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新井消費者庁長官記者会見要旨
(2023年6月15日(木) 14:04~14:29 於:中央合同庁舎第4号館4階共用第2特別会議室/オンライン開催)

発言要旨

私から3つお話をさせていただきます。
まず1点目は消費者白書であります。6月13日に令和5年版の消費者白書を公表させていただきました。それぞれ各メディアでも取り上げていただき大変感謝をしております。今回の特集は、「高齢者の消費と消費者市民社会の実現に向けた取組」ということで、高齢者に特徴的な消費意識や消費者トラブルについて分析し、高齢者の中でも年齢層によってトラブルの傾向に違いがあるということ、それから、認知症等の判断力の低下した高齢者の増加や孤独・孤立など、高齢者は様々なぜい弱性に直面していることを示したところであります。多様な高齢者の状況に対応するには、見守りの活動が有効であると考えておりまして、見守りネットワークの人口カバー率は、徳島県のように100%に達した県がある一方で、全国では38%にとどまっております。この見守りネットワークは、消費者の活動のみならず地域の福祉、お子さんの虐待でありますとかいろんな形での問題を解決していくものに有効ということでございますので、それぞれの福祉なりの部局とも連携しながら消費者庁も働きかけていきたいというふうに考えております。それから消費者の皆様方には、いずれにせよ契約をすると消費者に当然責務が発生いたします。代金を払うという責務が発生するところであります。従いまして、よく内容を確認していただくということが最も重要でありますので、高齢者向けの消費者教育の促進、それからいろんな情報提供もこれから積極的に取り組んでいきたいと考えているところであります。
次に2点目です。これと関連をいたしましてお手元に資料を配布しておりますが、6月12日に、徳島県にあります消費者庁の新未来創造戦略本部におきまして、「認知症の人にやさしい対応のためのガイド」というのを公表しております。新未来創造戦略本部におきましては、「高齢者の認知機能障害に応じた消費者トラブルと対応策の検討に関する研究」というのをやっておりまして、ここで京都府立医科大学の先生をトップにいたしまして研究をまとめたところでございます。その中で民間企業を対象に行ったアンケートやヒアリングによりますと、多くの企業で認知症が疑われるお客様への対応や、契約時において認知症か否かの判断に大変苦慮しているという課題が明らかになったところでございます。このような実態を受けまして、未来本部では、今回の研究の結果をもとに、認知症による消費行動の特徴や認知症の消費者にどのように対応していくかということに関するヒントを盛り込んだガイドを作成いたしました。このガイドには、企業の担当者が実際に経験した認知症に関連するトラブル事例のほか、契約場面における留意点など、安心・安全な契約に向けて役立つ内容が盛り込まれております。主に企業の担当者の皆様の実践的なガイドということでございますので、ぜひご活用いただきたいと思います。本文につきましては消費者庁のホームページに記載されておりますし、内容詳細につきましては未来本部にお尋ねいただきたいと思います。
それから3点目でございます。取引デジタルプラットフォーム消費者保護法(取引DPF消費者保護法)に基づく官民協議会が6月9日に開催をされましたので報告をさせていただきます。インターネット通信販売の取引のうち取引DPF、いわゆる取引デジタルプラットフォーム上で行われるものが重要なウェイトを占めるという状況になっております。このため各取引DPF提供者において、昨年5月に施行されましたこの法律に基づく取組をしっかりと進めていただくことにより、通信販売取引の適正化と紛争解決の促進が効果的に図られるということでございます。6月9日の第3回の官民協議会の資料につきましては、既に消費者庁のウェブサイトに掲載をしておりますのでご参照いただきたいと思います。この中での具体的な課題と取組状況でございますけれども、法の施行を踏まえまして、各取引DPFにおいて法に基づく取組が総じて全体としては進められているということでございますけれども、まだ前向きな取組、望ましい取組は行われていないというところもございますので、ぜひ進めていただきたいと思っているところでございます。特に、取組状況を開示していただく法3条第2項でありますけれども、これにつきましてはまだ一部の事業者にとどまっておりまして明示的に開示が進んでいないということ、それから、役務提供系のDPFにはいくつかの取組が十分でないといったことがこの協議会でまとめられているところでございます。取引DPFにおけるサービスあるいは品目の提供というのがそれなりの重要なウェイトを占めているということでございますので、ぜひ事業者の方々には、この法律に基づいてしっかりとした取組をしていただきたいということで、これからも官民協議会をしっかりやっていきたいと思っています。それから、この協議会におきましては、個別の事案として道路交通法上の基準に適合しないアシスト自転車、それから、ステロイドが検出された健康茶についてもそれぞれ報告をしたということでございます。今後もこの取引DPF提供者の自主的な取組を充実、強化するということによりまして、消費者の安全・安心を推進していきたいと考えているところでございます。

