新井消費者庁長官記者会見要旨
(2025年6月19日(木) 14:00~14:25 於:中央合同庁舎第4号館6階消費者庁記者会見室/オンライン開催)
発言要旨
冒頭、2つ発言をさせていただきます。まず1点目ですけれども、6月13日に開催いたしました取引デジタルプラットフォーム消費者保護法の官民協議会に関してであります。取引デジタルプラットフォーム消費者保護法の施行から3年が経過しました。法律の主な内容に関し、取引デジタルプラットフォーム提供者の努力義務については、相当程度実施されており、進捗が見られます。また、取引デジタルプラットフォーム提供者に対する要請については、7件行っておりまして、その実効性も確保されております。運用の一層の強化を図るとともに、製品安全誓約とも連動させて、危険な商品の排除等を徹底していきたいと考えております。さらに、売主が消費者であるCtoC取引の「場」となるデジタルプラットフォームの提供者の役割については、C(consumer、消費者)を装ってはいるもののその実態はB(business、事業者)である販売業者等、いわゆる「隠れB」に対する対策の強化が重要であります。また、「隠れB」ではない本来のCが商品の販売主体になる場合には、当該販売主体には消費者法制は適用されないことから、場の提供者の役割が重要になります。この観点からガイドラインの改正案を整理し、パブリックコメントを6月17日から開始をしております。引き続き、この法律、さらに特定商取引法の通信販売取引に関する規律を効果的に運用することによって、消費者の利益の保護を図ってまいりたいと考えています。
それから2点目です。デジタル社会における消費取引研究会について報告いたします。6月13日の第9回デジタル社会における消費取引研究会において、座長一任とされた報告書案について、本日、報告書として取りまとまりましたので、消費者庁ホームページにて公表を行いました。本報告書では、デジタル消費取引に関して、これまでの制度体系にとらわれず、デジタル消費取引の特性をとらまえて、新たな手法による対応を検討すべきという方向性が示されております。消費者庁としては、今後、この報告書でいただいた内容について、広く関係者の意見を伺いながら、時期を置かずに、次のステップに向けた検討を進めてまいりたいと考えております。
質疑応答
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問
フリーの木村です。
冒頭発言の取引デジタルプラットフォーム消費者保護法関連なのですけれども、フリマサイトの「隠れB」への対策強化、どういう対策をどう強化していくのかという点について教えてください。 -
答
先ほどお話をいたしました、今、ガイドラインの改正を行っております。今般、「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律における『販売業者等』に係るガイドライン」の改正については、まずいわゆる「隠れB」に対する対策の強化の観点から、「販売業者等」に該当することが推認される場合の例示の追加、さらに、それでもなお「隠れB」とは言えない、いわば純粋な消費者同士の取引がデジタルプラットフォーム上で行われる場合の場の提供者に期待される役割を明示しております。冒頭申し上げたとおり、このガイドラインについては6月17日からパブリックコメントを行っておりまして、パブリックコメントの意見も踏まえながら適正な時期に改正をしていきたいと考えております。
- 問 あと、本日公表されましたデジタル社会における消費取引研究会の報告書なのですけれども、この報告書の内容の受け止めと、あと今後この報告書の内容について検討していく方向性を改めてお聞かせください。
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答
この研究会は、まず法制度の観点だけではなくてマクロ的な観点から検討しようということで、各分野、EBPMの専門家、経済学者、技術者、弁護士、消費者関連団体など、専門家の多角的な視点から、客観的なエビデンスに基づいて議論を実施するということで進めてまいりました。コロナ禍でデジタル取引の特徴、それから今後の発展性などを踏まえますと、今までの商法の中ではなかなか取り切れることは困難なものがあるということでありますし、ここのデジタル空間におきましてやはりトラスト(信頼性)の高い場、いわゆるトラスト基盤をどう構築していくのかということで、事業者、消費者双方が考えていかなければならない点が多くなるということであります。そういうことによりまして、消費者が安全・安心に取引ができる、事業者も安全・安心にいわゆる場の提供をできるといった形のものを作っていくということで、今申し上げましたけれども、今までのものにはとらわれない形で何ができるのかということで、この報告書の方向を踏まえて、さらに法的な検討に次の段階へと進んでいきたいと思っています。ここで一番大切なことは政策の基軸ということで、このデジタル空間というのは取引という概念も含めて今までの法律の中では捉えきれないものがあるということと、これをやはりトラストした基盤を強固に構築した上で消費者がその中で自立した意思決定ができる環境をどう作っていくのかということで考えていくと、消費者が納得感を持って取引に参加することができると。この両面を合わせて検討していくということでありますので、これから具体的な検討に入りたいと考えています。
