堀井消費者庁長官記者会見要旨
(2025年11月20日(木) 14:00~14:28 於:中央合同庁舎第4号館6階消費者庁記者会見室/オンライン開催)
発言要旨
初めに、「フィッシング啓発強化キャンペーン」についてお話をさせていただきたいと思います。日本クレジットカード協会の呼び掛けの下、消費者庁や国民生活センターなどを含みます計11の省庁・団体が共同で、「フィッシング啓発強化キャンペーン」を11月17日から開始しています。フィッシングは、例えば送信元の情報を偽造するなど、手口が巧妙化しています。令和6年のクレジットカード不正利用被害額が約555億円と過去最多を更新いたしました。そこで、昨年に引き続き今年もキャンペーンを実施をしまして、メールやSMSによるフィッシングの被害を未然に防ぐために、皆様に注意喚起を行います。具体的には、日本クレジットカード協会が作成した啓発動画やバナーを使用して、YouTube、ウェブバナー広告、各省庁や団体のウェブサイトにおける注意喚起、そして全国各地の警察主催の防犯イベント等での啓発を行います。ここで、日本クレジットカード協会が作成しました啓発動画についてご紹介したいと思います。消費者庁におきましては、消費者庁ウェブサイトにこの啓発動画を掲載するとともに、消費者庁の公式X、そしてLINE若者ナビ等による注意喚起を行っています。また、地方公共団体の消費者行政担当課や消費生活センター等、消費者団体、適格消費者団体にも周知しております。併せまして、国民生活センターにおきましても、注意喚起を行っているところでございます。キャンペーンも活用して啓発に取り組んでいきたいと考えています。また、消費者の皆様へということなのですが、これまでに全国各地の消費生活センターに寄せられた具体的な相談事例は、例えば、宅配業者をかたったメールを信用してクレジットカード情報を入力してしまったとか、銀行をかたるSMSを信用して口座番号や暗証番号を入力してしまったというものが挙げられています。消費者の皆様におかれましては、まずメールやSMSのリンク先から安易にクレジットカード番号等を入力をしないようにということを気を付けていただきたいと思います。そして、ちょっとでも不安に思われたら、一人で悩まずに、消費者ホットライン188(いやや)や、警察、クレジットカード会社等に御相談をいただきたいと思います。
質疑応答
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問
日本消費経済新聞の相川です。
11月17日の黄川田大臣グループインタビューで、大臣は本紙の質問に答え、破綻必至商法について、消費者庁に次長をヘッドとする関係課室からなるプロジェクトチームを設置するよう指示したと回答されました。どのような課室で構成され、どのように検討されていくのか、お教えください。 -
答
黄川田大臣がお話になったプロジェクトチームに関してでございますけれども、昨日11月19日付で消費者庁次長をチーム長として設置されました。このチーム名は、「多数の消費者に深刻な財産被害を及ぼす詐欺的な悪質商法対策プロジェクトチーム」でございます。このチームを中心といたしまして、消費者庁の庁内の関係各課で連携しながら、詐欺的な悪質商法への対応に関する検証等を進めていきたいと考えています。どのような課室かというお尋ねがございましたが、これまでのいわゆる「悪質商法」に関する事案などを念頭におきまして、消費者政策課や、関係法令を所管する取引対策課、消費者制度課等から構成しているところでございます。このチームを立ち上げたのは昨日でございますので、今後具体的に、これまでもいろいろ「悪質商法」と言われたような様々な事案もございます。そういったことの対応も合わせまして洗い出しを行い、検証に資するものにしていきたいと考えています。
- 問 関連なのですが、2023年7月に消費者委員会のワーキング・グループが破綻必至商法に対して、行政庁による破産申立権限の創設であるとか、行政が違法な利益を剥奪して被害消費者に配分する制度の創設などを提言する報告書をまとめています。ただ、これは建議が出せず意見書として消費者庁に出されたままになっているという状況なのですが、これに対してどのように対応されていかれるでしょうか。
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答
今お尋ねのあった内容は、令和5年8月に出されたものということでございますかね。「多数消費者被害に係る消費者問題に関する意見」ということで、「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ」の報告書を受けてとのものだと思います。当然、消費者委員会からいただいたこのような意見等については私ども拝見し、そもそもこういった意見を出されるにあたっては消費者庁と関連部局、関連省庁ともコミュニケーションを図られて意見交換をされて出されたのではないかと思います。内容を拝見しましたところ、例えば、「破綻必至商法」の定義と言いますか、要件ということで、1から4までの全てを備えるものということで四つぐらいの要素を挙げておられるなどの内容になっていると承知しています。この内容について消費者委員会の中の議論等でもあったのかもしれませんが、どのようなものをこういう形で捉えるかという難しさがある。