堀井消費者庁長官記者会見要旨
(2025年9月25日(木) 14:00~14:21 於:中央合同庁舎第4号館6階消費者庁記者会見室/オンライン開催)
発言要旨
冒頭、新未来創造戦略本部で行ったPIO-NETデータを用いました災害関連の消費生活相談分析についてお話をさせていただきたいと思います。お手元の資料も併せてご覧いただければと思いますが、新未来創造戦略本部がこれまでも分析を行ってきた全国消費生活情報ネットワークシステム、PIO-NETのことでございますが、こちらに登録をされた相談情報について、膨大なテキストデータの中から有益な情報を取り出すテキストマイニング技術、これを用いた傾向分析等を行ってきたところでございます。前回に分析をしたものは、令和5年7月から1年分の相談情報について全国9地区に分けた上で分析を行い、令和6年5月から本年7月にかけて4回に分けてその結果を既に公表したところでございます。今回は分析技術のさらなる活用という観点から突発的に大きな出来事が発生した際の消費生活相談にどのような特徴が見られるかという分析を行いました。具体的には令和6年能登半島地震の相談情報を取り上げたところでございます。大きく二つに分けて、まず震源地に近い石川県と富山県、そしてその両県以外の都道府県、こういった形に地域を分けまして、震災からの約1年半の期間を半年ごとの三つの期間に区切って分析をしています。お手元に配らせていただいた資料の右肩に配布資料と書いてあるもの、こちらの災害関連地域間別の分析結果と書いてある資料になりますが、この上にイラストのようなものが書いてあります。これは何かと言いますと、上段のイラストは区分ごとに相談情報から出現頻度の高い上位の20単語を抽出して頻度順の大きさで図示しているところです。上位の3単語は黄色で図示していて、先ほど三つの期間に区切ってと申し上げましたが、この三つの期間のうち一つに限って出現した単語を赤で書いているという形になっています。それで、まず地域別にご覧をいただきますと石川県、富山県のほうですが、これは三つの期間を通じまして自宅、屋根、こういったことが目立っています。相談の中身といたしましては、自宅の屋根の工事、修理に関して、例えば工事契約を交わして契約書を受け取ったけれども工事が始まらないといった相談が見られました。一方、この両県以外の地域のほうですが、これはキーワードとしましては電話、被災地、支援、こういったものが目立っています。具体的には、行政をかたった電話で被災地への義援金を求める不審な電話があったと、このような相談が見られたところです。また、赤字のところ、6か月間という一定の期間に限って出現した単語に着目をいたしますと、石川県、富山県において2024年の上半期におきましては電気など、契約をしている電気会社の電話が通話中で繋がらない状態が続くといったご相談がありました。また、それ以降の期間では火災保険などのワーディングがあって、保険の見舞金の申請手続きを代行すると訪問してきた業者から勧誘を受けたと、このような相談が見られたところでございます。このようなことから、被災後に消費者が対処することになる事象の変遷、そして生活の立て直しが進むにつれて相談の内容に変化が見られるということが示唆されたというふうに考えております。また、この石川県、富山県以外の地域に関してですが、相談情報に二つの特徴的なタイプが見られました。まず一つ目ですが、これは被災者を支援したいという気持ちにつけ込むタイプです。具体的には、先ほどもお話をしました行政をかたった電話での被災地への義援金を求める不審な電話があったというご相談ですとか、義援金も一緒に送れる寄付型の商品を購入して代金を支払ったけれども商品が届かない、こういったご相談、また被災地への支援のための不要な衣類などの引き取りに来てもらったけれども、衣類には値段がつかずに貴金属はないかと言われたというようなご相談が見られたところです。そして、二つ目のタイプといたしましては被災地で生じた実際の被害、こういったことを引き合いに出して将来への震災の不安を煽るようなタイプです。具体的には、知らない業者から分電盤の点検後に1月の地震の際に漏電で火災が発生したと、このような不安を煽られて高額で契約をしてしまったという相談も見られました。このような今回の分析結果も踏まえまして、引き続き消費者トラブルの傾向の把握や消費者に対する情報提供、啓発などに繋げていきたいと考えています。本日、分析の一部をご紹介させていただきました。詳細はお手元に配布した資料でございますとか、消費者庁のWebサイトをご確認いただいたり、新未来創造戦略本部へのお問い合わせをいただければというふうに思います。
質疑応答
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問
NHKの佐々木です。
まず冒頭発言についての質問なのですが、テキストマイニングを用いたこの分析というのは実際、災害が起きたときにリアルタイムにこういう分析を行っていくことが可能なのか。すごく時間かかってしまってリアルタイムで今はこの相談が多いので注意喚起をしたほうがいいというのをリアルタイムで掴んでいくということが難しいのか、それともそういうことが可能なのでそういった使い方をしていきたいのかというところを確認させてください。 -
答
