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新井消費者庁長官記者会見要旨
(2025年2月20日(木) 14:00~14:20 於:中央合同庁舎第4号館6階消費者庁記者会見室/オンライン開催)

発言要旨

本日は3点お話をさせていただきます。1点目でございます。「グリーン志向の消費行動に関するワーキングチーム」の取りまとめが行われましたので、公表させていただきます。このワーキングチームは、昨年10月の消費者教育推進会議において、エシカル消費を一層推進するために、まずは地球環境の観点を切り口に、消費者庁において議論を深めるべきとの御提案をいただきまして、昨年11月に立ち上げたものであります。推進会議の大藪会長を座長として、消費者が地球環境問題を始めとする社会課題に関心を向けるだけでなく、行動・実践につなげていくための課題分析を行い、消費者の行動変容を促すための取組の方向性を明らかにすることを目的に、企業や団体等からのヒアリングも行いながら、4回にわたる議論を行っていただきました。お手元に取りまとめの概要を配布しておりますけれども、この取りまとめでは、消費者の行動変容、つまり、環境に配慮された商品・サービスを理解し、意識的に選好するなどの行動であるグリーン志向の消費行動を促していく取組を進める際のヒントとなる多くの視点が盛り込まれていると考えております。行政のほか、事業者や民間団体等の幅広い主体において、これらの視点を活用し、取組の深化につなげていただくことを期待したいと考えております。具体的には、取りまとめといたしまして、日本では地球環境問題を遠い未来の問題として受け止めがちだという印象がありますけれども、これを「自分事」として捉えるためには、適切な危機感を共有する必要があるという視点、それから、消費者には「環境に良い」というだけではなかなか響かないということを前提に、グリーン志向の消費行動を消費者のメリットとなるような形に仕組み化することの必要などが書いてございまして、具体的なインセンティブの設計の方向を示していただきました。例えば、消費者は、自分の関心があること、身近なこと、いわゆる「推し」と言えるものに対しては共感し、選択するという傾向が強いということでありますので、消費者が参加したくなるような企画を通じて、消費者マインドを転換していく、あるいは、消費者が自身のグリーン志向の消費行動に満足感・心理的充足感を得ることができるようなコミュニケーションの創出・強化、例えば、スポーツなどの趣味や、就職・結婚といったライフステージなどの共通項を持つコミュニティを捉えて働き掛けるなどの工夫があり得るということが挙げられているところであります。環境に配慮した事業活動に取り組んでこられ、また、消費者向けの発信にも試行錯誤されてきた委員の皆様の御議論によりまして、正論を伝えるだけではなく、消費者をエンパワーメントしていくという視点が非常に重要であるということもご示唆いただいたところでございます。消費者庁といたしましては、これらを皆さまに情報発信等するとともに、まずは、5月に行う消費者月間の統一テーマ、これは既に公表しておりますけれども、「明日の地球を救うため、消費者にできること グリーン志向消費~どのグリーンにする?~」というテーマを掲げておりますが、これに関連して集中的に発信をしていく。それから、この消費者月間では多くの地方公共団体・民間団体の方々も行動していただきますので、それらいろいろな知見を束ねていくということが必要ではないかと考えているところでございます。
2点目ですけれども、こちらも資料を配布しております。2月13日にプレスリリースをしておりますが、「いわゆる「健康食品」に関する意見交換会」の開催について改めてご案内させていただきます。昨年の紅麹関連製品に係る事案を受けまして、消費者庁では、いわゆる「健康食品」の利用上の注意をまとめた冊子の配布や地方公共団体等との共催による意見交換会の開催をしてきました。本年も引き続き、これらを開催するということでございます。いわゆる「健康食品」の医薬品との相互作用や、過剰摂取等によるリスクへの消費者の理解を一層図ることが重要であると認識しておりまして、食品安全委員会と連携のもと、3月10日に東京都、それから17日に大阪府において意見交換会を実施するということでございます。この意見交換会では、さまざまな立場の専門家をお招きし、情報提供及び意見交換を行うということですので、是非御参加いただければと思っております。
3点目です。高額料金の一括前払いに関する注意喚起等についてです。美容医療サービスや学習塾など、一定期間にわたって継続的に受けるサービスでは、高額料金の一括前払いを行うケースがございます。しかしながら、契約期間中に事業者が倒産してしまい、サービスも受けられず、返金もされないという事例が発生しているところであります。消費者の皆様が事業者の経営状況等を把握することは容易ではありませんが、契約内容や支払い方法等を確認・検討することにより、万一倒産した場合の被害を減らすことができる可能性があるということであります。具体的には、特定商取引法の「特定継続的役務提供」に該当する場合には、事業者の「前受金保全措置」の有無などを、契約書面で確認すること、都度払いや月払いなど、一括前払い以外の支払い方法は無いか、確認することが重要であります。本日、このような注意喚起資料を消費者庁のホームページにて公表いたしましたので、消費者の皆様におかれましては、高額料金の一括前払いを行う際は、十分にご検討いただくとともに、対応に困った場合には、一人で悩まず、消費者ホットライン188やお近くの消費生活センター等にご相談いただきたいと思います。消費者庁としては、既に一部ヒアリングを始めておりますけれども、「特定継続的役務提供」に関連する業界の実態等を把握したうえで、消費者や事業者への更なる周知等の必要な取組を検討していきたいと考えております。