- 問 あと1点だけ。今後の検討の方向性ですけれども、消費者庁内だけで完結するような話なのか、それとも何かもうちょっと広い視野に入れてのことなのか。その辺についてお願いします。
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答
おっしゃるとおりでありまして、この検討会につきましてもオブザーバーとして、経済産業省、公正取引委員会、金融庁、こども家庭庁、デジタル庁、総務省、文部科学省、それから国民生活センターに入っていただいております。いろいろ政府横断的に取り組まなければいけない課題というのもありますので、その辺を整理しながら進めていくということです。
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問
NHKの佐々木です。
冒頭発言には関係ない質問で恐縮なのですけれども、日本郵便が、配達員に対して法令で定める飲酒の有無などを確認する点呼を適切に行っていなかったという問題がありますが、過去に内部通報を受けながらも、そして事実をしっかり確認せずに、適切な対応を取らなかったというようなことを、先日行われた会見でも社長の方が述べています。消費者庁として、この件についての受け止めと、行政指導などどのような対応をとられる予定でしょうか。 -
答
今お尋ねがありました日本郵便の問題について、報道に関しては承知をしておりますけれども、事業者における個別の通報対応の事実関係については、当庁として認定する立場にはないのでコメントは差し控えたいと思います。その上で、一般論として申し上げれば、公益通報者保護法では、常時使用する労働者の数が300人を超える事業者に対し、従業者の指定や公益通報に適切に対応するための体制の整備を義務付けています。各事業者においては、法及び法定指針の規定を踏まえて体制を整備し、運用していただきたいと考えています。
- 問 この件に関連して、日本郵便では、過去にも内部通報をめぐる対応が問題となった事例があります。再びこういった問題が起きているということで、改めて消費者庁としてどういうふうな受け止めをされているのかということと、過去の例については何らか対応が行われたのかというところを教えてください。
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答
消費者庁は、一般的に申し上げますと、事業者が公益通報に適切に対応するための体制の整備については、公益通報者保護法第15条の規定に基づき、必要があると認められる場合には、助言、指導、勧告といった行政措置を行うことができます。また、法第16条の規定により、勧告をした場合において、事業者がそれに従わない場合には、その旨の公表を行うことができるということになっています。このため、事業者が既に体制の不備を公表している場合等を除きまして、特定の事業者に対して、消費者庁が同法の規定に基づき助言や指導を行ったかどうかについては、原則公表していないということでございます。それから、法定指針におきましては、公益通報対応業務の実施に関する措置ということで、「内部公益通報受付窓口において内部公益通報を受け付け、正当な理由がある場合を除いて、必要な調査を実施する。そして、当該調査の結果、通報対象事実に係る法令違反行為が明らかになった場合には、速やかに是正に必要な措置をとる」ということが謳われておりますので、この法の指針に則って窓口を運用していただきたいと考えています。
- 問 今回の例で言うと、対応の不備を公表しているというケースにはならないのでしょうか。会見ではそういう良くない対応があったのは事実だみたいなことをおっしゃっていたようなのですが。
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答
私たち自身は事実を確認しておりませんので、今の段階でコメントすることは差し控えたいと思います。
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問
日本消費経済新聞の相川です。
取引デジタルプラットフォーム消費者保護法の3年見直しなのですが、法律に「施行後三年目途」の見直しが規定され、衆参両院の附帯決議には「売主が消費者であるCtoC取引の『場』となるデジタルプラットフォームの提供者の役割について検討を行い、消費者の利益の保護の観点から、必要があると認めるときは、法改正を含め所要の措置を講ずること」が盛り込まれています。今回はガイドラインの改正にとどめたということですが、このデジタル研究会の報告書の中には明確に「デジタルプラットフォーム等に対する施策も重要」で、「管理責任、特に悪質な利用者の出現を予防し、また出現した場合の迅速な排除に関し、これらの者が行うべき取組を整理する必要がある」と書かれています。官民協議会の最後に議長が、「特商法の通信販売取引に関する今後の検討と合わせて、この法律自体のあり方や記述の内容も検討した上で適切な措置を講じていくことによってデジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の多くの一層の強化を図ることが期待される」と発言されています。これについては、具体的に何をどういうふうに改正して法改正につなげる方向なのでしょうか。 -
答