まず、リアルタイムについてのご指摘というかお尋ねがありましたが、テキストマイニングをするにあたっては一定の事例の集積、蓄積が必要だということで、多分、イメージをするリアルタイムというところまではなかなか難しいのではないかというふうに思っています。ただ今回、やはり震災という一つの事象で、震災の中身によっても異なる部分が出てくるかと思うのですが、一つ大きな地震という事象があったのでそういった一定期間後の傾向についてはその後も続いているかどうかという分析を行ったことである程度私たちもそれに対処をするという心構えもできるのではないかと思っています。今回の結果も踏まえてどのような活用の仕方ができるかというのはさらに考えていきたいと思っています。
- 問 ぜひ傾向を、今回も踏まえて災害時にはタイミングを考えて注意喚起をしてもらえるととてもいいかなというふうに思います。この冒頭案件から外れた話になるのですが、今朝報道がありましたが、モバイルバッテリーを使ってスマートフォンを充電していた女性の方、就寝中に充電していた女性の方がいらっしゃって、その方のご自宅で発火事故があって6人が搬送されるような事案がありました。ここ最近、注意喚起もしていただいていますが、リチウムイオン電池が搭載された製品での火災が相次いでいることについての受け止めと、今回、就寝中ということでしたので何か取扱いの注意点がありましたらお願いします。
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答
佐々木記者からご指摘のあった事案については私どもも報道により承知をしています。モバイルバッテリーに使われるリチウムイオン電池、この取扱いについては熱や衝撃に弱いという性質があるので取扱いを誤ると火災事故等が起こる可能性があるということをこれまでも取扱いの注意ということも含めてお伝えをしてきたところでございます。改めてですけれども、例えば強い衝撃や圧力を加えないとか、損傷したものや異常が生じたものは使用しないとか、消費者庁のリコール情報サイトや事業者のホームページなどから製品のリコール情報を確認して対象品の場合は直ちに使用を中止することなどの実践はお願いをしてきたところであり、こういったところについては改めてお願いをしていきたいと思っています。また、消費者庁といたしましてもさらに関係省庁と連携をいたしましてリチウムイオン電池の事故に関する注意喚起を強化していくことを検討したいと考えています。記者の皆様方、これまでもいろいろな形で報道で取り上げていただいておりますが、引き続き消費者の皆様方に対する周知にもご協力をいただきたいと考えています。
- 問 最後におっしゃっていた関係省庁と連携して対策を検討、強化ということですが、これは何か具体的に表向きなことなので行っていくご予定などがありましたら教えてください。
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答
検討をしたいということで、今具体的にこの場で何をということは申し上げられないのですが、いろいろな形で繰り返されるということで、消費者の方が被害に遭わないように周知を徹底していく必要があるというふうに感じています。適正な利用をお願いするために関係省庁との連携も考えていきたいと思いますので、また具体的にお伝えができる段階になったらお知らせをして周知についてのご協力を改めてさせていただきたいと思います。
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問
共同通信の山本です。
テキストマイニングのほうなのですけれども、ちょっとぱっと見しただけなのに不躾なことを言って恐縮なのですが、正直あまり意外性はないというか、石川、富山県のほうなんかも結局、大体上位3位は自宅工事、屋根とか修理とか、同じようなワードが別に上半期24年も25年も出てきて、そんなに傾向に変化も言うほどあるのかなという部分とか、率直に思うことがあるのですが、別にだから多角的に無駄だなんて言うつもりはないのですけれども、正直ちょっとここから何を見出して活用するのかというのがちょっと現状見えにくいなというふうに思いまして、その辺はどうお考えでしょうか。 -
答
例えば、先ほど冒頭発言のときにも触れさせていただいたのですけれども、今回は石川と富山、そしてその両県以外の都道府県ということで地域をくくりましたが、この前の段階で前回分析は全国9地域に分けて分析をしたということがございました。内容の詳細は既に発表させていただいているものでもあるので省略をしたいと思いますが、そのときも我々のイメージとしては分析をする前は地域によって傾向が違って出たりするようなこともあるのかなと、そういうことで実施をしたのですけれども、そのときはそこまでの傾向が出なかったというふうに承知をしています。それで、今回で言うと2県をピックアップしたということですが、その当該地域のみに出てくるような傾向が出てくるとすごく分かりやすいということもあるのかもしれませんけれども、テキストマイニングで上がってきた共通するものはあるとは思うのですが、二つの地域の中の違いというものも前回の分析よりは出てきているのではないかということは印象としてございました。2点目ということでは、あまり意外性がないと。