新井消費者庁長官記者会見要旨
(2025年3月6日(木) 14:00~14:15 於:中央合同庁舎第4号館6階消費者庁記者会見室/オンライン開催)
発言要旨
まず、第18回目となる「風評に関する消費者意識の実態調査」の結果を報告させていただきます。来週3月11日は東日本大震災の発生から14年を迎えるということであります。消費者庁では毎年、最初のころは年2回ということでございましたけれども、消費者の意識調査を実施しておりますので、本日公表いたしました。今回の調査結果によりますと、普段の買い物において産地を気にする理由として、「放射性物質の含まれていない食品を買いたいから」と回答した人の割合が、昨年度より約2ポイント、9.3%から11.4%へと上昇しております。また、「十分な情報がないため、リスクを考えられない」と回答した人の割合が約4ポイント上昇し、「食品中の放射性物質の検査が行われていることを知らない」と回答した人の割合が、昨年度より約4ポイント上昇しました。具体的には61.5%から65%ということであります。これは、消費者の関心が低下している可能性を示唆する一方で、知識や理解の度合いが低下している可能性も示唆するものと考えておりまして、消費者庁としては、食品中の放射性物質に関する理解醸成や信頼構築に向け引き続き様々な取組を進めていきたいと考えています。
2点目です。資料を配付しておりますが、不当寄附勧誘防止法に係る周知啓発についてです。お手元の資料の赤枠部分をご覧いただきたいと思います。不当寄附勧誘防止法の更なる周知啓発の取組といたしまして、若年層をターゲットに、「この寄附勧誘、ヤバくない?」という動画を新たに作成いたしました。YouTube広告、TVer広告において、明日3月7日(金)から約1週間掲載いたします。実際の動画を、非常に短いものですのでご覧いただきたいと思います。また、昨年度作成いたしました「不当な寄附の勧誘に心当たりがあれば連絡を」という15秒動画についても、3月3日(月)から3月9日(日)までの間、電車内の映像広告においてすでに掲載中ということであります。これらに加えまして、3月17日(月)には、徳島県を中心にいたしまして、不当寄附勧誘防止法の説明会を開催する予定にしております。こちらはオンラインでも参加できるということですので、ぜひ法人・団体の方には御参加いただきたいと考えております。消費者庁としては、引き続き、法の趣旨の周知徹底に努めるほか、寄せられた情報を踏まえ、不当な寄附の勧誘の疑いがあれば、法と証拠に基づいて、対処していきたいと考えています。
質疑応答
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問
NHKの佐々木です。
先ほど冒頭発言でありましたリスクコミュニケーションの関係の部分のところで、いただいた資料の3ページに、放射性物質を理由に福島県などの食品の購入をためらう人の割合が増加しているというデータがありますけれども、去年まではずっと下がってきていて、それが今年になって上がったということについて、その要因とかはどのように分析されていますでしょうか。 -
答
お話しいただきましたとおり、昨年から上昇傾向にあるということでございます。これが上昇傾向を示すものか、または定常状態にあることを示すものかということは、今般の調査結果をもって結果を予断することは適切ではないと考えています。これにつきましては、リスクコミュニケーションの専門家とも意見交換いたしました。引き続き調査を継続した上で分析を行っていくことが必要だと考えているところであります。
- 問 もう1問、質問がありまして、冒頭発言以外のところになるんですけれども、兵庫県の斎藤知事の内部告発文書を調査する百条委員会が報告書を先日まとめて、昨日県議会の方でも了承されました。この中で、公益通報者の保護を巡る県の対応について、外部通報にあたる可能性が高く、法律に基づく措置を怠った対応ということで、現在も違法状態の可能性がある、などと指摘されました。この報告書を受けて、兵庫県の内部通報体制に対して、消費者庁として、何か聞き取りだったりとか、そういった調査の実施の予定等がありましたらお聞かせください。
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答
兵庫県議会の百条委員会の報告書が公表されたことは承知しております。今後、兵庫県において、報告書の内容を踏まえ、適切に対応されるものと考えておりまして、地域の住民からの信頼を得られるように努めていただきたいと思います。公益通報者保護法では、国や地方公共団体といった、自ら法令遵守を図り、義務を履行することが期待されている事業者の体制整備については、消費者庁の行政措置権限は適用しないこととされています。具体的には、法の第15条、第16条を第20条で適用除外としているということでございます。このため、消費者庁として、兵庫県に対して、事実関係の聞き取り等の措置を講ずることは考えておりません。ただし、消費者庁では、地方公共団体に対して、地方自治法第245条の4第1項の規定に基づく技術的な助言として、「公益通報者保護法を踏まえた地方公共団体の通報対応に関するガイドライン」等を策定しております。行政機関の体制整備について、地方自治法の技術的な助言の範囲内で、対応すべき事項があれば、適切に対応してまいりたいと考えています。
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問
日本経済新聞の藤田です。
冒頭発言とは全く関係ないですが、公益通報者保護法の改正案が先日閣議決定されて、国会にも提出されたと思うんですけれども、まず始めに、この受け止めをお聞かせいただけますでしょうか。 -
