新井消費者庁長官記者会見要旨
(2025年4月17日(木) 14:00~14:25 於:中央合同庁舎第4号館6階消費者庁記者会見室/オンライン開催)
発言要旨
令和7年度消費者月間についてお知らせをいたします。毎年5月は消費者月間ということで、テーマを決めて各地方とも協力しながら関連協議を行っているということでございます。今年度の消費者月間のテーマは、「明日の地球を救うため、消費者にできること グリーン志向消費~どのグリーンにする?~」といったもの、これに沿ったシンポジウムを開催するということにしております。昨年10月に私も出席をいたしましたOECD消費者政策閣僚会合のテーマは「デジタル及びグリーン移行の中心にいる消費者」ということでありまして、消費者がこれらの移行に関して責任を持って、かつ「持続可能なライフスタイルへの公正な移行」のために消費者自らが行動を起こしていくということが大きな議論になったところでございます。このような国際的な潮流に沿うような形で、今年のシンポジウムのテーマを設定したということでございます。お手元に資料を配布しておりますけれども、5月19日にイイノホールにおきましてシンポジウムを開催いたします。この中では、気候変動の現状にどう向き合うかということで東京大学の江守正多教授に御講演いただくとともに、その後、大学生を交えたトークセッションをしていくということでございます。消費者一人一人の日常行動が、私たちの生活だけでなく、地球環境をも変える可能性を秘めております。消費者にとって、また、地球環境の持続可能性に配慮した事業活動に取り組まれている企業、エシカル消費の発信に取り組まれている団体にとっても、一つでも得るようなものがあるような企画を準備しておりますので、ぜひご参加をいただきたいと思います。また、消費者が日常生活の中で行うことができるグリーン志向の消費行動について、行動チェックリストを作成し、本日消費者庁ウェブサイトに掲載をいたしました。このチェックリストでは、具体的な行動の他、その行動に関する社会的背景の解説や行動を実践するためのヒントなども掲載をしております。消費者月間のポスターにおきましても、QRコードを読み取ることによりまして、チェックリストのピックアップ項目の記事に飛ぶといった仕掛けも用意しておりますので、ポスターを見かけた際はぜひ、御自身の好きなグリーン色のQRコードを読み取っていただきまして、グリーン志向消費を楽しんで実践をしていただきたいと思います。その他、月間中に地方公共団体や消費者団体等におきましても、月間テーマによる講演会やSNSを活用した情報発信など様々な啓発事業を行う予定と聞いております。詳細は4月下旬に消費者庁ウェブサイトに掲載をいたしますのでぜひご覧いただきたいと思います。さらに、消費者支援活動に顕著な功績のあった個人及び団体を表彰する「消費者支援功労者表彰」の表彰式を月間中、5月中に開催する予定であります。受賞者は今月の発表を予定しております。こうした月間の取組を通じ、環境問題を「自分事」として捉え、消費者ができることを実践する機会としていただきたいと考えております。
質疑応答
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問
日本消費経済新聞の相川です。
消費者月間のお話がありましたので少し質問させていただきたいのですが、地球環境に配慮したグリーン志向消費自体重要で否定するものでは全くないのですが、この時期になぜこのテーマを選定されたのかについてお教えください。 -
答
この時期にというのは、SDGsの目標、2030年に向けて最終的な段階に入っているということ、それから昨年来、グリーンを中心としてエシカル消費のいろいろな方々を集めて勉強会を行いました。その中で、やはり日本ではなかなかグリーン志向消費が進んでいないということでいくつかの提言をいただいたところであります。先ほど申し上げましたOECD消費者政策閣僚会合でデジタル及びグリーンということで国際的な問題が提起をされておりました。このうちデジタルについては、昨年それから一昨年がデジタルを中心とした消費者月間のテーマだということもございまして、今年度はグリーンということで選定をさせていただいたということです。
- 問 今、消費生活相談員の人件費に10分の10補助で活用できる交付金が終了する問題が国会で取り上げられ、自民、公明、立憲、維新、国民、共産の各党から今後も国の財政支援を求める意見が出ていて、閣議決定された消費者基本計画には身近な相談窓口の充実など、これまで地方自治体によって築き上げられた行政サービスの水準が低下することがないよう適切な措置を講じることが盛り込まれ、石破首相は消費者政策会議で相談対応から被害を埋もれさせないよう地域の見守りネットワークを強化し、町の相談対応から見守り活動の体制整備を推進するというふうに発言されています。なぜこういう質問をしているかというと、地方自治体は適格消費者団体であるとか弁護士会であるとか司法書士会とか、被害を防止するための団体と連携をして活動を進めているというところがあります。今こそそういう団体との連携の強化を図りたいと、そういう意味で非常に取り組みにくいというご意見もありますが、これについて長官はどのようにお思いでしょうか。見解をお教えください。
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答
取り組みにくいというのはどういうことなのでしょうか。
