新井消費者庁長官記者会見要旨
(2023年6月1日(木) 14:00~14:24 於:中央合同庁舎第4号館4階共用第4特別会議室/オンライン開催)
発言要旨
本日は、6月1日に関係するもの2つ、その他1つということで冒頭3件の発言をさせていただこうと思います。
本日6月1日より改正特定商取引法、改正消費者契約法、不当寄附勧誘防止法が施行されます。まず、改正特定商取引法について申し上げますと、この記者会見の中でも何回か議論になりましたけれども、契約書面等につきまして、紙での交付が原則ではございますが、消費者が希望し承諾した場合には、電磁的方法による提供が可能になります。希望するあらゆる消費者がデジタル化の恩恵を受けられ、かつ、悪用しようとする事業者を便利にしない形での制度ということで、いろいろご指摘を受けて制度設計をしてきたところでございます。何回も申し上げておりますけれども、紙の契約書の交付が原則ということでありますので、電磁的方法による提供について少しでも不安をお持ちの場合は、従来どおり紙の契約書面の提供を希望するということを徹底していただきたいと思います。
次に、改正消費者契約法でございます。改正消費者契約法は令和4年5月25日に成立いたしましたが、6月1日にいろいろな規定が施行されます。まず、契約の取消しの対象となる不当な勧誘行為、勧誘することを告げずに退去困難な場所へ同行したとき、威迫する言動を交えて相談の連絡を妨害したとき、などについて取消しの対象になるということと、事業者の解約料の説明の努力義務の導入、その他の事業者の努力義務の拡充等を措置したところであります。これらによりまして、消費者が事業者とより安心して取引ができるようになるということでございますので、事業者、それから消費者へ周知をしっかり図っていきたいと考えています。
最後に、不当寄附勧誘防止法につきましても、この改正消費者契約法の規定と同様の措置を取っているものにつきましては、本日6月1日から施行ということでございます。1点目は以上です。
2点目でございます。令和5年度の消費生活相談員担い手確保事業についてです。令和2年度から消費生活相談員担い手確保事業というのを実施しておりまして、相談員の方の資質の向上、相談員を志望する方がしっかりと就職できるような措置を講じてきたところでございます。令和5年度は、今までの経験を踏まえまして、担い手確保のために、資格取得者の母数の増加というのに加えまして、新たに就業される相談員の方々に、実践力、即戦力を持って相談員になっていただきたいという要望がいろんなところから寄せられておりますので、そのために事業を充実したということでございます。このようなニーズを踏まえまして、今回は多くの相談員の方にさらに消費生活相談員を目指していただくということとともに、現場で活躍いただけるようにということで、相談員の資格を持つとともにより発展的な知識や実践力を身につけていただくということで、これもデジタルで、いろんな地域にいてもこれが受けられるということで、消費生活相談員養成講座という講座をつくるということでございます。これに加えまして必要な知識の普及ということで、eラーニングで学べる消費生活相談員資格試験対策講座、の2本立てで進めていこうと考えています。このうち、消費生活相談員養成講座は、本日6月1日の12時から申込みの受付を開始しています。それから、eラーニングで学べます消費生活相談員資格試験対策講座は、6月22日の12時から申込受付を開始いたします。ご関心のある方、それから関係者の方々にはぜひこのような機会をご利用いただきたいと思います。
3点目でございます。成年年齢引下げから約1年が経ちました。昨日、国民生活センターから、18歳・19歳の消費者トラブルの状況について公表されております。現時点では、成年年齢引下げ前後で著しい変化というのは見られないと分析をしておりますけれども、引き続き若年者の消費者トラブルの状況を注視していきたいと考えています。消費者庁におきましては、これまでも消費者教育の教材として「社会への扉」というものを活用した実践的な消費者教育を働きかけてまいりました。これにつきましては、2021年度ですけれども91%の高等学校等でこれを活用した授業を実施しているということでございまして、契約の入門編につきまして皆さんにまず知識を持っていただくということをこれからも引き続きやっていきたいと思います。これに加えまして、本年3月には悪質商法に関する具体的な手口等について注意喚起する啓発チラシを作成いたしまして、文部科学省をはじめとした関係省庁を通じて、全国の大学、それから教育委員会等に周知をしたほか、大学生協等と連携をして皆さんに周知を図っているということでございます。それから今回の国民生活センターの分析におきましては、美容医療についての相談件数、トラブルなどが多いということでございますので、昨日の国民生活センターの公表に合わせまして、美容医療を受ける前にチェックするポイントということについて改めて注意を喚起したところでございます。いずれにしても、繰り返しになりますけれども、契約をしたということになりますと契約した本人に責任が発生するということでございます。従いまして、契約内容をよく確認していただくということ、それから、おかしいと思ったらきっぱり断る勇気、不安があったときには周りの方や消費者ホットライン188にご相談をいただくということでございます。今後とも関係省庁と連携しながら注意喚起、それから被害の状況を注視していきたいというふうに考えております。
質疑応答
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問
NHKの島田です。
冒頭発言の今日施行された法律についてお尋ねします。今日、改正消費者契約法と改正特商法が施行されましたけれども、それぞれについてですけれども、この法律が施行されたことによって、消費者にとってどんなメリット、どんなところに資するのか、その期待感というのを教えてください。
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答
