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新井消費者庁長官記者会見要旨
(2024年9月12日(木) 14:00~14:19 於:中央合同庁舎第4号館6階消費者庁記者会見室/オンライン開催)

発言要旨

よろしくお願いいたします。消費生活相談のDXの検討状況につきまして、明日行います地方公共団体への説明に先立ちまして、私から大きな方針についてお話をさせていただきたいと思います。2026年に導入いたします新システムは、これまでのPIO-NETの専用回線・専用端末による接続ではなく、インターネット回線でパブリッククラウドに接続するシステムを想定しており、そのための準備を自治体にお願いをしてまいりました。しかしながら、多くの自治体、特にデジタルの関係の窓口と話し合いをする中で、それぞれの自治体のシステム環境が非常に異なっているということ、それはセキュリティーポリシーを含めてということでありますので、そういう中で、現在もそうでございますが、2026年に向けてもインターネット接続への移行が容易でない自治体が多いということがわかりました。PIO-NETは2026年10月に保守点検が終わってしまうということでございますので、この時までに地方消費者行政の基盤でありますPIO-NETがセキュリティー環境を持ってしっかりとつながっていくということが第一の課題ということであります。これは最優先の課題ということでありますので、現実的な対応をここで取らなければいけないということで、明日説明をさせていただくということでございます。各自治体のネットワーク、総務省の分類によりますと大きく3つの分類がございます。αモデル、βモデル、β ́モデルというものでございまして、PIO-NETで想定をいたしましたのはインターネット接続系で情報管理が行われてつなげるという、いわゆる総務省の分類でいうところのβ ́モデルというものを念頭に置いておりましたが、現時点において、このモデルに移行している地方公共団体が実は多くない。2026年に向けても大多数がこちらに移行するような状況がないということが判明したところでございます。従いまして、αモデルでも接続できる、すなわち既存の行政専用のネットワーク、いわゆるLGWANで接続できるような環境をつくっていかなければいけないということで、これから現実的な対応をしていこうということでございます。具体的に申しますと、PIO-NETの後継、これは経過的な措置ということになりますが、4つのモデルがあるということでございまして、明日はその4つの方式をお示しし、それぞれの地方公共団体がどのシステムの環境であるのかということを検証した上で、それぞれについて相談をしていくという体制を取りたいと思っているところでございます。引き続き、自治体との綿密な意見交換をしながら消費生活相談DXの取組を進めていくということと、2026年に全部の消費生活センターが接続するということを最優先に取り組んでいきたいということでございます。詳細は明日の説明会で皆さまにお話をしたいと思います。以上です。

質疑応答

(毎日新聞:阿部)
2点お伺いさせてください。先にちょっと1点、公益通報者保護制度のところについてお伺いさせてください。公益通報者保護制度について、消費者庁が企業や官公庁側への罰則新設なども含めた対策の強化を検討しているという一部報道がありましたが、現在の検討状況について教えていただきたいです。

公益通報者保護法につきましては今年の5月から検討会をしておりまして、9月に一定の論点の取りまとめが行われています。その中でもその論点について賛成する意見、それから反対する意見というかですね、いろいろ留意しなければいけないという点がもう既に示されています。その中間整理に従って、年末に向けて検討していくということであります。

年末に向けてというか、年末に考えの方向性を報告書なりでまとめるということですか。

そうです。

別件でお伺いさせてください。認知症施策推進関係者会議が6月2日に行われまして、そこで「認知症施策推進基本計画案」が示され、大筋で了承されたかと思います。その中で、消費者安全確保地域協議会の設置推進が書いてあります。2019年の認知症の大綱でも同様な記述がありますが、今回できた基本計画案で示された、現時点で大綱策定に比べ、どれほどの設置が進んでいるのか教えてください。

消費者安全確保地域協議会、私たちは略称で「見守りネットワーク」と言っていますけれども、今お話しいたしました認知症施策推進大綱が取りまとめられた令和元年(2019年)6月には、同協議会の設置自治体数は225でありましたが、足元、今年の8月末現在で512ということで倍増している状況でございます。私も各都道府県や市に行った時には、これらの設立を推進しております。

あと、計画案の中で、認知症高齢者を標的とする特殊詐欺や消費者トラブルの被害が発生している現状に鑑み、その実態を把握したうえで必要な措置を講じるという記述があるんですけれども、具体的に今後どのような調査、取り組みを実施しようとしているのか、お考え等ありましたらお聞かせください。