- 問 要するに、SDGsに取り組んでいる消費者団体と適格消費者団体とか日本弁護士会というのは、やはり連携する団体が変わってくるということです。
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答
なるほど。この消費者月間の趣旨というのが重要だと思います。消費者基本法ができたことを契機に毎年テーマを決めてやっておりますし、これに先立ちまして国際的には3月15日が「世界消費者権利デー」ということで、消費者の多くは意識を変えるために何をしていけばいいのかということで、国際的には例えば再生可能エネルギーを世界消費者権利デーのテーマに掲げたという年もございます。これは、やはり消費者に広く呼びかけていくということ、それから消費者市民社会、消費者が主力となって社会を変えていくというメッセージを送るということも重要だと考えておりまして、今まで2年間はデジタルということでデジタルをどう活用していくか、それから活用していく際に有効に活用していくこと、その中に被害に遭わないようにということもございました。今回あえてSDGsを選んだというのは、そういう意味では社会を変えていく力となっていただきたいということであります。私も各地の消費生活センターや消費者担当の部局を訪問してみますと、SDGsの普及に非常に貢献しているセンターもございます。そういう点では、広く呼びかけるということがこの消費者月間の主たる目標だと考えておりますので、この時期に消費者がやはりいろいろ意識を変えていくという意味での機運の醸成として消費者月間を活用したいと考えています。
- 問 「どのグリーンにする?」ということで、いろいろな丸が描かれていて、そのQRコードにアクセスしたら出てくるということなのですが、それはポスターを貼るのも5月1日からにしてくれというようなことですが、なかなか準備をするのに何ヶ月も前から準備をするのではないかと思うのですが、この辺も不適切ではないのですか。
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答
この消費者月間のテーマ自体は1月に発表をしておりますし、地方公共団体の方にもその旨お知らせをしています。そういう意味で、地方公共団体の方々も従来からやられている活動をそのまま、この月間を機に広く展開をするということもございますし、この月間のテーマに合わせて今回、いわゆるエシカル消費という視点からのいろいろな活動なり展示をされるという方もあると承知をしておりますので、その辺は十分に準備期間をとって実施しているということであります。
- 問 ポスターの中のQRコードのアクセスはいつからできるようになるのですか。
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答
本日からです。
- 問 その取組自体を否定するものでもないのですが、やはり今、本当に高齢者は外にも出れない、電話にも出れないみたいな状況になっているようなものがあって、やはり消費者被害をどう防止するかというところは本当に最大の課題になっていると。こういう時期に大きなテーマというのもいいのだけれども、本当に消費者庁が創設された理念はどっちの方向に向かっているのかなと。食ロスとか環境問題とか、確かにそういうものも大事は大事なのですが、今一つ足元を踏み固めていただきたいなという意見があるということを長官も認識していただきたいなと思います。いかがでしょうか。
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答
以前の会見でも申し上げましたが、私が就任してから既に30以上の都道府県を訪問して意見交換などをさせていただきました。それを踏まえて基本計画も策定したつもりです。先ほど基本計画を読み上げていただきましたけれども、基本計画の中の大きな趣旨は安心・安全のネットとして消費生活相談をしっかりと活用していくと。しかしながら、お話があったように、今までは188という電話番号を皆さん、何か起きたときに想起していただければそこに電話をするということで対応ができたと。しかしながら、そういう形で声が上げられないような方々がやはりウエイトとして高くなっていくということも事実であります。そういう意味では、待っているのではなくアウトリーチ型、消費生活相談なりが出ていってやる、それから実際に案件が起こらないように予防活動をしっかり取り組んでいくという意味で、各地での消費者センターなりの活動を充実していただかなければいけないということを基本計画に書いてあります。今までの機能を十全に発揮するために総合的に何ができるだろうかと、そういう視点で都道府県なり市町村なりとも意見交換をしながら、それぞれの目指すべきことを模索していこうということでございます。繰り返し申し上げますけれども、消費者月間というのはやはり多くの方に消費者市民社会であるべき姿を知っていただくということが重要だと思っておりますので、消費者月間のテーマとしてはそういう普遍的なテーマというのを選ばせていただきました。それから、先々週に公表いたしましたけれども、188の番号の認知度を高めるためのPRというのも別途実施をしております。そういう意味で、消費生活センターでの皆様の相談が主軸になって消費者庁のいろいろな活動、立法事実でありますとか注意喚起ができるということはおっしゃる通りですので、それぞれのラインで私たちは考えているということをご理解いただきたいと思います。
