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新井消費者庁長官記者会見要旨
(2023年12月7日(木) 14:00~14:25 於:中央合同庁舎第4号館6階消費者庁記者会見室/オンライン開催)

発言要旨

冒頭私から三点お話をさせていただきます。
一点目は、「解約料の実態に関する研究会」についてです。消費者契約法では、契約の解除に伴って事業者に生じる「平均的な損害」の額を超えて定めた解約料は、その超過部分を無効とすると定めております。これに対しては、「平均的な損害」の立証は困難であることやそもそも解約料の目的は損害補填に限られないため、「平均的な損害」に焦点を当てた議論は、取引実態に合っていないなどの指摘がございます。また、令和4年5月25日に成立した「消費者契約法及び消費者裁判手続特例法の改正法」に対する附帯決議でも、これらの指摘に係る事項について引き続き検討することとされているところでございます。このような状況を踏まえまして、解約料の実態に関する研究会を立ち上げ、実際のビジネスにおける解約料の実態や消費者の解約料の支払に対する意識を明らかにし、その実態等を踏まえたルールの在り方を検討してまいりたいと考えています。本研究会は12月11日に第一回を開催いたします。
二点目です。公益通報者保護制度の周知・啓発についてです。先月上旬の会見でお話をしておりますけれども、公益通報者保護制度の周知・啓発に関する消費者庁の取組みについて改めてお知らせしたいと思います。令和5年度の総合経済対策におきまして、公益通報者保護制度の周知・啓発が施策として掲げられているところであります。これを受けまして、中小事業者など未だ内部通報制度が整備されていない事業者の体制整備を支援するため、今月4日に消費者庁のウェブサイトに、「はじめての公益通報者保護法」のページを新設いたしました。はじめての公益通報者保護法では経営者の方向けの5分解説動画や解説パンフレット、それから、従業員向けの5分解説動画、窓口担当者向けの1時間研修動画、内部規程、通報受付票のサンプルなど一式を、「内部通報制度導入支援キット」として掲載しておりまして、紙媒体については本日皆様のお手元に資料として配布しております。この内部通報制度導入支援キットは、日々多忙な経営者の方々に、できるだけ短い時間で、法律が定める内部通報制度の導入意義や手順をご理解いただき、内部規程類などの作成、従業員や窓口担当者の研修等を支援することを目的としております。事業者の皆様方には、ぜひこのキットを活用して効率的に内部通報制度をまずは導入していただきたいと思います。今回作成したキットについては、関係省庁と連携した周知や当庁が今月実施をする事業者1万社調査、それから新聞・雑誌・SNS等の様々な広告媒体を活用して普及活動に努める予定です。
三点目です。消費者の皆様へ、ということで機能性表示食品の正しい理解についての協力依頼です。11月27日に、機能性表示食品に対して、景品表示法に基づく措置命令を行い、12月5日に公表いたしました。本措置命令は、届出表示から逸脱する広告についての不当表示(優良誤認表示)を認定したものでありまして、届出表示自体は対象ではございません。具体的には、機能性表示食品の届出表示を超える著しい痩身効果の標ぼう、届出表示以外の様々な効果の標ぼう、機能性表示食品の効果について、国または消費者庁が認めているかのような表示ということでございます。機能性表示食品は、事業者が届け出た内容が消費者庁のウェブサイトで誰でも確認できるということですので、購入や使用の際には、何が表示として届出されているかということをしっかりとチェックをしていただきたいということと、公表されている届出内容を超えた広告を鵜呑みにしないようにご注意いただきたいと思います。以上私からの三点、冒頭の発言であります。

質疑応答

NHKの絹川です。
先ほど公益通報者保護法の話がありましたけれども、結構、帝国データバンクの調査結果では理解率が2割以下ということで結構衝撃的なデータかと思うんですが、率直なご感想をまず伺ってもいいでしょうか。

