新井消費者庁長官記者会見要旨
(2023年9月21日(木) 14:00~14:30 於:中央合同庁舎第4号館6階消費者庁記者会見室/オンライン開催)
発言要旨
冒頭私から三点発言をさせていただきます。
まず、一点目でございますけれども、広告であるにもかかわらず広告であることを隠す、いわゆるステルスマーケティングの告示の施行についてお知らせをいたします。一般消費者は広告であるということを認識すれば、その表示内容にある程度の誇張・誇大を含むことがあり得ると考えるところ、第三者の感想であると認識すれば、その表示内容をそのまま受け取ってしまうおそれがあるということで、ステルスマーケティングについて規制の対象としたということであります。ステルスマーケティングの告示、正確には「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」ですけれども、今年の3月に告示指定を行いました。同告示は来月1日から施行されます。ステルスマーケティング告示については、これまでも積極的に広報活動を行ってきたところでありますが、改めて事業者であります広告主におかれましては、ステルスマーケティングを行うことがないよう法令遵守に努めていただきたいと思います。ステルスマーケティングは違法であるということに伴って、関係事業者それから実際に発信する方々の倫理の向上、リテラシーの向上を図っていただきたいというふうに考えているところでございます。なお、ステルスマーケティングについて仮に不明な点、それから不安な点があれば相談に応じますので、ぜひ消費者庁にお問い合わせいただきたいと思います。それから今般の告示の施行と併せまして、本告示の違反被疑情報に関する通報窓口として、消費者庁のウェブサイト内に「ステルスマーケティングに関する景品表示法違反被疑情報提供フォーム」を設置する予定であります。これによりまして情報収集に努めてまいりたいと考えています。消費者庁としては、引き続きステルスマーケティングの告示の普及啓発を行い、違反行為の未然防止を図るとともに、問題となる事案については厳正対処していく所存であります。
二点目です。改正消費者裁判手続特例法が10月1日から施行されます。改正法の施行によりまして、被害回復裁判手続の対象となる損害の範囲の拡大、和解の早期柔軟化、消費者団体訴訟等支援法人の認定制度の導入等が措置をされます。これによって、今後、制度が果たすべき役割が十分に発揮されるということを期待したいと思います。消費者団体訴訟制度につきまして、8月3日にお話をさせていただきましたが、国として新しい愛称を定めるとともに、今までの皆様の成果、活動についても報告したところでありますので、消費者団体訴訟制度を活用することによりまして、全体としての被害回復が図られるということをこれからも期待しているところであります。
三点目です。「送料無料」表示の見直しに関する意見交換会についてであります。これにつきましては、昨日すでに告知をしておりますが、明日22日ですけれども、全日本交通運輸産業労働組合協議会、全日本運輸産業労働組合連合会、全国交通運輸労働組合総連合、と意見交換会を行うことといたしました。これまで意見交換を6回行っておりますので明日が7回目ということであります。引き続き関係者との意見交換を重ねましてどのような見直しを行うべきか整理をし、方向性を打ち出したいと考えています。冒頭発言は以上です。
質疑応答
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問
日本消費者新聞の丸田です。
ステルスマーケティングについて、今おっしゃった違反被疑情報の窓口についてというのは消費者・事業者共にということでいいのかどうかということと、事業者に対してのアピールがありましたけれども、消費者についても、広告だと認識できるかどうか重要となるということだと思いますので、消費者に対して何らかの周知徹底のお考えがあればお聞きしたいと思います。 -
答
まず一点目、被疑情報の窓口ですけれども、これは、どなたでも、ということであります。それから消費者へのアピール、周知ということでありますが、消費者の方々への周知はこれからインターネット広告など各種の媒体で、口コミを装ったステマ広告は違法ですというものを一定期間入れさせていただきます。消費者の方々にはやはり広告は広告だと思って認知をしていただくということですので、いろいろなインフルエンサーの発信の中で、広告と書いてあるものは広告ですねと認知できるということなんですが、例えば、同じような映像、同じようなものが広告ではないという、「広告」という表示がなく発信をされているということであれば、それはもしかしてステマではないのかなという疑念を持っていただくということが重要だと思っています。今、いろいろな方々の発信の中で、「広告」あるいは「PR」といったものが出てきておりますので、そういう方々は誠実な発信者だということの一つの証になると思いますので、消費者の方々もいろいろな発信に接するときはそのあたりには注意をしていただきたいと思います。
- 問 もう一点。今のお話の中にあった改正消費者裁判手続特例法のことですが、10月1日からの、消費者団体訴訟等支援法人のことをご説明いただきました。この支援法人は制度運用を支える主体という位置づけがあるかと思いますけれども、この法人の認定のスケジュール、何か具体的なものがあればお聞きしたいと思いました。
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答
