岡村消費者庁長官記者会見要旨(平成30年12月26日(水))
日時:平成30年12月26日(水)14:00~14:24 於:中央合同庁舎第4号館6階消費者庁記者会見室
1.発言要旨
皆様こんにちは。
本日は高齢者の窒息事故防止について申し上げます。本日、「みんなで知ろう、防ごう、高齢者の事故」の第三弾として、高齢者の窒息事故の防止について消費者への注意喚起を行いました。高齢者の「不慮の事故」のうち、窒息による事故は最も死亡者が多く、その約半数が食物の誤嚥によるものとなっています。事故要因となった食べ物では、お粥類、餅、ご飯など、つまり主食類が多くなっております。このうち、お餅については高頻度で窒息事故が起きやすく、また、1月に多く発生する傾向にあることから、これからの時期、特にご注意いただきたいと思います。
今回の注意喚起では、高齢者の噛む力や飲み込む力が衰えていることを踏まえて、餅を、(1)小さく切っておくこと、(2)食べる前に、先にお茶や汁ものを飲んで、喉を潤しておくこと、(3)よく噛み、唾液とよく混ぜ合わせてから飲み込むこと、の3点を注意ポイントとして挙げております。
また、ご家族など高齢者の周囲の方も、高齢者がお餅を食べる際には、よく噛んで食べているか、無理に飲み込んでいないかなど、事故防止のためにご注意願えればと思います。お手元にもお配りしておりますが、お餅による窒息事故について、特に注意を呼び掛けるために新たにポイントをまとめたイラスト入りの啓発チラシを作成しております。本件については、啓発チラシを活用いただき、地方公共団体や高齢者の福祉・介護に関係する団体へ周知をいただくよう、ご協力をお願いしております。消費者の皆様には、今回の発表を参考に、お正月の食事を安全に楽しんでいただければと思います。記者の皆様方におかれましても、消費者の皆様への周知にご協力いただければ幸いでございます。
2.質疑応答
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問
共同通信の新為です。
先程発表ありました日産自動車の課徴金納付命令の取消しについてのご回答、ご所見をお伺いしたい。 -
答
昨年6月に日産自動車に対して行った課徴金納付命令を、本年12月21日金曜日に当庁の裁決により取り消しました。この案件の主な論点は、日産自動車が三菱自動車に製造委託(いわゆるOEM)をしていた軽自動車の燃費性能に関する表示をするに当たって、その表示内容の真実性について景表法8条1項に定める相当の注意を怠ったか否かでございました。
当庁は、日産自動車が十分に調査・確認をせず、三菱自動車による燃費偽装を見過ごして、燃費性能についての優良誤認表示に当たる表示をしたと認定して、日産に対してこの命令を課したものでございます。
本件における、相当の注意を怠ったか否かの判断は、法的評価の分かれ得るものでありました。この度、行政不服審査会から、日産自動車が相当の注意を怠ったとは認められないとして、本件命令は取り消されるべきとの答申を受けました。当庁は、答申の判断には相応の合理性があると判断し、答申の結論的判断を尊重し、裁決によりこの命令を取り消したものでございます。
同じ行政の中で消費者庁から総務省の行政不服審査会に諮問いたしまして、審査会の答申が取り消されるべきという結論でございましたので、その判断を尊重し、裁決により昨年の命令を取り消したということでございます。 -
問
通販新聞、佐藤と申します。
関連してですけれども、不当表示の該当性について、法解釈を誤るということで採用してないということが書かれていたかと思うのですが、具体的にどういうことになるのでしょうか。要は、課徴金納付命令の話で、課徴金の取消の文書の一番下に書いてある部分なのですけれども。 -
答
答申では、本件の表示は省エネ法や自動車公正競争規約による義務の履行として行われたものであるとして、そのような義務の履行として行われた本件表示は景品表示法の不当表示には該当しないとの判断が示されたところです。
私どもは、この答申のご判断については、省エネ法、自動車公正競争規約及び景品表示法の解釈・適 用を誤ったものであると考えております。私どもの考えにつきましては、皆様方のお手元にも配付しております裁決書において 詳しく検証して述べておりますので、ご検討いただければと思います。 -
問
NHKの飯嶋です。
今の日産の件に関して、一度命令として、課徴金を納付しなさいという形で命令を行ったものが覆ったということで、今後の調査や、処分に対する影響はどのようにお考えですか。 -
答