認知症等の高齢者については、消費生活相談の中でも既に一定の分析をしておりますし、白書でも公表しております。相談の窓口の中で、認知症とは限らないですけれども、判断の不十分者の契約という形で整理をしておりまして、その状況を見ますと、普通、高齢者全体では約8割が、ご本人が相談をするということでありますが、認知症等の高齢者では約2割にとどまっている。逆に申しますと、周りの方が相談をしているという状況にあります。そういう中にありまして、やはり地域の方、それから見守りネットワークという形で、より多くの方が、その方に意を用いていただいて状況を相談していただくということが非常に必要だと思っております。また、具体的な被害というのを見ますと、訪問販売が3割を超えているということでありまして、こういうことも見守りネットワークの必要性につながってくるのではないかと考えています。

見守りネットワークについてもう1点だけ。設置としては今512というところですが、全国では自治体が1,700ぐらいあって、その一部かなと思うのですが、消費者庁として、目標として全ての自治体に設置してほしいということを考えられているのか、それとも見守りネットワークという形でなくてもまた違ったような形で同様のネットワークをつくっている自治体もあるんですけれども、そこら辺のすみ分けといいますか、考え方はどうなのでしょうか。

おっしゃるとおりで、見守りネットワークが全てとは思っておりません。各地で地域包括支援ネットワークですとか、あと警察が中心となった振り込め詐欺のネットワークというのもあります。見守りネットワークの特徴は、これを地方自治体が事務局となってつくっていただきますと、個人情報保護法の例外になるということでありまして、そこにご参加いただいた、例えば、生協や郵便局、あるいは宅配の方がおかしいなと思った時に、必要なところに情報が提供できるということですので、今まであるネットワークに重ねてつくっていただく、あるいはそれを全体まとめてつくっていただくというところが理想的な形だと思っています。そういう形でそれぞれ県庁などから相談があった時はご説明させていただいているところであります。

日本消費経済新聞の相川です。
2026年10月の移行を目指している刷新PIO-NETの接続に関して、現実的につなげることを最優先にかじを切っていただいたことは大変高く評価したいと思います。この数か月、自治体からは本当に困惑の声が上がっていました。具体的にどういう仕組みでこれを実現されるのでしょうか。

明日の説明会で詳しくお話をいたしますが、それぞれの地方自治体は今見ていると4つのパターンに分かれるということでございます。一つは相談業務を外部に委託している方、これは外部との関係においてセキュリティーを確保していただくということが必要になります。それから、それぞれの自治体でインターネット接続系で個人情報を扱うことができる業務環境になっているか、ここに適合する方々は、セキュリティー対策を具備したインターネット経由での接続、私たちが目指していた最終形ができるということでございます。それができない場合ということでありますが、できない場合にLGWAN接続系の業務環境を相談員に提供することができるかどうかということでございまして、相談員に提供することができるといった場合では、LGWAN経由での接続ということで、経過措置という形でLGWAN経由での接続の仕方についてこれから詰めていくということであります。それから限定的なケースというふうに思っておりますが、LGWAN接続系の業務環境を相談員に提供できない場合というものにつきましては、通常のインターネット系での接続が必要になるということですので、ここは限定的なケースだと思っておりますので、個別に皆さまとご相談させていただきたいと思います。明日の説明会におきましては、それぞれの自治体がどこの分類に属するか、まずそれをはっきりさせていただくということでございます。それから、ここでもう一つ申し上げますと、今申し上げましたそれぞれの自治体のネットワーク形態におきまして、私たちが想定していた相談業務の新しいやり方が導入できる地方自治体とそうでない自治体があるということもはっきりいたしましたので、それも明日の説明会では併せてご説明をさせていただきます。

α型のLGWANのところが一番多いですので、きっとここにきちんとした対応策を講じていただくことは大変素晴らしいと思います。自治体の皆さんも安心するのではないかと思いますが、これで元々想定していたDXの当初に想定していた機能の中でできなくなるものは何ですか。

詳細に幾つかございますので明日説明をさせていただきますが、一番大きな点、これは私たちが完成形として目指しておりますテレフォニーシステム、これはβ ́モデルでないとなかなかできないということが判明しております。非常に残念な状況でございますけれども、そういうことも皆さんにしっかりと周知をしていきたいと考えております。

テレフォニーシステムはβ ́でもUDP通信という仕組みを導入しなければならず、なかなかセキュリティーが脆弱化するのではないかという自治体もあって、これはなかなかハードルが高いのではないかと思います。ただ、今回LGWANを通すことでメール相談もできなくなるのではないですか。

