文字サイズ
標準
メニュー

伊藤消費者庁長官記者会見要旨
(2021年6月16日(水) 14:00~14:18 於:中央合同庁舎第4号館4階共用第4特別会議室)

発言要旨

まず1点目は、いわゆる「後払い現金化」に関する注意喚起です。急ぎ現金を必要とする方に対しましては、給与を受け取る権利を譲渡する形を取りつつ実質的に高利貸しをする「給与ファクタリング」について、既に、貸金業に該当して、違法なものがあるということについて申し上げて注意を呼び掛けてきたところです。最近では、いわゆる「後払い現金化」に注意が必要となってきておりまして、金融庁、警察庁、関係団体と連携して注意喚起チラシを作成いたしましたので、注意を呼び掛けます。
いわゆる「後払い現金化」ですが、商品を後払いで購入する売買の形態を取りつつ、この商品の買取りやキャッシュバック、レビュー投稿の報酬などとして、すぐに現金を利用者に渡しておき、後日、後払いであった商品代金の支払を求めるものです。この商品は利用者にとって利用価値のあるような、余り価値があるようなものではなく、結果的に、「すぐに受け取る現金」と「後払い商品代金」の差額が高額になっていて、一種、先ほど申し上げた給与ファクタリングに、物が介在しているけれど、ある意味では似ているという形になっておりまして、その支払に後で困るといったことが起こり得るといったものです。
金融庁によりますと、形式的に商品の売買であっても、その経済的実態が貸付けであり、業として行う場合には貸金業に該当するおそれがあり、その場合、無登録業者であれば違法なヤミ金融業者に該当するというふうに言われております。いずれにしろ、最終的に高額な支払に困ったり、場合によっては取引で提供した個人情報が悪用されることなども懸念されることから、「今すぐ現金」、「手軽に現金」などと誘うものにはくれぐれも御注意をいただきたいと思います。不審・不安に思ったら、注意喚起資料に記載してあるように、消費者ホットライン188や関係機関の相談窓口に是非御相談をいただきたいと思います。
2点目は、令和3年6月物価モニター調査結果についてです。本日、令和3年6月の物価モニター調査結果を公表いたしました。今回の意識調査では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大前後における消費行動の変化及び今後の消費の意向についてお尋ねしております。まず、新型コロナウイルス感染症の感染拡大前と比べて、家計での負担が増えたと感じる項目を尋ねたところ、マスク、手指消毒製品などの保健用消耗品が50%と最も高く、これに次いで、外食を除く食料品、その次に、光熱・水道と、巣ごもりに関連する項目で負担が増えたと回答するモニターが多い状況にありました。逆に負担が減ったと感じる項目ですが、一番目が外食、次が旅行、運動など教養娯楽関連、その次に鉄道、バス、タクシー等の交通関連と、外出に伴い必要となる費用において負担が減ったと回答するモニターが多かったということで、正に新型コロナウイルスにおける行動形態の変容が反映されたものになっているかと思います。さらに、今後支出を減らしたいと感じるものも尋ねておりますが、これは、上位のもののうち、コロナ禍において支出が増えた光熱・水道、外食を除く食料品以外ですと、固定・携帯電話料金等となっておりまして、これは携帯電話料金関係への関心が反映されたものではないかなと思っております。
なお、私どもの方のモニター調査は、消費者からの負担感、それから、将来どうしたいかという意向を聞いたものでして、一番最後のページの総務省の家計調査公表資料の方は、具体的な数字、実数でどうなっているかというものでございます。基本的に感覚と支出項目、大体合致しているなというふうには思っておりますけれども、御参考までに添付しているので、御覧いただければと思っております。

質疑応答

読売新聞の松本と申します。
冒頭にありました「後払い現金化」の要注意のところでお尋ねしたいことがありますが、先ほど商品については無価値のものが多いとありましたが、具体的にどんなものがあるのでしょうか。