実際の事案を見ていても、当初から詐欺的なものということで始まったようなものもあるかもしれないし、ただ一方で当初は通常の形でビジネスということの展開が外形的にされてはいるけれども、途中から状況が変わってきたというものもあるかもしれないと。そういったことを考えたときに、正常な経済活動との関係性で、そういったものを萎縮させないような形にしながらも、一方で多数の消費者が被害を被るような事案についてどう対応したらいいか、このあたりの線引きですとか対応、これは非常に難しさがあるだろうと感じています。これは、これまでの議論の中でも関係者の皆様においても一定程度共通のご理解を得られる部分はあるのではないかなと思っています。したがいまして、消費者庁のチームの中で検証するにあたっては、過去の事案などもそうですけれども、関連する法制度なども含めまして、このような過去における検討などの内容についても検証した上で、どのような形で効果的な対応ができるかということを検証を重ねていくということかと考えています。
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問
日本消費経済新聞の相川です。
11月14日に食品表示懇談会の食品表示へのデジタルツール活用検討分科会が、食品表示をデータ化して活用するのは、現時点で既にシステム等を導入し、食品表示をデータ化している者をターゲットに制度を設計していくことが適当とする報告をまとめました。要するに、民意ということの結論を出したということです。元々、今ある容器包装の義務表示を代替えする制度として検討をしてきたのですが、結局は任意の制度ということで終わりました。元々、私はこの懇談会は国際基準との整合化を目的に設置されたと認識しているのですが、一向に本来のところに検討が入らないのですが、この国際基準への整合化についての検討はどのように進められるのでしょうか。 -
答
まず、今ご指摘のあった令和5年度の食品表示懇談会に関連して、どのようなテーマが議論をされていくことになったかというところの振り返りをしたいと思うのですが、まず1点目として諸外国との表示制度の整合性という点がございます。また、個別品目ごとの表示ルールという点が2点目としてあって、3点目として食品表示へのデジタルツールの活用等について議論をしていくという旨の報告書が取りまとめられたということが前提としてございました。これらの事項等に関する現状を説明をさせていただきますと、令和6年度から「個別品目ごとの表示ルール見直し」と、それから「食品表示へのデジタルツール活用」に関する2つの分科会の設置がされて、議論を続けてきたところでございます。この「個別品目ごとの表示ルール見直し」に関しましては、昨年に引き続いて今年度も議論を行いました。そして、必要な見直し事項について食品表示基準の改正を行うことを予定しているところでございます。これが個別品目ごとの部分です。そして、「食品表示へのデジタルツール活用」につきましては、技術的な課題の議論を行って、分科会としての取りまとめを行ったというところについては今ご指摘のあったところでございます。今後は、本制度において容器包装上の表示に関して、何の表示をデジタル表示ということで代替可能とするか等の具体的な議論を引き続き食品表示懇談会で進めていくということになろうかと考えています。このように、令和5年度の食品表示懇談会の取りまとめの内容に沿って今、順次議論を進めてきているという状況でございまして、今ご紹介をした二つの「個別品目ごとの表示ルール」及び「デジタルツールの活用」については、12月に開催予定の懇談会に報告をするということにしております。その上でになりますが、ご質問のあったことに関連してですけれども、今後、「諸外国との表示制度の整合性」についても議論を開始する予定でございます。いつから開始するかというところについては、具体的にいつというところについては今にわかに申し上げられるような感じではないのですが、いずれにしましても、取りまとめに沿った形で、今後、令和8年度以降議論されるというふうな形で考えているところでございます。
- 問 今、デジタルツールを活用している事業者は全事業者の何パーセントありますか。
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答
(食品表示課)
今は食品表示をデジタルツールで代替できないのでデジタルツールで義務表示をしているというところは0になります。そういう意味ではなくて、デジタルツールを活用してデータ管理をしているかどうかということで言えば、大企業についてはデータを管理するシステムを導入しているところが多く、中小企業については製造している品目数も限られていることもあり、データ化までしていないところが多いかと思っております。 - 問 本来、国が検討会を開くときは大体結論を見据えてやるものです。その数字が今出さないのはおかしくないですか。ちゃんとパーセントで出してください。小規模も踏まえて。それで、実は何が言いたいかと言いますと、2023年の河野太郎大臣のときに骨太の方針に食品表示基準の国際基準への整合化を推進するということが盛り込まれました。その後、検討会が立ち上がって食品表示懇談会の一番最初のタイトルのところには国際基準への整合化が今後の方針の中にトップに掲げられたのですが、個別表示の検討会とこのデジタルツールの分科会のみが始まって先送りにされている。