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伊藤消費者庁長官記者会見要旨
(2021年10月27日(水) 14:00~14:23 於:中央合同庁舎第4号館4階共用第4特別会議室)

発言要旨

私から冒頭4点お願いしたいと思います。
一つ目は、特定商取引法施行令・預託法施行令の改正等に向けたパブリックコメントの実施についてです。
本年6月16日に公布された「消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律」の施行に向けて、昨日からパブリックコメントを開始しております。この改正法については、本年7月6日には第一段階である送り付け対策の規定を先行して施行しているほか、公布から2年以内の施行を予定している第三段階分である契約書面等の電磁的方法による提供を可能とする規定については、現在、検討会を開催して幅広く御意見を伺い、具体化に向けた議論を進めているところです。今回のパブリックコメントは、それ以外の第二段階分である公布から1年以内に施行することとなる規定に関係する政令・府令の改正等に関する御意見を募集するものです。詳細は担当課にお問い合わせいただければと思っております。
二つ目は、食品表示基準の一部改正に向けたパブリックコメントの実施についてです。
消費者庁では、食品表示基準の一部改正を行うべく、本日10月27日にパブリックコメントを開始いたしました。改正内容は、栄養成分表示等に係る分析方法の整理や遺伝子組換え表示制度に係る改正などの4点となっております。
そのうち、遺伝子組換え表示制度に係る改正について補足させていただきますと、現行の表示制度では、組換えDNA技術を用いて生産され、厚生労働省の安全審査を終えた農産物とその加工食品について遺伝子組換え表示を義務付けております。今般、遺伝子組換えからしなについて、厚生労働省の安全性審査を終える見込みであるため、新たに表示義務の対象に追加するというものがあります。
また、現行制度では、組換えDNA技術により、組成、栄養価等が通常の農産物と著しく異なり、従来育種では生産できない農産物とその加工品には、「特定遺伝子組換え農産物」としての表示を義務付けております。今般、高オレイン酸大豆について、従来育種によって生産が可能となったことから、この「特定遺伝子組換え農産物」の制度の条件に該当しなくなりました。このため、高オレイン酸遺伝子組換え大豆を「特定遺伝子組換え農産物」に係る表示義務の対象から除外するということになっています。なお、食用油等以外の組み換えられたDNA等が残存する加工品などについては、引き続き、遺伝子組換え食品としての表示義務はあるということになります。
今後、パブリックコメントの意見も踏まえ、この食品表示基準の改正案を消費者委員会食品表示部会に諮問すると、こういう手続になるということになります。
三つ目は、取引デジタルプラットフォーム官民協議会準備会の設置についてです。
いわゆる取引デジタルプラットフォーム消費者保護法は本年5月10日に公布され、1年以内に施行予定となっておりますが、今般、その施行に先立ち、取引デジタルプラットフォーム官民協議会準備会を立ち上げ、この11月2日に第1回会合を開催いたします。準備会の構成員は、事業者団体、消費者団体、学識経験者、関係行政機関等からなっております。
準備会においては、取引デジタルプラットフォーム提供者が講ずべき措置等に係る指針等や官民協議会の運営の方法を協議する予定でありまして、円滑な施行に向けてしっかり準備を進めていきたいと思っております。
四つ目は、令和3年度地方消費者行政の現況調査の結果についてです。
毎年実施している地方消費者行政の現況調査を本日公表いたします。今回の調査では、消費生活センター設置自治体数、消費生活相談員数、消費生活相談員の平均報酬額については、おおむね改善を示す結果となっております。一方で、自治体職員、消費生活相談員の研修参加については、新型コロナウイルス感染症の影響による研修の中止や、オンライン研修の体制がまだ不十分だったという状況、そういったことが原因だと思いますけれども、減少になっております。
相談員の方々には、地方消費者行政の最前線で大変重要な役割を担っていただいております。その能力や経験等に見合った処遇となるよう、引き続き、自治体への直接な働き掛けを行うとともに、相談員の担い手確保や研修の充実、デジタル化などを通じて、十分に力を発揮できる環境づくりに取り組んでいきたいと考えております。詳細はこの会見の後、地方協力課から御説明をいたします。

