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新井消費者庁長官記者会見要旨
(2024年2月29日(木) 14:02~14:23 於:中央合同庁舎第4号館6階消費者庁記者会見室/オンライン開催)

発言要旨

お手元に、本日1時公表の「内部通報制度に関する意識調査(就労者1万人アンケート調査の結果)」という資料を配布しております。内部通報制度につきましては、昨今いろいろな事案が起きております。消費者庁では、このような状況を踏まえまして、昨年12月から今年の1月にかけて、事業者1万社に対する実態調査を実施しております。これの結果につきましては、まとまり次第ということで、政府統計として4月の公表を予定しております。本日はそれに先立ちまして、就労者1万人アンケート調査の結果についてお話をさせていただこうと思っております。令和2年の公益通報者保護法改正により、従業員数300人超の事業者には、内部通報制度の体制整備を義務付けております。今回の調査では、内部通報制度に関する理解や勤務先における窓口の設置の認知状況、通報に対する意識などを調査したものでございます。1万人に対するインターネット調査で必要な補正を加えた結果ということでございます。内容の詳細は事務方から説明をさせていただきますが、今後の制度設計の参考になる興味深い結果が出たと認識をしております。
まずは認知度ですけれども、従業員が5千人を超える大企業に勤めていらっしゃる方であっても、半分程度の就労者の方しか内部通報制度をしっかりと理解していないことが伺え、この制度の普及がまだ道半ばの状況ということでございます。これにつきましては、内部通報制度を作るためのキットなどを周知しているところですが、さらに工夫が必要だということであります。内部通報制度に関する理解や窓口が設置されていることの認知については、勤務先での研修や説明会というのは非常に効果的だというのがこのアンケート結果でも出ております。それから、内部通報制度をよく知っていると回答した方は知らないと回答した方に比べて、勤務先の法令違反を目撃し、実際に通報した割合が高いということでありまして、就労者の理解向上に向けた事業者の取組が事業者自身の不正の早期発見、内部での自浄作用につながっていくということがこのアンケートで見て取れるということであります。このようなアンケート、それから事業者の1万人アンケートなどを踏まえて、この公益通報者保護制度について、まずは窓口が設置され、それがしっかりと運用されるということが必要だと思っておりますので、それに向けていろいろな検討をしていきたいと思っております。冒頭の発言は以上です。

質疑応答

読売新聞の糸井です。
今回のアンケートの結果なんですけれども、従業員とはいえかなり低い割合なのではないかなと。そこに関してどうしてこういう状況になっているのか、なぜ周知がここまで進んできていなかったのかということについて、お考えをお願いします。

この制度については施行されて1年半ということでありますけれども、非常に低いということは、やはり消費者庁の努力不足ということもあると思います。今回の調査結果では、窓口があっても知らないという従業員の方も非常に多いと思っております。作っただけではなくて、従業員にどうやって知らせていくかということの努力もやはりしていただくということが必要だと考えております。従業員が知らなければ通報されないということですので、単なる設置に終わらずしっかりと周知をしていただきたいと思っています。その中で、勤務先の窓口設置を知ったきっかけを見ますと、社内研修・説明会が1位、それから2番目が社内トップによるメッセージの発出、それから、社内の掲示板やイントラネットということで、色々複数のツールがございます。このツールを複層的に活用していただくということが、従業員が内部通報制度をしっかり知って、それに向けて情報提供をしていくという形になると思っていますので、その循環を作るべく私たちも努力をしていきますし、企業の方、組織の方も努力をしていただきたいと思います。

今の「努力」というところですが、消費者庁として、これからよりここに取り組んでいきたいと考えていらっしゃるところをお願いします。

公益通報者保護法は2020年の改正法附則第5条におきまして、施行後3年を目途に、検討を加え必要な措置を講ずるとされております。今回就労者のアンケートを実施しました。先ほどお話しいたしましたように別途事業者に対するアンケートを実施しております。それから、最近の各企業における第三者委員会報告書の中で、通報窓口について言及されているものも相当数あると認識をしております。これらの現在の状況等を踏まえまして、来年度有識者等で構成する検討会を開催し議論をしていきたいと考えています。

