文字サイズ
標準
メニュー

伊藤消費者庁長官記者会見要旨
(2021年10月20日(水) 14:00~14:24 於:中央合同庁舎第4号館4階共用第4特別会議室)

発言要旨

私からは冒頭2点ございます。
一つ目は、適格消費者団体、特定適格消費者団体の認定についてです。
本日、内閣総理大臣の認定を受けて、22番目の適格消費者団体、また、4番目の特定適格消費者団体が誕生いたしました。新しく認定した団体ですが、適格消費者団体としては「特定非営利活動法人消費生活ネットワーク新潟」を、特定適格消費者団体としては「特定非営利活動法人消費者支援ネット北海道」となっております。
適格消費者団体と特定適格消費者団体は、社会的インフラの一つとも言える消費者団体訴訟制度の担い手であり、消費者被害の防止・救済のための重要な役割を担っております。新たな団体にも大いに活躍を期待したいと思っております。
また、消費者庁は、先日10月8日に、消費者裁判手続特例法等に関する検討会の報告書を公表いたしましたが、今回認定を受けた2団体も含む適格消費者団体、特定適格消費者団体による消費者被害の防止・救済が更に推し進められるよう、制度を担う団体の活動を支える環境整備を含め、提言を頂いており、検討を進めていきたいと思っております。
二つ目は、令和3年10月物価モニター調査結果についてです。
本日、令和3年10月の物価モニター調査結果を公表いたしました。1年後の生活関連物資全般の価格ですが、「上昇すると思う」と回答した方は82.4%と増加しております。これは足下の原油価格の高騰等に反応したものだと推察されますが、引き続き、物価の動向についてはしっかりと注視をしたいと思っております。
また、意識調査では、エシカル消費に関する関心の度合いや取組状況について調査をいたしました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大前と比較したエシカル消費への関心及び取組状況の変化については、約4人に1人が「関心が高まった」、約5人に1人が「実践の機会が増えた」と回答しており、コロナ禍を過ごす中でエシカル消費への関心の高まりや取組が進んでいることがうかがえました。
こうした中、特に意識して実践している取組について聞いたところ、「食品ロスの削減」や「リサイクル・リユースの実施」などの環境に配慮した取組が回答の多数を占めました。一方で、「障がいがある人の支援につながる商品の購入」や、「フェアトレード商品の購入」など、人に着目した取組や被災地産品の購入については必ずしも大きな数字が上がってきていない状況にございます。こうしたことについても幅広く実践していただきたく、また、例えば国際フェアトレード認証やRSPO認証等の各種ラベルを参考にしつつ買物することも、是非、消費者の皆様には御検討いただきたいと思っております。

質疑応答

朝日新聞の前田です。
冒頭の御発言にはなかったのですが、今、配られた手元の資料で、子ども安全メールにもあるんですけれど、パン等による窒息事故に関する注意喚起が、昨日、国民生活センターの方からありました。それで、乳児が食べるものについての物性であったりとか、どういう大きさだったら事故が防ぎやすいのかということについての規格基準というのは無いいのが現状なのですけれども、この基準の必要性について長官はどのようにお考えか教えてください。

お手元の資料について御説明いたしませんでした。失礼いたしました。
御指摘の報道、国民生活センターの昨日の公表は承知しております。大変痛ましい事案だと思っております。
御質問の前に、昨日の国民生活センターの公表を受けて消費者庁として対応したことについて御説明をさせていただきたいと思います。一つ目は、本日、お手元にありますように、消費者に対し、「パン等による子どもの窒息や誤嚥(ごえん)に気を付けましょう!」という注意喚起を行います。加えて、パンやお菓子等を製造・販売する業界団体に対し、カットパン等の乳幼児を対象とした食品による窒息事故の防止を強化するよう、そういう観点から情報提供いたしました。
国民生活センターが取り上げた商品をはじめ、乳幼児向けの食品については、窒息防止の観点から、適切な大きさや形状・物性等への改善や、乳幼児に食べさせる場合の留意事項等について、包材やウェブサイト等を通じた適切な情報提供に努めることが必要だと思っています。
さらに、今の御質問についてですけれども、規格ということでございますが、パン等については、どうしても固さとか、食べさせ方とか、吸水とか、いろいろな観点がございます。そういう意味では、今直ちにそれについての規格を作るというのはなかなか難しい状況ではあると思いますが、こういった事案はほかにもございますので、そういったことについて情報を私どもとしても収集して、きちんと情報提供していく必要はあろうかと思っております。

