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「世界消費者権利デー」を迎えるに当たって

世界消費者権利デーは、1962年3月15日に、米国のケネディ大統領によって消費者の権利(安全への権利、情報を与えられる権利、選択をする権利、意見を聴かれる権利)が初めて明確化されたことを記念し、消費者の権利を促進するために国際消費者機構(CI: Consumers International)が提唱している世界的な記念日です。

今年の世界消費者権利デーのテーマは、「プラスチック汚染問題への取組(Tackling Plastic Pollution)」です。
我が国では2030年までにワンウェイ(通常一度使用した後にその役目を終える)プラスチックを累積で25%排出抑制するなどの目標を掲げて施策を講じています。去る3月9日には、国内におけるプラスチックの資源循環を一層促進するための法律案を閣議決定し、国会に提出したところです。また、昨年7月にプラスチック製買物袋が有料化されるなど、消費者の身近なところでの取組も進められています。
一方、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い新たな生活様式の実践が求められる中で、不織布マスクやテイクアウト・デリバリーの容器にもプラスチックが用いられており、家庭からのプラスチックごみ排出量の増加が懸念されています。

2015年9月に国連サミットにおいて採択された「持続可能な開発目標」(SDGs:Sustainable Development Goals)の12番目の目標には、「つくる責任、つかう責任」が掲げられています。また、国際消費者機構は冒頭に紹介した消費者の4つの権利に追加する形で「消費者の8つの権利と5つの責任」を提唱していますが、その責任の中には「環境への配慮責任」が含まれています。プラスチック汚染問題においても、消費者一人一人が消費と社会のつながりを「自分ごと」として捉え、未来を変えるための行動が求められているといえるでしょう。とりわけ、消費者の身近に寄り添い、その声を代弁することを使命とする消費者団体は、こうした普遍の目標に向かって取り組む上で欠かすことのできない存在として大きな期待が寄せられています。

プラスチック汚染問題を始め、消費者を取り巻く社会課題を解決するには、消費者と事業者が共通の目標の実現に向けて、互いの強みをいかして協力して取り組むことが重要です。消費者庁では、消費活動自体を「未来への投資」と考え、こうした消費者と事業者との「協働」の枠組みを構築するための取組を進めています。

特に、食品ロスの削減を最重要課題の一つと位置付け、この一年間で、「食品ロスの削減の推進に関する法律」に基づく基本方針の策定や、賞味期限の愛称に選ばれた「おいしいめやす」の普及等に取り組んできました。しかし、現状は必ずしも十分とはいえません。引き続き、関係省庁と連携して、制度的な課題の検証を含め、国、地方公共団体、事業者、消費者等の多様な主体による食品ロスの削減に取り組んでまいります。

持続可能な社会の実現に加え、消費者は、新型コロナウイルス感染症の拡大や、消費生活のデジタル化など、様々な新しい課題に直面しており、消費者庁はこうした新しいタイプの消費者問題にも迅速に対応しています。
新型コロナウイルスのワクチン接種をかたる詐欺やコロナに効くと称する不当表示など、悪質商法による消費者被害の防止に引き続き万全を期してまいります。
また、デジタル分野における新たな消費者トラブルを抑止すると同時に、消費者のデジタルサービス等に係る利便性向上を強力に推進します。今国会において、取引デジタルプラットフォームにおける消費者の安全・安心の確保のための新しい法律案、ネット通販における詐欺的な定期購入商法対策等のための特定商取引法や預託法等の改正法案を提出しました。また、SNSの活用や全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET)改革など、消費者行政のデジタル化を進めてまいります。

このほか、来年4月の成年年齢18歳への引下げを見据えた消費者教育の充実、孤独・孤立に陥りやすい高齢者や障害者の見守りを含む地方消費者行政の基盤強化、消費者ホットライン「188」(いやや)の周知・広報、所管法令の厳正な執行、消費者契約法の見直しに向けた検討等にも全力で取り組みます。

今後も消費者を取り巻く環境の変化に伴って生じる様々な課題に対し、消費者行政の司令塔として、関係省庁と連携し、スピード感を持って対応してまいります。
世界消費者権利デーが、全てのステークホルダーが共に消費者を取り巻く課題について思いをはせる機会となることを願い、ここにメッセージを発信いたします。

令和3年3月12日
内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)
井上 信治