新井消費者庁長官記者会見要旨
(2025年1月16日(木) 14:00~14:16 於:中央合同庁舎第4号館6階消費者庁記者会見室/オンライン開催)
発言要旨
特定商取引法の通信販売分野における執行状況について、本日15時から記者レクをさせていただきます。それに先立ちまして、今回、処分案件も含めて分析して公表した趣旨、それから消費者の方々にも再度のお願いということで、私から冒頭発言をさせていただきたいと思います。デジタル化の急速な進展によりまして、消費者を取り巻く取引環境は大きく変化しております。インターネット通信販売、いわゆる通販は、消費者の利便性を高めるということで、市場分野としても相当大きくなっているということでございます。他方で、通販に関する消費生活相談件数も全体のうち3~4割ということで、減っている傾向にはないということであります。このため、消費者庁としては、特商法において最終確認画面における表示事項の義務付け等の法改正などを行い、消費者被害の防止に向けた対策とその迅速かつ厳正な執行に努めてきたところであります。今回公表する4案件でございますけれども、この案件は全て詐欺的な定期購入商法に関する事案でございます。これに加えて、行政指導を6案件、それから、インターネット上の広告等を昨年4月から12月末時点まで約13,000件確認し、うち約1,200件の事業者に注意喚起を行っているということで、悪質事業者の処分に全力をあげているところでございます。また、相談現場からは「最終確認画面のスクリーンショットを保存している消費者はほんの一握りである」というお話をよく聞くところであります。この最終確認画面のスクリーンショットというのは、取引状況を網羅的に把握するということ、それから、ある面、これから事業者を私どもが調査する時の証拠にもなるということでございますので、ぜひこの最終確認画面のスクリーンショットを保存していただきたいと思っているところでございます。今申し上げた執行した案件の内容、それから消費者の方々へのメッセージをまとめた報告書を本日15時から記者レクをさせていただこうと考えております。それから、その報告書の中に消費者の方々へのメッセージということで、周知・広報用のチラシも付けております。これらにつきましては2月下旬を目途にSNS等において、必要な注意喚起を行っていきたいと考えているところであります。
質疑応答
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問
フリーの木村です。
今の冒頭の発言について特商法関連ですけれども、2022年6月の改正法の施行以降も悪質な詐欺的な定期購入のトラブルがかなり高い水準で推移しているかと思うんですけれども、法改正だけでは足らないというご認識なのかどうかということと、それ以外だと何が必要になってくるのかというところについて、改めてお伺いできればと思います。 -
答
法改正以後の執行の状況について分析をしています。この中で注目していただきたいのは、最終確認画面がきちんと行われていなかった、いわゆる形式犯で特商法の違反が認定されるようにしたという法律改正事項は威力を発していると思っているとともに、実際にインターネットにおける監視によって、注意喚起・行政指導を行うことによって事業者に改善してもらう、いろいろなことを併せながらやっていくということであります。いずれにいたしましても、事業者の参入障壁が低いインターネット販売であるということを前提にして、私たちも取り締まりなり指導をやっていかなければいけないということですので、効果的な手法はどこにあるのかを探りながらやっていくということだと思っています。
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問
日本消費経済新聞の相川です。
先ほどの木村記者の質問に関連して、この改正特商法によって最終確認画面での形式犯に威力を発しているということですが、その認識は少し甘いのではないでしょうか。今まで行政処分件数は何件ありますか。 -
答
(取引対策課)
案件としては、法改正後は令和5年9月以降は7件、それまでは1件で合計8件、いわゆる通販の処分をしたということだと理解しています。 - 問 改正特商法は、令和4年(2022年)6月1日に施行されて2年半が経ちますが、定期購入は8件ですよね。2024年になって7件行われています。このうち改正特商法で導入された最終確認画面の表示義務違反が認定されているのは6件のみです。1件は誇大広告しか認定されていないので、せっかく導入した取消権は使えないという状況です。6件のうち5件は煩雑な解約手続きの一部しか表示していなかったということです。直近の12月23日のVERIFYは、注文の最終画面に単品の価格と分量しか表示しなかったにもかかわらず、注文確定後に送信された最終確認画面には定期購入のコースのことが書かれていたというものにすぎません。これはこの事業者に特殊なもの。これしか結局手が出せていないということです。今、定期購入の相談件数は減っていますか。
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答
(取引対策課)
おおむね横ばいで推移しているんじゃないかと理解しています。 - 問 その認識も違うんじゃないですか。PIO-NET登録分、2024年度64,052件、前年同期54,702件。減るどころか増えていますよね。2024年月別相談件数を見ても7,000件、8,000件。今1月なので11月とか12月はまだ十分登録はされていないと思うんですけれども、10月時点では8,000件あって、11月ももう6,000件を超えています。全く減っていなくて、現場で声を聞いてみると、まん延している手口というのは、定期購入じゃないですよ、と言われて確定ボタンを押した後に、クーポンやプレゼントで定期縛りに誘導する手口で、これがまん延していると。荒稼ぎしては名前を変えて、次々に新しい事業を始める状況は、何も解決していないというのが現場の認識です。これで十分だとか、基本計画の素案にも効果をしっかり見極めていくと5年間書かれているのですが、本当に頑張ったらここに手が出せるのですか。今まん延しているこの手口に何とか切り込めると消費者庁は考えているのですか。最終確認画面のスクリーンショットの保存してくれれば切り込めるのですか。