今、情報収集というお話がありましたけれども、正にその適切な大きさ、それから形状、それから物性って何なんだということが、全て今はメーカー基準で作っているのが現状なわけでして、もし規格基準を作るという話になるとすれば、事故が起こったときに、なぜその事故が起こったのか、誰が、何歳の子が、どんなものを、どういう状況で食べて、どういう形で事故になってしまったのかということを集めるのが必要不可欠で、知見はそうやって積み重なっていくという専門家の指摘もありますが、黙っていても知見は積み重ならないわけで、今の消費者庁としての情報収集体制が、その知見を積み重ねるために十分なものであると考えているのか、それとも、その事故情報の情報収集の体制をもっと強化していく必要があるんじゃないかとか、この辺りいかがでしょうか。

この件に限らず、事故情報の収集一元化というのは大変大切な問題だと思っておりますので、その強化はしていく必要があろうかと思います。
なお、この件に関して言えば、現時点では、なかなか乳児向けとして販売されるパンについても、窒息事故防止を念頭に置いた食品の吸水性とか、ほどけやすさとか、粘りとか、かみ切るのに必要な力とか、いろいろな観点がございますので、直ちに基準というのは難しいとは思いますが、先ほど御指摘いただいたように、いろいろな事故事案を通じて、専門家の方も、国民生活センターも聞いていただいていると思いますが、私どもとしてもヒアリングをさせていただくなりによって、具体的に留意すべきことについての情報を蓄積したいと思っております。その上で、事業者等に対して必要な情報提供をしていきたいと、このように思っております。

最後にもう1点お伺いしますが、昨日の国民生活センターの発表で、乳児用規格適用食品という、この表示の名称について、その意味を正しく理解しているかというアンケート結果が公表されました。アンケート結果は、約1割の方しか放射性物質のことだという、そのことが含まれているということは分からなくて、正しくそれだけの意味だというふうに答えた人は1,000人中1人です。一番多かったのが、4割近くの方が、大きさとか物性についての基準があることが前提で、それを満たした食品だというふうに思っているという回答でした。
過去の議事録なんかを見ると、この表示の規制の議論のときに、この名称を乳児用規格適用食品という名称にしてしまうと、親御さんがあらゆる面で安全だと勘違いして、月齢などが合っていない子どもに食品を与えて喉詰まりなどのリスクにさらしてしまうおそれがあるということがパブリックコメントで寄せられていたにもかかわらず、この名称で本当に意味が伝わるのかという議論は当時深まっていませんでした。
この名称、本当に紛らわしいと思うのですが、今現在この名称についてどうしていくつもりなのか。啓発するのか、それとも根本的に議論をする必要があると考えているのか教えてください。

この乳児用規格適用食品、御指摘いただいたとおり、東日本大震災による東京電力福島第一原発の事故を受けて、当時、食品中の放射性物質が消費者の最大の関心事項の一つであったということを踏まえて、平成24年度から食品中の放射性物質の新基準値が施行されており、乳児用食品には一般食品より低い放射性物質の基準値が適用されております。これを乳児用規格適用食品である旨ということで、表示制度はこれを踏まえて策定されたものでありまして、当時は恐らく、そういう御指摘もあったかもしれませんが、一方で、大きな関心事項として放射性物質の話がございましたので、その言葉でも皆さん理解できるということはあったかもしれません。
ただ、御指摘のとおり、今般の国民生活センターのアンケートによれば、乳児用規格適用食品って何か非常にざっくりとした言い方といいますか、そういう表示になっておりますので、これが放射性物質に関連するものであったということを理解するのは、当時と状況がかなり変わっているので、なかなか分かりにくいという御指摘もそのとおりだというふうに思っております。
そうしたことから、表示制度の策定から約10年が経過したことも踏まえまして、食品の選択に際して、表示を活用する消費者、その必要性が本当にどこまで皆さん認識されているかとか、あるいは、乳児用食品を製造販売する事業者の意見なども聞きながら、どういったことがいいのか、今御指摘のような注意喚起がいいのか、それとも、表示そのものの言い方をどうこうする方がいいのかとか、そういったことについては幅広く検討したいと思っております。