はい。帝国データバンクがやってくださいました調査結果を私も拝見をいたしました。今お話がありましたとおり結構衝撃的な数字だということですので、そのような状況も踏まえて、まずはしっかり窓口を設置していただくということで今回の各種のキットを用意したということであります。改めて、ここで公益通報者保護制度のまさに経営者向けの動画の中では意義というのを説明しておりまして、これはやはり経営を守るためのものであるということです。現場の状況を知ることによってそれに早く気づいて経営を立て直すということですので、そういう趣旨をまずご理解いただいて現場からの意見を吸い上げていただく。そのひとつの窓口ツールとしてやはり内部通報制度があるということをまずご理解いただきたいということで、今回経営者向けと従業員向け、それから、実際に整備していただくいろんな規程類のサンプルなどを提示したということであります。

もう一点、関係省庁との連携という話もありましたけれども、特にこういう企業に対する細かいフォローアップを消費者庁の方でできる体制があるかというとなかなか厳しいものがあるんじゃないかと思っています。47都道府県に出先機関がないなか難しいというところがあると思うんですけれども、その問題についてはどのように長官として受け止めていらっしゃるでしょうか。

おっしゃるとおり消費者庁自体は各県に出先を持っているというわけではありません。まずは、今回の帝国データバンクさんのような民間の自主的な取組を活用して、周知していただきたいということと、先ほど関係省庁と申し上げましたのは、実際に企業を指導する権限を持っております、例えば、厚生労働省の労働基準監督署など他省庁と連携を取っていくということになります。

その連携については何か具体的な動きだとか予定はあるんでしょうか。

まずは、各省庁を通じて所管する事業者などに周知をしていただく。

(参事官(公益通報担当)室)
1万社調査の結果を業態ごとに分析をいたします。その中で特に課題があると思われる業界に対しては、関係省庁とより効果的な内部通報制度の普及方法を考えていきたいというふうに思っておりますし、現段階でも関係省庁との連絡会議において今回のキットも含めた制度の普及に向けて業界団体など事業者への周知徹底をお願いしているところですので、まずはしっかり周知をしていただいて、普及を図るということになろうと思います。それでもやはり調査の結果を分析した中で、まだまだ課題があるということであれば、課題があると思われる業界に対して更なる制度の普及策を検討していくということになります。

朝日新聞の寺田です。
解約料に関する研究会なんですけど、まず、こちら何回ほど開催していつまでを目途にしているでしょうか。それから話し合ったことが最終的に法整備とかガイドラインの作成などどのような成果に生かされることになるでしょうか。

この研究会初回を12月11日に行いますけれども、今のところの目論見としては月1回程度のペースで開催をし、1年ぐらいというタームで検討していきたいと思っています。まず、実態に関する研究会というふうに名を打っておりますので、いろんな解約の現状、実態を踏まえてその中でどういうものができていくかということですけれども、具体的には、今回委員に入っていただく方々には、経営学とか、心理学を専門にする方がいらっしゃいます。いろんな方のご意見を聞いた上で、かつ、関係団体からのヒアリングを行いながらルールのあり方を検討していくということで、ガイドラインまで結びつくのか、そのガイドラインは1本なのか、業界ごとの状況を反映したものになるのかということは検討しながら考えていくということであります。

フリーの木村です。
冒頭発言の機能性表示食品の周知についてなんですけれども、届出情報をしっかり見て購入の判断につなげてくださいという話なんですけれども、今の届出のサイトというのは、一般の消費者から見たらなかなかたどり着けないし、またどこに何が書いてあるかわからないし、たどり着いても一般消費者向けサマリーは結構難解な言葉で書かれていますけれども、その辺の改善が必要かどうか、その辺について教えてください。

消費者庁のウェブサイトに届出情報の検索サイトを入れております。情報が難解というのはあるかもしれませんけれども、このサイト自体は会社名を入れていただいても、商品名を入れていただいても、いろいろな形で検索ができると思います。そこでまずご確認いただきたいのは、何が届出事項として受付されているのか。商品には広告だったり写真だったりとか多種表示されています。あとは商品を離れたウェブサイトにも情報が出ております。その中で届出された事項は何なのかということを確認していただきたいという意味であります。ウェブサイトは定期的に見直しをしております。システムですので、毎年、毎年更新というわけにはいきませんが、消費者の使い勝手の良さはウェブサイトの更新時期にまた考えていきたいと思います。

