第二百十二回国会 参議院消費者問題に関する特別委員会における自見内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)発言
消費者及び食品安全担当大臣として、御挨拶を申し上げます。
高齢化やデジタル化の進展等、消費者を取り巻く環境は複雑化、多様化し、消費者政策の課題も日々変化しています。こうした課題に対し、現場の声を聴き、消費者目線という横串を貫いていくことが重要であり、消費者行政の司令塔として、関係省庁と連携し、スピード感を持って施策を推進します。
第一に、消費者基本法の抜本的改正から二十年を迎えようとしている中、消費者を取り巻く環境の大きな変化に対応するため、消費者法制度のパラダイムシフト、考え方の大きな転換を進めます。
消費者庁では、本委員会から附帯決議を受け開催した有識者懇談会において、「消費者法を理念から見直し、既存の法律の枠組みに捉われず、様々な規律をコーディネートする広義の『消費者法制度』に再編・拡充していくことが重要」とされた議論を土台とし、今後、具体的な検討を進めます。
第二に、現場である地方の消費者行政の充実・強化に取り組みます。
消費者の多様なニーズに対応し、相談対応の質の向上や相談員が十分に力を発揮できる環境づくりを進めるため、国と地方の役割も踏まえ、消費生活相談情報を集約するシステムであるパイオネットの刷新等、消費生活相談のデジタル化、サービス向上への体制再構築を推進します。
また、地方消費者行政強化交付金を通じて地方公共団体の取組を広く支援し、相談員の担い手確保の取組や、消費者ホットライン「一八八(いちはちはち、いやや)」の更なる周知を行います。
孤独・孤立の状況にある方、高齢者、障害者といった方々の消費者被害の防止のため、消費生活センターと地域の多様な見守りの担い手をつなぐ「見守りネットワーク」の設置を促進し、活動を充実・強化します。
第三に、消費者の安全、安心の確保に万全を期してまいります。
食品の安全性に関するリスクコミュニケーションを推進する立場から、ALPS処理水の海洋放出について、関係省庁と連携し、引き続き、国内外の消費者に向け、科学的根拠に基づく正確で分かりやすい情報発信を行います。
来年四月に予定されている厚生労働省から消費者庁への食品衛生基準行政の移管に当たっては、科学的知見に裏打ちされた衛生規格基準の策定を担保しつつ、消費者利益の更なる増進を図るべく、必要な体制整備を進めます。
また、消費者の食品の選択に当たっての重要な判断材料である食品表示に関する制度の適切な運用に努めます。
消費者安全調査委員会については、消費者事故等の原因調査を拡充し、発信力を強化します。
第四に、公正で信頼のある消費者取引の実現に努めます。
景品表示法、特定商取引法等の所管法令を厳正かつ適切に執行し、関係省庁とも必要な連携を図り、不当表示や悪質商法に対処します。本年五月に成立した改正景品表示法の施行に向け、迅速に問題を改善する確約手続制度の導入等、法の周知・広報に取り組みます。
消費者取引のデジタル化を踏まえ、デジタル技術を活用した消費者への注意喚起や情報発信を積極的に行い、広告であるにもかかわらず広告であることが分からない「ステルスマーケティング」に対する規制の適切な運用、取引デジタルプラットフォームを利用して行われるものを始めとする通信販売取引の適正化や紛争解決の促進等に取り組みます。
昨年十二月に成立し、本年六月に全面施行された「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」について、消費者庁に寄せられる情報の整理確認を引き続き徹底して行い、これらの情報等に基づき厳正かつ適切に法律を運用します。
また、消費者の被害を未然に防止するため、消費者が自ら気付き、断り、相談する実践的な「消費者力」を育成・強化する消費者教育に取り組みます。
第五に、消費者、事業者が連携して豊かな消費社会を作り上げることも重要な課題です。
食品ロスを二千三十年度までに半減させる目標の達成に向け、関係省庁等と連携し、食品の寄附等を促進するための措置を含む施策パッケージを年末までに策定し、多様な取組を更に促進します。
また、事業者が消費者の声をいかすとともに持続可能な社会の構築にも寄与する消費者志向経営を促進します。
昨今の事案も踏まえ、公益通報者の保護及び不正の早期発見・是正を図るため、内部通報制度の必要性や有効性を改めて周知徹底し、事業者の体制整備を促します。
最後に、徳島に設置した「新未来創造戦略本部」では、モデルプロジェクトや政策研究、国際交流等を実施することにより、消費者行政が直面する新たな課題への対応策を試行・検証し、その全国展開を目指します。
以上の施策の実施に当たっては、消費者庁、消費者委員会、国民生活センターの緊密な連携を図り、消費者の利益の擁護及び増進に関する施策の推進に全力を尽くします。
石井委員長を始め、理事、委員各位の御理解と御協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
令和五年十一月十日