読売新聞の松本と申します。
冒頭にありました物価モニター調査の、特に意識して実践しているエシカル消費の部分で、先ほど長官が、コロナ禍において4人に1人は関心が高まって、5人に1人は実践しているとおっしゃいましたが、コロナ禍で高まった理由というのはどのようにお考えでしょうか。

これは私の個人的な意見ですけれども、やはりコロナ禍で、自分事、他人事といいましょうか、自分のことだけを考えているだけではなくて、いろいろな人との関係の中で自分の生活が成り立っているといいましょうか、自分がどういうふうに支えられているかということを皆さんお考えになられる機会が多かったのではないかと思っております。そういったことから、このようなエシカル消費についての御関心が高まったということではないかと思っております。

一方で、障がいのある方の支援につながる商品の購入ですとか、フェアトレード商品の購入というのはまだまだ数値がちょっと低いかなというところと、あと、本日の資料の裏面に、エシカル消費に関する認証ラベルというものも併せて啓発で貼られていると思います。こういった商品への認知度を高めてもらうためにはどんなことが必要だと考えていらっしゃいますか。

意識調査結果、特に意識して実践しているエシカル消費として当てはまるものを三つというふうにこちらの方が言ったことも理由かと思いますが、余りに顕著に環境側だけに寄ったなというのが、ちょっと私もびっくりするぐらいだったので御紹介させていただきました。環境問題は、昨今、カーボンニュートラルとかいろいろな形で、あるいは皆さんもレジ袋の購入などで、実生活でかなり意識をさせられる機会が多いというところがある一方で、なかなか人に関することについては意識される機会が余りないということもあるのかなと思っております。
既に学校教育の中でも、エシカル消費に関するこのようなマークなどについてもいろいろと取り上げていただいていることもございますし、私どもの方も、消費者月間等のイベントの中でも、マークを付したものを、ちょっとコロナ前ですとブースを出したりして御紹介をさせていただいたりもしていたところです。できるだけ関係者、学校教育の現場も含めて、こういった取組についてより一層広げたいとは思いますが、先ほどのとおり環境問題は意識する機会があったと。一方で、人に関することはやはり意識する機会が環境に比べるとやはりないと。例えばフェアトレードにしても、障害者支援、ダイバーシティみたいな話にしても、被災地産品にしても、やや少ないのかなと思っていますので、マークもさることながら、そういったことを意識していただく機会、要は多様性に対する配慮とか、あるいは人権に対する配慮ということを考える機会を作っていくように、関係の省庁とも相談をしていきたいと思っております。

NHKの秋山です。
今のに少し関連してなのですが、先週、一般社団法人の日本エシカル推進協議会の方で独自のエシカル基準というのを公表されて、かなり点数化をして、ある意味でちょっと概念的な部分を、消費者にも比較しやすかったり、消費選択につながりやすいような基準を示されたということだったんですけれども、なかなか倫理的とはというところ、多様性もあってなかなか難しいというのと、今、長官もおっしゃったみたいに、環境だけではないですし、人権だけでもないですし、度合いとか、それぞれ企業の特性とかもあると思うのですけれども、基準が示されたことに対する受け止めと、今のところ消費者庁が示している概念だと、まだまだ概念的だなという印象も拭えないのですけれども、より分かりやすい指標作りだったり、情報発信みたいなのというのは、今後、更に強化されることは考えていらっしゃらないのでしょうか。

協会の方が出された、数値化をするというのは、大変興味深い、非常によく考えられたものだなという感想を持たせていただきました。そういうことによって、企業側がどんなことをやったらいいかということを自らチェックをするということにも使えるなと思いながら拝見をさせていただきました。
一方で、今のエシカル消費は、まだ消費者側の方は点数化するというよりは、そういうことが大事だねというふうに共感していただくということが大事な状況なのではないかなと思っておりますので、消費者庁として数値化するとか、直ちにそういうことは今は考えておりませんが、先ほど申し上げたとおり、関係の省庁とも相談して、できるだけ機会を通じて、エシカル消費について発信していくということをやっていくということがまず第一かなと思います。
その次に、数値化するというのもあるのかもしれませんが、まず先に、そういう意識の持ちようというのを高めるということに努めたいと、このように思っております。