メール相談につきましては全部ができなくなるということではなく、それぞれメール相談の中でもできるものとできないものがあるというふうに聞いておりますので、その辺はまた明日詳しくご説明させていただくと思います。

βとβ ́は問題ないと思いますけれども、メールを本当に必要かというところが本当に検討されたのかというところもあるので、メール相談にすると相談員の負担は現実的には増えますので、その辺は自治体と相談していただければいいかなと思います。今回、このような事態になったのはなぜだとお考えですか。

今回、自治体のネットワークを詳細にいろいろ皆さんと意見交換をした結果ということで、遅きに失したというご批判は甘んじて受けなければいけないと考えております。当初PIO-NETの設計をした時に、まずは理想形、インターネットに接続することによって皆さんの相談業務の利便性が高まる、それが相談業務の方だけではなくて相談する消費者にとってもより深い回答が得られる、あるいは多くの効率的な情報が得られるということで目指したということであります。そういう中で今回、αモデル、いわゆるLGWAN接続が主になっている地方自治体が多いということは残念ではありますけれども、自治体のシステムもこれからβ ́に向けて進化していくというふうに聞いておりますので、全体として私たちの目指す方向に間違いはなかったと考えています。

当初に自治体と話をせず実態を把握していなかっただけの問題なので、そこは真摯に消費者庁は反省すべきで、当初から当たり前に分かっていてしかるべき問題だったと思います。現実的に4つのモデルに何自治体ずつあるのかという数字はあるのでしょうか。総務省の調べについては把握していますが、私が知りたいのは、今PIO-NETに接続している自治体の、接続している1,250か所の内訳です。

それにつきましては先ほどお話ししましたとおり、4つの分類で各自治体についてきちんとデータを取るということであります。まず、相談業務を外部に委託しているところがございますので、そのようなものがいくつあるのか。今回、正確に数字を捉えた上で、それぞれについてやり方を固めていくということでありますので、ここでもう一回しっかり取り直すことが必要だと考えています。

今から調査するということは分かりましたが、今後もう少し自治体の方たちと綿密に連絡を取って、自治体の信頼を取り戻していくような取組をぜひやっていただきたいと思います。よろしくお願いします。

今もお話ししいたしましたとおり、私たちも遅きに失したという批判は甘んじて受けなければいけないと考えています。しかしながら、自治体のシステム自体も実際動いているということでありますし、その動く方向は私たちの目指す方向と一緒であるということはここで繰り返し発言をさせていただきたいと思います。

9月10日に消費者機構日本が自由診療の医療広告に関して差止請求訴訟を提起したことに関連して質問させてください。自由診療を行う医療機関で、医学的なエビデンスが存在しない、または不十分な未確立医療によって不特定多数の消費者被害を発生させている実態が、インターネット上の広告を散見するだけでも無数に存在するというふうに指摘されておりまして、今回の提訴の狙いの一つに「自由診療の問題点を社会問題として提起し、本来のあるべき行政の取り組みを引き出す」ことも挙げています。この自由診療の医療広告について、景表法の措置命令権限があるのは消費者庁と都道府県だけです。消費者庁からは1件の措置命令も出ていないのが疑問だというふうに指摘されていますが、今後、消費者庁は自由診療の医療広告に対して対応されるお考えはあるでしょうか。

景品表示法は業種横断的な法規制であります。ある表示が表示全体からみて景品表示法上問題となるような場合には、法と証拠に基づき適切に対応するということは、どの分野でも変わりがないということです。

すみません、よく分からなかったんですが。今後対応しないということですか。

景品表示法は業種横断的な法律ですので、どの分野の広告であっても法と証拠に基づいて対応していくということであります。

1件も前例がないですので、ぜひご対応いただけるようよろしくお願いします。

ちなみに医療広告について申し上げますと、保険診療それから自由診療に関わらず、医療法に基づく広告規制の適用にもなっているということでございますので、それらの関係省庁の動きというのも考えていかなければいけないと思います。

医療広告ガイドラインがあることは承知しているのですが、現実的に機能していませんので、あまりに緩くて機能していないという状況がありますので、よろしくお願いします。
朝日新聞の井上です。
今の訴訟に関連してですけれども、今回、消費者機構日本が訴訟に訴えて出たんですけれども、事前に消費者庁との打ち合わせみたいなものがあったんでしょうか。消費者庁のほうがやらないんだったらうちでやりますよとか、そういう事前の折衝みたいなものはこういう場合あるんですか。

ありません。

じゃあ、向こうが単独でやっているんですか。

はい。

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