質疑応答

NHKの秋山です。
冒頭発言の中から幾つか質問させてください。まず、改正特商法と預託法の施行のパブコメが始まったという発言があったかと思いますが、三段階に分かれていてなかなか分かりにくいものだとは思うのですが、1年後の施行に向けてかなり重要な法改正になってくるとは思うのですが、一般の消費者の方に、このパブコメをどのように、いかすきっかけに活用してもらったり、意識を高めていただきたいというふうに長官は感じていらっしゃいますでしょうか。

特定商取引法の関係については、例えば、継続的な定期購入等に対する規定、あるいは預託法についても、販売預託の原則禁止といったような非常に重い内容が、今回の特商法・預託法あるわけですが、今回の政令につきましては、割と事務的な規定が多いと思っておりますので、パブコメそのものというよりは、今申し上げたような、コロナ禍においてもいろいろなだまされる状況がたくさん出ておりますので、そういったことに十分気を付けていただく、そういうことのきっかけにしていただければと思っております。

なかなか政令とか省令を一般の方がかみ砕くのは難しいとは思うのですが、施行に向けて一般の方向けのもう少し分かりやすい情報発信だったり、どういうふうに変わるのかみたいなことの、啓発なのか理解促進なのかは分からないですけれども、そういったものを作っていかれるようなお考えはあるのでしょうか。

当然、このパブコメの後ということになりますが、これと併せて、またガイドラインについても整理をすることになりますので、恐らくその方がより皆様方には分かりやすいのではないかなと思いますので、そういったことを準備して、しっかりと施行していきたいと思っております。

2点目が、取引デジタルプラットフォームの準備会についてなのですが、こちらも施行まで1年切っている状況かと思いますが、今回、準備会を設置して、改めて新法施行に向けた取組だったり、問題、トラブルの抑止というのをどのように更に加速させていきたいというふうに長官は感じていらっしゃるのかというのと、準備会なので本当に必要なメンバーに限られてというような意識はあるのですが、例えば、地方公共団体だったり、事業者団体だったり、更には消費者団体だったり、協議会が本格稼働するまでに、もっと多くのメンバーの協力が必要だというふうに感じていらっしゃるのか、その辺りいかがでしょうか。

準備会合は、もともと今回の法律の中で官民協議会が規定されておりますので、その官民協議会そのものをどういうふうに運営していくかということをまず決めなくてはいけないというのが1点目。それから、新法ができるに当たっての国会審議においても、いろいろな関係者の意見を十分聞いて指針などを作るようにという御指摘も頂いておりますので、こういった議論をするところの母体になるということだと思います。 その上で、法律ができた後ということになりますけれども、いろいろな問題、トラブルなんかについての情報の共有化を図ると、こういったことにも役に立つのではないかと思っております。
今回の準備会合は、主立った方々で構成されています。協議会自体は、これから先、この準備会の人たちを基に、更に参加いただいた方がいいかどうかについては皆さんの御意見を聞きたいと思っていますが、その会議の中に入るというのもあるかもしれませんし、それぞれのテーマに応じて、適宜いろいろな方々を入れていくというやり方もあるのではないかと思いますので、準備会合の方々の御意見を賜って、最終的に1年後施行ですから、5月10日までに施行するということになりますので、正式の官民協議会発足までの間に、そういったメンバーについても整理をしていきたいと思っております。

もう1点、地方の現況調査で、詳しいことはこの後説明があるということですが、まあ、設置自治体数は微増してはいるけれども、やはり相談員の方の数というのがピーク時よりもどうしても下がってきたままというところで、各状況は異なるとは思うのですが、相談員さんお一人お一人の担う業務だったり、行わなければいけないことがなかなか減っていないのかなという印象も受けます。
現場の負担軽減というところと、あと、ずっと議論されているデジタル化というところで、今回の結果を受けて、デジタル化の推進だったり、現場の業務の改善みたいなところというのは、長官としてはどのように認識されていらっしゃいますでしょうか。