今、ルールのお話がありましたけれども、取引デジタルプラットフォーム消費者保護法を現在、単独でこの法律の改正を要しないということであります。したがいまして、デジタル社会における消費取引研究会で示されました、デジタルとして新たな枠組みを作るべしということと合わせて、総合的に検討していくというのが今後の方向性と考えています。
- 問 デジタル研究会報告書には、「後追い、規制的な手法の限界を補完する仕組みの導入」が必要として、「諸外国の制度を参照しつつ、不公正な取引方法に対する一般的、横断的な通則による行為規制を導入し、細やかな執行ルールは府省令未満とすること」と書いてくださっています。これについてなのですが、消費者庁の特商法の通信販売はもう見直さない、取引デジタルプラットフォーム消費者保護法は見直さない、新しいもので検討するということですか。
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答
そうは申し上げていません。複合的にどういう形での法適用、今までの特商法と、それから取引デジタルプラットフォーム消費者保護法、どういう形で切り分けるのか、あるいは重なる部分をどうやって収斂させていくのか法技術的な問題もありますし、私たちは非常に難しい論点だと思っていますが、今までの特商法のいただいている宿題とデジタル空間でのもの、それから取引デジタルプラットフォーム上の必要な事項ということを、総合的にどうやって法体系の中でマネージメントしていくのかということをこれからしっかりと考えていくということです。
- 問 取引デジタルプラットフォーム消費者保護法の附帯決議には三つの努力義務規定が規定された、3条についても「実施の状況の実態把握に努め、必要があると認めるときは、法改正を含め所要の措置を講ずること」とされています。例えば33社へのアンケートに25社しか回答せず、出品者の連絡先、連絡手段の表示があるのは13社というのに、本当に法改正はしなくていいのでしょうか。官民協議会でこれを決めること自体一般素人からすると疑問です。それから、1万円以上で債権がある場合は消費者が販売事業者の連絡先の開示を求めることができますが、回答した20社のうち10社、31件で開示請求がされていますが、開示されたのは9件だけです。その理由が、販売業者と判断できない、確認を要すると認められないとしか説明がない。消費者からすると、特商法では表示されなければならない義務付けがあるものが書かれていなくて、何で1万円以上でないと要請できないのか疑問でしかありません。さらに、事業者へのアンケートしかなく、消費者へのアンケートはありません。官民協議会で結論を出して、3年見直しは法改正はしませんというのは、これはちょっと疑問ではないでしょうか。例えば、1万円以上について消費者にはなぜアンケートをしないのでしょうか。
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答
まず、3年後見直しをしないのではないかというお話がありましたが、直ちにする必要はないということを申し上げていて、今お話しした総合的な問題の中で当然取引デジタルプラットフォームもデジタルの中で非常に重要な役割を果たしているということですので、そこを視野に入れながら検討するということです。現在の取引デジタルプラットフォーム消費者保護法の官民協議会というもの、これはいいところもあります。官と民で両方が切磋琢磨しながら、考えながらやっていくという意味では、規制というかソフトローの中のツールとして一ついい点もあると思いますが、今お話いただいたように限界もあると思っています。そういうツールをこの分野で使うことが適切かどうなのかということも含めて検討の俎上にあげているというようにご理解いただきたいと思います。
- 問 それから、この日は、パラダイムシフト専門調査会の検討もあり、官民協議会もある中で、デジタル研究会は消費者団体や相談員さんの関心が非常に高いにもかかわらず、直前にしか開催案内がないのは問題ではないでしょうか。皆さんにご意見も聞こうと思って連絡をすると皆さん傍聴ができていません。広報から前日に私たちにも連絡がありませんでした。これはなぜですか。なぜこういう重要なものをみんなが傍聴できるようにされないのですか。期間限定でYouTubeで見られるようにできないでしょうか。皆さんほとんど傍聴できていないという状況があるのですが、これについてはどうお考えですか。
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答
まず、事実関係について事務方から説明をさせていただきます。
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答
(取引対策課)
毎回開催案内は前日には少なくともさせていただいていると理解していまして、これは過去9回やらせていただいていますけれども、基本的にはYouTubeで公開をさせていただいていて、皆さん視聴いただいておられるのかなというふうに理解はしております。また、議事録も終わったら公開させていただくということになっておりますので、基本的には公開のもとで運営をさせていただいています。 - 問 普通、1週間ぐらい前に日程は決まっているはずですよね。
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答