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答
今回公表するような執行状況ということで、今の現状を分析して私たちの取組についてお話をするということであります。相談案件が減っていないということでありますが、冒頭申し上げた市場規模の拡大もあると思っています。それから、ご存じのとおり、特商法の執行は、一つ一つ証拠を固めて弁明の機会を経た上で対応していくというものですので、それに加えていろいろな形での注意喚起をやっていくということも必要だと思っています。また、一回購買をした後にもう一回というものは、契約としては別の契約ということになってきますので、契約ごとに考えるという契約の原則に基づいた時に、どういう形でできるのかということは検討が必要だと考えています。いずれにいたしましても、まず、今ある法制度、それから今お話がありましたように、最終確認画面というのが別々になっている事案もあると思っています。従いまして、消費者の方がどこでボタンを押すことが自分の契約状況を確定するのかということ、これを明確にするということも現状を分析した上で考えております。特商法のガイドラインの改正も、本日15時の記者レクではご説明をさせていただこうと思います。
- 問 市場規模が増えているのだったら、それに伴って執行件数も増えないといけないんだと思うんです。執行件数が、1つの案件で指示処分と禁止命令も出ていて、例えば、訪販とマルチを一緒に出した時は1件やっても6件になると、そういうような数え方だとすごく分からなくて、消費者庁ができる前の経済産業省では取引対策課といって、公取から課長が来ていて、その時は、天網恢々疎にして漏らさずというようなことをその課長がずっとおっしゃっていまして、事業者に対して何%ぐらいかけると抑止できるだろうということをおっしゃっていました。相談がある事業者数が何件ぐらいで、それに対してどのくらい執行ができているのか、そういうものもちゃんと出していただきたい。基本計画素案では執行が本当に重要だということが散々強調されているんですけれども、それだったらそれに見合うようなちゃんとした評価の仕方、KPIとかを設定して、法執行がどのぐらい効果があるのかきちんと検証しないといけないんじゃないですか。法改正なんか必要ないというのが、何の根拠に基づいているのかが全く分からないという状況です。いかがでしょうか。
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答
法改正が必要ないということは一回も申し上げたことはありません。いずれにいたしましても、現行法の執行をしっかりやっていくということが基本的な姿勢であります。この特商法は、相川記者の質問にもありましたけれども、事業者が次々と会社を変えていくということが現実的には特徴になっています。そういう中におきまして、事業者も事業者の代表者も個人としてそれぞれ証拠に基づいて必要な処分ができるようにしているのは特商法の特徴です。そういう中、今お話がありましたKPIをどう考えていくのか、この執行の体制を含めてどう対応を取っていくのかというのは私たちも課題だと受け止めています。デジタル班ということでデジタルに特化した取組をし、実際の事案の中でいろいろ大きな示唆を私たちも得ているところです。そういうものを糧に次に進んでいくというところは共通の認識だと考えています。
- 問 それから大変心配していることがありまして、都道府県の執行件数についてです。都道府県の執行件数、最新のもので幾つの都道府県で何事業者に対して行われているか、分かりますでしょうか。
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答
それにつきましては今手元に数字がありませんので、後ほど事務方から回答させていただこうと思います。
- 問 自分で調べました。件数が分からないんです。業務禁止命令とか指示とか禁止命令とかが全部書かれているので分からないんですけれども、2010年が最も多く、31都道府県で115の業務停止命令が出ています。この時は、業務禁止命令はまだ出せませんから業務停止命令だけで比較しました。最新の公表されている資料は2023年のものしかありませんが、10都道府県で12の業務停止命令しか出ていません。指示処分のみ行っている都道府県もあるので、それを足しても14です。でも、10都道府県しか行われていないんです。都道府県の行政職員の数がものすごく減っていて、2011年から2014年に137人減っていて、このうちの専任職員が125人です。今、消費生活課という課があるものはどんどん減って13しかないんです。課もないようなところで行政処分ができるかという問題があると思っていて、この辺はどのように考えられているのでしょうか。
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答
まず、消費者庁としては各都道府県の執行担当者の研修、それから連絡、必要な情報の共有は随時やっているということであります。お話にありましたように、地方公共団体の人員も厳しい。消費者庁も人員が豊富なわけではないという中でどうやっていくかということはいろいろ考えていかなければいけないと思います。そういう中におきまして、一つの切り口としてインターネット上のモニタリングでチェックをすることによって、軽微なものについては注意喚起ということで改善を促していく。いろいろなやり方を併用してやっていかなければいけないと考えているところです。
- 問 これだけ都道府県の専任職員が減ったのは、過去の消費者庁の政策に関してもやっぱり振り返って反省していただきたい点があると思っていますので、きちんと検討して、今後持続可能な体制をつくれるようにぜひ支援をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。