伊藤消費者庁長官記者会見要旨
(2022年6月1日(水) 14:00~14:18 於:中央合同庁舎第4号館11階共用第1特別会議室)
発言要旨
まず、本日6月1日、改正特定商取引法等及び改正公益通報者保護法の施行についてお話をさせていただきたいと思います。本日、特定商取引法及び預託法等の改正法及び公益通報者保護法の改正法が施行されました。
まず、特商法・預託法については、この改正法の施行により、通信販売の詐欺的な定期購入商法対策が強化されるとともに、販売預託が原則として禁止となりました。
お手元にお配りさせていただいておりますが、定期購入、サブスクリプション、それから販売預託について注意すべき事項についてもチラシを作成しておりますので、是非御覧いただければと思います。さらに、詐欺的な定期購入等については、政府広報のインターネット動画も昨日公表されているところです。
関連しまして、昨日、これも定期購入に関する相談も多い、除毛剤に関する注意喚起をいたしましたけれども、こういった個別の事案に関連するようなことも含めて、今後とも機会を見て積極的に周知をしていきたいと思っております。
消費者庁としては、引き続き改正法の周知・啓発に努めるとともに、法違反行為に対しては、迅速かつ厳正に対処していきたいと思っております。
次に、改正公益通報者保護法でございますが、これは内部通報体制の義務付けを行うなど、公益通報についての体制の強化を行うこととしております。既に、事業者に対する説明会などのほか、詳細なQ&Aなども公表しておりますが、併せて、事業者、それから労働者の方に見ていただけるようなチラシもお手元に配布をさせていただきました。事業者の体制整備により、労働者が公益通報を不安なく行うことができる環境が整うことを期待するとともに、問題があればしっかりとした対応をしていきたいと思っております。
次に、食物アレルギー全国実態調査の結果概要についてお話をさせていただきます。消費者庁では、食物アレルギーの表示対象品目については、全国のアレルギーを専門とする医師約1,000名の方の御協力のもと全国実態調査を行っております。この結果を踏まえて、症例数及び重篤度の観点から表示対象品目を定めるという仕組みとしております。
今般、最新の令和3年度における全国実態調査の取りまとめを終え、これまで食物アレルギーの原因食物の上位3品目は、鶏卵・牛乳・小麦でありましたが、木の実類の割合が増加し、13.5%と第3位となり、このうち、くるみによる食物アレルギーの症例数が増加していることが判明いたしました。
くるみについては、現在、食物アレルギー表示として表示を推奨するということになっておりますが、この結果を基に、5月30日に開催した食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議において、表示を義務付けるという方針を決定したところであります。
これを受けて、消費者庁としては本年度内を目標に、消費者委員会食品表示部会に対して、くるみを義務表示対象品目に追加する食品表示基準改正に係る諮問を行うこととしたいと思っております。詳細はお手元の資料を御覧ください。
最後に、消費者庁新未来創造戦略本部成果報告会in徳島2022の開催についてです。6月20日に、消費者庁新未来創造戦略本部成果報告会in徳島2022を開催いたします。戦略本部の成果報告会は3月に既に東京で行っておりますが、徳島の関係者にもこれをしっかりお伝えしたいという観点から、徳島で実開催をしたいと考えております。当日は、戦略本部の取組に御協力いただいている地元の有識者等との座談会なども行う予定です。詳細はお手元に配布した資料、若しくは当庁のホームページを御確認いただきたいと思います。
質疑応答
-
問
NHKの秋山です。
冒頭発言の改正法の施行、三つの法律に関してなのですが、改めて一般向けだったり、労働者向けという形で注意・啓発が必要かなとは思うのですけれども、どういった具体的な取組、頂いたチラシの配布ですとか、政府広報での動画ですとか、更に強化すべきだというふうに改めて長官は感じていらっしゃるのか、今の受け止めを教えていただけたらと思います。 -
答
法施行に当たっては、事業者に対しては、法改正によって規制が強化されるということについて相当程度丁寧に説明会をさせていただいているところでありますが、改めて消費者の方に、その改正がどのような内容か、また、そのことによって何をチェックした方がいいか、あるいはこういうことに気を付けた方がいいかということについて知っていただく必要があろうかと思っています。