- 問 身近な取組はいっぱいあると思うのですけれども、グリーン関係で消費生活センターに何を相談するのかというのがちょっとイメージがつかめず、やはり188を周知する、見守りのために連携していただきたいような事業者であるとか、金融機関の方であるとか、そういう方たちといかにも連携しやすいようなテーマにしていただきたいなと思う人たちがいるということを、私はそう思うのですが、そのことも踏まえて今後検討していただければと思います。
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答
ご意見としては承ります。
- 問 それから別件で、公益通報者保護法関連で質問させてください。15日の本会議から改正案の国会審議が始まりました。同日、消費者庁はホームページで公益通報者保護制度相談ダイヤルへの相談件数と是正指導件数を公表しています。令和6年度、2024年度は5,857件ということですが、どのような相談が多いのか、そして何人の体制で対応しているのかについてお教えください。4月15日の衆議院本会議では、大臣が保護法を担当している職員の定員は14人であると答弁され、本日は執行体制は27人と答弁されていますが、その正確な内訳についてお教えください。
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答
いくつかご質問の内容がありましたので順にお答えをさせていただきます。令和6年度の公益通報者保護制度相談ダイヤルへの相談件数を公表したところでございます。この相談ダイヤルは一般の方、事業者あるいは行政機関、いろいろな方々から、公益通者保護法の解釈あるいは制度についての質問、それから通報先となる行政機関の照会というのが中心になっているということでございます。相談内容は様々で多岐に渡っておりますので、それぞれ分類して公表することはしておりません。それから、相談ダイヤルは消費者庁のホームページにありますように、原則として電話での受付・回答を行っておりまして、何人がということは、公益通報のかかったところの対応者が電話で受け答えをしているということでございます。それから体制でございますが、大臣が答弁で15日は14名、それから本日は27名と質問を受けたということでございます。ご指摘の27名は、令和6年度において公益通報者保護法を所管する参事官(公益通報・協働担当)の室全体の定員数を指すということでございます。14名はそのうちの令和7年度の公益通報担当ということで、この部屋は別のことも担当しておりますので、公益通報の担当者ということで14名と答弁をしたということでございます。
- 問 公益通報者保護法の法執行担当、今の現行法では助言、指導、勧告、勧告に従わない場合の公表なのですが、これに関わっている人は14人という理解でよろしいでしょうか。
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答
(参事官(公益通報・協働担当)室)
14名は、令和7年度に公益通報に関わっている者が14名でして、そのうち執行をやっている人間については非公表にしてございます。その内訳まで公表しておりません。 - 問 14人よりも当然少ないということですか。
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答
(参事官(公益通報・協働担当)室)
14名のうちの何名かで。内数になりますので。 - 問 それから、大臣は本年度新たに法執行のための定員を確保すると答弁されているのですが、具体的な人数は出ていません。本年度、2025年度の定員要求では、事業者の内部通報対応体制の調査実施のための体制整備による増員は2人に過ぎませんが、これで十分なのでしょうか。
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答
今、増員した定員は2名ということはそのとおりであります。法執行をどう考えるかということですけれども、法執行というのは今、私がお話いたしました事業者の相談対応、必ずしも指導に行って、かつ必要な権限を持って立ち入り、今はまだ立入検査権がございませんので指導・監督するということのみをもって法律執行というのではないと思います。まだ法律の窓口が徹底されていない方、それから通報先が分からない方に電話で応じるのも、それは広い意味での法執行だと考えております。確かに人員が多いか少ないかと言われたらなかなか微力ということではありますけれども、今ある人員の中で法執行、今の法律、今立入検査権は持っておりませんので、その範囲内では最大限努力をしているということになります。
- 問 今回、このうちの是正指導件数は6件と公表されていますが、助言はどの程度行われているのでしょうか。
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答
(参事官(公益通報・協働担当)室)
助言、指導、勧告をまとめて是正指導としておりまして、令和6年度は助言、指導、勧告をまとめて是正指導件数6件でございます。 - 問 今国会では、20条で報告の徴収、助言、指導、勧告、公表が国と地方自治体が適用されないことが問題にされ、本会議では立憲の尾辻かな子議員が適用除外の見直しを求めました。要するに、兵庫県の第三者委員会は西播磨県民局長の問題に対して、これは3号通報に該当し知事が行った通報者の探索行為は公益通報者保護法違反としているけれども、これに対する対応は除外されているということが問題になっています。この中で、公益通報上の、保護法上の助言、指導はできませんが、地方自治法上の技術的助言はこれまでもしてきてこれからもしていくと答弁しています。この助言の中に技術的助言は含まれていますでしょうか。
