新井消費者庁長官記者会見要旨
(2025年1月9日(木) 14:00~14:16 於:中央合同庁舎第4号館6階消費者庁記者会見室/オンライン開催)
発言要旨
本年もよろしくお願いいたします。本年は、次期「消費者基本計画」をつくるということ、それから、当庁が所管をしております食品ロスの削減の推進に関して、「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」を年度内に変更するということでございまして、消費者政策全般にわたって将来を見ながら仕事をしていきたいと考えてございます。
質疑応答
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問
(日本消費経済新聞:相川)
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。1月7日に、伊東大臣が公益通報者保護法改正案を通常国会に提出すると明言されましたが、どのような体制で法制化の準備を進めているかお教えください。 -
答
今お話があったように、公益通報者保護法の改正案について、通常国会への提出に向けて準備を進めているところです。月内にも通常国会が召集されるという見込みでございますので、法案提出のスケジュールに合うように手順を追って進めていきたいと考えているところです。
- 問 それから、公益通報による不利益取扱いのうち、解雇と懲戒処分に限定して刑事罰を導入すべきとする報告書に沿って法制化を進めているということですが、日本の雇用慣行では解雇や懲戒は極めて例外的で、実際には配置転換や事実上の嫌がらせが多く行われていることが検討会の中でも報告されました。このような改正では、逆に罰則の対象になっていない報復行為が行われることにはならないでしょうか。ご所見をお教えください。
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答
今お話をいただきました不利益取扱いのうち、全般的に検証されているということでございますが、中でも刑事罰はどの分野に導入するということは、この検討会の中でも非常にいろいろな立場からご議論されたと承知しております。それぞれの論点につきましては、有識者検討会の報告書の中でも多くのページを割いて検証させていただきましたので繰り返すことはいたしませんが、さまざま意見があったということでございますし、刑事罰で抑止するということ、刑事罰というのはそもそも要件が明確でなければいけないということと、委員の方からも抑制的に使うものであるというお話もございました。そういう中におきましては、刑事罰の対象となるものは構成要件が明確でなければいけない、それから当罰性の観点ということも考えていかなければいけないということでありまして、そのような観点から労働者に対する解雇及び懲戒に限定するということが考えられるという報告書をいただいておりまして、法制化に当たってもここを念頭に検討していくということでございます。今申し上げましたように、全般的に不利益な取扱いは禁止されているということを前提にということでありまして、そのうちどこを刑事罰として担保するかということですので、嫌がらせとか配置転換が認められているということではありませんので、そこは誤解のないようにしていただきたいと思います。
- 問 国会審議では議論になるのではないかと思いますので。ところで、今改正では、常時使用する労働者数が300人を超える事業者に義務付けられている「公益通報対応業務従事者」指定義務違反に、勧告に従わない場合の命令権や立入検査権を規定し、是正すべき旨の命令を行っても違反が是正されない場合には、刑事罰を科すということが報告書に盛り込まれています。要するに間接罰を規定するということだと思うのですが、常時使用する労働者数が300人を超える事業者は、現在、全事業者の何%に当たるかお教えください。
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答
今回、事業者の体制整備義務の違反につきまして、行政措置あるいは最終的に罰則を担保する立入検査権を導入するということであります。常時従業員の規模が300人以上の企業の中にどのくらいいらっしゃるのかということを調べてみますと、従業者全体の大体42.9%ということになります。従いまして、半数強の方は従業員が300人を超えない企業で従事されているということになります。300人以下の事業者につきましても体制義務ということで、今まででありますと行政措置の対象にはならないということでありますが、完全に何らかの義務がかかっていないということではなくて、努力義務という形でその事業者の方にも義務を課しておりますし、消費者庁の「内部通報制度導入支援キット」などもその方々も使えるようにしているということであります。ここで誤解のないように申し上げますと、「常時使用する従業員が300人超」との基準は、内部の労働者等からの公益通報対応の体制整備義務の対象となる事業者を決めるための基準、いわゆる体制整備義務を課しているということでありまして、有識者検討会の報告書でも、全ての事業者に禁止されている公益通報を理由とする不利益取扱いのうち、解雇・懲戒について、刑事罰の導入あるいは立証責任の転換の措置をするということは、どの事業所にお勤めになっている従業員も一緒ということでございますので、公益通報者の保護の強化は事業者の規模によって変わるものではありません。消費者庁もまだ300人超の企業でも事業者の体制整備が行われていないことを前提といたしまして、今回これらに対する立入検査権とか、是正すべき旨の命令を行っても違反が是正されていない場合の刑事罰を導入するということでありますけれども、まだ努力義務の方々も当然ながら体制整備に向けて努力をしていただくということですので、努力義務の方々にも周知を徹底していかなければいけないと考えているところです。
- 問 企業の割合は分からないですか。従業員の方が半分近くは義務がかかっているところに勤務しているということは分かったのですが、300人を超える企業は全企業の何%ぐらいですか。
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答
企業数の割合ということで見ますと、令和3年経済センサスによりますと、全国の企業等に占める従業員規模300人以上の企業の割合は0.5%ということになっております。
