堀井消費者庁長官記者会見要旨
(2025年11月13日(木) 14:00~14:22 於:中央合同庁舎第4号館6階消費者庁記者会見室/オンライン開催)
発言要旨
本日2点、初めにお話をさせていただきます。まず1点目は、消費者法制度の在り方に関する今後の検討の進め方についてでございます。適宜お配りさせていただいた資料をご参照いただければと思います。まず、消費者取引に関しましては、これは皆様ご案内のように非常に大きな変化ということで超高齢化、デジタル化、またコミュニティの希薄化、こういった時代の変化が見られています。あわせて、消費者が置かれた環境も大きく変化をしているところでございます。このような変化に対応するため、今年の夏まで、まず消費者委員会では「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」がありまして、また消費者庁では「デジタル社会における消費取引研究会」、それぞれの場において議論がされて検討が進められてきたという状況になっています。それで今後、消費者庁におきまして具体的な制度改正を見据えて議論するにあたり、今までの議論でも共通している視点だと思いますが、高齢化、デジタル化などの環境変化により消費者は誰しもが多様な脆弱性を有する中、消費者が安心・安全に取引できる環境整備をすると、このような考えを基軸にして消費者庁の中で一体的に検討するための体制の整理をしたいと考えています。具体的には、消費者庁長官が設置する検討会ということで、それぞれのテーマの専門性を踏まえましてまず一つ目、「現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会」を設置したいと考えています。これは、具体的に消費者法制度のパラダイムシフトのアプローチに基づきまして、「消費者契約法」における具体的な規律や対応等を検討する観点から、今月11月25日から議論を開始することといたします。そして、二つ目の検討会ということで「デジタル取引・特定商取引法等検討会」、こちらも設置したいと考えています。こちらでは、デジタル取引の普及に伴う取引環境の変化や、特定商取引に関連して近年増加傾向にある消費者被害の対応等につきまして議論を行っていく予定にしたいと考えています。こちらのほうは、来年の年明け頃から議論を開始できるようにということで現在、立ち上げに向けた準備を鋭意進めているところでございます。そして、この両検討会につきましては、今のところでございますが、来年の夏を目途にそれぞれ検討会として「中間取りまとめ」を行います。そして、先ほどお話をしましたように両方とも共通する考えを軸にしているということで、整合性を持って議論ができるようにその後、例えば合同検討会の開催も視野に入れて検討していきたいと考えております。こちらがまず第1点目になります。
そして2点目のご報告事項につきましてですが、これは徳島県内の大学生のエシカル消費に関する取組に関してでございます。これまでも徳島の新未来創造戦略本部におきましては、徳島県と連携しまして県下の大学生がエシカル消費等について取組発表や意見交換等を行う交流事業に参画をしてきたところでございます。今年度は、このエシカル消費に関する議論というのが深化をいたしまして、初めてのことになりますが、県内の4大学の学生が「提言」という形で取りまとめをするということに相成りました。それで、この中の学生さんの中の代表して7名の方が消費者庁に提言をお持ちいただくということになりまして、具体的な日にちは11月17日ということで予定をしております。このエシカル消費につきましては、先般、会見の中でもご紹介させていただきましたが、まず進めるためには消費者の方々一人一人が自分事ということで社会課題を捉えると、これが非常に重要だと考えています。つまり日々の暮らしの中で、ご自身の暮らしの中で一体何ができるのかと、こういったことを考えているということがまず第一歩かなと思っていますので、まさにこれからの日本の未来を担っていただく学生の方々が、こういう形で自分事ということでの議論を深めていただく取組というのはとても意義深いことだと考えております。ですので、今回、提言手交の場や提言の内容につきましては、報道関係の皆様方にもオープンにしたいと考えております。詳細につきましては、お手元に配布をさせていただきましたプレスリリースを参考にしていただければと考えています。
質疑応答
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問
時事通信の村本です。
発表外で恐縮なのですけれども、最近相次ぐクマ被害に便乗して偽物の撃退スプレーが出回っているという話がありまして、これについて長官の受け止めと、あと消費者への注意喚起があればお願いいたします。 -
答
クマ被害につきましては、本当に深刻な状況になっていると考えています。そして、皆様のご案内のように政府全体としても様々な取組を自治体などとも連携をして進めているという状況です。今スプレーについてのお話がありましたけれども、このクマ対策のスプレー以外にも消費者被害を惹起するような事案というのは世の中で非常に大きな話題となっていること、トピックとなっていることに便乗するというケースが非常に多くなっています。消費者庁としましては今般の件に関わらずですが、相談をいただく状況なども踏まえて必要に応じ注意喚起等もさせていただいているところです。こういう人々の困りごととか、世の中の状況に便乗した形で、特に人々が関心が高くそういったお誘いにどうしても乗ってしまいがちな、そういう状況につきましては引き続き迅速に注意喚起等を行って情報提供に努めていきたいと考えています。
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問
フリーの木村です。
冒頭発言の消費者法制度についてなのですけれども、消費者契約法の改正ということは前提であるかと思うのですけれども、むしろデジタル取引・特商法関連のほうの検討会、これは特商法を改正するという前提で考えてよろしいでしょうか。 -