あと別件なんですけれども、昨日大麻取締法などが成立して附帯決議の中で、CBD製品について安眠などの行き過ぎた広告で消費者が惑わされているので監視指導を行うようにということが盛り込まれました。健康増進法と景品表示法を所管している消費者庁としての受け止めと今後の対応について教えてください。

今回の大麻法の成立する以前からということでございますが、薬事法の取締り、大麻法の取締り、それから、我々が持っている制度の取締り、それぞれ連携しながらやっていくということであります。そういう中におきまして、やはり消費者がしっかりした内容と表示を確認してやっていくということで、今までの取締りあるいは皆様への周知・啓発をしっかりやっていくということだと思います。

読売新聞の糸井です。
公益通報の観点でなんですけど、労働基準監督署という言葉が出てきたんですけど、少し細かいんですけど、これは厚労省の中でも特にこの労基署を提携しているのはなぜなのか。

労働法制の中で301人以上の従業員を対象にして義務付けているというものがございます。そういうものについて労働基準監督署に限らず、他省庁が所管の事業者などに何かしらが周知をするという機会があるときに、ご協力いただくということであります。

あと先ほどの帝国データバンクのデータもあるんですけども、非常に周知徹底が進んでいないというか、窓口を設置検討している企業は24.1%と非常に少ないんですけど、なぜ、設置を検討している企業がここまで少ないのかというところについての、これから調査するんでしょうけど、今の段階でのお考えと、あと301人以上とおっしゃいましたけど、300人以下の企業に対してはどういう呼びかけをしていくのかというところをお願いします。

今回の帝国データバンクさんのデータ自体は、従業員の規模が小さな事業者でもまず母数に入っているというふうに理解をしています。それから、なぜ設置しないかという理由として、私たちの会社は風通しいいから十分だとかそういうご回答もありました。それはそれとしていいことなんですけれども、やはり今従業員の方が出たり入ったりするという中においては、制度的な枠組みとして位置づけていただくのが重要だと思っておりますし、それが先ほど申し上げたように、会社の存続に非常に有効だということをまずご理解いただきたいということで、今回の経営者向けの説明、短いですけれどもその中でそういうことを強調しているということであります。いろいろな大企業あるいはスタートアップの企業というのは制度的に上場するためにいろんな要件がかかっています。企業として、コンプライアンスの一環としても考えていただくことが重要です。これはパワハラとかセクハラの窓口も一緒ですけれども、そういうものの中にやはり公益通報者保護というのもきちんと位置づけていただくということが出発点になるのではないかと考えています。

特に中小企業に対して呼び掛けみたいなのというのはありますか。300人以下のところ。

300人以下も義務ではありませんけれど努力をしていただくということになっています。今回、キットも入れておりますけれども、窓口をつくること自体はそんなに大変なことではないと思います。従いまして、まずは形を作っていただく。当然、形を作っただけではなく魂を入れていただかなければいけませんので、義務になっていない企業の方も、義務になっていないからいいということではなくて、繰り返しになりますけれども、会社の存続を支えていくためにはやはり必要なものだと認識をしていただきたいと考えています。

日本消費経済新聞の相川です。
解約料の実態に関する研究会について質問させてください。消費者契約法では、平均的損害を超えるキャンセル料は無効とされているにもかかわらず、立証責任が消費者にあり非常に困難だということで立証責任の転換が求められてきましたが、何年かけて検討しても実現できませんでした。その背景には、仕入れ値をはじめ、立証にかかわる多くの内容が事業者の企業秘密とされてきたためです。これまでも事業者から何度もヒアリングをしてきましたが、企業秘密という理由でその実態は明らかにすることができていません。今回はどのような切り口で実態を把握されるのでしょうか。

立証責任の転換については、令和3年9月の消費者契約法に関する検討会の報告書におきましても、将来改めて検討するということにされています。それを踏まえまして、令和4年の通常国会で、まず事業者への解約の説明に関する努力義務を盛り込み、適格消費者団体からの解約料の算定基礎の説明要請に応じる努力義務というのを入れたところであります。この運用実態をまずは調べたいということでありまして、この立証責任の転換についても、この検討会の中で検討の視野には入れていくということであります。

