新井消費者庁長官記者会見要旨
(2024年11月14日(木) 14:00~14:24 於:中央合同庁舎第4号館6階消費者庁記者会見室/オンライン開催)
発言要旨
冒頭1点目、地方消費者行政に関し、消費生活相談のDXの検討状況をお知らせいたします。PIO-NETは、国・地方の消費者行政の基盤でありまして、2026年10月に各自治体が新システムに移行することを最優先として取組を進めております。自治体のネットワークの状況、接続方式を踏まえて対応していくということであります。今般、PIO-NETを利用している自治体のネットワーク環境についてアンケート調査を行いまして、それぞれの自治体のやっていくべき方向というのが概ねまとまりましたので、ここでお話をさせていただきたいと思います。PIO-NETを利用している自治体のネットワーク環境は、インターネット接続系で重要な情報を扱う環境となっていない自治体、総務省のいわゆるαモデルとβモデルが約9割、インターネット接続系で重要な情報を扱うことができる環境の自治体、いわゆるβ'モデルが約1割ということであります。その上で、新システムへの接続方式への検討状況は、相談状況を委託せず、自治体直営で実施している約1,000自治体のうち、LGWAN-ASPを利用する方向で準備・検討を進めている自治体が約6割、インターネット回線で接続する方向で準備・検討を進めている自治体が約4割ということです。それから、相談業務を委託している約100の自治体のうち、執務環境を自治体が用意しているのは約80自治体、それらの自治体においてインターネット回線で接続の予定が約5割、LGWAN-ASPの利用が約4割です。なお、執務環境の整備も含めて民間に委託している18自治体は、インターネット回線で接続することになります。この他、11月1日現在で未回答の自治体が約50ございます。これについては、早急に確定して実数にしたいと考えております。このような自治体の接続方式等に応じて、それぞれ準備が円滑に進められるよう、必要な情報提供を行うとともに、自治体からの相談に丁寧に対応していきたいと考えております。特に、委託自治体のうち、執務環境の整備も含めて全て民間に委託している18自治体については、それぞれ現地へ出向いて一つ一つ相談をしていかなければなりませんので、特に丁寧な対応をしていきたいと考えております。引き続き自治体と意見交換をしながら、2026年10月の接続に向けて、国民生活センターとともに準備を行っていきたいと考えております。
2点目、お手元に資料を配布しております。「寄附の不当勧誘に係る情報の受理・処理等の件数(令和6年度上半期)」の公表ということであります。不当寄附勧誘防止法の運用状況については、これまでも定期的に公表してまいりました。今回は令和6年度上半期分、すなわち、本年4月1日から9月30日までの情報の受理・処理状況について公表をいたします。内容はお手元の資料のとおりですが、令和6年度上半期について申し上げますと、情報の受付件数は合計699件、そのうち調査対象として認められ、受理の手続を行ったものは、前年度からの繰越し12件を含めて合計33件です。次に、受理の手続を行った情報について調査した結果、どのような処理結果になったかを類型ごとに整理した件数について、上から順番に申し上げますと、「不当寄附勧誘防止法に基づき勧告又は命令を実施したもの」と「勧告又は命令を実施する法令上の要件を満たさないもの」はいずれも0件、「寄附の不当勧誘の事実が認められないもの」は8件、「匿名又は連絡不通等により調査が不能なもの」は11件、「法施行日前の事案と認められるもの等」は6件、ということであります。なお、引き続き調査中のものは、表の下段に掲げている合計8件ということでございます。消費者庁としては、引き続き、不当寄附勧誘防止法の厳正な運用に努めるとともに、法の趣旨の周知徹底について、着実に取り組んでいきたいと考えております。
質疑応答
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問
朝日新聞の井上です。
先週もこの場で少しお話しいただいたんですけれども、公益通報者保護制度の見直しのための検討会が来週に開かれて、12月4日に報告書の取りまとめがあるということで、いよいよ大詰めを迎えているなという気がするんですけれども、次の2点について消費者庁としての見解をもう一度伺えればと思います。1点目は、公益通報者の探索をする行為に対して、探索の禁止を明文化するとともに、行政措置や刑事罰を設けるといったことも議論されています。