もう1点、協議会の議論の中で少し出ていたと伺っているのですけれども、エシカルウォッシュと呼ばれるような、いわゆるエシカル逃れというか、偽エシカルみたいなものの議論もあるように聞いております。
景品表示法だったりの世界とはなかなかまだすぐには結びつかないとは思うのですけれども、偽エシカルみたいなものの長官の課題とか問題意識というのは、今、どのようにお持ちなのでしょうか。

ESG投資に関しては金融庁が正に、今御指摘のような、ESG投資と言っているけれども、本当にこれはESGなのかというようなことについて、少し厳格な考え方を示そうとされているのがあるということは承知しております。
確かにESGなり、エシカルであるから選ばれるということが進んでくると、恐らく、厳格な意味でエシカルではないことをエシカルと称するということが起きるということになるというのは御懸念のとおりかと思います。
そういう状況になれば、この外縁をもう少し整理して、こういうのはちょっと言っているけれども、うそだとか、こういうことの共通概念が社会的にできるのではないかと思いますけれども、今の段階では、先ほどの繰り返しになりますが、まだそういう方向にみんな向かおうよというときだと思いますので、むしろ外縁のぎりぎりのものというよりは、より優れたものをこちらの方で発信をしていくということの方が大切なのではないかなと思っております。

朝日新聞の前田です。
先ほどの乳児用規格適用食品のことでもう1点伺いますが、東日本大震災に伴う福島第一原発の事故を受けて、厚生労働省が幾つか新基準を定めていて、一般食品と乳児用規格適用食品と、あと、飲料水の基準もあるんですけれども、つまり1キロ当たり一般食品だったら100ベクレル、乳児用だったら50ベクレル、飲料水はたくさん飲むので10ベクレルという基準になっています。
食品基準Q&Aなんかを見ると、麦茶とか、ほうじ茶とか、緑茶とか、飲料水と同じように使うものに関しては1キロ当たり10ベクレルという基準が適用される。こうした商品に関しては、乳児用規格適用食品の1キログラム当たり50ベクレルよりも低いので、もともと。パッケージなんかに乳児用規格適用食品と表示することはできないというふうに説明がありますが、今、市場に流れている商品を見ると、麦茶なんかのパッケージにも乳児用規格適用食品と書いてあるわけです。
Q&Aと照らし合わせて考えると、食品表示法に抵触しているのではないかと思っているのですけれども、会社さんがどういう認識でやっているのかというのは分からないですが、こうした現状を長官は把握されていますでしょうか。

すみませんが、飲料水の今のお話については、私、現時点では把握しておりませんので、担当の方に聞きたいと思っております。

NHKの秋山です。
適格と特定適格が新たに追加されたということで、大変喜ばしいですし、消費者にとっては重要なことだと、長官、おっしゃっていたと思うのですが、やはりまだ地域偏在が大きいような印象がとても強くて、特例法も5年たってようやく検討もして、今、具体化、よりブラッシュアップされるわけですけれども、まだまだ十分ではないというような御認識なのかというところと、地域偏在が問題だと思っているのですけれども、それについて長官はどのようにお感じでしょうか。

お手元に地図があって地域偏在があるように見えますけれども、ただ一方で、例えば、「消費者市民ネットとうほく」は東北一円を対象にするという形でできたりもしていますので、地図で全都道府県にないから十分ではないとか、そういった一律のことを申し上げる必要はないのかなと思っています。
むしろ、このような適格消費者団体、特定適格消費者団体がいかに活動しやすくするか。それには消費者のアクセスのしやすさというものも当然あろうかと思います。あるいは情報提供のやりやすさとかですね。そういったより使われやすい制度にするということがまず先かなと思っておりまして、我々の方として何団体なくてはいけないとか、そういったものではないというふうには思います。ただ、どういう形であれ消費者から使いやすい、アクセスしやすい制度にするように努めたいと思っております。