既に定期購入などについてはチラシも御用意をさせていただいているところでありますが、例えば今回、改めてサブスクリプションについて、商品の定期購入とは異なるトラブルの特徴もあることから、これに特化した注意喚起のチラシなども作成させていただきました。
改正によって、こういう形で守られる、あるいは確認ができるということについて、是非、消費者の方にも知っていただいて、契約に当たってきちんと見ていただく。あるいは、不審な勧誘に踊らされないといったようなことについて気を付けていただきたいと思います。
また、公益通報者保護法についても、事業者に対しては、既に事業者団体ですとか、あるいは個別の企業などについても、説明会を数次にわたってやらせていただいております。さらに、先ほど申し上げましたようなQ&Aとか解説動画とか広報動画も公表させていただいているところでありますが、実際に労働者の方に、こういった形で守られると。だから安心して通報ができるよということも知っていただく必要があろうかと思っておりまして、本日からということでございますので、これも公表させていただいたところです。
なかなか事業者と違って、個人に対して訴求する機会というのは非常に少ないものですから、是非報道の方々にも御協力いただきたいと思います。私どもの方も、消費生活センター等々を通じて、こういったことについて周知に努めていきたいと思っております。 - 問 もう少し具体的な話でいうと、預託法改正で原則禁止になったかと思うのですが、現状で販売預託の確認申請が来ているのかどうかというのは、現状いかがでしょうか。
-
答
個別についてはお答えを控えさせていただきたいと思っております。それからもう一つ申し上げると、その原則を越えてやるためには、2段階にわたっての確認が必要ということになりますので、相当丁寧に消費者庁でチェックをさせていただくということになっていることについては、改めて皆様方に申し上げたいと思います。
したがって、今の段階ではそういう確認がされているものというのは無いということであります。 - 問 改めてにはなってしまうかもしれないですが、今日始まって今日の段階ってなかなか難しいとは思うのですが、現時点で確認が終わっているものがないということは、今日時点で勧誘行為をしているということは、既に違法に当たるという理解でよろしいのでしょうか。
-
答
御指摘のとおりです。今日時点でいわゆる販売預託商法という形で改正法で禁止される勧誘をしたら、それは違法ということになります。
- 問 もう1点、内部通報のことでも、やはり労働者への周知が大切だと思ったのですけれども、300人に達していない会社は努力義務にとどまっていると思います。こういったところの実態調査みたいなのは今後検討されないのでしょうか。
-
答
300人以下のところについては努力義務ということではございますが、そういった中小の方々でどういう体制ができるかということについても当然考えていく必要があろうかと思っております。まず、義務付けをされているところについての対応の方を優先はしておりますけれども、今後そういう努力義務の人たちにふさわしいような取組方はどういうものがあるかということについても、調査して対応を考えていきたいと思っております。
- 問 もう1点、くるみのアレルギーのことについてなのですが、3年前の時点でも急上昇していて、既に義務表示化への方針は大きくは示されていたというふうに理解していたのですけれども、改めて今回こういう結果が出て、いつまでには消費者庁としては義務化をしたいというふうに、早ければ来年なのか、若しくは本年度中なのか、その辺りはいかがでしょうか。
-
答
義務化に当たっては、表示を検証するための検査法ができるということが非常に大事になります。検査法の開発については、今、専門家の方にやっていただいているところです。
3年前の段階で、まだそれが全然めども立っていない状況でした。現段階でも完全にできているわけではありませんけれども、できるだけ早く義務表示化をするということで、そういった検査法についてもできるだけ急いでやっていくということであります。
そういう意味では、今の時点で検査法ができている状況ではないこともあり、いつ施行というふうに申し上げることができないのですけれども、どちらにしろ、私どもがパブコメした上で、消費者委員会の方に諮問、答申を受けて、それから府令改正ということになります。それから、一定の義務表示に当たっては猶予期間も必要だということになりますので、早いうちにそういう方針をお示しした方がいいと思って、こういう形を採らせていただいています。