ご質問の件につきましては、今後も、変わらないと思っております。もともと本件につきましては、法的な評価は分かれ得る相当の注意についての判断でございますから、お手元にお配りしております裁決書の末尾にもございますが、私どもとしては、「処分庁」という言い方をしておりますが、不当な表示による顧客の誘引を防止して、一般消費者の利益を保護するとの使命を果たすために、本件において日産自動車は三菱自動車に対して走行抵抗の基礎データの提示を求める調査・確認まですべきであったが、この調査・確認義務を十分に尽くさなかったものと認定判断して、課徴金納付命令を行ったものでございます。
今回は、証拠判断はもともと分かれ得るものでありましたので、答申の結論のご判断を尊重して、私どもは当初の命令を取り消したということでございます。
繰り返しますと、もともと本件における相当の注意を怠ったか否かの判断は、法的評価が分かれ得るものでありました。そういった判断の難しい事案ではありましたが、当庁としては、一般消費者の利益の保護の見地から、不当表示を抑止するという使命を果たすため、この命令をしたものでございますから、当初の判断が誤っていたとは考えておりません。
そして、法的評価の分かれ得るところでありましたので、第三者機関である行政不服審査会の判断は尊重すべきと考えたものでございます。 -
問
通販新聞、佐藤です。
法的評価が分かれ得るということは、今後もそういう判断があり得るということなのですか。要は、判断を間違う可能性があるということですか。 -
答
相当の注意の判断は、その個別の状況によりますので、その主体がどのような認識をしていたかということを、かなり踏み込んで、証拠に基づき、しかも規範的な判断をしなければならないものでございます。
私どもとしては、これからも判断の難しい事案はあろうと思いますので、今までどおり慎重に、私どもの果たしたい消費者保護という使命と衡量して、庁全体として判断していきたいと考えております。 -
問
日本消費経済新聞、相川と申します。
30年度二次補正案と30年度当初予算の会見の後、自治体に、強化事業と推進事業の内訳は部外秘で、明らかにその情報が報道機関に漏えいしていると。この漏えいが続けば、予算が成立する3月末までは、事前の情報提供は一切行わない旨の文書が出されているのですが、長官はご存じでしょうか。 -
答
予算に関するご質問ですか。
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問
そうです。
強化事業と推進事業の内訳を、要するに取材で記者に、報道機関に伝えると、それは情報漏えいに当たって、そういうことが続くと、この事前に予算の情報を、予算成立の3月末までは教えないというような文書が出ています。これで私どもは取材がしにくくなっていて、逆に私たちの取材に応じると、配分額を減らされるのではないか、犯人探しが行われるのではないかと、懸念をしているのですが、この文書について、長官はご存じなのか。執行ではなくて、取材の方法について聞いています。そういう文書が出ているのですが。 -
答
公表できるものと、しないものとは分けて考えておりますが、私自身はご指摘のものと思われる書面自体を個人で確認してはおりませんので、どういった事情があるのか、事実関係を担当課にも確認いたしまして、関係者のご判断が入っている文書なのであれば、そういった書面が実在するのか、その内容はどういう過程で成立したのか、事実関係を調査した上で、追って担当課から回答させていただきます。
- 問 30年度当初予算の16億円のうちの、最初、推進事業が16億円で、強化が8億円としていたものが、途中で5億円、推進事業に振り替わったことを今臨時国会でかなり厳しく追及されていて、ここが焦点になっていますので、かなり取材もしにくくなっているので、自治体に迷惑が掛かることのないように、取材を進めていきたいと思いますので、そういうことがないように、長官からもよろしくお願いします。
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答
地方消費者行政強化交付金については、一般的なことしか申し上げられませんが、厳しい財政事情や執行実績などを踏まえつつも、おおむね所要額を確保したところと考えております。引き続き国としても、制度の周知や案件の掘り起こしについて、国会でのご指摘も踏まえて、地方消費者行政の体制維持、充実のために必要な経費が措置されるよう、しっかり取り組んでまいる所存でございます。
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問
共同通信の新為です。
消費者委員会の公益通報者保護専門調査会の方で、本日、公益通報者保護法の改正に向けた報告書がまとまりました。答申前だとは言うことではあるのですけれども、今後の法改正等のスケジュール等がもし検討されているものがあれば、お聞かせ願いますでしょうか。 -
答