2点目は、不利益取り扱いの抑止として、公益通報を理由とする不利益取り扱いに対する刑事罰の導入について、刑事罰を導入するのはいかがなものかという意見も出ていたり、あとは刑事罰の対象とする範囲について、懲戒とか解雇に限るべきだ、いやそれでは駄目だというような意見が委員の間からも出ているんですけれども、これらに対する消費者庁の見解、議論がまだ終わってないので何とも難しい点はあるかと思いますけれども、刑事罰というところに焦点を当ててみてどうなのかというのをお聞かせ願えればと思っています。また、スケジュール的にどうなるのか。12月4日に報告書が取りまとめられた後に、どうなって最後、法律として成立するのかというのはお聞きしたいと思っています。なぜかというと、この前、機能性表示食品のときは、関係閣僚会合に報告して、それでもう決まっちゃったような気がするんですけれども、今回、通常国会に法案を提出するというような話もあって、その辺の仕組みを、ちょっと不勉強ですいませんが、教えていただければ幸いです。よろしくお願いします。 -
答
公益通報者保護制度の見直しは、ここでもご説明しておりますけれども、今年の5月から検討会をやっているということでございます。今お話しいただきましたように、複数の論点がまだ錯綜している段階、委員の中でも見解が分かれているという段階であります。11月18日(月)には、個別論点について更に残ったものを深掘りする議論を行います。前回も申し上げましたが、論点がそれぞれで独立しているわけではなくて、それぞれ相互に作用しているということもありますので、相互に作用しているものをどうやって決めていくのかということは、11月18日に残った論点を詰めていただいた段階で、再度戻して議論するというようなことも想定されています。従いまして、消費者庁の見解どうこうということではなくて、まずは検討会の委員の方々にじっくりと議論をしていただきたいという段階だと思っています。その上で、年内には報告書という形で、検討会で取りまとめをしていただき、それを受けて消費者庁としてどうするかということでありますが、この検討会の中で法律で措置すべきことがあるということであれば、それを法制的にどうやって見直していくのかを考えるということでありまして、検討会の内容、取りまとめ結果を踏まえながら、法律改正の可能性を排除するものではありませんけれども、年内の報告書を見ながら考えていくということであります。
- 問 法律で手当てしなきゃいけないということになったら、その法律の原案みたいなものを消費者庁が作って、それを国会に出すということになるんですか。
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答
法律について通常のやり方ですと、公益通報者保護法の所管省庁は消費者庁になりますので、消費者庁が改正案を提出して国会でご議論いただくというステージになるということになります。
- 問 そうすると、今考えられるスケジュールとしては、通常国会で議論して、通常国会で成立することを目指すことになるかもしれないということですかね。
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答
まだ通常国会にどういう法律を提出するのか政府全体で議論が行われているわけではないと承知をしています。いずれにせよ、まず検討会の中でしっかり論点を取りまとめていただいて、どういう形のパッケージで改正をしていくのか、この公益通報者保護制度を使って、それぞれの組織が自浄作用を行っていくという点で適切かどうかということをまず結論付けていただくということだと考えています。
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問
日本消費経済新聞の相川です。
新しいPIO-NETの接続方式なのですが、実は9割でインターネット環境がないんですよ。4割がインターネットでつなぐという結果を聞いて大変心配しています。消費者庁に新たに対策を立てていただき、LGWAN-ASPのほうにつなげば、費用がほとんどかからずにつなぐことができます。そうではなく、インターネット環境がない自治体が新たにインターネット環境でつなごうとすると、セキュリティーを相当強化して、あとランニングコストが、セキュリティー対策費用がかかってきます。この辺がちゃんと小さな自治体まで説明ができているのでしょうか。この数値を聞いて大変心配になっています。 -
答
今お話しいただいたとおり、相談業務を自治体で行っていながら、α・βモデルにもかかわらずインターネットで接続したいという自治体が約400あるというのは、調査をして若干驚いたところではあります。おっしゃったように、この2024年から2026年の間にβ'モデルなりに自治体本体として移行することについて、相当程度準備が進んでいるのか、そうでないのか、というところは、よく詰めてもう一回聞いてみないといけないなと思っているところであります。その上で、インターネットに接続することを目指しているということであれば、今お話しいただいたように、セキュリティーの確保のために必要なイニシャルコストというのは交付金の中で支援したいと考えておりまして、ここの400というのは、お話しいただいたように私たちも個別にさらに精査をしようと思っている集団ということは事実であります。