被災後、いろいろな形で報道がされて、それでその中で消費者被害についての報道もされた、そういった中でなるほどな、こういったことはあるのだろうなと思うようなことがワーディングとしても出てきているということなのかもしれません。ただ一方で、震災でもどのような災害でも、実際我々がその場に直面したときにやはり通常の判断ではあまりしないようなこととか、ちょっと気持ちがパニックになるとか、そういったことはあるのではないかと考えています。ですので、客観的に見たときになるほどなと思うことでも、自分自身が困っていたり、非常に切迫しているような状況の中では、つい日頃と違う判断をしてしまうとか、そういったことを防止していく、予防していく、そういう観点もあるのではないか考えました。したがって、利用方法というのは、先ほどもちょっとお答えをしましたように全てありとあらゆる災害において言えることではないかもしれませんけれども、こういう事象があるよということを注意喚起したりとか、そういったやり方から、あとは実際に現場の消費生活相談に携わってくださっている方々にこういう情報をお伝えすることでそのときに発生した事象に応じて相談員の方々がケースバイケースで対応してくださるときに一助にもなるとか、いろいろなやり方が考えられるのではないかと思っています。そのあたりをこれから考えてやっていきたいと思います。
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問
フリーの木村です。
ちょっと別件ですみません。月曜日に食品の包装前面栄養表示のガイドライン案がパブコメ開始されたかと思うのですが、以前、原課のほうに確認しましたが、今年度中に施行するという話を聞いていたのですが、もうほぼ議論とか内容とかは詰まっているのかと思うのですけれども、具体的な施行時期というのは何か見えているのでしょうか。 -
答
担当のほうからお答えということでご紹介をいただきましたが、それ以上でもそれ以下でもないと。パブリックコメント、約1か月間させていただいていますので、そのときにいろいろな形でいただいたご意見に対して、私どももそれを踏まえてどうするかと、そこは考える必要があると思いますので、それを踏まえた上でガイドライン、そしてそれに必要なQ&A、そういったものを揃えて実際に実施に進んでいくということになると思います。そこからするとスケジュール感は先ほど担当者からお伝えをしたようなイメージになるかなという状況です。それ以上の確定日付のようなことについては、現時点ではなかなか申し上げにくいという状況でございます。
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問
日本消費経済新聞の相川です。
実は、消費者庁のデジタル社会における取引研究会が今年6月にまとめた報告書について、消費者団体から相次いで意見書が出ています。9月12日には57の消費者団体などで構成される特商法の抜本的改正を求める全国連絡会から、この報告書に基づいて今後の特商法分野の消費者行政を進めないように求める意見書です。8月20日の不招請勧誘規制を求める関西連絡会から出ている意見書では、委員構成が偏り不適切で報告書の内容にも看過できない問題があるとして、新たに委員も選任し直して改めて検討することを求める意見書です。9月18日に日本弁護士連合会から出された意見書は、このデジタル研究会報告書が政策の基軸として提言した、極力私人間の契約、取引に関して国家が干渉せず、個人の意思を尊重する原則のもとでの制度設計をすべきという方向性に拘泥することなく、あくまで消費者保護の基軸として特商法の改正を速やかに行うことを求める意見書が出ています。ちょっと異例な意見書なので、こういう意見書が相次いで出たことに対する消費者庁長官としての受け止めと、今後これに対してどのように対応していくかについてお教えください。 -
答
今、相川記者からご指摘のあったデジタル社会における消費取引研究会、これは消費者庁の取引対策課長が関係者の参集を得て開催をするということで開催をしたものでございます。そして、取りまとめに対して各団体の皆様方から様々なご意見が寄せられているということについては、私としても真摯に受け止めをしているところでございます。デジタル取引が非常に進んでいますので、発展という意味合いもありますが、本当にスピードも早く進んでおりますので、これは利便性が向上していると、そのような面もある一方で、新たな手法による消費者被害というのも増大をしている状況でございます。消費者庁としては、やはりこういう問題についてはきちんとしっかりと検討していくということが重要であるというふうに考えておりますので、今後の検討にあたりましては今回いただいた様々なご意見も踏まえまして関係する方々、消費者団体の方々もいらっしゃると思いますし、関係団体の方々もいらっしゃると思います。そういった方々と密にコミュニケーションを図りながら進めていきたいというふうに考えております。
- 問 この報告書の問題点について一つずつ挙げていくときりがないのでここではいたしませんが、やはり消費者団体と消費者庁の関係がこういう状況にあるというのは消費者行政にとっても非常に望ましくない状況があると思いますので、この辺をもっと前向きに解決できるようにご尽力いただきたいと思いますのでよろしくお願いします。