新井消費者庁長官記者会見要旨
(2024年3月14日(木) 14:01~14:24 於:中央合同庁舎第4号館6階消費者庁記者会見室/オンライン開催)
発言要旨
冒頭私から2件お話をさせていただきたいと思います。
1件は「食品表示懇談会」及び「分かりやすい栄養成分表示の取組に関する検討会」の取りまとめについてです。「食品表示懇談会」と「分かりやすい栄養成分表示の取組に関する検討会」はいずれも今月取りまとめをしたところでございます。まず、「食品表示懇談会」について申し上げますと、昨年10月から4回開催をいたしまして、今後の食品表示が目指していくべき方向性についてご議論をいただきました。3月7日に開催いたしました第4回会合では、概ね方向性についてご了解をいただいたということでございます。内容は大きく3点でございまして、1点目は「諸外国との表示制度の整合性について」ということで、大きな方向性として、我が国の状況や諸外国によるコーデックスへの対応状況を踏まえつつ、合わせられるところについては合わせていくということです。それから2点目は、「個別品目ごとの表示ルールについて」ということで、横断的な基準に合わせる方向で見直すことを基本としつつ、食品ごとの個別の事情や制定の経緯、消費者や事業者の要望等を踏まえながら検討していくということです。3点目が「食品表示へのデジタルツールの活用について」ということで、容器包装への表示に代えて代替的な手段によって情報提供を充実させることとした場合の議論を進めていく必要があるということです。今後の検討の進め方についても議論いただきまして、来年度からは、個別品目ルールとデジタルツールについて分科会形式で議論を行っていくということにしております。もう1つ、「分かりやすい栄養成分表示の取組に関する検討会」でありますけれども、昨年11月から3回開催をいたしまして、我が国の包装前面栄養表示(FOPNL)のあり方についてご議論いただきました。3月12日開催の第3回会合で概ねの方向について3点取りまとめいただきました。これら3点は次のとおりです。我が国の栄養課題を解決するために重要な栄養成分等として、日本版FOPNLの対象となり得る栄養成分等は、既に含有量の表示が義務化されている熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウムとすること。栄養成分等の含有量表示を利活用しやすくするために、対象となる栄養成分等の「量」に加え、成人の1日当たり摂取目安となる「栄養素等表示基準値」に占める「割合」を表示すること。食品関連事業者の実行可能性を踏まえ任意表示と位置付けた上で、我が国の統一的なルールが必要であること。これらまとめていただきました。来年度以降は、検討会において提示された課題に対処するため、栄養成分表示の実態調査等を行いながら検討を継続していくということでございます。これら懇談会や検討会で大きな方向性が取りまとめられましたので、今後制度の充実に向けてさらに議論を進めていきたいと考えております。以上が1点目であります。
2点目でありますけれども、不当寄附勧誘防止法に係る説明会とデジタル広告の実施について報告をさせていただきます。2月から3月にかけまして、不当寄附勧誘防止法に係る周知啓発の一環といたしまして、大阪府、福岡県、東京都の全国3か所におきまして説明会を行いました。この中では寄附の勧誘に関して漠然とした不安を抱いている方、それから、本法による規制をまだご存じない方もいらっしゃることを念頭に、あらゆる法人を対象として説明会を行ったことでございます。オンライン参加を含めまして、約550名の方にご参加をいただきました。宗教法人のみならず各種の学校法人、それから大学、NPO法人、公益法人など多数の方々にご参加をいただきまして、理解を深めていただいたと考えております。当日は、弁護士の方々の基調講演の後で、消費者庁担当者からの法の概要や解釈というものを説明いたしました。この東京会場のアーカイブ動画につきましては、消費者庁ウェブサイトに掲載をしておりますので、多くの方にご覧いただきたいと思います。また、現在、更なる法の周知啓発の取組といたしまして、寄附の不当勧誘に係る情報の提供を呼びかけるため、電車内の映像広告、YouTube広告、コンビニエンスストアのPOSレジ画面に本法の15秒動画を掲載をしております。お時間があれば後ほど皆様にもご覧いただきたいと考えております。消費者庁の情報提供フォームは24時間365日情報を受け付けております。身近な方に寄附の不当な勧誘でお困りの方がいらっしゃいましたら、お知らせをいただきたいと思います。消費者庁としては、引き続き、法の趣旨の周知に努めるとともに、寄せられた情報を踏まえて、不当な寄附の勧誘の疑いがあれば、法と証拠に基づいて適切に対応していくということであります。冒頭の発言は以上です。
質疑応答
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問
フリーの木村です。
「食品表示懇談会」の件なんですけども、1つ目の方向性として、海外との整合性についてなんですけども、これは具体的にはどのくらいのスパンでどういう所でどういう場所で議論していくのかということを教えてください。 -
答
