、現在の消費者志向自主宣言企業というのが1000社に迫る状況となっています。消費者取引で存在感を増している海外事業者の参加がほとんど見られない状況にありまして、この点についてどういう見解があるのかお聞かせ願いたいと思います。以上、2点です。 -
答
まず1点目、「消費者志向経営」の取組についての認知度が低いというところについてです。確かになかなか数字が大きな形で好転をしないという状況になっていまして、どういう取組をしていくことが必要かと考えていますが、まず消費者の方、あるいは社会の認知度を高めていくためには、まずはこの消費者志向経営に取り組む事業者が増えていくこと、広がることというのが重要だと考えています。そのために引き続き私たちとしてやりたいと思っていますのが、消費者団体や事業者団体等と連携した周知をしていくということ、そして消費者志向自主宣言事業者の拡大や優良事例に対する表彰、こういった取組を行っておりますが、こういう社会的な認知度向上、こういう取組を粘り強くやっていくということがまず初めにあるのかなと考えています。
それで、いただいたご質問の2点目のところで、特に消費者志向自主宣言企業の数についてのご紹介もいただいた上で、海外事業者をはじめとして参加の存在感がなかなかない、参加が進まないことについてということだったと思うのですが、今お答えした話ともちょっとかぶる部分があるのですけれども、現時点で宣言を行っている企業数というのが992ということで1000に迫る勢いであります。ただ、ご指摘があったように、この宣言というのは海外事業者ももちろんできるということとなっていますけれども、今、日本法人のある外資系企業の自主宣言事業者はございますが、数ということでは少なくて15社と認識しています。外資に限らず、どんな属性があろうと取り組む企業を増やすということ自体がそもそもの課題だと、先ほどお話ししたこととの関係でも実感しておりますので、やはり先ほど申し上げたようなこと、より具体的なメリットを企業に感じていただく取組をするということが必要と思っています。消費者が知る、そういう良き取組をやっている企業がある、まずその認識を持っていただくために宣言企業をホームページなどで積極的に公表していくということは引き続きやっていきたいと思っていますし、あと、先ほど表彰の話をしました。消費者志向経営優良事例表彰の選考における加点の措置の対象となっています。ですので、こういう宣言を行うことのメリットをお伝えするということが一つできるかと思います。また、実際、自主宣言をした事業者間において消費者志向経営に関する情報交換の場である「連絡会」を消費者庁の中でやっています。こういった場に参加をいただいて好事例の横展開をするということでさらに各社なりの取組を促すということもやっておりますので、具体的なこのような消費者志向経営に取り組むメリットなども併せて示しながら、国内、海外を問わずこの宣言を行う事業者の方々を増やしていきたいと考えています。 - 問 あとちょっと追加で、この調査は毎年される考えはあるのでしょうか。
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答
今回2回目ということで、どういうタイミングでやるかというのはまだ未確定の部分もありますけれども、定点的に取って認知度などを確認していきたいと思っています。ただ、他にも調査をする項目などがあってそれとの兼ね合いという部分もございます。
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問
NHKの佐々木です。
冒頭発言から外れてしまうのですけれども、今週8日の夜に青森県沖を震源とする地震がありまして、気象庁はその後、後発地震の注意情報を発表するなどしています。こうした中、今回の地震に関連する消費者被害など、把握しているものがありましたら教えてください。もしない場合でも、過去の災害とかでどういったものがあったかとか、ありましたら教えてください。併せて、こうした災害に便乗した詐欺とか悪質商法の被害を防止するために消費者庁から注意喚起の呼びかけをお願いできればと思います。 -
答
今お尋ねがあったように、12月8日の青森県東方沖を震源とする地震の発生に関しましては現在、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発表されていて、日頃からの地震への備えの再確認等が呼びかけられているところです。また、被災地におきまして今も不安な気持ちでおられる方がいらっしゃると思います。そのような方々にはお見舞いを申し上げるとともに、やはり今申し上げたような備えの再確認等が呼びかけられていることを踏まえて対応を、改めて私からもお願いしたいと思います。その上で、先ほどお尋ねのあった地震に関する消費生活相談は、昨日時点の状況を確認しましたところ、まだ寄せられていないという状況です。ただ一方で、お話がありましたように一般的に、大規模災害の後は、便乗した悪質商法のトラブルや義援金詐欺等が発生する傾向にあります。例えば、これまでの大規模災害におきましては、屋根等の家屋や住宅設備の修理・点検を勧誘された、義援金や不要品を集めていると勧誘されたという詐欺や悪質商法の疑いがある事例が報告をされているところでございます。先日、令和6年の能登半島地震に関するテキストマイニング技術を用いた消費生活相談情報の傾向分析についても紹介をさせていただきましたが、やはり発災から間もない時点で相談が見られ、先ほどお話ししたような事案もあるのですが、被災地では自宅、屋根、そういった工事・修理に関する相談というのが多く、また被災地以外でも被災地支援を、行政をかたって被災地への義援金を求める不審な電話があったとか、あとは支援のための買い取り訪問についての相談もあったという状況があります。ですので、引き続き私たちとしましても今回の地震等も踏まえてウォッチをしていき、災害に便乗した悪質商法のトラブルや義援金詐欺等についてはこれまでと同様ですが、これからも消費者庁の公式X等を通して注意喚起を行うなどの対応をしていきたいと思います。また、これまでもお話をしていたところではあるのですが、1人で悩まずに、まずそういう不審な動きがありましたら188(いやや)などもご活用いただいてご相談いただければと考えております。
- 問 もし具体的にこういうことがあったら1人で即決せずにという、もし具体的な注意のポイントとかあれば、ぜひ長官のほうからお願いできますか。
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答