検討会の開催なんですが、どういったメンバーでどれくらいの期間で結論を出すようなイメージですか。

今内部で詰めているところです。

検討会とは別になんですけれども、内部通報制度導入の支援キットを作ったりされていますけれども、この辺の周知、企業に対してのアクションというのはどういうふうにされていくかというのもお願いします。

公益通報者保護制度につきましては、いろんな周知・広報をしております。東京都区内の一部地下鉄、それから政府広報なども使って周知をしているところでありますが、労働基準監督局に協力をいただきまして、220万社の企業に直接資料も配布します。ここでも記者の方々に見ていただきましたが、非常に分かりやすいものになっていると思いますので、ぜひまずは窓口を設置して周知をするという最初のステップを開始していただきたいと考えています。

220万社に配る資料というのはどういった資料ですか。ホームページに出ているような資料でしょうか。

(参事官(公益通報・協働担当)室)
そのとおりです。

NHKの絹川です。
資料(「内部通報制度に関する就労者1万人アンケート調査の結果」(概要版))の5枚目のところなんですけれども、通報先についてのグラフを見ると、インターネット上のウェブサイト・SNS等を通報先に選びやすい人の差が理解度とかなり相関しているように見受けられるのですが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

この資料の分析にもつけておりますけれども、まずは年代によってだいぶ違うということが一点ございます。年代が若いほど通報しやすい先が「インターネット・SNS」を選択している割合が高いということであります。それから、内部通報制度について「よく知っている」と回答した方は、それ以外の人よりも通報先として「勤務先」を選ぶということで、「インターネット・SNS」を選択した割合は逆に低いということです。配布資料の5ページに、公益通報者保護法上の通報先と保護条件の記載があります。勤め先、行政機関、報道機関等と分けますと、報道機関等に通報した場合に保護される条件というのは、不正があると信ずるに足りる相当の理由があること及び次のような理由があること、ということで非常に厳しい条件になっているということであります。したがいまして、この公益通報者保護制度の趣旨をよく理解した上で、まずは勤務先に通報していただくというのがこの法律の本道であります。先ほどご紹介した前の方のデータともつながりますが、窓口を作っただけではなく従業員の方々が声をあげやすい状況を作っていただくということがこの制度のしっかりした運用につながっていくのではないかと考えています。

前提のところなんですけど、通報先が勤務先とSNSはじめインターネットだったら勤務先の方が望ましいということなのかなと思うんですが、企業目線と告発する従業員目線でそれぞれどういう点でそう考えられるのかというところを改めて伺ってもいいですか。

報道機関に通報した場合にここにありますように保護される範囲が非常に厳格になっています。通報したことによってこの信ずるに足りる相当の理由がない場合におきましては、損害賠償請求でありますとか、場合によっては刑事責任を追及される場合もあるかもしれないということであります。通報される方々の立場からいたしますと、報道機関を選ぶか勤務先を選ぶかは保護の条件が違うということをまずしっかりと認識をしていただくということだと思っています。企業の方にとってということでありますが、企業の方も内部通報窓口に来たからといってこの通報を無視していいということでは決してありません。通報を適正に処理するということが義務付けられていますので、信頼の上で従業員の方々が勤め先に通報していただくのが企業の自浄作用としてはおそらく最も好ましいと考えています。従業員と企業の経営者の方々の信頼関係をどう築いていくのかということがこの制度の運用に大きく左右してくると考えています。

なかなか通報窓口設置というと後ろ向きな企業さんが多いのかなというイメージがあると思うんですけど、企業にとっても通報窓口の設置にはこういうメリットや利点がありますというような何か呼びかけたいことがありましたら一言お願いします。

その点におきましてはこのアンケートに非常に鮮明に結果が出ていると思っております。配布資料の4ページの図9ですが、内部通報制度を理解している方であればあるほど相談、通報をしたこともあるという結果になっています。通報していただいたことによって早期の改善が図られるということ、それから従業員の方にとっても相談した後に相談してよかったと思う方が7割いるということでございまして、これによってやはり改善されたということが見てとれるということであります。従業員の方との信頼関係を築いてこの窓口を適正に運用していくということが、企業にとっても従業員の方にとっても良い効果をもたらす。そのためにこれからいろいろ制度の改善を図っていく余地がまだまだあるのではないかと思います。