いずれの法律もいろんな形で消費者トラブルがあったという事実を踏まえて、法的に対策を取ったということでございます。従いまして、まず第一に事業者の方々にはこのような勧誘行為なりサイトなりを作らないということで私どもは周知してきましたけれども、まず一定の倫理的な販売活動あるいは勧誘活動をしていただきたいということです。それによりまして消費者は安心して取引ができる。それからいろんなサービスが受けられるということですので、双方にメリットがあるような形で運用していきたいというのが第一点でございます。消費者の方々には、今回の改正消費者契約法の中にあるような無効となるような条項というのもございますので、無効を主張することができる、あるいは、いろんな形で消費者相談の中で契約を取り消したりできるということを知っていただくということも重要ですので、知っていただいて、その権利をぜひ行使していただけるような形になっていくというのが望ましいと思います。
- 問 先ほど申し上げましたが、改正消費者契約法については、類型が今回3つほど追加されたと思うんですけれども、この類型が追加されたことによって今までどうだったものが消費者にとって資するというか、その辺りの期待をお願いします。
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答
今回の改正消費者契約法については、パンフレットも既に配布をしておりますが、不当な勧誘行為が追加的に取り消すことができるということになっています。これはどういう意味かということを申し上げますと、消費者が合理的な判断ができなくなるような事態を立法事実から類型化したものです。まず、このような事態に陥らないようにすることということと、こういう時には、後から自分の権利が行使できるということを知っておいていただくということが重要です。このパンフレットを周知するとともに、トラブルに遭った時には、繰り返しになりますが権利をぜひ行使をしていただきたいと思います。
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問
読売新聞の糸井です。
先週の金曜日の26日に、旧統一教会に絡む消費生活センターへの相談件数611件というのを伝えていたと思うんですけれども、この1年間の件数についての評価と、今回は件数だけで分析というもの、年齢別とか性別とか、そういうのを行っていないと思うんですけれども、今回、数字だけにした理由をお聞かせください。
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答
旧統一教会につきましては、昨年の霊感商法等の悪質商法への検討会の中で、旧統一教会としての数字を公表しております。これはその時に河野大臣からも説明をさせていただきましたが、旧統一教会について「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議ということで国として特別な対応をするということが決定をされたということで、その時は検討会の議論に資するという意味もありましたので、年齢別でありますとか金額等について分析をして出したということでございます。現在、法テラスにおきまして霊感商法等対応ダイヤルというのが継続しております。霊感商法のダイヤルは月ごとに発表しているということでございますけれども、昨年私たちは検討会の中では、確か昨年前半までの数字しか公表していなかったということですので、今回その数字についてまとめて公表させていただきました。数字についてということでございますが、その前の年に比べるとやはり相当数増えているというのは今回も分かると思います。それは昨年の旧統一教会の問題がいろんなところで話題になったことを契機ということでございますので、具体的にはその内容の分析というのは今のところするつもりはないということでございます。しかしながら、その後、被害状況につきましては、法テラスの方の相談窓口というのが開設されております。その法テラスの相談窓口の方から適切な機関ということで、弁護士会であるとか、被害者弁護団とか、人権相談とか、そういう窓口にお話をするという枠組みができあがっております。今回、国民生活センターのPIO-NETの数字を公表したというのは、省庁連絡会議の中での活動として、皆さんへの情報提供ということで出させていただいたというふうにご理解いただければと思います。
- 問 今後もこういった形で半期もしくは年ごとという形で公表されるんでしょうか。
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答
はい。今後も省庁連絡会議がある限りはですね、定期的に公表していきたいと思います。
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問
日本消費経済新聞の相川です。
消費者契約法なのですが、当時は検討会報告書に盛り込まれた取消権の内容がほとんど実現できなかったという経緯があって、やはりその判断力の著しく低下した消費者が生活に著しい支障を及ぼすような契約をした場合の判断力に着目した取消権がもう宙に浮いたままで、今、包括的な在り方が検討されていると思うのですが、まだ全然先が見えないのですが、その検討はどのような状況になっているのでしょうか。
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答
消費者契約法の抜本的な在り方についての有識者の懇談会というのは、昨年からずっと継続していて、今も議論しているところでございます。今月も何回か開くということでございまして、今までの議論を踏まえて論点を整理していこうということでございます。その有識者懇談会では、抜本的に、消費者像をどう見るかといったこと、それから、いろんな形の情報の波の中で、どういう形で対応していくのがやはり中長期的に見て適切なのか、法的な対応も含めて、ということを検討しており、相当広い視野から、有識者の方々に来ていただいておりますので、論点として提示をするということで、今まとめに向けて議論を詰めているということでございます。
- 問 消費生活相談員担い手確保事業について、今回の見直しのご説明ありがとうございました。養成講座も実は資格を持っていない人も対象になっていると伺っていて、10道府県で、対面で最新の消費者トラブルを学んでグループワークで事例検討をするというような点は高く評価できると思うのですが、実は今回予算が9000万円になっています。過去の実績を見ると、初年度が全相協が落札をしたもので2900万円、2年目はNACSで3300万円、3年目が日本消費者協会で1700万円です。今回NTTデータ経営研究所が落札をしているようですが、この9000万円というお金は何に使われるのでしょうか。