(消費者制度課)今ご質問いただいたのが消費者団体訴訟等支援法人の認定制度の運用についてのことでございました。こちら施行が10月1日からということになりますので、そこから申請があればそれを踏まえて審査などを行うということを予定しております。
- 問 申請があって審査をやると。たしか支援法人自体は、制度の周知徹底、広報とか、あるいはお金を扱ったりとか、一定の重要な役割を担う、そういうものも含まれていると思いますけれども、できるだけ早く認定されるのかなと思ってはいたんですけれどもこれから申請を受け付けるということになりますか。
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答
(消費者制度課)今申し上げたとおり、改正法自体が10月1日からの施行になりますので、支援法人の認定制度自体そこからスタートするということになります。
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答
付け加えさせていただきますと、その支援法人の認定の基準自体は既に公表しておりますので、支援法人を目指す方はその基準を参照にして準備はしていただいていると思いますが、具体的に申請を受けるのは10月1日以降からです。
- 問 もう一点質問です。この消費者団体訴訟制度で、8月にマスコットを設定されて公表されました。「ここりす」、「てりす」、「とりす」とかが公表されました。この意味が、英語名の略だと、ホームページに載っていましたけれども、これ消費者への周知徹底、事業者への周知徹底、社会への周知徹底等、この制度ですね、とても重要なんですけれども、この、「ここりす・てりす・とりす」が活躍するような、活用の仕方ってどういうふうにお考えでしょうか。
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答
マスコットを作るという意味は色々あると思うんですけれども、一つはこれが英語の略だと分かりやすく皆さんに知っていただくということなんですが、8月3日の会見でも申し上げましたが、消費者団体訴訟制度が始まってから何年か経ちまして、やはり、それぞれの適格消費者団体・特定適格消費者団体が成果を上げてくださっています。8月3日の資料のところでいくつかの皆さんの活躍について、代表例もあげさせていただきました。差止請求件数も多くなっておりますし、個々の個人ではなかなか手を挙げることができないような事案の救済を可能とする被害回復制度については、大学の医学部の入試での得点調整、特に、女性とか浪人生の方々を不利益に扱ったというものを消費者団体訴訟制度によって、約1億6千万円の被害を回復したとかいろんな活動がこの訴訟制度によって担われているということであり、活動とともに制度そのものを皆さんに知っていただくということが非常に重要だと思っています。差止請求も先にお話しましたように、今までの活動の中で日本全国で約950件の差止請求が行われています。差止訴訟に行く以前にもやはりいろんな形で事業者の方が改善するということで、正常な良い対応があったというものもあると思います。そういう活動をやはり皆さんに知っていただくということが周知の方法だと思っていますので、ここりす等の愛称とともに被害を回復してくださるものが皆さんの地元にあるんだと。今25の団体が活動しておりますが、そういう形で地元にある非常に助けてくれる存在だということを徐々に知っていってもらうことが必要だと思います。
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問
フリーの木村です。
送料無料表示の見直しの意見交換会の件なんですけれども、これまで6回開いてこれまでのヒアリングの成果というのはどのくらいの手応えがあったのかということと、以前、長官からも消費者団体等の中立的な立場からもヒアリングするというような話もあったと思うんですけれども、今後の意見交換会で、特に集めたい情報ではどのようなポイントなのかという点について教えてください。 -
答
今まで6回ということで各関係者の方々と意見を交換しました。それ以外にも非公式に意見交換したものがたくさんあります。この中で流通事業者の方からは、運送事業者の実態あるいは送料無料表示に関するどういう表示が望ましいのかの要望などを聞いてきました。それからプラットフォームを提供する事業者からは、ネットショッピングにおいては物流が不可欠であること、消費者に請求する送料の実態や物流事業者に支払う運賃との違い、それから既に送料無料の表示を見直しているといった意見をいただいたところであります。お話がありました消費者団体、消費者の方々の方からはこれから意見交換したいと思っています。これは色々な立場があります。しかしながら、いつも申し上げておりますけれども、物流の閣僚会議の中で一定の方向性が示された中での消費者庁の検討ということであります。改めて申し上げさせていただきますと、「運賃・料金が消費者向けの送料に適正に転嫁・反映されるべきという観点から「送料無料」表示の見直しに取り組む」ということですので、この関係閣僚会議の趣旨を踏まえて、今までいただいた意見をどういうふうに汲み取っていくのかということで、さらにいくつかの方面との意見交換を行った上で方向性を打ち出したいと思います。
- 問 まだスケジュール的にはゴールラインとかそのへんはまだ煮詰まっていないという状況でしょうか。
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答
はい。
