新井消費者庁長官記者会見要旨
(2024年10月31日(木) 14:00~14:22 於:中央合同庁舎第4号館6階消費者庁記者会見室/オンライン開催)
発言要旨
お手元に資料も配布しておりますけれども、「令和6年度地方消費者行政の現況調査」の結果についてお話をいたします。今回の調査のポイントでございます。配布資料の1ページでございますけれども、消費生活センターの数は、前年から1か所増の858か所となりました。これは都道府県でサブセンターの集約に伴う減少があった一方で、市町村(政令市を除く)で増加した結果によるものでございます。次に2ページでございますけれども、消費生活相談員の数は、全体としては17名増加し3,349名となりました。また、資格取得者の割合が63.0%と平成29年の19.0%から上昇しており、国家資格が浸透しつつあります。3ページですけれども、消費生活相談員の平均報酬額(時給換算)は2,071円と、前年度から203円(10.9%)増加しております。これは、地方自治法が改正され会計年度任用職員に勤勉手当の支給が本年4月から可能になったことが影響していると考えております。それから4ページ目でありますけれども、消費者行政予算は、前年度差で14.2億円増加し、207.8億円となっております。特に、自主財源が16.8億円と過去最大の増加となっています。これは先ほど紹介した相談員への勤勉手当の支給のための予算確保が大きく寄与したものと考えております。消費者庁が創設され15年が経過いたしましたが、この間、消費生活センターは、平成21年(2009年)の501か所から858か所に増加。特に都道府県、政令市を除く市区町村の消費生活センターが、351か所から736か所へ倍増しております。それから、消費生活相談員は、2,794名から3,349名に増加、消費生活相談員の平均報酬額(時給換算)は、1,500円から2,071円と約500円(38.1%)増加するなど、地方消費者行政の基盤が拡大したと考えております。これは、地方公共団体の皆様のご尽力によるものでありまして、日頃からの取組に感謝を申し上げたいと考えております。消費者庁としては、こうした成果の上に立って、人口減少や高齢化が進展する中でも、どこに住んでいても、質の高い相談・救済がユニバーサルサービスとして受けられる体制の維持・強化を進めてまいりたいと思っております。PIO-NETの刷新もこの一つということであります。そのため、先般お示しした次期消費者基本計画の素案におきましても、地方消費者行政に関する記述を大幅に拡充しておりまして、今後の方向性や取組について盛り込んでいき、引き続き、地方消費者行政の充実・強化を重要な政策課題と認識して推進していきたいと考えております。現況調査の結果の詳細については、この会見の後、地方協力課から説明いたします。以上です。
質疑応答
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問
日本消費経済新聞、相川と申します。
冒頭の発言に関連して質問させてください。相談員が17人増えているということで、減っていないということでほっとしましたけれども、相談員がいない自治体は増えていないでしょうか。それから、昨年明らかになった相談員の年齢は、60代が40.1%、70代以上が8.1%を占めていて、60歳代以上が48.2%でしたが、その状況は少し改善されているのでしょうか。事務方の方からでいいのでお答えいただけないでしょうか。 -
答
その点については報告書の中にありますので、この後の担当課の説明の中でご紹介させていただこうと思います。
- 問 2020年から、最初は800人だったのですが、1,600人規模で国家資格の対策講座を国が実施している中で17人しか増えていないとも言えると思うのですが、この辺の受け止めと、これに対する深刻な状況、昨年のデータですが半数が60歳代以上だという厳しい現状がそんなに改善されているのかというのは、まだ結果を伺っていないので分かりませんが、厳しい状況が改善されていないのではないかと思うのですが、この受け止めと、今後これに対してはどのように対応されていくかをお教えください。
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答
数字の詳細については後ほど地方協力課の説明の中でお話があると思います。平均年齢がどういう形で変化したというのは、数字は後ほどお話しいたしますが、やはり全体として、60歳以上の方が相談員の多くを占めているという現状は変わらないと考えております。お話しいただきましたとおり、講座を開くことによって資格保有者が裾野を広げているということでありますし、マッチング活動もやっておりますし、それから実際に相談員になるための、いわゆるリエゾンのための講座も最近開催しているところでございます。各地を訪問してみますと、県内には資格保有者は住んでいるけれども、市内に住んでいらっしゃる方がいないということで欠員が出ている、そもそも資格保有者が少ない、地域によっていろいろなお悩みがあるということではあります。そういう中において、幾つかの県で、広域というか連携して、地域ごとに連携して相談をすることによって、全体として相談員の方々を確保するという動きもありますし、県ができるだけ出張っていこうという形で県内の相談の質を確保しようとか、いろんなやり方があると聞いております。これから地方自治体の体力が落ちてくるところもだいぶあるということでありますし、人口の偏在もなかなか残念ながら解消されないという状況を見て、それぞれの地域によってどういう方針がふさわしいのかということを見直していく、人口拡大期ではありませんので、そういう中で今までの施策を検証して次に進めていきたいということで、基本計画にも記したところであります。