質疑応答

フリーの木村です。
別件で申し訳ないんですけれども、昨日の食物アレルギー表示のアドバイザー会議なんですけれども、特定原材料に準ずるものの考え方、案が了承されたということで、それに該当するものとして追加するのはマカダミアナッツで、削除するのはまつたけという案が消費者庁のほうから示されたんですけれども、これは追加したり削除をするという方向でこれから進めると理解でよろしいでしょうか。

食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議を開催いたしまして、3年に1回行っております全国実態調査の結果を踏まえて、どうやっていくかということでご議論いただいたところでございます。今回の会議では、本年3月のくるみの特定原材料への追加、それから本年3月に作成した啓発資料による外食・中食における情報提供、それからコーデックスにおけるアレルゲン表示の検討状況について報告し意見交換を行うとともに、特定原材料に準ずるものに係る対象品目の選定に関する考え方につきまして専門家からご議論いただいたということでございます。今回のように特定原材料に準ずるものに係る対象品目の追加・削除の基本的な考え方を整理いたしますのは、制度開始以来、今回初めてということでございます。このアレルギー実態調査は、全国のアレルギーの専門家の医師約1000名の協力で主に3年に1回行われておりますが、コロナ禍におきましては、いわゆる臨床があったアレルギー物質、今回の調査で124にわたる品目の調査をしているということでございます。このような状況の中、どれを推奨表示していくかということはやはり専門家の方々の知見に基づいて考えていくというのが重要だと思っておりまして、細かなお話をさせていただきますと、追加対象品目の候補の考慮事項としては、直近2回の全国実態調査の結果において、即時型症例で上位20品目に入っているもの、直近2回の全国実態調査の結果において、ショック症例数で上位10品目に入っており、重篤度等の観点から別途検討が必要であるもの、のいずれかに該当する品目とすること、それから、削除対象品目の候補としては、直近4回の全国実態調査の結果において、即時型症例数で上位20品目に入っていないもの、それから直近4回の全国実態調査の調査結果において、ショック症例数が極めて少数であること、のいずれにも該当する品目とすること、ということでご議論いただきまして、この時に、先生方から、追加する際の考慮事項には、流通実態なども加味してはどうかというご助言をいただいたところでございます。なお、対象品目数については現行28品目を目安とするということがまとめられております。たくさんにするということではなくて、できるだけ見やすい形で提供するということでございます。このような考え方に基づきまして、特定原材料に準ずるものとしては、まつたけについては削除すること、それから、マカダミアナッツについては実態調査の結果を踏まえ追加の候補とすることということですので、マカダミアナッツについては、実態調査をするということでございます。これを踏まえて年度内にどういう対応をするかということを検討するということでございますが、アレルギー問題はやはりお医者さん方、科学的な知見に基づいてやっていくということが重要だと思っておりますので、この今回の結果を踏まえて対応していくということになると思います。

検討は年度内に終わらせて、実際に制度を追加したり、削除するのは来年度以降の話というそんな流れでしょうか。

具体的には消費者庁の次長通知を改正するということになります。それから然るべき皆様にやっていただくまでにどのような期間を取るのかということは、その時にまた判断をしたいと思います。