- 問 そうしてください。β'の都道府県のセキュリティクラウドにつないだ場合も費用はほとんど発生しないんですけれども、独自で整備した場合はランニングコストがかかってきて、今、消費者行政予算はどこも厳しい状況なので、毎年毎年ランニングコストがかかってくると、さらに相談体制が削減されることが心配されるので、もう一度ちゃんと調査をして、ちゃんと説明をしてあげていただきたいです。暫定的にこのLGWAN-ASPを使うというようなお話で、2、3年先にはどうせ変えないといけないと思っているのかもしれないですし、その辺がどういうふうに自治体に伝わっているのかをとても心配しています。それで質問をさせてください。インターネット回線でつなぐ場合は、民間委託で新たに回線を引く敷設工事と、加えてセキュリティー対策工事というのが併せて必要のようで、そのセキュリティーを強化するためのイニシャルコストと言われるセキュリティー対策費用は交付金の対象になるのでしょうか。この辺が自治体によって理解が違っていて、敷設工事のところは国が見てくれるんだろうけれども、このイニシャルコストと呼ばれるものは自治体が負担するのではないかということをよく聞かれるのですが、ここはどうなのでしょうか。
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答
これは、先ほどご質問もいただきました400市町村が、市町村全体としてインターネット接続の方向に行くので、結果として消費生活相談をインターネット接続のほうにしたいということなのか、消費生活相談のためだけにインターネット回線を引きたいのか、これも正直申し上げるとよく分かっていないということであります。もし仮に消費生活相談のためにだけインターネット回線を引きたいということであれば、それが本来の自治体全体の意向と整合性を持って進められているのかということも必要ですし、それが市町村の相談にとって本当にいいことかということもまたきちんと聞いてみなければいけないと思っています。接続のために生じる回線敷設、それから周辺機器といったイニシャルコストは交付金で支援したいということでありますが、その後のランニングコストは当然ながら市町村で負担をしていくということで今お話をしているところであります。従いまして、どのような費用についてどういう負担が生じるのか、それが市町村全体のネットワークシステムとどういう関係にあるのかということで、冒頭ご質問いただきましたインターネット接続の意向を持っている相談業務直営の自治体、あるいは、相談業務を委託しているが執務環境を自治体が提供しているもの、これを合わせると450自治体ぐらいになるのですけれども、ここについてはしっかりと精査をしなければいけないというのはお話のとおりです。それから、執務環境の整備も含めて民間に委託をしている自治体は、個別市町村ごとに状況を把握しながらですが、セキュリティーも含めたイニシャルコストの費用を消費者庁が支援することは、必要だと考えています。
- 問 イニシャルコストは大丈夫なんだけれども、ランニングコストは市町村が負担するということですよね。
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答
基本的には、これは経常的な経費ということですので、自治体で負担していただくというように考えています。
- 問 それから、PIO-NETの専用回線も専用端末もなくなるので、新たにパソコンを購入しなければならない。でも、もともとインターネットが使えるパソコンが既に相談員さんのところに準備されている自治体もあれば、なくて15万から20万ぐらいするパソコンを買わないといけないというところもあって、それが消費者行政の予算の中ではかなり大きいという話もあります。この新たにパソコンを準備する必要がある自治体がどのぐらいの数になるか、把握をされていますでしょうか。
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答
今お話しいただきました、それぞれ相談員の方々のパソコン、それから独自の回線なりを引くことが必要なのかどうか、それから、そのときのセキュリティーも含めたイニシャルコストはどうなのかということは、これから各自治体で予算要求をしていただくということですので、私たちもその中でパソコンも含めて調査をしていくということを考えています。しかしながら、パソコンというのは非常に汎用性が高いものですので、それを交付金で丸ごと面倒を見るのがいいのかどうなのかということは、財政当局とも相当詰めなければならない議論だと考えています。