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問
日本経済新聞の前田です。
よろしくお願いします。ステマについて伺いたいんですが、改めて今回ステマの規制ができたということに対する長官ご自身の受け止めであったりとか、検討会報告書とかでも日本はステマ天国だみたいな記述もあったように、この制度をどのように運用していかれたいかみたいなお考えをお聞かせいただければと思います。 -
答
お話しありましたとおり、このステルスマーケティングの規制の検討会の報告書は令和4年の12月の末に公表させていただいています。その中でまさにご指摘があったように日本がこのステルスマーケティングに対応するのは非常に難しいという状況で、日本の消費者法制というのは基本的にはBtoC、事業者と消費者を対象としており、景品表示法も事業主を対象にしているということであります。それから、デジタルによって大量の情報を発信できる、消費者の方も情報を発信することができるという意味では、デジタル空間の中での対応方針というものについては、今の法律の中の枠組みではなかなか迅速に対応できていないという指摘もあると思っています。それはダークパターンといわれているものについても一緒であります。検討会の中でも、やはり迅速にやっていく必要があるということで、景表法の枠内では今回の告示という形で対応したということであります。その中のご指摘でもありますけれども、EU等のように、デジタルの取引という観点からの規制の仕方というのもあると思います。全体として日本の消費者法制をどう見直していくのかということで、これは消費者法の現状を検証し将来の在り方を考える有識者懇談会という中でもご指摘がありました。今回規制の対象にならなかった、事業者ではなくその間を繋いでくれる人、それから発信する人、そういう方々と、法令の規制だけではなく自主規制と合わせてどうやっていくのかというのは消費者法の現状を検証し将来の在り方を考える有識者懇談会の中でも提起されている課題であります。今回のステルスマーケティングを告示によりまして、まずは皆さん、消費者も含めてですけれども、ステルスマーケティングは違法ですということを認識して全体としてその倫理感を高めていただくとともに、これがやはりこの分野の規制のまずは第一歩であると思っています。全体としてこのデジタル空間でいろんな取引がこれから行われると思います。それを健全に発展させていくという意味でもしっかりとした規制なり自主的な基準の枠組みを整えていくというのが必要だと思っています。デジタルに対する消費者法制の規制というのは、この秋からしっかり議論していく課題だと思っていますし、その中にこのような分野が入ってくると考えています。
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問
日本消費経済新聞の相川です。
先ほどの質問に続きまして、ステマ天国と言われた日本で常識を変える必要があるということを前の大臣とか国会の中で言われておりまして、今回の規制ではインフルエンサーとか不正なレビューを募集する仲介ブローカーとかは規制の対象にならないということなんですけれども、常識を変えるために消費者庁はどのような周知をこの6ヶ月間されてきたのか、特にインフルエンサーとかそういうブローカーの方たちに対しては、どのような周知に取り組んでいかれたのかということをお教えください。 -
答
(表示対策課)まずインフルエンサーの方につきましては、こうしたインフルエンサーの方のマネジメント会社というようなところがございまして、この18事業者に対して周知活動を行っておりますので、おおよそ19万人くらいのこれらのマネジメント会社にインフルエンサーの方が登録されていると理解しております。
- 問 ガイドラインを配布したというようなことだったと思うのですが、ちゃんとインフルエンサーの方たちには届いているのでしょうか。それからスポット広告というのも検索サイトを自分で一生懸命検索はしているのですが、一向に出て来ず、目にすることがないのです。その辺がどうなっているのか教えてください。
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答
(表示対策課)マネジメント会社のほうは、契約しているインフルエンサーの方にしっかり届けていただいていると聞いております。またスポット広告につきましては検索をして出てくるというものではなくて、プラットフォームに定期的にいろんな広告がランダムに出てくる中に含まれているというものでございますので、タイミングによって見えたり見えなかったりするということになろうかと思います。
- 問 もうちょっとわかりやすく、もうちょっと周知していただきたいなと思っていて、やはり記事を書いていると一番やっぱり迷うところが、インフルエンサーの人たちが商品を無料で提供してもらって、その事業者に意に沿った表示をしたときは、広告で、その表示をしない場合は一応違反に該当するということなんですけれども、インフルエンサーの方たちが自分の意思に基づいたときは違反に該当しないと、そういう説明でずっと来たんですけれども、この辺はどう判断していかれるのかもう少しわかりやすく教えていただけますか。
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答
それについては冒頭申し上げましたが、インフルエンサーの方が、自分が投稿するときに何かそういうご懸念があれば、消費者庁に相談していただければということで、インフルエンサーの方々が自信を持って発信できるような状況は作っていきたいと思います。