消費生活相談員の方というのは、正に消費者行政の基本的なところを支えていただくということで、相談、あっせんだけではなくて、例えば消費者教育だったり、あるいは見守りネットワークだったり、いろいろなところでの消費者行政の要になっていただいている方だと思っています。
相談員数についてはずっと減少傾向であったところが、やや歯止め傾向になるといいなと思っておりますが、ただ、御指摘のように、十分な人数が確保できているかというと、なかなか適任者が採用できなかったといった声も依然としてあります。
一つは、先ほど御指摘いただいたPIO-NETのデジタル改革を通じて、働きやすい、あるいはPIO-NETが使いやすい状況にしていくということが大事だと思っております。
それから、相談員担い手確保事業を今年もやらせていただいておりますが、これについても今年は1,600名の定員、昨年度の800名からすると今年は倍増させていただいておりまして、今ちょうど事業をやっているところですけれども、こういった消費生活相談員になる方を増やしていって、裾野を強化していくということも大事なのではないかと思います。
またあわせまして、新型コロナウイルス感染症の関係でなかなかできなかったキャラバンについても、徐々に再開できるような状況になっておりますので、直接、地方の首長さんなどに働き掛けをして、処遇の改善ができるよう努めていきたいと、このように思っております。

読売新聞の松本です。
担い手確保事業で、今年は人数を倍増して1,600人の枠を確保したということですが、これは全て定員が既に埋まっているという状況ですか。

はい。去年800名だったときには非常に短時間で埋まってしまったという御指摘を頂き、受けたかったのに受けられなかったという方もたくさんいらっしゃったということがございましたので、人数を倍増するという形と、それから、募集の開始時間も割と皆さんが申し込みやすい時間帯にしたといった見直しをしています。1,600名にしたわけですが、3、4日ぐらいで全部定員が埋まったというふうに聞いていますので、倍にはしたけれども、十分ニーズはある状態ではないかなと、このように思っております。

NHKの秋山です。
冒頭発言以外のことで2点ほど伺います。まず、食品表示に関するもので、昨日、弾力的運用の終了が年内になるという発表があったかと思いますが、コロナでこの弾力的運用が始まって、災害以外ではかなり異例の対応ということでしたけれども、1年半強くらいですかね、続いてきた中で、消費者にとっての効果はどういったものがあったのかというのと、また第6波というか、第7波というか、今後も感染症が続いてきてどうなるか分からない中で、今後こういった運用の在り方みたいなのっていうのは、どういうふうにしていくべきなのかというのは、長官、今お考えがあれば教えてください。