ご指摘のとおり、消費者委員会の公益通報者保護専門調査会では、精力的なご審議が行われ、間もなく報告書が取りまとめられると伺っております。消費者庁といたしましては、報告書の提言の内容につきましては、正式に私どもへのご連絡をいただいてから、法制的、法技術的な観点から整理を行うべき事項や、民間事業者、行政機関の負担の増加を伴う事項等も含まれているところでございますから、検討を要する事項が非常に多い状況にあります。これから必要に応じて、関係者からご意見をいただく機会を設けるなど、引き続き更なる検討を行いたいと考えております。
したがいまして、法制化に向けては、具体的な制度内容の検討や関係者間での粘り強い意見調整が必要であると考えておりますので、現時点で明確なスケジュールができているわけではございません。 -
問
日本消費経済新聞、相川です。
先程の答弁なのですが、要するに、来年の通常国会の提出を目指されるのでしょうか。 -
答
先程申し上げましたことと重なりますが、具体的な制度内容の検討や、様々なご意見をお持ちの方がおいでですので、関係者の粘り強い意見調整が必要であると考えておりますから、改正法案の次期通常国会への提出は非常に困難であると予想されるところでございます。
- 問 レンタルオーナー商法を展開しているWILLについて、15か月の連鎖販売取引停止命令が出されたのですが、その後、業務禁止命令が出された大倉会長が説明会を行い、ネズミ講のようなやり方が悪いと指摘されたので、別のやり方に変えて続けるので大丈夫だと契約者を集めて説明しているという情報が取材で把握できました。この件について、消費者庁は把握されていますでしょうか。
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答
情報提供、ありがとうございます。現場の担当者にもきちんと伝えまして、私どもとしては、業務禁止を命じた者の行動については、引き続き注視してまいります。
- 問 また、ジャパンライフと同じような被害が繰り返される懸念が出ていますので、早急に刑事告発を行うと同時に、現在の法制度では、こういう被害は抑止できませんので、法律の厳格化の検討に入っていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
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答
ただいまのご指摘も有益なご意見として承りました。念のためですが、どの法律の厳格化を相川記者はお考えなのでしょうか。
- 問 破綻しないと被害が顕在化しないので、相談事例が積み上がってから、処分をかける段階で、かなり被害が広がってしまっています。その立入検査に入ることで、財産を散逸させて、逃げる準備もさせてしまう。こういう投資のようなものは、預託に限定できるのかどうかは少し難しいと思うのですが、ジャパンライフとか、WILLが何回も何回も繰り返している、こういう商法について厳しく網を掛けないと、本当に被害が蔓延してしまって、何回も何回も高齢者がだまされると思います。その辺について、ご検討をお願いしたいと思っています。
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答
ご意見として承りました。
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問
通販新聞の佐藤と申します。
機能性表示食品で、歩行能力の改善を表示している商品の撤回が結構相次いでいるのですけれども、消費者庁で、その届出の段階で事前のチェックというのはしていないですか。 -
答
届出の段階では、通常の場合、広告の仕方についてまではチェックできないわけですが。
- 問 問題になっているのは、届出表示の中の書かれているものについてです。要は広告ではなくて、届出表示です。
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答
届出表示のものとおっしゃいましたが、複数の製品として販売されているものと理解しておりますので、個別のことについてのご返答は、この場では差し控えさせていただければと思います。必要なら、担当課と直接お打合せしていただければと思います。
- 問 機能性表示に対する、その、厳正に対処する方針というのを、長官自らが庁内の課長会議の席で表明されているという話を伺いまして、実際、そういうようなご意見をお持ちなのかどうかというのを伺いたいのですが。
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答
内部で課長会議という名前で呼んでいるものはございませんが、庁全体の方針として、法と証拠に基づく厳正な法執行を心掛けております。