- 問 それから別の質問をさせてください。2026年から消費生活相談のデジタル化が始まるということで、7月18日と19日に地方の説明会をして、それの質問と意見が9月13日締め切りということ消費者庁に届いているはずです。どういう意見や質問が多かったか教えてください。
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答
消費生活相談デジタル化・体制の再構築については、皆様に説明会を行い、具体的に意見をいただきました。本当にありがたいことだと思っています。やはりこの制度を良くしていこうという皆さんの意欲が伺えたということであります。一応、9月13日ということで期限を切っておりますけれども、今1000件に近いものが寄せられています。これを今後どうしていくかということであります。実際に消費生活相談のデジタル化・体制の再構築を進めていくためには、現場でまず混乱を防ぐということと、現場の方がやはり難しいけれど次に行くとより良いものができあがるということがないとなかなか進まないということでありまして、皆様からのご懸念をどう解消していくか、それから、具体的に話を聞いてみますと、やはり手順をしっかり考えていかなければいけないということもありました。具体的には、システム面では、仕様の詳細を早く、それから十分な移行期間が欲しい。それから業務面では、具体的に新しいシステムでどういうふうに相談のやり方が変わるのだろうか、あるいは変わらないのだろうか、それから研修をしっかりしていただかないとなかなかうまくスイッチできない、体制面については、準備の具体的な進め方とか準備時間をどう取るのかといった本当に実務的なご意見をたくさんいただきました。この消費生活相談のDXについてはこの計画を立てる時から、それからその後も定期的に国民生活センターと消費者庁の担当課、それから有識者に入っていただいて、どういうふうに懸念を解消しフォローアップしていくかという会議、これはアドバイザーリーボードで行われています。定期的に行われています。今回いただいた意見をそこでまず分析して進め方の進度をもしかしたらこれとこれは重ならないようにしたほうがいいとか、いろんな具体的な検討に落とし込んでいこうと思っているところであります。
- 問 地方の取材をしている途中なのですが、やはり、今併せて消費者生活相談サービスの標準ガイドラインといったいろいろ資料が膨大なものが出ていまして、それを膨大なものに対する十分な説明が行われておらず、受け止め方が様々で不安を抱いているところが少なくないです。それで、やはり、また水面下でその意見を受けて話をしてもその不安とか疑問が解消されないわけなので、もう少しそれに対する回答とかをすぐに出して、もう少し地方の人たちと直接コミュニケーションをする、以前はブロックごとに担当者がいて、もっと地方の人たちとコミュニケーションができていたと思うんですけれども、こんな大事な事業をするときに、地協課の本当に人数が少なくてですね、あと不当寄附勧誘防止法関連で人が取られたりとか、やはり、ここのところがやっぱり地方の人たちと十分に意思疎通ができていないなというのをものすごく感じてしまうのでここのところ少し見直しをしていただけないでしょうか。水面下でいかに議論をしても地方の人たちが不安になるばかりなので、もっとどういうつもりで文章を書いているのか、どういうつもりで行おうとしているのか、もっとわかりやすく地方の人たちに伝えないととても心配な状況があると思いますのでご検討ください。
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答
消費者庁が仕事ができるのは相談員の方々が電話を1本1本聞き取って、PIO-NETに入れてくださるからであって、この集積により今世の中で何が起きているのか把握できます。対策を立てる非常に重要なデータバンクです。相談員の方あっての消費者庁です。今回2026年クラウドに移行するということですので、その後については、管理の面、それから費用の面でもだいぶ楽になるということ。しかしながら、システムの移行というのはどこの会社でもありますけれども、結構、難事業であることも事実です。やはりしっかりと移行するためにはシステムもそうですが、使うまでの手順もあります。今回もいろいろお話をしてみますと、なかなか丁寧にできなかったんですけれども、やはり心配事が多いということは分かりました。今、指示をしておりますのは、我々も今回、こういうやり方どうですか、こういうやり方どうですか、とお聞きをしたので、そこで混乱をしたということもあります。だいたいそれぞれの進め方についてこっちがいいんじゃないかというようなものが出てきた分野もありますので、やはりある程度決め打ちというか、作り込んでご説明したほうが分かりやすいと思います。ご不安になる気持ちは分かりますけれども、これによって皆さんの作業は効率的になって、より多く相談や他の業務に時間が割けるという状況になると思いますので、そこはご協力をいただいて心を一つにしてやっていきたいと思います。
- 問 地方自治体の消費者行政の現場は職員もどんどん減らされ、消費生活課がなくなっていくような状況がある中で、やはりそこで踏み留まって地方消費者行政というものを一生懸命頑張りたいと思っている職員さんたちからとっても不安な声が特に聞こえてくるような気がしますのでよろしくお願いします。
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答
承知いたしました。