「世界消費者権利デー」を迎えるに当たって (令和6年3月15日)
世界消費者権利デーは、1962年3月15日に、米国のケネディ大統領によって消費者の権利(安全への権利、情報を与えられる権利、選択をする権利、意見を聴かれる権利)が初めて明確化されたことを記念し、消費者の権利を促進するために国際消費者機構(CI : Consumers International)が提唱している世界的な記念日です。
今年の世界消費者権利デーのテーマは、「消費者のための公正で責任あるAI(Fair and responsible AI for consumers)」です。
CIが本テーマを選んだ背景として、AI、特に生成AIの飛躍的な進歩がデジタルの世界を席巻し、このテクノロジーは、働き方、コミュニケーションを取る方法、情報収集をする方法など、人々の生活に甚大な影響を及ぼすことを挙げています。また、消費者安全やデジタル社会の公正性にも深刻な影響を与える可能性や、誤った情報、プライバシーの侵害、差別的慣習を生じさせることが懸念されている旨指摘しています。CIでは、公正かつ責任あるAIを実現するため、早期にこれらの問題に取り組む必要性について指摘しています。
私たちの身の回りには、例えば、スマートスピーカーやスマート家電など、AIを活用した多くのサービスや製品が存在しており、私たちの生活に便利さや豊かさをもたらしているとともに、生活の安心や安全にも寄与しています。
一方で、AIの活用に伴って、これまでとは異なる課題の発生も指摘されているところであり、AIを活用した製品やサービスを利用する消費者においては、AIの特性や消費生活に取り入れるメリットとリスクを評価した上で、AIを賢く使いこなすことが重要です。
消費者庁では、AI及びデジタル技術の利用に関する普及啓発を行ってきたところ、さらに、AI等の技術の進展等に伴う消費者を取り巻く環境の変化に対応するための検討も行っています。
その中では、令和4年から、高齢化やデジタル化、AI等の技術の進展等の消費者を取り巻く取引環境の変化に対応するため、消費者法の現状の検証や将来に向けて、消費者法に何が必要で何を実現すべきかといった根本的な議論を行っています。
例えば、AIによって、個々の消費者の好みやニーズに合わせた商品やサービスを提案するといった取引の「個別化」が可能になっていることが消費者に与える影響や、個々の消費者が商品やサービスの購入を判断するに当たって、事業者によるAIの悪用・誤用がもたらすリスクを軽減するよう、個人の脆弱性を踏まえてAIがサポートする可能性など、AI等の技術の発展・普及が消費者取引に与える影響や役割についての議論も行っています。
AI等の技術の進展が今後も見込まれる中で、これらの議論を踏まえ、消費者法制度を、狭義の法律だけでなくAI等の技術を含む様々な規律をコーディネートするなどといった新たな視点も加えた広義のものに再編・拡充していく「消費者法制度のパラダイムシフト」に向けた検討を進めていきます。
来年度に予定している、消費者政策の推進に関する政府全体の基本的な計画である「消費者基本計画」の見直しに当たっては、2030年におけるより良い社会の実現に向けて、AI等の技術の進展等に伴う消費者を取り巻く環境の変化も踏まえ、検討してまいります。
世界消費者権利デーが、全ての関係者が共に消費者を取り巻く課題について考える機会となることを願い、ここにメッセージを発信します。
令和6年3月15日
内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)
自見 はなこ