当然、本年度内を目標に諮問するということでございますので、そのとき、そういった検査法の状況も見て、どのくらいの期間ということも考えていきたいと思っております。 - 問 実際運用されるまでには、やはりその検証の状況が整わないといけないということかと思うのですが、もう方向性としては確実に進んでいくということが決まったということで理解してよろしいでしょうか。
-
答
検査法についても、何らかの格好でできそうだということも、そういう状況もありますので、こういう形でお出しして、いろいろな事業者の方の準備なども含めてやっていけるのではないかということで、今回スケジュールを公表させていただいたということであります。
-
問
朝日新聞の寺田です。
先週の事故調のブリーフィングで出ましたエレベーター事故についてお伺いしたいのですが、今週金曜日には港区であった戸開走行事故から16年を迎えるに当たって、ブリーフィングでは、その戸開走行の保護装置の設置率がいまだ3割ですというお話などもありまして、この設置率について、それから16年を迎えて今の長官としての受け止めと、今後所管する国交省への要望とか御意見、何か御予定があったら教えていただけたらと思います。 -
答
本当にエレベーターの非常に痛ましい事故から大分時間はたったのだなと、改めて感じさせていただきました。また、この間御報告があったとおり、戸開走行保護装置が無いために事故が発生しているという発表も国土交通省でされたかと思っております。
その戸開走行保護装置については、国土交通省において補助制度なども作られているところでありますが、なかなかそれの補助の実態とか、あるいは実施が十分ではない状況にあるということも聞いております。
事故防止のために戸開走行保護装置というのは大変重要な役割を果たすということでございますので、改めて国土交通省、予算なども含めて、積極的な対応をしていただくように私どもの方からも申し上げたいと思っております。 -
問
ニッポン消費者新聞の丸田です。
食物アレルギーのくるみの件なのですが、資料を拝見しますと、カシューナッツというのも結構無視できないものがあって、つまり、推奨成分の中からくるみは今回義務化ということになっていくと思うのですけれども、このような指定の方法をこれまでどおり取られるのかどうか。つまり、全国実態調査をされて、それで表示対象品目として定めることを検討していくと。その場合、事故数としてこういうのが多いよということを参考にしながらやっていって、今回はくるみだということというふうに考えていいのでしょうか。カシューナッツも結構多いような気がしたので、ちょっとそこのところをお願いします。 -
答
木の実類全体が増えている中において、くるみが非常に重篤な状況であるということは確かですが、カシューナッツについても御指摘のように、次いで非常に多い状態にあるということが分かっております。
義務化に当たっては、先ほど申し上げましたようにいろいろなチェックのやり方なんかの話もございますので、なかなか全部一遍にというのは厳しいところでありますが、今御指摘のようなものも含めて順次考えていきたいと思ってはおります。また専門家の方々の御意見も聞いた上で議論を進めていきたいと思っております。 -
問
NHKの秋山です。
全然違った話で恐縮ですが、5月が終わってしまって、消費者月間、一区切り付いたと思うのですが、コロナ禍では3年目になると思うのですけれども、改めて、定着しつつあるコロナ禍でのこういう月間の難しさみたいなのっていうのは、長官としてはどのように受け止めていらっしゃるのでしょうか。 -
答
どうしても、コロナ禍において直接いろいろな方々に集まっていただくということが難しくて、それで、消費者月間においてもオンラインでとか、いろいろな形でやらせていただいたところですが、今年はリアルとオンラインとの融合の形でやらせていただいて、やっぱり直接会えるのはいいよねといったような消費者団体の関係者からのお話は頂いたところです。
ただ、一方で、オンラインですとたくさんの方々にいろいろ聞いていただけるという良さもあったかなと思っておりますので、コロナ禍において得られた知見を参考にしつつ、リアルの方で直接ディスカッションをすることで得られるということも大きいということも含め、消費者月間のやりようについては考えていきたいと思っております。