答
まず、具体的にどういうテーマ、テーマは大きくは決まっているのですが、そのテーマをどのような形で具体的な論点にして、その論点についての議論の結果どういう形に帰結していくかというのはこれからの議論であるとお考えいただければと思います。したがって、今この時点で予断を持ってこの点についてはこうするというお話については、そういう形にはお答えはならないということが一つです。ただ、一方で特定商取引法等検討会と銘打っておりますので、先ほどもお話ししましたような特商法に関わる現状を踏まえた上でどのような対応策が必要か、そういったことは当然のことながら議論になってくると。そして、こちらの検討会については先ほどお話をさせていただきましたように来年当初、1月、令和8年年初と考えておりますので、具体的な人選やテーマ、そのときにまた近くなりましてからオープンにしていきたいと考えております。参画していただく委員の方々、いろいろなお立場の方々に参画していただくことを考えておりますので、そういう方々からのいろいろなご議論を踏まえた形で議論を取りまとめていくということになろうかと思います。
- 問 特商法関連のほうなのですけれども、検討会の名前からデジタル取引・特商法等検討会になっているので、特商法の中でもデジタル取引に特化して検討するという理解でよろしいでしょうか。
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答
基本的には、デジタル取引以外も目下、消費者トラブルが生じている特定商取引に関する消費者被害の対応についての議論も射程に入ってこようとは考えておりますが、詳細につきましてはもう少々お待ちいただければと思います。
- 問 あともう1点なのですけれども、合同検討会を合同でやる意味合い及びその後のスケジュール感はどうなっているのでしょうか。
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答
まず、スケジュールはいずれの検討会についてもこれから議論が始まるという前提で、我々としてイメージをしているものを今日お話をしたとお考えください。したがいまして、それぞれの検討会及び合同検討会についても今時点のイメージというところがまず第1点目ということになります。また、二つの検討会について、関係性についてお話しさせていただいた意味合いなのですが、これは冒頭の発言とも重なるのですけれども、先ほど申し上げたように今年の夏までの議論の体制というのは消費者委員会、そして消費者庁、そしてそれぞれのテーマということである意味、別立ての全く違うトラックで走っていたということがございます。ただ一方で、消費者委員会の専門調査会の報告書の中のパラダイムシフトのほうですが、そちらの中にも取引のデジタル化という観点で論じられていたと考えておりますし、またトラックは別ではあったのですが、超高齢化、デジタル化、そういった環境変化の中で消費者の方々が誰しも多様な脆弱性を有すると、そういったことを踏まえて安心・安全に取引できる環境を作るという、そういう観点ではある意味、両方同じなわけです。ですので、その両方について整合的な議論、そしてできれば最終的には一体的な形でどう捉えるかという、そういう視点が必要だろうと考えておりました。したがって、別々に完全にツートラックという形よりは、こちらに今イメージしているような形で両方の整合性が図れるような枠組みをビルトインして考えていきたいという思いがあります。ただ一方で、やはりどちらもそれぞれ専門性があって、その専門性を踏まえた形でのご意見を聞きたいという、そういう方を委員にお願いしたいということもあります。それを考えると、全部一つというわけにはなかなかいきません。委員の方々の皆さんはお忙しい方ばかりですので、そういったことになりますと会議の運営自体もフレキシビリティがより効かなくなるということもあります。そういった中で、どういうふうな形にするのがいいのかなということで消費者庁長官が任命するという、そういう大前提のもと、二つの検討会をこういった形で整合性を取りながら有機的に進めていくと、そういった思いからでございます。
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問
共同通信の山本です。
今日お示しいただいたスケジュールを見ると、特商法についてはもし改正が必要となったとしても少なくとも来年の夏までは案がまとまることはなさそうだなというふうに理解したのですけれども、一方で弁護士会とかは特商法の改正を求める意見書みたいなものを従前から出していますけれども、だから特商法が何か改正される可能性があるとしても早くて来年、実質再来年とか、そういうスケジュール感になるのだなという印象を受けたのですが、先ほどの弁護士会の要望も含めてその辺はどういうふうに受け止めていらっしゃるでしょうか。 -
答
個別の団体の要望に関してというお答えは控えたいと思います。ただ一方で、様々な団体の方やいろいろなお立場の方から消費者庁の所管する法令・制度についてのご要望というのはいろいろな形でいただくことがあり、それは私を初めとして担当のほうでは目を通し、そういったこともいろいろな形で検討するにあたっての参考にさせていただくということはございます。したがって、お答えということではこれに尽きるということになると思います。一方で、法律を変えるにあたっても、制度を変えるにあたっても、それは非常に大きな影響があります。私たちは消費者目線に立って消費者行政を進めていくわけですが、制度を変えるということになると消費者の方のみならず事業者の方とか、それ以外の関係者の方、そういった方々にもいろいろご意見をお伺いしていいものにしていきたいということから、やはり一定の時間ですとか手続きとか流れというのが必要になろうと考えております。このイメージというのは、そういったことも踏まえた上で今考えているものということでございます。
