新井消費者庁長官記者会見要旨
(2024年4月25日(木) 14:00~14:24 於:中央合同庁舎第4号館6階消費者庁記者会見室/オンライン開催)
発言要旨
冒頭、3点お話をさせていただきます。
まず1点目でございます。令和6年度消費者支援功労者表彰被表彰者等の公表についてです。お手元に資料をお配りしておりますけれども、令和6年度の表彰は、内閣総理大臣表彰5件、内閣府特命担当大臣表彰13件、ベスト消費者サポーター章25件を決定いたしましたことをご報告させていただきます。これまでの御功績に深く敬意を表すとともに、心より感謝申し上げます。引き続き、消費者行政の推進にご尽力いただきたいと考えております。消費者支援功労者表彰の表彰式については、後日、大臣から発表させていただきます。
次に2点目です。これもお手元に資料を配付させていただいておりますが、「消費生活の未来に関する調査報告書」の公表についてです。消費者庁の新未来創造戦略本部におきましては、民間シンクタンクなどの有識者と連携をいたしまして、消費生活の未来に関する情報交換を行う「新未来ビジョン・フォーラム」を昨年1月に立ち上げました。このたび公表する「消費生活の未来に関する調査報告書」につきましては、「新未来ビジョン・フォーラム」における議論なども参考にしつつ、消費生活の未来に関する各方面における考察を収集・整理することによりまして、中長期的な視野に立って先を見据えた消費者政策の検討・実現に寄与することを目指して作成されたものであります。このフォーラムにご協力いただきました民間シンクタンクの方々、この報告書の37ページにその名簿を掲載しておりますけれども、非常に活発な議論がされたと報告を受けているところでございます。大変感謝申し上げます。消費者をめぐる状況は常に変わり続けるということでありますので、消費者の安心・安全な生活を守る消費者庁としては、常に新しいビジョンに立ちながら施策を立てていきたいということでございまして、この中には様々な興味深い未来予想が含まれております。こういう観点から、なかなか画期的なものができたのではないかと思っております。それからこの調査報告書に掲載されているイメージイラストは生成AIを活用して作っているということでございまして、若者たちの知見を生かして新しいものができたのではないかと考えています。これによりまして、私も含めてですけれども、皆様が今後の消費生活の未来を考える上で一つの参考にしていただければというふうに考えているところでございます。報告書の詳細につきましては、新未来創造戦略本部の担当者にお尋ねいただきたいと思います。これらの資料、今後の消費者政策を考える上でも大きなビジョンとなると考えておりますので、まずは5月13日の消費者委員会における全体会議でこれらを説明したいと考えているところでございます。
3点目です。特定商取引法の通信販売分野における執行状況についてレポートをまとめましたのでお知らせをしたいと思います。来月から始まる消費者月間のテーマは「デジタル時代に求められる消費者力とは」ということでありまして、デジタル化の急速な進展によりまして、消費者を取り巻く状況は大きく変わっているということでございます。消費者に対する情報が増えるとともに、いろんな誘引、誘いがかかってくるということでございます。このような中でインターネット通信販売につきましても、消費者の利便性が向上する一方、消費生活相談件数も増加傾向にあるということでございます。このため、特商法におきまして最終確認画面における表示事項の義務付け等がなされており、消費者庁でも消費者の被害防止に向けた対策を講じ、執行に努めてきたところです。このレポートの中にもございますけれども、令和5年6月に消費者庁取引対策課の中にデジタル班というのを設置いたしました。これは8名で構成されております。私どもの情報では、米国においてもこのようなデジタル班は17名ということでございますので、8名という数字ながら、この分野でいろんな知見を発揮して調査事案を上げていきたいと思います。ここの中での報告書につきましては、後ほど事務方から皆さまにご説明させていただく時間をとるということでございますが、私から1点申し上げますと、最後にチラシがついております。この中でどういうものを最終確認画面で確認していただくか。デジタル取引も実店舗の取引も同じように、何をいくらで買ってどうやって金を払うのかという場面は必ず発生いたします。最終確認画面はそのようなものでございまして、最終確認画面に、分量、販売価格・対価、支払の時期・方法、引渡・提供時期、申込みの撤回、解除に関すること、それから申込期限というものを必ず書くということになっております。こういうものを消費者の方は確認していただくとともに、これをスクリーンショットとしてぜひ残していただきたいということでございます。これがその後に解除する際の参考になるということです。もう一つ重要なのは、このような最終確認画面の表示が出てこない場合でございますが、これは形式的に特商法の違反になるということでございますので、ご自分が買いたいものを探していった時にこのような表示が出てこないということであれば、それをもって消費者ホットラインにぜひご連絡いただきたいと思います。こういう形で皆さんが安心して取引できるように、悪い事業者を排除していくということが必要だと思っておりますので、その点については消費者のご協力も得たいと思っております。
質疑応答
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問
日本消費者新聞の丸田です。