河野太郎大臣とか当時の幹部は非常にやる気だったのだけれども、私から見ると恣意的に遅らせているのではないかと見えてしまう。何が言いたいかと言いますと、私、前の長官のときには散々質問したのです。エビフライは衣が50%を超えた場合は表示をしなければいけなかったのです。蟹も、蟹コロックは8%以上入っていないといけなかった。五目チャーハンも五目が入っていない、五つの具材が入っていないと五目と表示してはいけないという、こういう細かいルールがあったのです。表示を横断化したので、横断表示に合わせるという意向があるというのは私も重々分かっているのですけれども、要するに消費者からしたら、唯一、表示が選択できるものが、あっという間に1年の検討もしないで、たった5人の審議官で、消費者が中に入っていると言うのですけれども、1人の消費者委員の方は反対しました。もう1人の方は横断的なシンプルにするのがいいというお考え方で、それはそれでいろいろなお考え方があると思うのですけれども、それで報告されてあっという間にこれがなくなっています。皆さんどこまで知っているかもしれないのですけれども、餃子の皮の率は、例えば、本当に安く今みんな人気で食べているものは60とか70%あるのですね。それがこの基準が改正された瞬間になくなりました。機能性表示は経過措置を取っているけれども、ほとんど変わっていません。ギリギリまで変わらないで大きく表示、いかにも広告というものを謳っています。こういうものを合わせて、国際基準であればパーセント表示を、商品名を謳ったもの、例えばアーモンドチョコであったらアーモンドのパーセントを書くというのは韓国だとかEUだとかは当たり前です。これを同時にやるべきだと私は散々言ったのですけれども、そのうちやりますと言って結局ずっとこんなことをやっているのですね。ほとんど誰も調査もしていなくて、本当に容器包装の義務表示をデジタルに移してほしいと思っている消費者がどれだけいるのでしょうか。それで、現実的に任意でしかできなくて、絶対に容器包装に義務表示がされるにも決まっているのに、またそれを代替、何を。だってできないのですよ。絶対に全体ではできないことが分かっていて、本当に一部の事業者しかデジタルデータ化できていないにも関わらず、そのうちの何をデジタルデータに移すかを何年もかけて検討する必要がどこにあるのですか。まず、消費者目線で消費者が選択できる表示を実現してください。前の幹部は、水、今、例えばハムとかソーセージには、いっぱい水が水増しですよね。水の量を、特にハムとかソーセージは、ヨーロッパは厳格に書かせています。公正競争規約しかないチョコレートとか蜂蜜とかは国際基準に合わせて見直す必要があると私は思っています。それを恣意的に遅らせているように見えてしまう。それは、長官も変わられて、厚生労働省出身の長官が来ましたので、消費者の目線で早急に見直していただきたい。消費者が選択できる表示に変えていただきたい。それから、添加物は本当に隠されてしまっている。日本は添加物が隠されている王国です。そういう隠された表示をできるだけ国際基準に合わせて見直していただきたい。よろしくお願いします。
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答
まず、恣意的に遅らせているように見えるというお話がありましたけれども、決してそういうことではないということはお伝えをしたいと思います。そもそも先ほど、ちょっと長くなりましたけれども、どうして全体として流れから振り返りをさせていただいたかというとまさにそういったことで、そもそも食品表示懇談会でそれらのテーマを扱うときにこういう流れでやりましょうということで全体の動き、全体の進め方というのをお示しをしてやっていると。どうしてそういうふうにしているかというと、やはり、表示というのは大変重要なものであると。消費者の方々の関心も高いですし、さらには事業者からしてみても表示を変えると一言で言っても、手間がかかったりコストも時間もかかるという部分もあると。したがって、関係者の予見という観点からも、様々な観点から経過措置を設けたり、改正が、初めはこの改正をやって次はこういう改正という形になりますと、その都度同じことが繰り返されるということがないように進めていこうという形で、そもそも令和5年度の検討を開始していると承知しています。そういうことを考えて5年度、6年度、7年度と検討し、それで次に国際的な話については8年度以降と、そういう流れになっているというのがまず1点目であります。あとは個別品目についてのご指摘などもいただきましたけれども、ちょうど今まで検討していた個別品目に関しましても、基本的に業界団体等からヒアリングを受けたということが中心になっておりましたので、今後、食品表示の基準全体の横並びを見て消費者庁でそういったことについてどういうふうに統一化あるいは調整するか、そういう作業も実は残っていると考えています。したがいまして、いろいろ課題がある中で、検討過程も含めて分かりやすくしながら進めていきたいと考えています。