細かい点ですが、配布資料の2ページの図1の内部通報制度の理解度について、従業員規模が301人以上の調査結果が4つのカテゴリーに分かれていると思うんですけど、従業員規模301人以上の全体での割合は分かりますか。

(参事官(公益通報・協働担当)室)
「よく知っている」17%、「ある程度知っている」32%、「名前は聞いたことがある」23%、「知らない」29%、ということで、「よく知っている」と「ある程度知っている」を足して49%で半分弱となっています。

朝日新聞の寺田です。
配布資料の4ページのところで、通報したことを後悔している方も結構いらっしゃって、解雇などの不当な取扱いも実際にあったということですが、これの受け止めと消費者庁として個別に対するどのような対応ができるかについて教えてください。

図12を見ていただきますと、具体的にどのような形で不利益な取扱いを受けたということもグラフにしております。その中を見ますと、「上司や同僚からのいやがらせ」、「減給」、「降格」等、やはり、この通報を理由に自分が不利益な取扱いをされたということも後悔の大きな要因になっているのではないかと思っておりまして、企業には通報を理由に不利益な取扱いをしないということを徹底していただきたいと思います。

(日本消費経済新聞:相川)
今の質問に関連して、この不利益を受けたという方は全て内部通報制度を利用した方という認識でよろしいんでしょうか。

行政機関や報道機関も入っております。

法改正により内部通報制度の体制整備を義務付けて、内部で不利益的な取扱いをしないような必要な措置を取ることを義務付けたわけです。結局、その前の検討会でも皆さんが罰則を求めたのに対して罰則は全く入れられなかったと。内部で対応するんだということでこの改正に留まったわけです。やっぱりきちっと分析がこれではできていない。加えてこの内部通報をしても、もしそれがあるとするのであれば早急に見直す必要があるのではないかと思うのですが、その辺の分析とか今後の対応についてはどうお考えになっているのでしょうか。

今回の調査は就労者1万人に対するものであります。事業者1万人のアンケートも実施をしておりまして、その分析もしなければいけないと思います。それから、内部通報窓口に言及されている各企業の第三者委員会の報告書の中で、どのように内部通報制度が機能していたのかいなかったのか、これも大きな要因であります。あともう一つ加えますと、これに関する裁判例なども分析をしています。そういう分析全体を踏まえた上で、この制度がよりしっかりとワークしていくためにはどうすればいいのかという観点から議論をしようと思っております。

そうではなくて分析の方法で、どこに通報した人が不利益を受けているのかをこの調査でも分析できるのではないですかと。その結果を出していただけないでしょうかということがまず一つにあります。それがないと今後分析、改善を考えるにも十分ではないですよね。

検討会の中で必要な分析なりというのはこれから詳細にしていくということです。

いずれにせよ不利益を受けている人たちがこれだけいるという現実が出てきているということなので、きちっと対応、今後の検討をしていただきたいと思います。
読売新聞の糸井です。
体制整備義務とかに違反した場合は、助言・指導とか勧告とかの対象になると思うんですけど、これまでに指導、勧告などは何件ぐらいか。ビッグモーターやダイハツであったと思うんですけど、総数はわかりますか。

(参事官(公益通報・協働担当)室)
1月末時点で22件です。

全て指導ですか。

(参事官(公益通報・協働担当)室)
指導だけです。

報告徴収に報告しなかったり虚偽の報告をした場合は過料20万円もあると思うんですがそちらはないですかね。

(参事官(公益通報・協働担当)室)
コメントを差し控えます。

これからなんですけど、法執行という形ではそういうのが見つかれば厳正に対処して、処分といいますか指導ですかね、勧告とかそういったものをやっていくという、そういうことでしょうか。そちらのほうはどう考えていますか。

当然ながらそれと合わせてということでありますが、本日の就労者1万人のアンケートを見ても、企業が通報窓口を作っていても知らされていない、従業員が分かっていない、という残念ながら極めて初歩的な段階にあるという状況ですので、そこをまずどう改善していくのかというのは大きな課題だと思っています。作っていても伝わっていなければ意味はないということですので、その辺も考えながら今の法執行と、それからさらにこの制度が十分に機能するためのあるべき改善方針というのを両方合わせて考えていくということが必要だと思っています。

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