「消費生活の未来に関する調査報告書」ですが、未来の消費生活っていうのはなかなか興味津々なテーマなんですけども、これについては明るい未来であってほしいというその気持ちは日々高まっているんですけども、この調査結果、あるいは調査報告書の中での提案とか何かについて、今後、消費者委員会でも説明されるということだったのですが、何か消費者庁として具体的な施策、具体的な政策、そういうものを提示されることはありますでしょうか。そういう検討とか何か。 -
答
この報告書は特に具体的な政策についてどうこうということではないと思っています。しかしながらここを見ていただきますと、サーキュラーエコノミーでありますとか、それから植物性食品とか昆虫食品市場なり、あるいはブロックチェーン技術とかいろんなことが提示されています。そういう成長していくような市場に対して、どういうふうに先駆けて対応していくのかということはあると思います。例えば、今既に俎上に上がっておりますけれども、自動運転などの問題について、消費者に事故が起こったときにどうしていくのかっていうことは、もう既に議論が始まっています。消費者庁および消費者政策の視野を広げるための調査報告書ということでありまして、そういう時代がやってくるということを想定しながら、今の制度でできるのだろうか、あるいは今の制度を超えて対応しなければいけないのだろうかということを常に意識をしていくことが重要です。多くの方々がこういう未来を予想していただければ、そういうものに備えていく視点、あるいは知見の収集というのをやっていかなければいけないと考えています。
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問
日本消費経済新聞の相川です。
特商法の執行状況について質問させてください。詐欺的な定期購入に対応する改正特商法が2021年に施行されていますが、この約2年間で行政処分件数は何件でしょうか。 -
答
(取引対策課)
法改正後であれば4件になってございます。 - 問 昨日、衆議院の外務委員会で共産党の穀田恵二議員がこの問題について質問されていまして、「厳正な執行といつも言うんですけど、どの程度頑張ったのかなと思ったら、2021年法改正施行後、約2年間で行政処分を行ったのはたった4件なんですよ。だからね、胸張って頑張ってね、やってまっせっちゅうような話を言えるほどええことはないんですよ」とおっしゃっています。特商法の処分の内容を拝見しますと、この最終確認画面の義務表示があるものに対して、表示がないあるいは表示と現実が違うということしか処分ができていません。今一番、定期購入で問題になっているのは、最終確認画面ではちゃんと記載があるけれども、クリックをしてしまうとチャット画面とか、いきなりポップが立ち上がって「サプリメントをプレゼントします」とか、「100人だけお得なクーポンをあげます」とか、そういうようなものをクリックしてしまうと、定期縛りがないコースから、定期縛りがあるコースに変わってしまうと。このトラブルが一番多いのですが、全くここには手が出せていませんよね。これについて、長官のお考え、今後どのような対応をされるか教えてください。
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答
特商法につきましては、ここでも随時お答えをしておりますし、昨日、消費者委員会の第5期消費者基本計画に向けたご意見の中でもご意見をいただいているところでございます。いずれにいたしましても、これらの問題を私どもも認識しておりますし、デジタル社会でどうやって特商法あるいは悪質商法の被害状況を把握していくかということは、非常に重要な課題だと思っています。そういう中で今研究を重ねているということでありまして、実際一つの画面から別の広告が入ってくるというものは、それは入ってきた広告であって、別のサイトであることも多く、個人によっても全然違うことが多いなど、なかなか難しい課題です。
- 問 とりあえずは定期購入について質問をさせていただいているので、その部分でお答えいただきたかったのですが。定期購入なんですが、消費者庁の昨日の答弁を聞くと、6,000件で横ばいだというふうに言っていて、その後具体的な対策がなくて、本日3月末までの相談件数を国センに出していただくと、7月とか5,400件ぐらいになってるんですけど、10月は6,600件とか、12月も6,400件、1月も6,700件で、これが有効に対策がとられているとは言い難いと思うんですね。さすがの副大臣もどこまでできるんだと、「踏み込んだことをやるべきだということをお約束する」というふうに答弁してくださっていますので、ここはどのようなことを取り組んでいかれるのか、少し、どのようなことを今検討されているのか教えてください。
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答
副大臣に答弁をしていただきました。今の法令の中で何ができるかということが重要だと思っておりますので、今、取引対策課とともに知恵を絞っているところであります。
- 問 それから、今年1月に特商法で5つの調査をしているというお話を質問させていただいたのですが、やはりここで今、もう一度その結果を公表してほしい。税金を使って調査をしているものですので、その結果を明らかにしてほしいと思うのですが、いかがでしょうか。
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答
それに関しましては1月に質問をいただいたところでございます。その時も申し上げましたけれども、今のご質問にも関係いたしますが、問題意識は深く持っているということであります。今調査内容を整理するとともに足りない部分については必要な追加調査をしているということでございます。そのような国内外の情報を受けて、どういう知恵が絞れるのかということを鋭意検討しているところだと受け取っていただければと思います。