御指摘いただいたのは、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、令和2年4月10日から食品表示法に基づく食品表示基準の弾力的運用を実施していたわけですが、昨日10月26日をもって、年内で終了するという旨の通知を発出したということです。
弾力的運用の趣旨でございますが、これは新型コロナウイルス感染症の拡大によって、食品の原材料等の供給が停滞した場合でも、できる限り食品の安定供給を図るということで、容器包装に表記が求められている原材料等の表記事項と実際に使用されている原材料等との齟齬があっても、店舗等内での告知とか、ウェブサイトの掲示等によって、一般消費者に対する適正な原材料等の情報提供がなされている場合には積極的な取締りをしないと。こういったものです。
私どもの方は特段、何か弾力運用したら報告があるという仕組みにはなっていないのですけれども、幾つか、なるほどコロナ禍だからこういうことになったか、ということが事業者の方から具体的にあったものですから若干御紹介させていただくと、例えば中華麺で、製品の保存期間、日持ちの向上を目的としてアルコールを使うというのがあるのですが、コロナ禍においてアルコール需要が非常に増大したのは皆さん記憶におありだと思いますけど、そのときに原料のアルコール供給が逼迫し、そのアルコールの添加量を少なくしたことによって原材料名の表示順が変わった。あるいは醤油などで、原材料の脱脂加工大豆について、インドがロックダウンされたために、産地をアメリカに変えたと。原料原産地表示は重量が多い順に書かなくてはいけないので、それが変わったとか、あるいはシリアルなんかで、原料の供給元の変更で結果的に栄養成分表示がちょっと変わるとか、こういったことが起きたということです。それぞれ、皆さん、ホームページ等でそのようなことを伝えていただいております。
容器包装の場合、なかなか柔軟な対応ができないものですから、こういうやり方をさせていただいたところでありまして、これは消費者側の方にも、安全性のところに関わることは当然弾力運用の対象外となっておりますので、そんなに問題なく受け入れられていたのではないかなと思っています。
今回、サプライチェーンもきちんと回復した状況になりつつありますので一旦やめさせてはいただきますが、今御指摘いただいたように、また更に必要なことがあれば、これは緊急措置でございますので、また発出するということがあり得ると思いますが、余り乱用していいという性格のものではないとは思いますので、状況を見て、しっかり対応させていただきたいと思っております。
私自身の個人的感想を言わせてもらえば、やはり食品って輸入も多くて、いろいろなことの影響を受けるものなんだなということを改めて感じさせられる事例だったなと思っております。

2点目ですが、昨日、安全法に基づく注意喚起で、消費者庁とか国民生活センターを名のったショートメッセージとかメールが届いて、お金を搾取されるというケースが相次いでいるというところで、伊藤長官御自身の名前をかたったケースも多くあって、少なからずトラブルに遭ったり、お金を支払ってしまった方がいるということでしたけれども、もちろんトラブルを防ぐことも大事だとは思うのですが、信用情報に関わるところっていうと、特にコロナ禍での情報発信とか、引き続き難しくはなると思うのですが、こういった手口が使われているということへの長官の受け止めと、どう信頼得る組織の情報を取っていくのかという難しさ、そこをどう考えていくのかというのは、長官はどういうふうに感じていらっしゃいますでしょうか。

昨日、私どもの財産被害対策室の方から、消費者庁などの公的機関の名称をかたって、架空の和解金などの交付を持ちかけて金銭を支払わせる事業者に関する注意喚起をいたしました。
その前にも、国民生活センターをかたる偽のメールや電話に御注意くださいと、国民生活センターから8月にやらせていただいていますし、遡ると平成30年くらいには、法務省の名前を不正に使用して、架空の訴訟案件を記載したはがきによって金銭を要求すると、こういう事案があったかと思います。
このように公的な機関をかたるというものは、手替え品替えあるということではありますが、私どもの組織、私もですが、名前を使われて大変憤慨しております。特にお金も問題ですが、併せて情報を取られるというところも多いと思いますし、また、今回、現金ではなくて電子マネーといったものに移っているという特徴もあるかなと思っております。
行政機関が示談金や和解金の受取などの手続に関してお金を要求したり、預かったりすることはありませんし、また、もしそういう話があったら、具体的に元になるところに問い合わせる、あるいは188にお尋ねいただくことも一つの方法です。そういうものが来たからと慌てて行動するのではなくて、本当にこれは大丈夫かなと、幾ら公的機関であってもこんな話があるだろうかと、一旦一呼吸置いて、元のところにたどっていただく。あるいは188に連絡をいただくと。このようなことを是非皆さんには心掛けていただきたいと思っております。
今回は消費者庁の名前でしたが、こういった事案は後を絶たない形で出ると思います。また、今回、コロナ禍において、いろいろなお金を配る話もたくさん出てきておりますので、是非、元のところにきちんとたどる。あわせて、きちんと報道していただいたもの以外のものというのは、そういうのはないよねと確認することも大変大事だというふうに思いますので、報道の皆様方にも是非御協力いただきたいと思っております。