これはこの報告書の中のタイムスケジュールにもお示しをしておりますけれども、まずは「食品表示へのデジタルツールの活用」であります。このデジタルツールの活用の方向性についてはコーデックスで議論をされておりまして、コーデックスの中身をお話させていただきますと、ステップを踏んで各国の同意を得ながらやっていきます。最終ステップはステップ8でありますが、今デジタルツールについてはステップ5ということでだいぶ議論が煮詰まっているということであります。その中でどういうものをやはり包装に表示して、それからどういうものをデジタルに移行していいのかということは、おそらく線引きが最後に様々な形で議論になってくるということでありますので、その方向性の中で日本としてはどう考える、というのはコーデックスへの提案もしたいと思っておりますので、そういうものを念頭にまずデジタルツールの活用についての分科会というのを設けます。それからもう1つは「個別品目ごとの表示ルール」ということで、これが個別品目の特殊事情を踏まえてだいぶ横断的な基準と違っているというものがございますので、これはそれぞれの個別品目が持っている事情についての議論を煮詰めていくということで、ここは若干進み方に差があると思います。それぞれの事情がだいぶ違っておりますが、ひとつずつ詰めていくということであります。
- 問 コーデックスの方は今ステップ5で、ステップ8へ行くまでにあとどのぐらいかかりそうなのかわかりますでしょうか。
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答
これはものによってだいぶ違います。ですから一概に何年という話はできませんが、過去の様々な事例の進み方を見ますと、だいたい2年から3年が目安かとも思います。
- 問 そうすると海外との整合性というのはそのスパンで並行して検討していくという流れでしょうか。
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答
デジタルツールはそうでございますし、現在の表示の中でも現在のコーデックスのいろいろな枠組みと違っているものというのもありますので、それらも同時並行で詰めていくということであります。
- 問 あと個別ルールを横断的ルールへ合わせるという方向性なのですけれども、可能な限りということかと思うのですけれども、個別ルールのまま残るものも出てくるという理解でよろしいですか。
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答
それはこれから議論を進めてみないと分からないと思います。個別ルールにはやはり個別ルールなりの歴史があるということでありますので、その歴史が、現時点で見て消費者の方々との関係において、個別ルールとして特別のルールを残すのが必要なのかどうなのかということをやはりきちんと検証していかなければいけないと考えています。それぞれこれからの個別ルールごとに検討していくということになりますので、いつまでにどうこうというのはなかなか今申し上げる状況ではないと思います。
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問
朝日新聞の寺田です。
3月12日にありました「消費者機構日本(COJ)」が提訴した消費者団体訴訟の最高裁判決についてお聞きしたいと思います。一審、二審では共通義務確認の訴えの要件を満たさないということで却下されましたが、今回の最高裁の判決はそれを覆すものとなりました。これについて消費者裁判手続特例法を所管する消費者庁としてどう受け止めているかお願いいたします。 -
答
個別の案件につきましてはこれから地方裁判所に差し戻されて引き続き審議されるものと認識をしておりますので、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。しかしながら、一般論として申し上げますと、今回の判決は、消費者裁判手続特例法第3条第4項に規定されている、いわゆる「支配性」の要件について、最高裁判所として初めて判断が示されたものと理解をしております。すなわち、一段階目で裁判所が訴えを却下できるのは、過失相殺をする状況にあったら即訴えを却下するのではなく、二段階目の手続において適切な審理運営上の工夫を講ずることも考慮して、「消費者ごとに相当程度の審理を要する場合」であると、示したものと理解をしております。また、判決の補足意見では、審理運営上の工夫として、陳述書等の記載内容を工夫することや、当事者ごとに存する事情を分析、整理し、一定の範囲で類型化した上で、これに応じて過失の割合を定める、などの考え方も示されているということであります。いわゆる「支配性」の要件については、令和3年10月の「消費者裁判手続特例法等に関する検討会」報告書において考え方が示されるなど、これまで議論が行われてきましたが、今般のこの最高裁判所の判決を踏まえた制度の運用がなされるものと考えております。
- 問 先ほどの令和3年の検討会でも特例法第3条第4項を厳格に捉えすぎないようにということで明確化すべきというような意見も出ているんですけれども、改めて消費者庁としてはこの第3条第4項の解釈や見解について何かありますでしょうか。
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答
今回の最高裁判所の示した判決によりますと、訴えを起こした場合に却下されにくくなるのではないか、消費者が救済される方向に動くのではないかと考えておりますので、この手続の運用上、非常に良い効果がもたらされると期待をしております。
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問
(日本消費経済新聞:相川)
「食品表示懇談会」に関連して、今示されているスケジュール表では、ずっとデジタルツールの活用と個別表示のルールを検討して、2025年度以降もそれについて、上にある「食品表示懇談会」で報告を受けて検討するというようなことしか盛り込まれていないのですが、例えば、水の表示がないとかですね、特定の原材料や包装表示がされている原材料には書くなど、そういう国際整合性についてはどのくらいの時点から検討に入るのでしょうか。 -
答
