「世界消費者権利デー」を迎えるに当たって(令和7年3月14日)
世界消費者権利デーは、1962年3月15日に、米国のケネディ大統領によって消費者の権利(安全への権利、情報を与えられる権利、選択をする権利、意見を聴かれる権利)が初めて明確化されたことを記念し、消費者の権利を促進するために国際消費者機構(CI : Consumers International)が提唱している世界的な記念日です。
今年の世界消費者権利デーのテーマは、「持続可能なライフスタイルへの公正な移行(A Just Transition to Sustainable Lifestyles)」です。
CIが本テーマを選んだ背景として、多くの国で異常気象が日常化し、人々の生活や生計を脅かすと同時に、生物多様性の喪失と汚染が地球と人類の健康にますます大きな脅威となっていること、こうした危機は経済的社会的にも影響を及ぼし、持続可能な開発目標(SDGs)に向けた進展を妨げていることが明らかになってきたことを挙げています。このため、食生活、移動方法、住宅の冷暖房、電力供給、購入する製品や利用するサービスに至るまで、根本的に変える必要があると同時に、持続可能で健康的な選択肢が、より利用しやすく、アクセスしやすく、手頃な価格で手に入れられるようにすることも不可欠であると指摘しています。
2024年10月、OECD消費者政策委員会は「デジタル及びグリーン移行の中心にいる消費者」をテーマに初の閣僚会合を開催しました。同会合では、多くの消費者が環境問題に懸念を抱いており、このような懸念を抱く消費者は、企業に環境問題に対応するインセンティブを与え、市場がより持続可能な選択肢を提案するように促すことができるとの認識が示されました。また、グリーン移行における消費者のエンパワーメントと保護に焦点を当てることなどが閣僚宣言の柱に掲げられました。
消費者庁では、地域の活性化や雇用などを含む、人や社会・環境に配慮した消費行動、いわゆる「エシカル消費」の普及・啓発に取り組んでいます。持続可能な社会の実現に向けた課題の解決には消費者一人一人の行動と、「安さ」や「便利さ」に隠れた社会的費用への意識が必要です。そこで各種イベントへの参画や特設サイト・SNSでの情報発信を通じて、普及・啓発に取り組んでいます。食品ロスを減らすことも「エシカル消費」の一環であり、重要です。我が国の食品ロス量は、年間472万トンと推計されており、これは国連世界食糧計画(WFP)による2023年の食料支援量370万トンの約1.3倍に相当します。消費者庁では、農林水産省、環境省とも連携し、消費者に対して、食品ロス削減に向けた行動変容を促すため、食品の期限表示を理解の上、買い物することや調理の工夫、外食時の食べきりと食べ残した場合の持ち帰りの促進等を啓発しています。
さらに消費者庁では、2024年11月に有識者による「グリーン志向の消費行動に関するワーキングチーム」を立ち上げ、消費者が自身の消費生活において、グリーン志向の消費行動、つまり、環境に配慮された商品・サービスを理解し、意識的に選好するなどの行動を、積極的に実践するよう促していくために検討を行いました。先月行った取りまとめでは、まず環境問題が"遠い未来の問題"ではなく、自らの"喫緊の課題"という共通認識を形成し、自分事化につなげるとともに、グリーン志向の消費行動が消費者のメリットとなるような形に仕組み化することが重要であるという視点が示されました。例えば、環境に良いということをアピールするだけでなく、「面白い」「参加したい」等の消費者の関心や欲望を刺激する働き掛けや工夫を行うことや、消費者が簡単・快適にグリーン志向の消費行動を実践できる売場環境や動線づくりを行うことなどが、企業や民間団体等などによる取組の深化に資する視点の1つとして挙げられています。その上で、今後の取組の方向性について、行政を起点に、企業やメディアを含む幅広い主体の連携による情報発信や、消費者とのコミュニケーション強化に向けた自治体・企業等の取組の後押し、認証ラベル・マークに関する情報の整理・提供を進めることが重要であるという考えが示されました。当該ワーキングチームにおける議論を踏まえ、必要な施策を進めてまいります。
世界消費者権利デーが、全ての関係者が共に消費者を取り巻く課題を考える機会となることを願い、ここにメッセージを発信します。
令和7年3月14日
内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)
伊東 良孝