- 問 分かりました。地方自治体と連携して具体的な対策を進めていただきたいと思います。別件ですが、10月29日に「第5期消費者基本計画の策定に向けた有識者懇談会」が開かれ、この中で第5期消費者基本計画の素案が明らかになりました。まず、基本的なことでお教えいただきたいのですが、本計画の決定から3年目をめどに中間点検を行うとされているのですが、これまで毎年改定してきた工程表は作成しないということなのでしょうか。もうこれで全てということでしょうか。
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答
(消費者政策課)
まだこの素案につきましては検討中の段階でございますが、各施策によりまして毎年進捗を確認すべきもの、それから、ある程度のスパンで進捗をフォローするもの、いろいろなものが混ざってございますので、どのような形でフォローしていくのがよいか、現状検討中でございます。 - 問 分かりました。それから、消費者庁は行政のパラダイムシフトの転換ということを今までうたってきたのですが、今回、新たに消費者政策の価値規範に関する考え方の転換がうたわれています。消費者がさまざまな脆弱性を有することを認識して、そこを基礎に置いて環境整備を図るとしているのですが、何をどう変えるのかがはっきりしないのですが、何をどのように変えていかれるのでしょうか。
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答
今回の第5期消費者基本計画、10月29日に有識者懇談会において素案ということでご議論いただきました。当日の有識者懇談会でも多くの意見をいただいたと承知しております。それから、今お話をいただきましたパラダイムシフトは、今、消費者委員会で検討いただいておりまして、まだなかなか具体的な像が見えないというのはそのとおりだと思っています。今後、11月末に予定している次回の懇談会に向けまして、地方公共団体への説明や意見聴取、さらにはいろいろな消費者団体の方とも意見交換を行う。それから、素案の決定に先立ちましてはパブリックコメントをするということで、オープンな形で皆さんにご議論いただきたい。そのために今、提示をしているということであります。従いまして、粗削りなところもあると思っておりますし、全体の整合が事柄によって精粗まちまちというところがあるのも承知をしているところであります。そういう中で、今回の基本計画は方向性を示すということとともに、5年間、何を私たちは変えていくべきなのかということを、政府として、各省、個別の法律を持っている省庁とともに方向性を目線合せをするということですので、そういう点で具体的なものの書き込みが足りないというのは自覚しておりますけれども、今の段階では、これから年度末までの段階では少しやむを得ないのかなと担当としては考えているということであります。
- 問 消費者契約法については、「抜本的・網羅的なルール設定の在り方を検討」し見直しを図るとしてはくれています。どのように図るのかというのはまだ今から検討するということなのだと思うのですが、ただ、悪質商法や隙間ビジネス、詐欺的定期購入、SNS・チャットによる通信販売、レスキュー商法等へは法執行で対応するとされていて、特定商取引法の見直しの記述が一切見られません。これはあまりに問題ではないのでしょうか。中でも先週号で書かせていただきました定期購入は、もうアップセルの手口がまん延していて、行政処分では手付かずの状態です。国民生活センターが公表してから8年以上、相談は高止まりしていて、毎日相談現場は苦慮しています。2022年の6月に改正してから2年半近くもたっている段階で、これから5年間の2029年までの基本計画の中に法改正の効果をしっかり見定めていくというようなことしか書かれないと、一体何を考えているのだと言わざるを得ない、この辺について長官はいかがお考えでしょうか。
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答