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答
(地方協力課)今回かなり大規模に全国的な講座を実施して、対面でもしっかりと講座をやっていくということで、これまでeラーニングだけだったものが、そうした形で全国規模でやっていくということで、それに関する費用が計上されているというふうなものとお考えいただければと思います。
- 問 これ現時点で昨年の消費生活相談員担い手確保事業の実績が報告されていないのですが、昨年の結果はどういう結果になっていて、その結果の何を踏まえた見直しというふうに考えたらよろしいんでしょうか。
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答
(地方協力課)趣旨につきましては先ほど長官からお答えをしたとおりでありますけれども、実績につきましては今現在集計中という状況です。
- 問 消費生活相談員のアンケート調査を実施してくださっていて、5月17日が締め切りになっていたようですが、その結果はいつ公表され、それに基づいてどのような検討が行われているのでしょうか。
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答
今お話ありました、消費生活相談員の方、それから、担当行政部局の方に、連休前にアンケートを実施し回収をしております。今詳細のクロスの分析をいろいろ加えているということでございまして、ここでもいろいろ議論になりましたが、消費生活相談員の方々の処遇の改善、それから究極は国民の皆様へのサービスを向上するためにどういう体制が一番ベストなのかということで、議論を開始する非常に重要な基礎データというふうに考えています。その点につきましては、しっかりとデータを分析するということ、それから将来に向けて何がベストなのかということで、今、実は喧々諤々議論をしているということでございますので、アンケート結果を発表するということが目的ではなく、それによって何をするかということも含めて、皆さんの意見を聞くような形に持っていこうというふうに思っておりますので、もう少しお時間がかかると思います。
- 問 この検討、非常に難しい検討だと思いますので、まずはとりあえずアンケート結果は早い段階で公表していただいて、皆さんで議論できるような叩き台にしていただければと思いますので、その辺については検討のほどよろしくお願いいたします。
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答
ご意見は賜っておきます。
- 問 食品衛生基準行政を消費者庁に移管する問題で関連して質問させてください。国会の審議を踏まえ、参議院の附帯決議に、消費者庁が食品メーカーを含む民間企業から出向者を受け入れるにあたっては消費者庁が食品衛生基準行政を担う趣旨を踏まえ、科学的な安全を確保し、消費者利益のさらなる増進を図り食の安全に対する懸念を招くことのないよう十分に留意すること、というものが追加されています。そこで質問させていただきたいのですが、消費者庁への民間企業からの出向者は、本年度はどのような状況になっているのでしょうか。
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答
民間からの出向者は官民人事交流法等に基づいてそれぞれ受け入れているということでございまして、令和4年10月1日現在の消費者庁からの受け入れ人数は33名でございます。ちなみに霞ヶ関全体についてお話をさせていただきますと2,674名ということでございまして、それぞれ各省いろんな部署で民間の方が働いているという状況でございます。この官民人事交流法に基づきまして措置をされておりますのは、公正な公務に支障がないようにということでございまして、それぞれ配置する部局の制限などがしっかり行われているということでございます。私も職務経験上民間の方々と仕事をしてきました。国家公務員として多くの民間の方が今活動しているということをまず念頭に置いていただきたいと思いますし、まさに、附帯決議にてご指摘いただいたことは当然のことだと思っております。基本的に官民人事交流法で受け入れられる方々は国家公務員法の規律の下にあるということですので、秘密の保持、それから倫理規定についても全て同等だということを理解した上で、今もそれぞれ職務に当たっておられますし、これからもそのような形で職務に当たっていただけると考えています。
- 問 食品メーカーの方々も入っているということで議員さんの方から質問が出ているようですので、その辺はご回答いただきよく分かりましたのでよろしくお願いいたします。
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問
日本食糧新聞の本宮です。
農水省の動きに関連して1点お聞きしたいんですけれども、29日に食料農業農村基本法の検証部会が中間取りまとめを出しているんですが、その中に食品安全行政に触れている項目がありまして、リスク分析の考え方を導入した食品安全行政への移行という箇所なんですけれども、この部分の内容についてもし把握していらっしゃいましたら、この点についての消費者庁としての連携ですとか、お考え、コメント等ありましたらお願いしたいんですが。
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答
その中間報告について直接相談を受けているというわけではございませんが、当然のことが書いてあるということだと認識をしています。食品安全行政につきましては、科学的な知見に基づいて、データに基づいてやっていくということですし、リスク評価機関とリスク管理機関、農林水産省はリスク管理機関にあたると思いますけれども、リスク評価機関の評価に基づいて適切に管理をしていくということなので、今までのやり方をしっかり踏襲していくということではないかというふうに思っています。