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答
(参事官(公益通報・協働担当)室)
技術的助言として、地方自治体に公益通報を受け付けた際の対応を示したガイドラインであったり実態調査を実施したりしてございます。 - 問 これは、その6件の中に含まれているのでしょうか。
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答
(参事官(公益通報・協働担当)室)
いいえ。6件は事業者に対しての指導、助言、勧告を合わせて是正指導という言い方をしておりますけれども、事業者に対しての助言、指導、勧告の件数が6件です。自治体に関する技術的助言の話は別です。 - 問 自治体に関しては含まれていないということでよろしいのでしょうか。
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答
整理をさせていただきますと、自治体に対する技術的助言というのは地方自治法の第245条の4に基づくものでございまして、今申し上げた通報の窓口をどういうふうにやっていくのが適切かといった、いわゆる地方自治体が実施する場合に基本的な考え方を示すというものでありまして、事業者の体制整備等を定めた公益通報者保護法の規定の施行に関し必要があると認めるときに指導できるという同法第15条の規定は地方自治体には同法第20条で適用しないということになっています。
- 問 分かりました。ビッグモーターのときは、当時の河野太郎大臣が、社会的影響が大きいとして法律上は勧告に従わなかった場合にしか公表できないのだけれども、公表をしたと。今回、技術的指導の内容についてはやはり消費者庁としては公表はされないということですか。国会ではそんな感じですけれども。
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答
ビッグモーターのときのお話を申し上げますと、社会的に大きな事象だったということともに、事業者が自ら指導を受けましたと公表していたということが表裏になって実態としてはあるということです。私たちは法律に従って仕事をしておりますので、社会的に大きいか小さいかで公表するということではありません。事業者の本人のいわゆる公表という行為があったかどうかというのを非常に重く見ているということであります。
- 問 それから、国会ではものすごく追及がされていて、地方自治体に対して実態調査をすると回答されていますけれども、この実態調査の2024年度の調査結果が公表されていませんが、これは公表されるのでしょうか。
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答
(参事官(公益通報・協働担当)室)
2023年度の調査結果は公表しておりますけれども、24年度は実施しておりませんので公表しておりません。 - 問 なぜ実施していないのですか。
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答
(参事官(公益通報・協働担当)室)
これまでも毎年やっているものではありませんので、23年度は今回の法改正の、見直しに向けて実態を調べるために調査いたしましたけれども、その情報がございますので24年度は調べておりません。 - 問 2016年、17年、18年はずっとやっているのですよね。今回、国会答弁を受けてこれから実施するということですか。
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答
調査は法律に基づくものでもございませんし、統計法に基づくものでもございません。そういう調査でありますので都道府県の方の受ける業務上の負担というのがございます。従いまして、これから法律の改正が通ったときにいろいろ調べるべきものがあります。例えば濫用的通報の実態でありますとか、それはそれぞれ折々時期を見て調査を設計して実施するということであります。
- 問 この実態調査は国会議員の方がイメージされているものとはかなり違っていると私は受け止めていまして、調査している内容というのは通報者の内訳であるとか、窓口が設置されているかとか、従事者を指定しているかどうかとか、そういう外形的なもの。あとは内部規程を制定しているかしていない理由、研修をしているかどうか。そういうことで、国会議員の方がイメージしている実態調査とは違うのではないかと思っていて、国会でちゃんとそういうところは説明された方がいいのではないかと思います。それで、2023年の調査に、兵庫県は県庁内に窓口はあるけれども、県の庁外にはないと。当時はないのですが。今後は従事者を指定しているかどうかとか調査して公表はされるのでしょうか。
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答
(参事官(公益通報・協働担当)室)
また折々調査する際にどういうものを調査項目にしてどういうものを公表するか、またその際に検討していきたいと思います。 - 問 分かりました。