答
公益通報者保護法の改正案を国会に提出させていただきました。今回の改正の内容は、公益通報に適切に対応するための事業者の体制整備が徹底され、公益通報者の保護が強化されることを目的にしたものであります。これによりまして、労働者等が事業者内の不正を安心して通報できるようになり、事業者の自浄機能発揮に繋がることや、行政機関の指導・監督の実効性が向上することが期待されるということであります。国会での早期の成立に向けて万全を期していきたいと考えています。
- 問 今回の改正案では、事業者側の不利益取扱いに対する刑事罰の導入が一つ大きなポイントだったのかなと思うんですけれども、検討会の議論とかこれまでの議論の中では、刑事罰の範囲に配置転換とかも含めるべきじゃないかといったご意見もありましたが、この点に関して改めてどのようにお考えなのか、今後どのように検討していきたいかがあれば、教えてください。
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答
今回の改正の内容は大きく4つございます。まずは体制整備の徹底と実効性の向上、それから公益通報者の範囲拡大、公益通報を阻害する要因への対処、それから公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止・救済の強化、ということであります。今お話しいただきました、公益通報をしたことを理由として解雇又は懲戒をした者に直罰、それから法人への罰金を新設するというものは、不利益な取扱いの抑止に当たると考えているところであります。その理由として、解雇又は懲戒に今回直罰を限定したというものは、刑法そのものの当罰性、それからより限定的に科すものだということ、それから構成要件ができるだけ明確でなければならないという諸事情によって判断したということであります。お話しのあった配置転換についても、検討会も含め十分議論したということでありまして、配置転換は現在の日本の雇用慣行であるメンバーシップ型というジョブローテーション型の人事の育成の仕方の中にあっては、配置転換が直ちに不利益な取扱いと言えない場合もあるであろうということでありまして、これは日本の労働の実際の法制、労働の仕方が変わっていくことの中で、徐々に考えていかなければならない課題ではあると思っております。その時に、刑罰を科す、いわゆる刑罰の範囲をどう考えるのかということは、抑制的であるべきだということ、構成要件が明確であるべきこととの論点もありますので、その辺はなかなか難しいと考えております。
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問
(朝日新聞:井上)
公益通報の関係ですが、今回の改正に伴って消費者庁の体制整備について、2名ほど増員の予算措置をしているという話ですけれども、その2名ほどを増員する措置は来年度から始まるということですか。 -
答
7年度からです。
- 問 7年度から始まって、それで、このお二人ですが、これはやっぱり捜査に関する知識を持った方が来るということですか。
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答
2段階になると考えていまして、今回の2名というのは、様々な実態調査をしてきましたが、それを踏まえると、まだまだ体制整備を促すことも含め、いろいろ周知活動も必要なのでその要員として2名ということです。それから、今回の改正案の中で、消費者庁として立入検査権限を入れるということになります。この立入検査権限を実施するための要員というのは、来年度以降しっかり要求した上で確保していくと。そういう2段階を考えています。
- 問 今回の2名というのは、立入検査の方には絡まない方の2名と考えていいですか。
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答
絡まないです。立入検査権限は今ありませんし、施行後でないと立入検査を行えませんので、現状の法体制を今後執行していく中にあってまず人が足りないな、ということで、来年度から増員するのが2名ということになります。
- 問 この2名の方々がどんな仕事をするかというと、主に周知徹底の方ですか。
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答
周知徹底と、それから今回、新しく法律を施行するに当たっての準備もあります。
- 問 その施行のための準備はどういう仕事ですか。
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答
まずは、300人を超える企業がしっかりと体制を整備していただくということと、それから、フリーランスの方が公益通報者の範囲に入ることになりますので、それに向けてフリーランスで実際に仕事をしている方々に、自分たちは何ができるのかということの広報も必要です。加えて公益通報を阻害する要因への対応、それから不利益な取扱いからの救済強化を盛り込みましたので、法定の指針なりガイドラインを見直すという作業も入ってくると思っています。そういう点では、まさにこの法律改正の以前からあった問題、まずは今、体制整備義務があるにもかかわらずやっていない方々をどうしていくかということでありますし、改正法の施行をしっかりやるに当たっての事前準備というために2名ということであります。改正法案は、今、公布の日から1年6か月以内で施行するとされていますので、その施行後の立入検査権限に関して、もう一段階の定員要求を考えています。