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問
日本消費経済新聞の相川です。
消費者契約法の検討会については委員が15人ということで、ここに検討課題の消費者の多様な脆弱性への対応として必要な規律、消費者契約の各過程に関する必要な規律などを挙げてくださっているのですが、これは具体的に何日から検討が始まって、大体月にどのくらいのペースで開催されていかれるのでしょうか。 -
答
まず、開始については11月25日から第1回目の検討会を開始したいと考えております。月に何回かとか、ちょっとそのあたりにつきましては、あとどういうふうな形で(1)から(5)まで今、大くくりの論点を挙げていますが、このテーマについてどういうふうにやっていくかということにつきましては第1回目の検討会をキックオフして座長ともご相談をし、各委員の方々の日程などともちょっとご相談して決まっていくことになります。したがって、ちょっと現時点でそこの点についてきっちりとしたものはないのですが、ただ粗々のイメージとして進め方のイメージに書いてあるような目安のデッドラインなども見ながら進めていきたいと考えております。
- 問 それから、デジタル取引・特定商取引法等検討会については、大体委員は何人ぐらいで構成されていかれ、検討課題はどのようなものをお考えになられているのでしょうか。
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答
まず委員の人数については、ちょっともう少々お待ちください。ただ、考え方としましては関係する方々に入っていただいていろいろなご議論をしていただきたいと。これまでの検討会は有識者からなる検討会で、デジタルの取引についての専門的な観点からのご意見をいただくということで消費者庁の中でやっていたものですが、今回立ち上げようと思っている検討会につきましてはそれよりも広い形でのステークホルダーに入っていただきたいと考えています。したがって、今、人選を含め、検討会の持ち方も含めて調整をしていますのでもう少々お待ちいただければと思っています。そして、何を議論するかというところにつきましては、先ほどの木村記者からのお尋ねでしたですかね。ちょっと被るのですけれども、デジタル取引以外に目下、消費者トラブルが生じているような特定商取引に関連することということは目指していきたいと思っていますが、具体的にちょっとどういう形でやっていくかということについてはキックオフをしてから座長ともご相談をし、詰めて、お示しをしていきたいと考えています。
- 問 デジタルというと定期購入であるとかレスキュー商法であるとか、またSNSから始まるトラブルであるとかというものがありまして、やはりダークパターンが大きく関係し、なおかつプラットフォームの責任なども関連してくると。そういうことがある状況の中で特商法の通信販売では限界が来ているということを多くの方は言われていて、前の報告書でもそういうことが書かれていると思うのですが、取引デジタルプラットフォーム消費者保護法含め、新たな法律とかも検討されるのか教えてください。
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答
まさにこれから検討会を立ち上げるべく鋭意準備中という状況ですので、私のほうから検討会の議論の支障が生じるような予断を持った発言は控えたいと思います。
- 問 それから、中間報告が出てからさらに合同で検討するというところがちょっと引っかかっていまして、それはなぜかというと消費者契約法で報告書が出てもこれまで立法の過程でほとんど実現してこなかったということがあります。今ちょっと議論になっていて、消費者契約法のパラダイムシフトではなく消費者法制度のパラダイムシフトを報告書は書いているはずだと。確かに広くいろいろな法律を検討してもらわないといけないのですが、契約法の条文を詰めていくのと、またデジタルのダークパターンとかを本当に条文とかできちんと規定していくというのはかなり隔たりがあるように見えてしまっていて、逆にそこを合わせてやるというのは結局何もできないのではないかみたいに逆に心配になってきたりもするのですけれども、この辺はどのようなことで合同でやっていくということなのでしょうか。
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答
まさに今ご質問というかご指摘があったように、これまで消費者委員会の専門調査会の中で議論をされてきたものについては、消費者法制度のパラダイムシフトということであったと考えています。したがって、今回11月25日から立ち上げをしようと考えているこの検討会ついては、この検討会の名称が現代社会における消費者取引の在り方を踏まえたという形になっていますので、考え方についてはパラダイムシフトのアプローチに基づいたということがベースになると思います。ということになると、先ほどちょっと発言の中で申し上げたのですが、消費者委員会の専門調査会の中にもデジタル取引についての記述もあったというふうに考えておりますし、各論で言うとまさに今、相川記者がおっしゃったようにそれぞれかなり専門的な部分があるので、全部が全部まとめてやるということになると難しさがあると、なので二つの検討会。ただ一方で、考え方としては包摂されるような大きなパラダイムシフトという流れを受けての関係性というのもあるので、全く別々に議論の整合性も図らずに終わるということではないだろうと考えています。そういったことから、二つとも非常に大きなテーマを扱うということもありますので、今回そういう中で両者を有機的に、そして最終的には消費者のためにどのような形の制度枠組みが必要かというのを議論するとしたら、うまい形で両者の連携が図れるような形にしたいと個人的には思いをいたしているところでございます。