無価値というか、価値が余りないもの、壁紙みたいなものだとか、そういったものと私は聞いております。だから、それの感想とか、キャッシュバックみたいな感じなので、要は、先ほど申し上げた給与ファクタリング自体は物が介在していないのですが、物を介在させるということで、逆に貸金業逃れと言いましょうか、該当しないような形態を取ろうとされているのではないかと思うので、先ほど申し上げましたように、その中身がキャッシュバックだったり、あるいはレビューの報酬だったり、やや複雑な言い方をされているので若干惑わされがちなんですけれども、結局離れて見ると、要は後払いで、渡すお金と後で払ってもらうお金に差額があって、後のお金がすごく大きい。結果的に見ると、給与ファクタリングであったような高利で貸しているのと実態は同じようなものになるということなので、こういったものを早めに作ってお出しすることとしたということです。

もう1点お尋ねしたいのですが、こういった、今回のこの「後払い現金化」の被害というのは、何をきっかけにこういうのを知った方が多いのでしょうか。例えばLINEですとか、Twitterですとか、そういった形態などは分かりますでしょうか。

(消費者政策課)SNSを通じてというのが多いです。

NHKの秋山です。
今のに関連してですが、たしか弁護士会だったり、司法書士会が相談窓口を設置されたりしているというふうに理解しているのですが、PIOとかの数字で、いわゆる消費生活相談の方での相談件数の推移とかっていうのは何かありますでしょうか。

先ほど申し上げましたように、やや複雑な体裁を取っているものですから、いわゆる「後払い現金化」という商法であるということの特定がやや難しいところがありまして、それらしいものは散見されているのですが、数として今ものすごい伸びているとかということをちゃんと把握できている状態には、まだ現在はありません。ただ、ぱらぱらとそれっぽいものがPIOの方にも来ておりますし、また、金融庁などでも、具体的にそういったものが、先ほどありましたSNSなんかで展開されているのを見て、これは早めに注意喚起をした方がいいということもあって、こういうことをさせていただいているということです。

金融庁とかの方でも、何か具体的な実態が分かるような数値とかっていうのはまだ持っていないということですか。

まだ持っていないという状況です。

朝日新聞の前田です。
昨日の閣議後会見で、先週成立した特商法・預託法の話の中で、大臣が、今後、オープンな会議でできるだけ早く詰めていきたいとおっしゃっている政省令での歯止めを、国会の審議の場で例示として消費者庁の方から示したものに対する、野党議員からのいろいろな意見があって、これはゼロベースで考えていかなければならないと思っているというふうに話していました。
一応、その例示として示したほとんどの取引の場合は、当面の間、承諾の取り方は紙でにするという例示に対して、本末転倒であるとか、いろいろな意見があったわけなんですけれども、そういう、本来の法律の目的を損なうとまでは言いませんけれども、目的からしてそれはどうなんだという例示が出て、その意見に対して大臣がゼロベースで考え直すということに至った経緯というか、一連の混乱について、どうお考えかなっていうのをちょっと伺いたいんですけれども。

そこは正確に申し上げないといけないのではないかと思いますけれども、要は電子的なもので完結するもの以外のものについての承諾の取り方としては、当面紙にすると、こういう言い方をしたのではないかと思いますし、また、非常に悪質化しやすいようなものに関しての承諾の取り方は、電子的なものであったとしても、より厳格なやり方をしなくてはいけないということを御答弁はさせていただいていると思います。ちょっとお話のやり取りのところで、そこの言い方が、正確に理解し合っていなかったのではないかなというふうに思っておりますけれども、今申し上げたような話だと仮にすると、そんなに変な話ではないのではないかなと私自身は思っております。要は、電子的ではないところについては当面は紙にしようと。
なお、恐らく大臣が申し上げたお話は、もちろん国会の答弁でお話はしているわけですので、消費者庁としては、そういう考え方があると思っていることは事実ですが、一方で、いろいろなことをこれから消費者団体の方々、事業者、関係者の方々、あるいはデジタル関係者の方々から知見を寄せていただき考えていかなくてはいけないので、幅広い意見を取り入れて考えるという意味で、大臣はお答えをされたのだろうと私としては思っております。

紙での契約書より、いろいろな理由から電子化の方が便利だろうと、自分はそうしたいと思う消費者がいるであろうということで、この法改正の中に組み込まれたのだと思うんですけれども、であるならば、紙をなくすはずだった、紙をなくすための承諾を紙でとるということが対応としてちぐはぐだというふうに受け止められがちなわけなのですけれども、そこの違いというのが、ちょっとよく分からなくて。

