新井消費者庁長官記者会見要旨
(2023年11月2日(木) 14:00~14:26 於:中央合同庁舎第4号館6階消費者庁記者会見室/オンライン開催)
発言要旨
本日は冒頭私から1件お話をさせていただきます。お手元に資料を配布しておりますけれども、不当寄附勧誘防止法の運用に関し、この会見の場でかねて申し上げてきたとおり、寄附の不当勧誘に係る情報の受理・処理等件数について本日公表させていただきたいと思います。法律の行政措置規定の施行は、本年4月1日でありますので、同日から本年9月末までの半年間における法の運用状況として情報の受理や処理等の件数を取りまとめて公表させていただきたいと思います。
お手元の配布資料でございます。少し注記をつけながらご説明させていただきたいと思います。これから継続的に発表をしていくということを前提にしておりますので、2.の(1)と(2)に、新しく受けたもの、それから「新受」・「旧受」と書いてありますけれども、これは継続的に次の期は前回の引継ぎとわかるようにということで整理をさせていただいております。まず、情報の受付件数、これは809件ということでございます。不当寄附の情報の受付につきましては、大きく3つのルートということはご説明をしてまいりました。1つは、消費者庁のウェブサイトの情報提供フォーム、これは、24時間誰でも書き込めるというものでございます。それから、法テラスがやっております霊感商法の相談窓口、ここから寄附に関するものをこちらに情報提供いただくということ。それから全国の消費生活相談窓口にいただいたものの中で寄附に関係するものをこちらにいただくということ、大きく3種類ということでございます。この中で、特に情報提供フォームといいますものは、誰でも書き込むことができるということでございますので、他のものも一緒ですけれども、いろんな情報が寄せられるということでございます。したがいまして、これらの中には寄附ということに関わらない、一般的な人間関係トラブルでありますとか、金銭のトラブルでありますとか、行政に対するいろんなご意見とかそういうものも入っているということでご理解いただきたいと思います。そういう中、「新受」と書いてありますけれども、資料の下部に「調査対象情報件数」という注記がございますが、これは情報の受付件数の中で、寄附の不当勧誘が疑われる内容を含むものを確認した結果、調査すべきものとして受理した件数ということであります。寄附の不当勧誘に関わるものの内容が含まれていたということでご理解いただきたいと思います。これらがこの半期で70件ということでございます。それらの処理状況が「3.処理件数」と「4.調査中件数」ということでございますが、すでに処理が終わったものが43件、現在調査中の件数が27件、合計70件ということであります。処理の件数について(1)から(5)ということで区分をしておりますが、まずは、(1)の法律に基づき勧告又は命令を実施したもの、それから、(2)の勧告又は命令を実施する法令上の要件を満たさないものは、いずれもゼロということであります。次に(3)とありますが、寄附の不当勧誘の事実が認められないものは2件、それから、(4)の匿名又は連絡不通等により調査が不能なものが32件、(5)でございますが、法律施行日前の事案と認められるもの等が9件ということであります。この中におきまして、匿名又は連絡不通等により調査が不能なものというのが大変多くなっておりまして、情報提供フォームでも、必ず連絡先を書いてくださいとしております。これはできるだけ我々が調査するためにも連絡先を書いていただきたいということであります。それから、今回このような形で情報を広く受け付けるということをやってまいりまして、調査をしていた中でございますが、いろんな場面で消費者の方が寄附という形でお願いされている、いろいろ寄附に関するお悩みが多いということが分かりました。そういうこともございまして、法律施行前それから施行後にいろいろな啓発をやってまいりましたが、今回改めて法律の啓発を皆さまにしたいと思っております。中でも大学生にいろいろな勧誘活動が行われるということは常に言われておりましたので、全国の大学にポスターを配布するとともに、首都圏におきましては交通機関などでも周知をしたいと思っているところでございます。繰り返し申し上げますと、不当な寄附勧誘は法律で禁止されている。それから、心当たりがあれば直ちに消費者庁に通報していただきたいということで、このようなメッセージを皆さんにお伝えすることによりまして、消費者の利益保護を図っていきたいと考えているところでございます。冒頭の説明は以上です。
質疑応答
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問
読売新聞の糸井です。
今の寄附の不当勧誘防止法のところですが、調査対象になっている70件なんですが、切り分け方なんですけれども、その809件の中の70件というのをもう少し詳しく教えていただけると。どういったときに、要は、寄附に関係するものがあったときということですかね。 -
答
寄附の不当勧誘と疑われるものはすべて入っています。
- 問 それ以外のものは寄附ではなくてそれ以外のトラブルということですか。
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答
金銭トラブルでありますとか、人間関係トラブルでありますとか、行政に対するいろんなご意見とかそういうものとなります。