- 問 昨日の答弁の中で「海外における各取引類型の取組の状況を取りまとめて、改正法の執行等に活用している」とおっしゃっています。これについては今日少しお話があったと思うんですが、何がどう活用されているのか、もう少し分かりやすくお教えください。
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答
執行につきましては我々いろんなことをやっておりますが、お話しできる部分とできない部分がございます。そういうことでご承知おきいただければと思います。
- 問 それから特商法の改正にどう向かわれるかということなんですが、「2016年度の改正時の附帯決議に対してどのように対応してきたのか」という質問に、工藤副大臣が「今後も幅広く意見交換や情報収集を行いつつ、適切な検討を行ってまいります。」という答弁されています。何をなさっていくお考えか教えてください。
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答
前回改正附帯決議、それから今回やっております調査、執行状況等を踏まえて検討しているということは随時お話をしているところでありまして、それが特商法という形態なのか、そうでない形態が望ましいのかということも含めてちょっと時間かかっておりますけれども、方向の軸は確実に打ち出していきたいと考えております。
- 問 一昨日、消費者委員会が消費者基本計画の策定に向けた意見を出しています。この中に、特商法の通信販売のクーリング・オフ規定を導入すること、チャットを利用した勧誘に取消権やクーリング・オフといった民事ルールの導入について検討すること、あと、訪問販売や電話勧誘販売についての事前拒否者に対する勧誘を禁止する制度、マルチ商法の参入規制の導入、「もうけ話」につられて高額な購入資金や受講料で「借金漬け」にされ、「仲間を勧誘すると奨励金を払う」といった「後出しマルチ」の被害が拡大しているとして、抜本的な対策を求めると。情報商材や副業サイトに対しても抜本的な対応。すいません、マルチ商法については参入規制の導入ということを盛り込んでいます。これに対して消費者庁はどのように対応されるんでしょうか。消費者委員会の意見を聞いて基本計画を策定すると、消費者の意見も聞いて策定するということになっていますけれども、これについてお考えをお聞かせください。
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答
次期消費者基本計画ですが、一旦、有識者の意見を聞きまして、夏をめどに消費者庁としての案を提出するということになっております。そのような中におきまして、当然ではございますが、消費者委員会からいただいた意見はしっかりと踏まえて対応していくということでございます。
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問
TBSテレビの伊東と申します。
「消費生活の未来に関する調査報告書」の件でちょっと質問させていただきたいのですが、非常にいろんな角度からいろんな未来が描かれていて興味深かったなというのが率直な印象でした。ただ一方で、こういうふうな未来があり得ますよ。例えば昆虫食の広がりの可能性がありますよ、という提案をされていつつも、何かそれが具体的に今の時点でこういうふうに消費者政策とかに活かそうとかっていうのがあまり見えてこなかったんですけれども、今後そういうような議論とか具体的に昆虫食の広がりとかがあるなら食品表示法とかの中でこういうふうな対策が必要だよねとかっていう、さらなる議論っていうのは予定されているんですか。 -
答
具体的に一つ一つ申し上げませんけれども、昆虫食に関してはいろんなご意見があります。アレルギー表示するとかしないとか。ですから、ここにある未来っていうのは根っこがある未来なんですけれども、それが人間にとって、世界的に必要になるということを見据えて、制度をどうやって改善していくかいうことだと思います。昆虫食はもう既に広まっていますし、さっきお話しした自動運転についても、自動運転で事故があった時の賠償責任をどうしようとか、そういう話はもう既に政府内で行われています。未来の可能性をどう受けとめていくのか、消費者庁がそういう大きな視座を持ちながら対応していくという意味で未来図を描いたということでございます。
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問
朝日新聞の寺田です。
執行状況についての案件なんですが、最終確認画面における表示義務違反が3件処分できましたことや注意喚起が1,600件実施できましたっていうところの数字の評価を長官はどう見ているかなんですが、先ほどのデジタル班は8人で、米国等の17人と比較してそのくらいだというふうな比較ができたんですが、この行政処分の数字や注意喚起の数字をどのように評価して、それをどうして迅速かつ適切な対応を行ってきたというふうにご判断されたのか教えてください。 -
答
処分の件数はここに記載してあるとおりで、それの多い少ないというのは、私は語るべきではないと思っています。デジタルの特徴っていうのは2つあって、消費者に多くの情報が与えられるということと、取引自体が非常に複層的になってるってことです。実際にサイトに入ってもそれがほかに飛んだりとか、別の決済権者がいたりとか、プラットフォーム事業者がいたりとか。そういう大きな複層的な中でこういう法律を運用していくということの大変さもまた理解していただきたいと思います。