- 問 すいません、最後、音声が十分聞き取れなくなってしまったので申し訳ないのですが、相談体制が縮小されたり、新たなPIO-NETから離脱する自治体が出ないように、ぜひよろしくお願いいたします。
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答
分かりました。
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問
フリーの木村です。
来週19日に第1回が開かれるグリーン志向の消費行動に関するワーキングチームについてお聞きしたいんですけれども、これから課題の洗い出しとかが進むのかと思うんですけれども、今の時点で消費者庁として、エシカル消費の中でグリーン関係といいますか、環境関係の分野でうまく消費行動に結び付いていない課題というのはどこにあると考えていらっしゃるんでしょうか。 -
答
19日に初回を開きますけれども、そこの第1回の資料で相当のことは提示しようと思っていますので、具体的には資料を見ていただくとありがたいと思います。大臣からご発言をいただきましたとおり、それから、先日のOECD消費者政策閣僚会合でも議論になりましたが、また、先日の会見でご紹介しているエシカル消費のアンケートからも推察をされますけれども、企業の方々がいろいろ自分の企業のやっていることを商品の中で、環境配慮でありますとか人権配慮、いろんな形でPRをしていますが、それが消費者の購買行動につながっていないというのは消費者庁の毎年のエシカル消費についての調査結果でも出ていることであります。しかしながら、企業の活動も、それから消費者の活動も環境に配慮したものにシフトしていかなきゃいけないというのは世界共通の課題であるということであります。そういうときにネックは何なのか、何が伝わっていないのかということと、そのために消費者は、消費者側も調査してみたら分かるように、エシカル行動をしたいんだけど何をしていいか分からないと先週も発表しました。そういうミスマッチが起きているんですね。そのミスマッチを解消するために、企業側は何をなすべきか、それから消費者は何をなすべきか、具体的な論点にフォーカスを当ててご議論をいただきたいと思っています。従いまして、ワーキングチームで出席いただく方、消費者教育をやっている方、それから実際に企業で商品を提供している方に実践的な議論をしていただこうと思っているところであります。特にOECDの閣僚会合で議論になったのは、例えば、ヨーロッパの国では、グリーンの関連で、いろんなマークを付けているのだけれども、そのマークの意味内容が分からなくて、しかもたくさん付いている。そうすると、消費者は何を見ても分からない、結局マークの意味が全然購入に反映されていないということ。あるいは、広告ですごくグリーンな活動をしていると言っている企業が実はそうでなかったり。そういう誤認させるようなマークなり表示なりをどういうふうに正常化させていこうかというちょっと進んだ議論になっています。日本では、そのマークを見てそれを買おうという人にまだつながっていない。まだステージは違うと思うのですけど、いずれにせよ、よい市民社会の消費行動に進めていくために双方が何をすればいいのかということでご議論いただき、私たちの思いとしては、それを「消費者白書」でしっかりと皆さんが読んで、なるほどと思っていただく形にまとめていこうと考えています。
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問
読売新聞の糸井です。
寄附の不当勧誘に係る情報についてなんですけれども、ここまで勧告又は命令を実施したものが一件もないということなんですけど、これはこの法律が施行されたということを受けて、勧告や命令に至るような事案がなくなってきているとプラスに考えるべきなのか、その辺の評価を伺いたいと思います。 -
答
まだ1年ちょっとということで、評価するというのにはまだ早いとは思っておりますが、実際にPR、周知活動もし、それから実際、365日24時間という形で情報を受け付け、いろいろ被害者の方々とも連絡を取っているという段階においては、実態の声が全く届いていないというわけではないと思っています。それから、一件一件寄附に関するものは調査をしています。これを踏まえますと、この法律によって一定の抑止効果は働いているのではないかというふうには考えております。しかしながら、まだまだこの不当寄附勧誘防止法を知らずに悩んでいらっしゃる方がいるということはやはり否定できませんので、そういう意味では悩んでいる方の声が本当にこちらに届くようにという周知活動の努力は、さらに引き続きやっていかなければいけないと考えています。