- 問 この70件のうちなんですが、実際いくつの団体、個別の宗教団体名とかは法人名はいいんですけれども、いくつの団体からあったのでしょう。出てきた団体名というのはいくつぐらいあったんでしょうか。
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答
この調査をした結果、当然重複もあります。それぞれ1件1件いただいたので。この法律に基づいて然るべく公表するというときには公表いたしますが、団体の数とかそういうものについては、今の時点で公表すべきではないと考えております。
- 問 次回なんですけど、今回上半期だけだったんですが、半期に1回というようなイメージでよろしいんでしょうか。
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答
今のところ半期に1回ということを考えております。
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問
日本経済新聞の前田と申します。
ポスターについてのお話があったと思うんですが、このポスターはいつ付けで作成されて、全国の大学に貼ってあるというお話があったと思うんですが、これはもう全国の大学に今現在も掲示がなされているという理解でよろしいでしょうか。 -
答
このポスターの公表自体は10月23日にやっておりまして、全国の大学、それから警察、消費生活センター等に2万枚配布したところでございます。したがって、まだ掲示をされていないところもありますけれども、すでに発送は終わっているということでございます。
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問
NHKの絹川です。
先ほどのポスターの件なんですけど、今こちらに出ているのが今回新しく作られたポスターなんでしょうか。 -
答
はいそうです。
- 問 聞き取れなかったんですけど、首都圏ではどういった掲示がされているとおっしゃっていましたっけ。
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答
(寄附勧誘対策室)
事務方からお答えいたします。例えば、行政機関で言いますと関係省庁、都道府県、東京23区、それから警察署などのご協力をいただいておりますほか、地下鉄のポスターの掲示、こういった協力のお願いもすでにしているところでございます。 - 問 大学は全国でしょうか。
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答
(寄附勧誘対策室)
はい。 - 問 大体ポスターは何枚くらい配ったんですかね。
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答
ポスターは全体で約2万枚。
- 問 あと、別件なんですけど、10月1日のステマ規制から1ヶ月が経ったということで、まだまだこれからとは思うんですが、現在の規制の実施状況といいますか、どういった情報が集まっていてどういった対応されているかというのをお聞かせいただけますか。
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答
10月1日からステルスマーケティングの規制をいたしました。ステルスマーケティングの規制自体、これが違法であるということをまず関係者に広く自覚していただくということが必要だと思っています。そのような点から申しますと、いろいろな業界団体からいろんな講演依頼でありますとか質問をいただいておりますし、事業者の方々もいろいろな勉強会を開催していただいているということで、広告主、それからそれを仲介される方、実際にインフルエンサーと言われて記事を書かれる方などがしっかりと意識を持っていただくということが重要だと思っております。それが今形成されつつあるところだと思っております。私どももこのステルスマーケティングに関しましては、一般的な消費者庁への情報提供のほかに、ステルスマーケティング専用の情報提供フォームを作っております。それなりの情報はいただいているということでございまして、今後これが景品表示法の執行の措置命令等の行政処分の案件になるかどうなのかということはまた調査をしていくということでございます。いずれにいたしましても、消費者が適正な選択ができるように皆さんが心がけていただくということが浸透していって、消費者の保護が図れるということが重要だと考えています。
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問
(ニッポン消費者新聞・丸田記者)
不当勧誘の寄附のことです。先ほどちょっと長官もおっしゃった公表についてなんですけれども、これはあれでしょうか。2つあって、配慮義務違反というものに対しては勧告して従わない場合は公表可能と確かあって、禁止行為に対しての違反については報告を求めて勧告して命令して公表という、そういう段取りだったような気がするんですけれども、公表ということについては、例えば、調査中件数というのは4番のところに27件とあります。これはまだ行政措置がまだ0件というふうに理解していいんじゃないかと思うんですけれども、この調査中件数のうち勧告が必要であるとかそういうものが出た場合は公表というのはどうなりますでしょうか。 -
答
はい、今お話しいただきましたように、法律に公表することができる、それから公表しなければならないという規定が設けられています。この法律に従って適切に執行していくということだと思います。