令和4年6月に改正特商法を施行し、定期購入に関する相談件数はその後いったん増えましたけれども、白書にも書いてありますが6,000件台で、減っているとは申し上げませんけれども落ち着いている段階にあるということでございます。この改正は最終確認画面での誤認表示を禁止するという意味での改正でありまして、それがどの程度定着するのかをまず見ていくということであります。それからもう一つは、別トラックで今、研究を進めておりますし、この前のOECD消費者政策閣僚会合でも問題になりましたが、デジタル取引という、今までの実店舗、あるいは実際に出向いて、人が来たという訪問販売等の形式と違った、デジタルという空間で行われる取引についてどう対応するのかということは、多くの国がそれのための制度を整備している状況になっているということであります。既存の法体系の中で一括やっていくのか、それともちょっと平面を移して議論していくのかということは、今、研究中です。いずれにせよ、定期購入をはじめ不公正な取引環境、トラップのようなもの、ダークパターンも含めて、これが世界中で増加していることは事実ですので、そのためにどういう法制度を検討していくべきなのかというのは、手をこまねいているわけではありません。どういう形の制度がいいのかということは研究しております。それが特商法という形なのかということも含めて考えていくということでありますので、相川記者がお考えの方向と、方向としては変わりがないと思っております。まずは現時点で書けるのは、安全法の注意喚起もありますし、特商法に基づく実際の事業者の処分もあります。それを組み合わせて取り組んでいるというのが現状であります。
- 問 相談件数は今、増加傾向にあります。2022年度は9万8,184件、2023年度は8万268件で、10月末までの相談件数も前年度に比べて増えています。4月は8,000件を超えていますし、5月も8,000件近くになっています。やはり新しい手口がまん延していて、ずっと脱法されている状況をほったらかしにしておくというのはいかがなものかと思います。改正を検討してくださっていることはそれに対して期待したいと思います。もう1件、前々回に私が書かせていただいたのですが、レスキュー商法がトイレや下水の詰まり、カギにとどまらず害虫駆除にまで広がっていて、これがもう安全法の注意喚起しか行われていない。一体どこまで被害を許すのかというところがありまして、これに対しても「厳正かつ適切に対応する」としか書かれていなくて、もう少し希望が持てる基本計画にしていただけないかと思うのですが、いかがでしょうか。
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答
お話しいただいていること、私たちも日々いろんな形で注意喚起をしたり、その前にいろいろ調査をする時に非常にジレンマというか、もどかしい思いがあるというのはお話をいただいたとおりであります。レスキュー商法というのか、人々が緊急事態に陥った時に、インターネットでは、まずは非常に安い値段で書いてありながら、実は高い値段というのがいろんな分野に広まっていることは実際にあります。こういう商法にどう対応していくのか。いずれにしても安全法のみならず、訪問という形を取るのであれば、特商法の対象ともなります。また、それぞれの注意喚起もできるだけ分かりやすいように取り組んでおります。悪質商法に対しては厳然と対応していくというのが必要ですので、どういうことができるのかということで検討していく旨を、今、基本計画には書かせていただいております。全体として基本計画、まだ粗削りなところがあります。そこについてはそれぞれの分野について、さらに皆さんの意見を聞きながら詰めていこうということですので、ぜひこれから都道府県なり市町村なりの意見をお願いしたいということを申し上げますので、それぞれの各地で多様な実態を踏まえたご意見をいただきたいと考えています。
- 問 どの項目も言い出したら切りがないのですが、あと1項目だけ。消費者委員会が建議と意見を出している、SNSやチャットを利用した通信販売の勧誘に関しては、スクリーンショットの保存の呼び掛けが具体的に書かれているのですが、なかなか皆さん、解約するとかそういうことを想定していないので、相談現場でスクリーンショットを撮っているケースはほとんどないということです。今までも何度も呼び掛けてきました。これに対して「慎重に検討を積み重ねていく」と記述があるのですが、主語がなく何が慎重なのか、何の検討を積み重ねていくのか、重ねていくってどういう意味なのか、この辺は何を意図して書かれているのか。消費者委員会が建議や意見を出したものに対してはどう対応されるのでしょうか。
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答
消費者委員会の意見等を受け取っておりまして、この基本計画も検討する前は消費者委員会にご意見を聞くという形になっております。今お話しいたしましたSNS利用のものについては、現場でも証拠となるスクリーンショットがないと事業者と対話ができないということでありますし、それぞれの画面はその人でしか追えないということもありますので、基本的にはやはりスクリーンショットを保存していただく。そのために自分で最悪の事態を想定して備えていただくということがまず出発点になると考えております。その周知が一番重要でありますし、皆さんの問題解決に結び付くということだと考えています。
- 問 周知とか情報提供とか啓発は国民生活センターの仕事です。消費者庁をつくる必要はなかったです。国民生活センターの仕事を自分の仕事のようにしないでほしくて、消費者庁は企画・立案するためにつくられたと思いますので、スクリーンショットを撮るのが最大のものですとか言われると、もう絶望的になってくるんです。もうちょっと前向きな検討をしていただけないかと思いますが、いかがでしょうか。
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答
そこについては、さらにお答えすべき検討内容を持ち合わせておりません。