質疑応答

フリーの木村です。
先日の部会で赤色3号について消費者庁の見解がまとまったんですけれども、その中で食品安全委員会に諮問してはどうかというような案が盛り込まれたかと思うのですが、今後、食品安全委員会に安全性評価を諮問する予定はあるのでしょうか。

2月18日に開催されました食品衛生基準審議会添加物部会におきまして、「食用赤色3号」についてご議論を賜りました。この結果は既に公表しておりますけれども、この中におきまして、委員の方から、現時点で直ちに食用赤色3号の指定を取り消す又は使用基準を改正する必要はないものと考える、ということとともに、引き続き、科学的知見の収集に努め、食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼することを検討してはどうかという結論をいただいております。消費者庁としては、この審議会の指摘に従って、必要な知見を収集したうえで、依頼する評価の内容を検討し、今後しかるべき時期に食品安全委員会の意見を聴く方向になるかと考えております。

今回、基準を変更する必要はないという結論の中で、改めて諮問する狙いというか、意義というか、その辺はどのあたりになってくるのでしょうか。

これはまさに部会の中で議論いただきましたとおり、直ちに必要はないというものの、引き続き科学的な知見の収集に努めるということでありますので、科学的知見、今までのものについては相当お示ししたと思いますが、更に何があるのか無いのか、もう一回収集した上で食品安全委員会に健康影響評価を依頼するかどうか検討するということであります。

(日本消費経済新聞:相川)
木村記者の質問に関連しているのですが、食品衛生基準審議会添加物部会が、「食用赤色3号」について、取りあえず人では安全性上問題がないとして、現時点でのリスク管理機関として見解を示しました。この根拠になったものは、1987年に公表された、ラット86週間反復投与毒性試験で、4%という、2,464mg/kg体重/日という高濃度の餌を与えた雄のラットのみで、甲状腺がんの発生の増加が認められたという論文です。米国の公表資料では、雄ラットにおける発がん性の発生機序はラット特有のものであり、ヒトでは発生しない、ヒトは起こり得ないとされていたのですが、今回の添加物部会では、「ラット試験で甲状腺での発がんが認められた用量が、人が摂取する用量に比べて極めて高用量であること」と、暴露量の違いにしか言及がないのですが、一般消費者の人たちが不安を抱かないように、甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンの動態が、人とラットではどのような違いがあるということが知られているのか、また、実験に用いられた数字と実際の日本人の1日の摂取量がどれほど違うのかを分かりやすくご説明ください。