- 問 デジタルツールの報告書を拝見すると、国が一元管理をするのはすごく費用がかかるのでできないと。分散管理しかないと。要するに、事業者のデータのところにいくと。分散管理を選んだ瞬間にスマホの、要するに、JANコードは無理なのでQRコードを読むと。分散管理になっているので結局スマホで読み込んだ後、また表示された画面から期限表示とかロット番号等で当該商品の情報を選択して食品表示の画面に移動するという手間が消費者にはかかると。これは、私は2年も検討しなくても普通の人は今の状況を見たら、これしか選択肢がないと分かると私は思うのですね。こういうことも本当に消費者に強いながら、なおかつ義務を、他の国は容器包装の中で国際基準を満たしているのです。何でデジタルデータに置き換えることを検討しなければ国際基準に整合性を持つ検討ができないのか教えてください。
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答
お答えになっているかどうかちょっと自信がないのですけれども、ただ、このデジタルツールを活用してどのような形で制度設計をしていくかというときに、やはり、いろいろな観点、いろいろな視座があると思います。作っても使いにくいとか、あるいは全く使えないとか、あとは対応できる事業者が限られるということになると、それはそれで何のために作ったのだろうということになると思います。また、これは国際的な議論でもそうだと思いますけれども、表示として全てをデジタルにするわけではなく、確実に容器の上で分かるような形にするものはありつつも、ただデジタルという手法を取り入れることで、より消費者にアクセス可能な情報が増える、そういった余地もあるわけですね。ですので、そういったことをいろいろと加味しながらどういう形にするのが今の時点ではベストかという、そういう議論が重ねられてきたと承知しています。もしかしたら結果として振り返ってみると、こういう形になるというのは普通の人だったら分かるのではないかというふうなご指摘もありましたけれども、ただそこに至る過程、いろいろなご意見をいただいた上で決めていくという、そのプロセスこそが大事という部分もあります。ただ、この点についてはやはりまだ検討すべき点が残っていますので、より現実的に、かつ選択肢という意味で広がるような形で、どういう形になるかというところはまた注目していただければありがたいなと思います。
- 問 デジタルを活用することが悪いと言っているわけではないのですが、恣意的にそれを前に持ってきて遅らせているように見えると言っていますのでご検討ください。
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問
共同通信の山本です。
日本消費経済新聞さんの最初の質問に対する長官の説明であった悪質手法PTのことなのですけれども、どういう社会背景事情からこういうPTが必要になったというのを改めて長官の口からお言葉をいただけないでしょうか。 -
答
まず、11月11日の衆議院予算委員会の場で、高市総理から様々な悪質商法が出てきている中で、より有効な解決方法がないかについて消費者庁を中心に検証させますというお話がありました。合わせて、そのときに総理のご発言の後、黄川田大臣から総理からのご指示も踏まえて破綻商法等、悪質な商法がある中で、より有効な解決策がないか消費者庁が中心となって検証していくこととしたいと、そういうお話がありました。直近で言いますと、こういう事実と言いますか、事象と言いますか、そういった点があったということがあります。ただ、ここに至る過程で、やはりいわゆる「悪質商法」というものについてはこれまでもいろいろな手口が出てきたり、類似のものがあったり、新しいものがあったり、そういった形で消費者庁としても、あるいは消費者行政に携わる、消費者委員会もそうですけれども、課題と捉えていろいろな議論がされてきたということがございますので、この機会にPTを立ち上げて、それで消費者庁の中でも複数いろいろな切り口がある、既存の法律という観点もありますし、それ以外のそういったもので対応できていないような部分があったらそれは何だろうと、そういう切り口もありますので、そういう問題意識からPTという形で立ち上げたということでございます。
- 問 ありがとうございます。様々な悪質商法、これは別に従来からずっと今に至るまであると思うのですが、改めて最近社会問題になっている悪質商法がどんなものがあるのかみたいな、衆議院の予算委員会で質問に立たれた議員の先生も具体的な過去の事件名とかも挙げたりはしていたと思うのですけれども、そういった点で、今なぜ力を入れるのかという部分について、何か具体的な事情とかがもしあればお願いいたします。
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答
本当に先ほどのお答えに尽きるのですけれども、過去の悪質事案ということで様々あって、それが実際の法改正につながったようなケースもあります。ご存知かもしれませんが令和3年の預託法の改正などで対応したようなケースもありました。ただ、やはり本当にいろいろなケースが出てくるのでそういった形のアプローチができるものもあるし、ただできていないものもあるのかもしれないと、そういう問題意識はずっと持っていたところでございます。したがって、個別の話ということでも、いろいろ過去においても出ていたりするのですが、そういったことも検証してみるというのは非常に重要ではないかと感じているところでございます。