- 問 つまり配慮義務違反については公表できるとなっているんですが、これはどう理解していいんですか。これは勧告の段階で従わない場合は公表できるということですか。このできるというところが、公表するということなのか、それとも、公表しないこともあるよということなのか。これはどうでしょうか。
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答
法律上公表ができるということは、行政庁に裁量権が与えられているという意味であります。対して、法の第7条第4項では、内閣総理大臣が同条第3項の規定により、法人等に対して勧告に係る措置をとるべきことを命令したときは、その旨を公表しなければならないとされています。これは、行政庁に裁量はなく、公表しなければならないという規定です。法の第6条第2項の規定では、公表することができる、ということで、行政庁に裁量があるとされていますが、仮にそういう場合には、消費者庁としては公表することになると思います。
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問
朝日新聞の寺田です。
件数の評価などについてお伺いしたいんですけど、この半年で、勧告や命令が0件だったり、不当勧誘の事実が認められないものも2件あって、施行前のものだったというのが9件あったことで、この法律があったことにより抑止力になっているというふうに評価できるのか教えてください。 -
答
まだ法律を施行して半年ですので、判断をする時期としては時期尚早だと思いますが、この法律の施行前後、今年に入ってから各所で説明会をし、ウェブ等でも情報発信し、皆さんにご協力いただいているところであります。そういう点におきましては、やはり寄附の勧誘をする場合にはしっかりと相手方の意思を尊重して配慮義務を守り、このような禁止行為をやらないようにということで、寄附を募っている多くの団体の方には大分認識をしていただいているのではないかと思います。そういう点では皆さんが注意事項を考えながら寄附を募っていただいている点においてはやはり一定の抑止効果が働いているというふうに理解できますが、まだ半年間ということですので、これがずっと続くように、さらに私たちも周知活動をしながら、消費者の方の利益がしっかり図られるように努めていくということだと思います。
- 問 一方で、43件の処理件数のうちの32件が調査が不能だったということなんですけれども、情報を受けたものからでしかやれない、情報提供者からの連絡がまずないと難しいということなのか、例えば、情報提供者との連絡がなくても消費者庁からもう少し団体に対して調査ができるようになったらいいとか、その捜査とか調査の難しさなど、課題として出てきたものはありますでしょうか。
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答
まず一つは先ほども申し上げましたが、できるだけ情報をいただくときには連絡先をきちんと書いていただきたい。他方、連絡がつかなかったというものをそのままにしておくわけではありません。連絡がつかなかったというものに係る団体に関して、仮に一定の件数があるということになると、いろいろな周辺調査というのはできます。そういう点におきましては、やはり情報を広く拾ってこれから蓄積していくということが重要だと思います。それから新しく情報を寄せる方々にはできるだけきちんと連絡がつくようにしていただきたい。それによって私たちの調査の速度が早まるというふうに理解していただければと思います。
- 問 そうするとこの32件は今は調査不能だったとなっていますけれども、ここから情報が今後蓄積してまたこの32件をきっかけに勧告とかになる可能性もあるという。
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答
それはあると思います。
- 問 すみません。もう一つ。報告を求めることができるという規定もあると思うのですが、そちらは報告を求めた件数などはありますでしょうか。
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答
それはありません。
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問
毎日新聞の阿部と申します。
関連してなんですけれども、今回は上半期でまだ半年というところではあるんですが、今回の情報収集の対象が70件であったりとか、今後調査中の件数が27件あるんですけれども、調査のスピード感だったりとかというのは長官の方でどういうふうなお考えがあるかというのをお伺いできればなと思います。 -
答
どういうスピード感ですか。
- 問 調査が不能なもので32件あったりとかいろいろ調査は進んでいると思うんですが、まだこの27件というのは調査中というふうにあるので、今後上半期だけではなく下半期もどんどん件数というのが増えてくると思うんですが、そこら辺今後どういうふうな形で調査をしていくのか、スピード感を上げていくのかとかそこら辺の意気込みじゃないですけれども、ありましたら教えていただければと思います。
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答