この食用赤色3号につきましては、既に消費者庁ホームページにおいて基本的な事項についてQ&Aを公表しているところです。まず、一般的に食品添加物の安全性の基準の設定の仕方ということを改めてご説明いたしますと、JECFA、いわゆる国際機関におきまして、まずは一日摂取許容量、ADIといいますが、人が毎日、一生涯、摂取し続けても健康に悪影響がでないと推定される1日当たりの摂取量を設定いたします。この赤色3号につきましては、今お話しいただきましたラットの調査についても含めて評価をし、今の基準値を設定しているところでございます。それにつきまして、各国それぞれの国民の栄養の取り方を勘案して、それぞれ各国で基準を定めるということであります。ラットと人間の関係、それから今回のアメリカの禁止との関係がよく分からないというお話をいただきましたので、本日中にホームページに載せておりますQ&Aに2つ問いと答えを追加しようと考えております。1つは、「米国が食用赤色3号の使用を取り消す判断の根拠となった論文で認められたラットにおける発がんについて、ラットとヒトとの間で発生機序はどのように違うのですか」。今のお尋ねの1点目だと思います。それからもう1つは、「米国が食用赤色3号の使用を取り消す判断の根拠となった論文におけるラットへの投与量と、実際に人が摂取する量はどの程度違うのですか」ということで、分かりやすく比較をしてお答えしようと思っているところであります。2番目の問いについてお答えいたしますと、「ラットで甲状腺での発がんがみられたのは、2,464mg/kg体重/日相当の食用赤色3号を投与した場合であり、これは、国内におけるヒト1人当たり摂取量の推定値のうち最も高い推定値の400万倍以上に相当し、動物試験のように高用量で人が食用赤色3号を摂取する可能性は想定されません」というお答えになるかと思います。1つ目についてお答えいたしますと、「食用赤色3号は、ラットの甲状腺ホルモンの活性型への変換を阻害する作用があることが報告されています。この変換が阻害されると、下垂体からの甲状腺刺激ホルモンの分泌が増加し、長期的に甲状腺が刺激され、発がんにつながるという機序が考えられます。また、食用赤色3号による甲状腺ホルモンへの作用までは、人の体内でも起こる可能性はあるものの、甲状腺ホルモンの血液中の状態などはラットとヒトで種差があることが知られているため、ラットでみられた発がんをそのままヒトに当てはめることはできません」というお答えになるかと考えておりまして、今までのQ&Aも含めて、皆さまに心配がないようにしっかりと情報発信をしていきたいと考えております。

400万倍というのは大変分かりやすいと思います。よろしくお願いします。
(日本食糧新聞:本宮)
グリーン志向に関連してですけれども、今後の取組として、事務局の方で、環境省と連携した上で取り組みを進めていくというお話がありまして、例としては認証ラベルとか認証マークの活用などのことをおっしゃっていたかと思うんですけれども、それらについて今後どのように動いていかれるのかをお聞きしたいんですけれども。

このグリーン志向のワーキングについては、関係省庁に傍聴等していただいています。環境省もそうですし、農林水産省もそうであります。この問題について、それぞれの省庁が既に取り組んでいるものがございます。今お話しいただきました認証ラベル・マークについては、環境省の方でデータベースを作るなり、既に取り組んでおられます。それをどういった形で分かりやすく消費者に提供しているのか、どういう情報を入れていけばいいのかということで、そこは大いに連携できるところだなと思っております。それから、各省もマークに関してはいろいろな形で推奨しているものがございますので、それらの意味内容を発揮していくことも必要だなと考えているところです。それから、一番重要なのはグリーン志向の行動をやるためにいろいろな企業が取り組んでおられるということで、これは食品もありますし、日用雑貨もありますし、電化製品もある。いろいろなものがあるということであります。そういう意味では、それぞれの業界の方が今やっている努力を、もう一ひねり、もう一工夫することによって消費者に伝わっていくというような動きもできると思いますので、いずれにせよこの知見をいろいろな業界で使っていただきたいと考えています。

共同通信の新為です。
赤色3号の件で1点お伺いしたいんですけれども、1月の中旬ぐらいからアメリカの方の動きが報道されて、この1か月ぐらいあると思うんですけれども、消費者庁の方に問合せであるとか、あとは問合せに該当するか分からないですが、例えば苦情みたいなものとか、そういうような問合せの件数みたいなものが増えていたりという事情はあるのでしょうか。

(食品衛生基準審査課)
当課には定常的に照会はありますが、担当者の肌感覚では特に増えているということはなく、記者の方からのご質問が多くなっている状況であると感じております。

NHKの島田です。
長官の発表項目にありました、今まさにスライドに出ている高額料金の一括前払いの件ですけれども、これを今のこの時期に消費者庁として発表するというのは、何か理由というか、背景というか、例えば件数が増えているとか、どういったことがあって今日の発表に至ったのでしょうか。

これはまず一つ、高額料金の一括前払いが多い業界として美容医療サービスがございます。最近この業界は倒産なども相次いでいることもありますし、この春からのシーズン、進学なり就職なり、新生活を迎える中にあって、新しく契約をしようという方が多いのではないかと推察いたしまして、あえてこの時期にやらせていただきました。やはり高額で払うということはこのようなリスクを抱えているということでございますので、冒頭申し上げました都度払いとか月払い、単純に考えると1回当たりが高くなるという場合もあるかと思いますけれども、そのような方法もあるのであればリスクを勘案した上で、自分で選択をしていただきたいと思います。そういう意味を込めて、今日このような記者発表をし、消費者庁のホームページに啓発資料を掲載したということであります。

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