ニッポン消費者新聞の丸田です。
先ほどのお話の中で取引DPF法に関連して、先日開催されました官民協議会のお話がありました。その中でいろいろとても重要なお話もあったわけですけれども、製品安全誓約の要求であるとかということがありました。参加されている方から消費者への認知がもう少し積極的になってほしいということで、つまり安全なところのサイトということで、マークのことが提案されたんですけれども、このマークについて今後どういうふうにやっていくのか、これから検討になるのかということがあれば、ちょっと教えてください。

(消費者安全課)まだ製品安全誓約については調整中の段階でございまして、いろいろな、署名がなされればという段階であり、今後いろいろこの制度を周知するというような要望の一つとして承っているという話でありまして、署名は月末に向けて調整していて、それに向けて準備が整いましたらまた我々の方からご報告することもあるかと思いますけれども、その制度の周知の一環としてのご提案があって、周知についてはしなきゃいけないものとして受け止めているというところでございます。

全体的に申し上げますと、この取引DPF保護法については、事業者が努力をしていくということと、官民で話し合ってより良い方向を目指していくということだと思います。製品安全誓約もその一環ということで、私たちは非常に良い取組だというふうに考えています。そういう形で努力された事業者のサイトをやはり消費者も選んでいただくということによって、安全に購買あるいはサービスが受けられるんだと認識いただくことが望ましい形だというふうに思っております。その中で、そういうサイトにマークをつけるかどうなのかということはちょっと別の観点だと思っています。これについては、通信販売の協会が協会の取組として通販協会の加盟者ですということをサイトに掲示をするという運動を既にだいぶ昔からやっていらっしゃいます。そういうものもやはり消費者が見ていただく、サイトを選んでいただくものの一つの助けになっていくと思いますし、ここでも繰り返し申し上げておりますが、特商法に基づく表示というのがどのような形で表示をされているのかということを、表示がまずあるのかないのか、ちゃんと代表者の名前があって電話番号があるのか、そういうことも買う時ちょっと見ていただくと、やはり皆さんの購買行動あるいは安心というのは変わってきておりますので、そういう形で特商法の表示も利用していただければというふうに思っています。

もう一点すみません、確認ですけれども、これ(「認知症の人にやさしい対応のためのガイド」)は、企業、事業者の担当者に向けてのガイドということになるんでしょうか。

実際のものを見ていただくと、安全・安心な契約をするために、事業者がまずこういうことを消費者の方が分かっているかどうかしっかり確認してから契約をしてくださいねと、そうしないと後でトラブルが発生しますよということもありますし、本人の理解度をまずどうやって確認をするのかということと、それによって契約ができる理解度の方なのかどうなのかということを事業者が見極めてほしいということなので、周囲の人の目、ここに地域包括支援センターとか消費者安全確保地域協議会の話も書いてあります。安全に取引を行うために事業者がどう注意をすればいいかという視点でまとめられておりまして、内容としては非常に実践的なものですし、相手方の状況をしっかり確認して契約をしていただくということが、事業者と消費者の双方にとって重要だと思いますので、これは事業者向けということですが、非常に重要な分析があると思いますので、ぜひ皆さんに見ていただきたいと思います。

徳島の未来本部の研究報告は、今おっしゃったように企業に対してこういうことをしてほしいという提案とか、行政に対してこうだということで、確か行政に対しては消費者安全確保地域協議会の連携と言いますか、それとあと消費生活センターとかなんかではセンターと福祉部の連携であるとか、それとか地域包括支援センターとか、いろいろこれまで長官も提案されてきた、要するに地域の中での見守りの強化とか連携ということも提案されていたと思います。認知症の方々に対しての消費者トラブルの対応の仕方であるとかということについて、とても詳しく事例とか被害も出されていらっしゃるので、それで見守りネットワークについて今回の報告書を基にして、消費者庁として自治体に対して何か提案であるとか、あるいはそのプッシュであるとか、そういう政策提言であるとか、何かお考えありますでしょうか。