(取引対策課)
視聴者は、我々が確認する限り、毎回50~60名くらいはいらっしゃっています。 - 問 その辺はやはり皆さん大変関心が高い分野ですので、きちんと傍聴ができるようにはするということは最低限のルールだと私は思っています。それから、具体的に何をするかというのが分からない。デジタル研究会報告書は、いいことが書いてくださってある部分もあるのですが、一体何をどうしようとしているのか、具体的な検討をするとも書いてありますが、具体的にどうしようとしているかが全く分かりません。それからもう一つ、消費者の意思形成を支援するパーソナルAIは、大変興味がある分野です。相談業務にAIを使うと言ってもなかなか現実的には難しい面がありますが、個々の消費者がこの購入契約をしていいでしょうかということをAIが判断してくれるというのは大変素晴らしい、本当に予防策になるのではないかと思うのですが、これはもう既に開発に着手しているところがあるのでしょうか。
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答
いろいろお話がありましたのでいくつかまとめてお話をしようと思います。今回のデジタル社会における消費取引研究会、具体的な方向性が分からないというお話がありました。今回非常に重要なのは、まずはデジタル取引というのは今までの取引と何が同じで何が違うのかと、違うとすればどこを捉えていけばいいのかということで、かつ将来的にどうなるのかということも含めてご議論いただいたということであります。取引の概念、それからパーソナライズドマーケティングがどんどん発展してくる、こういう意味ではまさにデジタル空間をしっかりと見るルールを作らなければいけない。それは今までの実際の取引と違うのだということを提示していただいたというのが一つの大きな意味だと思っています。その上で、その空間の規律をどうやっていくのか、こういうことがあるからこそ、諸外国でデジタルに特化した取り決めを作っているというのは、今までの取引と違うからだという根拠をやはりはっきりしないと、今までのいわゆる民法上の契約、あるいは消費者法上の規律でいいでしょうという話になってしまうので、そこにまず大きな意義を見出していただきたいと考えているところであります。今までの契約の一般通則と、それからデジタルの空間をどこでどういうふうに融合させたり切り離していくのかということを、これから具体的に議論していかなければいけない段階だなと考えております。それから、この検討会につきましてはリアルでの視聴がなかなか、1日前ということで難しい方もいらっしゃったということでありますが、議事録は全て公表しておりますので、それぞれの機会の内容をお知りになりたいという場合は議事録を見ていただければと思います。私もできる限り参加いたしましたが、皆さん本当にいろいろ新しいテクノロジーの話をされています。その中で、消費者をアシストするテクノロジーもいろいろ議論がありました。この報告書の中では例という形で書いておりますけれども、まず両方の出し手の身元の真正性を検証するシステムというのは今出来上がりつつあるということでありますし、消費者もAIを使うということができます。それから、その真正性を基に信頼あるサイトかどうかということを認証するような枠組みもだんだんできていくということですので、消費者と事業者の双方がテクノロジーを使いながら、デジタル取引の場を活用していくということになるのではないかと思っています。いろいろこの検討会の中でも話がありましたが、テクノロジーとしては芽生えつつあると、それを使えるようにする形、それから使うようにする場合は一定の費用が発生してくると。その費用をどうやって誰がどうマネージしていくのかというような問題もあると思いますが、いずれにせよ技術的な効果があるということはこの検討会で確認をされたところです。
- 問 パーソナルAIについては、事務局に取材させていただきます。
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問
テレビ朝日の福田です。
今月の13日に「国民生活安定緊急措置法施行令の一部を改正する政令」で、同月23日から米穀の転売が規制されるということで、具体的にはお米の購入価格より高い値段で転売するということが法令違反にこれからなっていくと思うのですけれども、農水省と消費者庁が大きく関わるところで、消費者庁としてどのように関わっていかれるのかということと、この政令改正によって消費者庁が望むことを教えていただけたらと思っています。 -
答
同法は、消費者庁が法律を所管し、それぞれの物品を指定して転売規制なりをする場合は主務大臣が基本的に対応するということですので、今回の政令についても消費者庁の担当である内閣総理大臣と農林水産大臣が一緒に閣議請議し、決定をしたということです。それから、既に農林水産省と一緒にQ&Aを出すなどして協力をしています。いずれにいたしましても、適正な価格で供給をしていただくということが消費者の方に必要ですので、Q&A、いわゆる運用の目安も含めて農林水産省と議論していきたいということです。
- 問 ちなみに、消費者庁として米の転売対策チームとか、そういったことを今後立ち上げる予定があるのかどうかお伺いしたいです。
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答
特にありません。