そういうことではなくて、現実的に改正では報告書が求めた内容を盛り込むことができず、条文に、商品等の価格や解除の時期とか費用の回復可能性などを列挙することなんかを求めたんですが、それも全く条文には入れられなかったと。その概要を説明する努力義務が入っていますが、その概要というのは何だというふうに聞いたときに、数値は言わなくていいみたいなことなんですが、実際に機能しているかどうか、それはきちんと把握していただきたいと思いますが、今後解約料の実態をどう把握するのですかという質問です。どういう切り口で、事業者からも聞けていないんだということであれば、どういう切り口で実態に迫っていこうとされているのかを教えてください。

(消費者制度課)
事業者からは企業秘密という形でなかなか教えていただけないという部分もあるというのは事実でございまして、そういった中で経営学の先生等に学問的な状況をお聞きして、その中で出てきた内容を踏まえて検討していくという方向で考えてございます。

学問的に経営学とか経済学からアプローチしていくというような理解でよろしいでしょうか。

(消費者制度課)
そのとおりでございます。まずは経営学的にはどういうふうに考えたらいいのかということを経営学の先生にお聞きして、その上で事業者等からもヒアリングが可能であればしていきたいと考えてございます。

はい。わかりました。また具体的に研究会で明らかにしていただければと思います。
共同通信の市川です。
二点あります。一点目は内部通報の関係で、動画が公開されていると思うんですけれども、5分動画で私も拝見しましたけど、非常によくまとまっているなと思って、動画に関する、短い期間で作ったということなんですけれども、感想というのをもう一度伺ってもいいですか。

私も見ましたし、今日皆さんにお時間が許せば短いものを見ていただきたいと思うんですが、短い時間で意義を理解していただくということに集中しました。確かに作図とか若干初歩的なところがあるかと思いますけれども、皆さんに公益通報者保護制度を理解していただくには十分な内容になっていると思います。

もう一点なんですけども、民間の調査とは別に消費者庁の方でも企業の不祥事の内部調査報告書などを分析するというような話を聞きまして、それについて狙いというのがもし言える範囲であれば、お答えいただけないでしょうか。

(参事官(公益通報担当)室)
上場企業ですとかもしくは有名企業で、第三者委員会の調査報告書、不祥事に関する調査報告書が公表されていますけれど、そういったもののうち、内部通報に関する記述をピックアップして傾向を分析する。要は、大手の企業であっても内部通報制度が実効的に機能していない、それが故に不祥事に至った事例が多々あると思いますので、その内部通報制度が機能しない要因は何なのか、どういった傾向があるのかというのを分析して今後の制度の在り方について参考としたいと思います。

実効性に関する調査ということだったと思うんですけれども、実際に不祥事になってしまっている以上は、実効性という部分では内部通報制度が機能したのか、していないのかというと、どちらかというとしてないのかなというふうに思ったんですけれど、ただそれは表に出なかったことがもしかしたらあるかもしれないので、表になっているだけでももしかして機能していると言えるのかもしれないというか、どの部分で実効性があるとかないとかというのを判断するのかという部分、狙いとかってありますでしょうか。

(参事官(公益通報担当)室)
いろいろな要因があると思います。例えば、海外の子会社だったら経営者が関与している不正について、経営者が上がってきた情報を握り潰していたみたいなこともあるし、もしくは何か通報したら不利益な取り扱いを受けるんじゃないかということで、組織の中で不祥事が蔓延しているのに通報が1件も上がってこなかったというケースもあるでしょうし、要するにひとえに不祥事が起きた原因として内部通報制度が機能していないとは言っても、そのバックにある詳細な要因というのはいろいろあるわけで、どういったものが多いのかというところを分析させていただくというものになります。

若干補足をさせていただきますと、平成28年度の調査では、不正発見の端緒というのは内部通報が1位ということになっています。その次が、内部監査、や上司のチェックということで、いろいろな契機はあると思います。この公益通報者保護制度は内部通報だけではありません。行政庁等への外部通報という道もあります。そういうのも合わせて従業員の方には知っていただきたい。仮に、内部通報が握り潰されたり、会社がアクティブな行動をしていないということでも、外部通報をしていただくという道もありますので、全体的には社会の公正を確保していくということになります。そういう意味での公益通報者保護法というものの意義を知っていただくということが重要だと思います。

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