今回の検討会は4回というきわめて短い中で委員の方に全体の方向性をご議論いただいたということでございます。このスケジュールにもありますが、個別にどういう順番でどれを課題にしていくかということは事務局としても提案をいたしますし、委員の方と相談しながら進めていくということになると思います。しかしながらこの懇談会の資料として論点はほぼ全て提示をしております。したがいまして、論点の順序付けをこれからどうやっていくのかということを次の懇談会でしっかり議論していきたいと考えています。
- 問 時期については、デジタルツールの方の見通しがついた頃からということですか。「食品表示懇談会」については、並行してというのは、どのくらいの時期から検討に入られると考えていらっしゃるのでしょうか。
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答
今後の検討については、今回の懇談会のタイムスケジュールにも書いてあるとおりです。今回の懇談会の中で、国際的な整合性あるいは諸外国の動向については、論点としては相当詳細な資料を提示しております。これから分科会に分けて議論するとともに本体の懇談会、こちらは来年度も行いますので、分科会での論点の順序付け、それから動いている国際的な情勢ということで、順序をつけながら課題を解決していくということになると思います。
- 問 大体何年先を見据えていらっしゃるのでしょうか。
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答
まずデジタルツールの活用についてどの程度の目処がついてくるかということもございます。個別の表示についてはそれぞれの個別の事情の中でとりあえずできるだけ早くということではありますが、それぞれの事情を踏まえて検討をしていくということになりますので、何をいつまでと言えるような段階には今ないと考えています。
- 問 方向性は決めたものの、結論が出るまで、報告書が出るまでには、何年もかかるイメージなのでしょうか。
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答
方向性を決めました。それから、論点を漏れなく提示をしたということで、今回出発点に立ったということが非常に重要だと考えています。今までぼんやりと国際的な整合性というイメージは抱いていましたが、具体的に何をどうするということが今回明らかになりました。したがいまして、何をどういう順番で解決をしていくのかということがこれからの課題であります。その何をどういう順番でやりそれをどういうふうに結論付けるかということで一つ一つ詰めていくということだと考えています。
- 問 包装前面栄養成分表示については、かなり方向性は出てきていて、細かいことは詰めないとはいけないと思うのですが、これは1年くらいを目途に報告書がまとまるのでしょうか。
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答
これはまず1つは、あくまでも任意の制度だということでありますが、その任意の制度のやり方については統一して表示をしようということですので、統一をして表示をする場合のいわゆる表示の方法、これは消費者庁がまず定めなければいけないということであります。それからもう1つ、この栄養成分表示というのは日本の健康・栄養政策を消費者に情報提供するということですので、健康・栄養政策である日本人の食事摂取基準を今、見直しをしているということであります。その見直しと併せて、どういうふうに取り組むのかということと合わせてやっていくと思います。消費者庁としてやるべきことは、任意表示の中でどういう枠で表示をしていくのかということを早急に検討します。これが固まると、任意ですからやれる方から順次やっていくという形で消費者への情報提供が進んでいくと考えています。
- 問 時期に関してはまだ明確に言える状態ではないけれどもということですね。
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答
はい、そうです。
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問
共同通信の市川です。
昨年9月に公益通報者保護法に基づいてビッグモーターへの行政指導があったかと思うのですけれども、それに関連して9月の段階で6か月をめどに状況を報告するようにというふうな話を明言されていて、弊社の取材でビッグモーター側が3月8日までに消費者庁の方にその運用状況について報告をしていたということが分かりました。それについて消費者庁長官としての受け止めをよろしくお願いします。 -
答
ビッグモーターに昨年公益通報者保護法に基づく指導をし、報告を求めていたということであります。報告の内容については今精査をしているところでありますけれども、現時点におきまして再指導などをする予定はございません。今後必要があれば法律に則り適切に対応していきたいと考えています。
- 問 確認で2点ほど伺うんですけれども、まず報告があったのは何日になりますか。
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答
それぞれの事業者からいつ報告があったかなかったのかということは、お答えする必要はないと考えています。
- 問 今お話にあった中で、精査しているところだけれども再指導の予定はないというのは、これは内容を確認する前に再指導がないと決めてしまっていいんでしょうか。
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答
そういうことではありません。私たちが受領をしてからそれなりの期間が経っておりますので、その間にしっかりと精査をしたということであります。
- 問 精査はまだ完了はしていないけれども、再指導をするには至るほどの内容ではないということですか。
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答
はい。