- 問 0.5%ですか。分かりました。諸外国に比べて通報者が保護される要件が日本の方が緩いということで、なかなかまだまだ進んでいないところがあると思うのですが、ほかの、EUなどは50人以上のところに内部通報体制整備の義務付けがありますので、やはりその辺はもう少し検討していった方がいいのかなとは思っています。また今後、引き続き検討されるということですので、またそこはご意見の中にも書かれていますので期待したいと思います。
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問
共同通信の新為です。
一応確認でお伺いしたいんですけれども、今年の通常国会に提出される予定の法案というのは公益通報者保護法以外に何かありましたでしょうか。特になかったように思うのですが。 -
答
特になかったように思います。
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問
(日本消費経済新聞:相川)
実は以前からずっと質問させていただいた案件に引き続いているのですが、消費者基本計画の素案に関する意見募集が始まりました。これに関して前回から質問させていただいているのですが、意見募集案は、決定から3年目を目処に中間点検を行う、としたままです。工程表は結局作成しないということでよろしいのでしょうか。 -
答
1年ごとの工程表というのは作成しない予定です。
- 問 ということは、意見募集案では、個別具体の取組については、特性に応じてKPIを設定する等により実施状況を評価し、PDCAサイクルを確立して取組を推進する、とされているのですが、3年目途の工程表は出るのでしょうか。KPIはいつの時点で設定され、それをどの段階で公にされ、それについてどういうふうに評価されるのでしょうか。
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答
消費者基本計画というのは、申すまでもなく消費者庁の施策だけで成り立っているわけではありません。従いまして、消費者基本計画という形で毎年ごとの工程表とか、そういうものは作成する予定がないということであります。しかしながら、消費者庁として当然ながらKPIを策定して施策のPDCAを進めていくということ、政策立案のPDCAをきちんと回していくという意味での政策評価というのはありますので、それはKPIを設定してやっていくということであります。基本計画について、ですから他省庁でもKPIを設定してやっているものもありますし、他省庁の政策立案の過程でそれぞれKPIを設定して、その達成目標と、それから達成していない場合に施策をこういう形に変更するとか、うまくいっていない施策を改善するということを繰り返しているということであります。基本計画に書かれた項目については、それぞれがきちんと進捗の管理はしているということはご理解いただきたいと思います。
- 問 よく分からないのは、工程表は今までは毎年毎年出ていて、基本計画が最初出た時に工程表が出て、そこにKPIが書かれていた。工程表を作らないとなると、3年目途までに何らかの3年目処の目標か何かをしたものが示されて、KPIが事前に明らかになるのでしょうか。
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答
基本計画の中にはKPIを設定するのにふさわしい事項、例えば数字で表すのがふさわしい事項もありますし、法律を見直すとか、いろいろなものが含まれています。全体としても中間年で検証していくということが今回の基本計画の中に書かせていただいているということであります。
- 問 どうもよく分からないところがあって、3年目に突然KPIが出てくるのですか。
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答
そういうことを申しているわけではなく、3年後にこの基本計画を総体として検証するということであります。
- 問 でも、最初にKPIの目標を設定していないと、目標はじゃあいつ設定するのですか。
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答
目標は今申し上げましたとおり、それぞれの各省庁の施策の中でKPIをしかるべく設定してPDCAを実施しているということでありますので、そこの中で目標を表すべきものは目標が設定されているということです。
- 問 それは公にされるのですか。
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答
各省庁の政策立案のいろいろなチェックの仕組みはしかるべきところで公表されております。
- 問 分かりました。それから、何度も質問させていただいた特商法については、意見募集案でも、厳正かつ適切に法執行を強化すると、執行体制の強化しかないままなのですが、例えば「デジタルリテラシー」という言葉が7回も登場して、本計画期間中の目標に、全ての消費者に対してデジタルリテラシーの確保のための教育を施す仕組みが構築・実践される、ということが書かれています。一体これはどこが実施するのでしょうか。どこが実施するのかは工程表でこれまで書かれていましたが、今回どこが実施するかも書かれておらず、この達成率はどのように評価されるのでしょうか。例えば一例ですけれども。
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答
基本計画はまだパブリックコメントということでございますので、今のご意見はご意見として賜っておくというふうに考えています。
- 問 最後に、地方消費者行政の現場を今取材しておりまして、地方消費者行政強化交付金推進事業分が2027年度までに981自治体で終了し、2025年までにその8割が終了します。既に消費者教育に対する交付金の終了に伴って、自主財源に置き換えられていない自治体が多数既に出ていて、影響が出ています。出前講座ができなくなったり、いろいろな啓発のためのグッズであるとか教材が作れなくなったりしていて、これが終わると壊滅的な打撃を受けるということがいわれています。消費生活センターにこれをやってくださいと言われても、とてもじゃないけどできないという声が上がっていることはお伝えしておきますので、ちゃんと検討していただきたいと思います。