電子的なもので契約書面を受け取ると、保存ができるとか、紛失しにくいとか、そういった点はあると思います。だから今御指摘のように、オンラインで完結する場合のところに紙が介在すると、せっかくオンラインで完結しているのに何で紙が間に介在するんだという議論になると思います。一方で、オンライン以外の取引の場合は、直接、対面だったりすることがあるわけですけれども、その場合において承諾を仮に紙でとったとしても、保存の仕方としては、それはなくなっちゃうとか、あるいはスペースを取られるのが嫌だとか、保存が分かりやすいからという理由で、電子的なもので送ってくださいという方はいらっしゃるのではないかと思っておりまして、それは矛盾しているお話ではないのではないかと思います。耳のやり取りの中では、ちょっと正確にいろいろな状況が伝わってなかったのではないかなというふうに私自身は思っております。

耳でやり取りした中で正確にというのは、誰と誰のやり取りの中で何が正確に伝わっていなかったっていうことですか。

国会のときに、具体的に「この場合は、あの場合は」というのが、もしかしたらコミュニケーションの中で、やや誤解を生むところがあったのではないかということで申し上げたということです。今申し上げたような形だと仮にしたときに、そういうことを想定して、こちらでお答えをしたつもりなんですけれども、こちらの答弁の仕方が分かりにくかった面もあるのかもしれないと思っております。

分かりました。最後になりますが、では、昨日大臣が発言した「ゼロベースで」というのは飽くまでも、いろいろな方の知見を伺いながら今後決めていくことだという程度の意味合いという受け止めということですよね。

はい。当然、国会でこういう考え方があるというふうにもちろん申し上げているので、それは国会でお答えしたことですから、それはそんな軽いものであるというふうには思っておりませんけれども、一方で、これから政省令を考えるに当たって、オープンな場を設けて、いろいろな方々の御意見を頂いて、検討するということでありますので、もうそうじゃないといけないというふうにこだわるというのも一方で変だという意味で大臣が申し上げたのだろうと理解しております。

NHKの秋山です。
消費者基本計画の変更と、工程表が閣議決定されて、大臣も発言はされていたとは思いますが、消費者庁含めた行政側の指針であったり、行動目標ということになってくると思うので、改めて異例の変更と大臣もおっしゃっていましたが、長官としては、この変更の意義と、変更を受けてどういうふうに取り組んでいきたいと感じていらっしゃいますでしょうか。

消費者基本計画、たしか前も申し上げたかと思いますが、本来は5か年で、その間は工程表でローリングをしていくというのが従来の形だというふうに思っておりますが、昨年の3月31日、ちょうど消費者基本計画について政策会議を正にしている日の夜くらいから、もうみんなマスク着用だっていう状態になったときでしたので、結果的に見ると、基本計画自体にコロナ対策、取り分け新しい生活様式というようなものについては基本計画の中が全く不十分であったものですから、よりきちんと位置付ける必要があるということで、そういう意味では大臣が申し上げた異例の変更ということになります。通常ですと5年計画なので、基本計画本体の変更を間ではしないということでありますけれども、今回は新しい生活様式ということを考えると、計画期間途中ではあるけれども変更に踏み切ったということです。
従前も緊急時対応として、災害と、それから新型コロナウイルス感染症関係というのは入れさせていただいてはいるわけですけれども、よりきちんとした柱立てとして対応していく必要があるということでやらせていただいたということですので、今回は取り分けそういう新型コロナウイルス感染症に便乗した悪質商法やトラブルへの対応ですとか、あるいはそれに伴う消費者の行動変容、特に先ほどの巣ごもりもそうですし、デジタル化もそうかもしれませんけれども、そういったことに対応した消費者保護をどういうふうにしていくかということについても、併せてしっかりと対応していく必要があろうかというふうに思っております。
いずれにしろ、基本計画も工程表も、随時、その時々に応じて必要な見直しをしていって、関係省庁と連携して、消費者保護、それから利益の増進に努めていきたいと思っております。