調査はおそらくスピード感というよりはその難易度というのがあると思います。じっくりやはりナーバスな問題でもありますので、じっくり取り組んでいくということも必要ですし、やはり一定数の声が集中的に上がってきたと、仮にそういうことがあれば、それは被害者の方が増えてはいけませんので、やはり早く取り組むとか、そこのやり方はいろいろあると思います。しかしながら今の時点で私たちの調査は遅いとは思っていません。しっかりと1件1件来た情報を積み上げていく。それから先ほど連絡不能になったものも蓄積していくという中で調査を充実させていくということで、今の体制でやっていきたいと考えています。
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問
共同通信の市川です。
以前7月に発表された途中経過の部分では、通報の推測で、不当寄附があったと疑われる時期について、法施行日以前か以後かというのがあったと思うんですけど、その内訳というのは今出せるんでしょうか。 -
答
当初は多かったように聞いておりますが、今はだんだん減っております。そんなに意味がなくなっているのではないかと思います。
- 問 意味がなくなっているのは、施行後の不当寄附の勧誘に関する相談が主だということですか。
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答
そうですし、情報提供フォームにも施行日はこの日ですよということを明記をしておりますので、そこで基本的に判断していただくことが多くなったということです。最初の段階では、消費生活相談からいただいたもの、法テラスからいただいたものといろんなものがありますけれども、最近は、法施行日後の方が徐々に増えていくということになっております。
- 問 別件なんですけれども、今日午後これから、分かりやすい栄養成分表示の取組に関する検討会があると思うんですけれども、以前の長官会見とかでも一度いただいたんですが、それに対する期待、寄せる期待の部分についてちょっと一言お答えいただければと思います。
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答
はい。栄養成分表示全体としての栄養成分は平成27年から義務付け、実際には令和2年から完全施行という形であります。食品というのは栄養を取るために皆さん食べていただくということですので、この栄養表示を諸外国におきましては、包装の裏ではなくて前に書くということによって、消費者がより選択をしやすくなる、スーパーで手に取った時にいちいちひっくり返さなくてもいいということで、栄養に関しての包装の前面に栄養表示をするという制度ができています。全体としての国際的な基準でありますコーデックス委員会においても、令和3年に前面表示をする場合のガイドラインというものが採択されたところであります。こういう中で、日本におきましても、健康・栄養と、それから食品の摂取というのを考えていかなければいけないという課題がございます。そういう時に表示がどういう意味を果たすのかということで、各国で先行的ないろいろなやり方があります。そういう中において、任意にするのか義務にするのか、日本の健康・栄養政策との関係において何がいいのかということをご議論いただき、いずれにしても消費者の健康の維持・増進に資する視点から検討いただきたいというふうに考えているところです。
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問
(読売新聞・糸井記者)
もしあればなんですけれども、この不当寄附に関してなんですが、月別の件数って出ていますでしょうか。 -
答
月別の件数は6月末までは公表させていただいたと思います。受付件数ということであれば6月末までは公表させていただき、今回7月、8月というのは公表しておりませんが、皆様の便宜のために申し上げますと、6月末で7月20日に公表したのは453となっていたと思います。それから7月末につきましては今まで公表しておりませんが632、8月末も公表しておりませんが778、9月末が今回公表いたしました809ということでございます。
- 問 あと今回寄せられたといいますか、調査をしている70件の中には、いわゆる配慮義務も禁止行為も両方あるという理解でいいんですよね。この中に含まれているという理解でよろしいですか。
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答
両方一体的に調査しています。
- 問 あと、3.の処理件数のうちの(5)の法律施行日前の事案と認められるもの等が9件とあるんですけど、これは、もう施行日前という時点でそれは調査をしていないのか、それとも調査した結果、不当寄附勧誘防止法違反に該当しそうなものもあったのかというのはいかがでしょうか。
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答
それはありません。ありませんが、施行日前のものだからといって完全に調査を打ち切るわけではありません。とあるAさんが施行日前だからということでも、仮に今後Bさんが施行日後に寄附の勧誘を行われるという場合も当然想定されますので、さっき申し上げたように今まで情報を蓄積してやっていくという意味はそういう意味でございます。
- 問 今後なんですけど、寄附勧誘対策室の人員、今12人ですか。拡充していくとか他の機関との連携を強めていくとかそういうお考えはありますか。
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答
当面人員の拡大というのは考えておりませんが、当然ながらいろんな機関と情報共有していくということは今もやっておりますけれども、今後一層強化してやっていきたいと考えています。