一部繰り返しの部分もありますがもう1回申し上げますと、大規模災害の後は便乗した悪質商法のトラブルや義援金の詐欺等が被災地や被災地以外でも発生する傾向があります。不安な気持ちなどに便乗したこのような行為を防ぐために、お一人で悩まずに周りの方に相談する、あるいはそういう相談の場がない場合でも188、それに加えてお近くの郵便番号を入力していただきますと近くの消費生活センターにつながることもありますので、ぜひこのようなことを利用していただければと思います。
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問
日本消費経済新聞の相川です。
先ほどの消費者安全確保地域協議会に警察の協力を求めるというところなのですが、2014年に消費者安全法を改正してから見守りネットワークの設置を推進してきたのですが、まだまだ道半ばという状況で、2025年9月末時点の設置率は全1788自治体、都道府県を含めて、うち560自治体、3割と認識しております。このうち、警察が中に関わっている団体はどのくらいあるのでしょうか。 -
答
おおよそ7割ぐらいが参加をされていると承知しています。
- 問 警察が関わることによってどういうことがより期待できるのか。それから今後、消費者庁は、待ちから積極的な見守りに、相談体制を、仕組みも変えていこうとしているのですが、どういうふうにこれが役立つというふうにお考えになっているか教えてください。
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答
先ほど冒頭でお話ししたことと一部被るところもあるのですが、やはり警察が構成員ということで見守り活動に参加をしていただき、見守り活動の構成員になっていただきますと、見守り活動を行う際に有用な情報の提供なども期待できるところであると思っています。いろいろな形での詐欺とか、生命・身体にまつわるような事案等が考えられるわけですけれども、それぞれの機関で持てる情報、そして提供できる情報については提供して連携を図っていく、それでできるだけ多くのことを消費生活相談の窓口につなげていく、そういったことに大変役に立つと思っています。ただ、今ご指摘があったようにそもそもの設置率自体もまだ低いということ、そして参加の状況にばらつきがあるということは、これも以前ご質問いただいた際にお話ししたことにも被るのですけれども、設置していないところに聞くと、それぞれ皆さん忙しい中で協議会、見守りネットワークを行うことに具体的なメリットが感じられないというお話もございました。ですので、消費者庁としては具体的な設置のノウハウなどをお伝えするとともに、メリットということでやはり大きな問題となっている国民の財産的被害等、そういったものを一部でも未然に防止したり役に立つということを説得する、そういった観点からもやはり警察のほうで今回通知、通達というところまで、消費者庁もですが、至ったということは大変意義深いことだと考えています。この趣旨をなるべく多くの方々にお伝えして引き続き見守り活動を進めていきたいと考えています。
- 問 別件なのですが、サプリメント規制の検討が消費者庁でも始まっています。11月27日の食品衛生基準審議会新開発食品調査部会で明らかにされた、いわゆる「健康食品」に関する消費者アンケート結果に関連して質問させてください。ここにちょっと、今週号に書かせていただいたのですけれども、ちょっと驚くべき数値が出ていまして、「これまで医師の治療を受けたり、薬を飲んだりする代わりに、『健康食品』で不健康な状態を改善しようとしたことがあるか」という質問に28.2%、3割近くの人がはいと答えていると。健康食品を飲んでいる目的なのですけれども、「病状の改善」が11%、「健康診断の指摘の改善」が6.7%、それでサプリメントを利用している人の半分が病院に通院していて、サプリメントの利用の種類を2~4種類利用している人が4割近くいると。かなり健康食品に依存をして治療目的を期待している実態が浮かび上がってきたのではないかと思うのですが、長官はこの調査の結果をどのように受け止められていますでしょうか。
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答
まず、ご質問に直接お答えする前に、この調査の概要について簡単にご紹介をさせていただきたいと思います。この調査は、健康食品の適切な利用に関する情報発信を効果的に実施するために、消費者のいわゆる「健康食品」に関する意識や利用状況等を把握するために実施をしたものでございます。調査結果につきましては、いわゆる「健康食品」に対してどのような利用実態なのかを把握するにあたって意義があるものだと考えています。さらに、ご指摘がありましたが、健康食品はあくまで食品でございます。薬のように痛みの症状を軽くしたり、病気を治したりする効果が期待できるものではないことから、その適正な利用、これは大変重要で、これは消費者庁としても従前より繰り返して周知をしてきたところです。以前こちらの記者会見でも紹介をさせていただきましたが、動画「健康志向の康子さん」、そしてパンフレットを作成して周知をしています。引き続き消費者の皆様方にちゃんとそういったことをお伝えする、理解を深めていただくということは重要だと思ってまして、またさらに情報発信を検討しているところです。具体的に、今後そういったツールなども利用しまして健康食品の適切な利用に関する情報発信に引き続き努めていきたいと考えております。
- 問 私も実は十分リスコミもやってくださっているし、周知もやってくださっているという認識はあるのですが、ちょっとこの結果にはやはり驚いてしまって、本当にサプリメント形状のもので機能性表示食品も含め、表示を見たときにやはりそういうふうに誤解をして飲んでしまう人たちがやはり減らないのではないかなと実は心配しています。それで検討も、サプリメントを横断的にどう規制するかという検討も始まっているのですが、こういう実態も踏まえて事業者団体からいろいろなご要望も出てはいますけれども、こういうことも踏まえた検討がなされるのでしょうか。
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答
こちらの調査結果は議論の場でも出させていただいて、具体的にこの調査結果に対して様々な、例えば教育の観点ですとか周知の観点等についてのご意見も伺ったと聞いております。いずれにしましても、事業者の方や、これから消費者団体にもご意見を伺うということで予定をしておりますが、いろいろな方々からご意見を聞いた上で実行可能な、きっちりと情報が届くような、そういったやり方を模索していくということだろうと考えております。
- 問 よろしくお願いします。