まずこの研究報告書が、おっしゃっていただいたとおり地域でいろんな人が見守る、皆さんがケアすることによって、認知症の方が安心して物を買える状況をつくっていくということもありますけれども、やはり全体として消費者のぜい弱性の中の一つの要素で、これから日本が直面していく大きなポイントだと思っています。本当に認知症ということであると、成年後見制度を利用するという方法がありますが、なかなかそれはご本人に分からない、あるいは周囲の方に分からないという場面もあります。その時に地域での見守りというのは非常に重要ですし、先ほど申し上げましたけれども、福祉の方と一体になって行っていくということであります。これについては、徳島県それから四国の近隣の県で100%ということですので、まさに徳島県における未来本部の実証を普及していくということですので、見守りネットワークについては連絡協議会で優良事例の横展開というのをやっています。こういう長所の輪を広げていくというのが、消費者問題を解決するために重要だと思っていますので、これは工程表の中でも目標を掲げて取り組む事項となっていますので、しっかりとやっていきたいと考えています。
また、消費者法の現状を検証し将来の在り方を考える有識者懇談会の中でも、まさに消費者のぜい弱性をどう見ていくのかということで大きな議論になっております。

日本消費経済新聞の相川です。
食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議について質問させてください。YouTubeで公開され義務表示、推奨表示とする考え方が示された点は大変高く評価しています。本当に早く取り組んでいただきたかったと思っていることがようやく実現してありがたいと思っています。この中で、今後流通量を確認することを委員から求められたということなのですが、マカダミアナッツとかペカンナッツ、ピスタチオ、くるみの流通量について知見がありましたらお教えいただけないでしょうか。

今回の整理の基準というのは、一番前提としてはこのアレルギーの実態調査に基づいているというのが前提です。その上で先生方がおっしゃったのは、社会的なインパクトということで流通量を考えてというお話があったと思っておりますので、特定の品目について流通量が非常に高いから、さっき申し上げた調査の百数十品目の中で上位にあるということではないと理解しております。今それぞれお話がありましたナッツ等の流通量については、後で事務方からお答えさせていただければと思います。

ピスタチオ、マカダミアナッツを追加して、まつたけを削除してくださるということなんですが、ピスタチオは確かに13位ということで、アナフィラキシーショックの数が新しく出てきたというところはあるんですけれども、発症数に占めるショック症状の発生頻度というのがどの食物よりも高いと、アーモンド、小麦、カシューナッツの上に来ていて、さらにカシューナッツと交差反応性があると、ピスタチオクリームなど最近需要が高くて、ピスタチオのクリスマスケーキなんて予約しないとなかなか買えないぐらいの状況になっていて、少し、推奨表示として追加する選択肢はないのかなというのを、アドバイザー会議を伺っていてちょっと疑問に思ったものですから、その辺のご見解を教えていただけたらと思います。

今回のアドバイザー会議も、今申し上げたそれぞれ調査の基準に基づいて判断をしているということであります。今回考慮事項として流通量等もというお話があったのも、まさにご指摘の視点も踏まえてということだと考えます。当然ながらピスタチオが入ったものについては、包装用食品であればピスタチオと表示をしておりますし、例えばケーキ屋さんでこの緑は何ですかということで聞いていただければケーキ屋さんはお答えするということです。いずれにせよ、この問題はアドバイザー会議の専門家の判断を尊重していきたいと考えています。

フリーの木村です。
冒頭発言の取引DPF消費者保護法について質問なんですけれども、先ほどのご説明の中で、開示の件だと思うんですけれども、開示について前向きな取組が行われていない部分もあるというご発言だったと思いますけれども、一部の事業者の方であまり前向きじゃないその背景といいますか、理由と、それに対する消費者庁の今後の対応方針について教えてください。

(取引DPF消費者保護室)法に基づく取組の開示は、法が施行されてまだ1年くらいということで、大手の事業者であればかなり認知をして事業者団体等で分かりやすく取組の状況を示している。ただいろんな取引DPF提供者の規模、業態がありますから、そういう意味ではなかなか認知が進んでいないというところですけれども、そこはお願いをしていくとともに、あと今後の取組として、開示をしていただくことによって消費者に選ばれる、長官もおっしゃられたようなところを打ち出していく必要があるだろうと考えています。