文字サイズ
標準
メニュー

保護要件に関するQ&A

質問

回答

Q1 「通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由」(本法第3条第2号及び同条第3号)がある場合とはどのような場合を指しますか。
A

「通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合」の例としては、単なる憶測や伝聞等ではなく、通報内容を裏付ける内部資料等がある場合や関係者による信用性の高い供述がある場合などが考えられます。
なお、後日、紛争となった場合に、実際に本法の規定による保護を受けるためには、公益通報者の側が「通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由」があったことを立証することが必要と考えられます。

Q2 書面により2号通報をする場合、書面にはどのような事項を記載する必要がありますか。
A

書面により2号通報を行う場合、書面には以下の事項を記載することが求められます。

  • 公益通報者の氏名又は名称及び住所又は居所
  • 通報対象事実の内容
  • 当該通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する理由
  • 当該通報対象事実について法令に基づく措置その他適当な措置がとられるべきと思料する理由

「思料する理由」については、単なる憶測や伝聞等ではなく、合理的な根拠に基づく客観的かつ具体的な記載が求められることになります。
なお、合理的な根拠に基づき客観的かつ具体的に記載されていなかった場合、権限を有する行政機関等は、公益通報者と連絡を取り、補正を求めることができます。補正の求めを受けたとしても、通報対象事実の内容を抽象的に示すにとどまったり、当該通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると考える合理的な根拠を示すことができなかったりする場合は、保護要件を満たさず、本法の規定による保護を受けることはできません。

Q3 「公益通報をすれば不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合」(本法第3条第3号イ)としては、どのような場合が考えられますか。
A

「公益通報をすれば不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由」は、個別の事案ごとに判断する必要があり一概にいえないものの、例えば、

  • 過去に不祥事について事業者内部に公益通報をした従業員が不利益な取扱いを受けたケースが実際にあった場合
  • 内部規程に公益通報者に対する不利益な取扱いの防止や範囲外共有等の防止について規定されていないなど、内部公益通報対応体制が指針に沿って整備・運用されていない場合
  • 法令違反行為の実行又は放置について経営者の関与が疑われる場合
  • 社内の多数の者が法令違反行為に関与している場合
  • 既に発生している法令違反行為が重大であるため、それが明らかとなれば経営陣の処分につながるなどの事業者に対する極めて大きな影響がある場合

などの場合が考えられます。

Q4 「公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由」(本法第3条第3号ロ)としては、どのような場合が考えられますか。
A

「公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由」は、個別の事案ごとに判断する必要があり一概にいえないものの、例えば、

  • 過去に事業者内部になされた公益通報について、証拠が隠滅されたケースが実際にあった場合
  • 法令違反行為の実行又は放置について証拠を保有している者や経営者の関与が強く推認される場合
  • 社内の多数の者が法令違反行為に関与している場合
  • 既に発生している法令違反行為が重大であるため、それが明らかとなれば経営陣の処分につながるなどの事業者に対する極めて大きな影響がある場合

などの場合には、証拠隠滅等のおそれがあると信ずるに足りる相当の理由があると考えられます。
また、証拠隠滅等のおそれがあると信ずるに足りる相当の理由の有無を判断する際の考慮事情としては、例えば、

  • 重要な証拠が適切に管理されていないなど、証拠隠滅等を行おうとすれば容易に行い得る状況にあること
  • 内部規程に利益相反の排除や範囲外共有等の防止について規定されていないなど、内部公益通報対応体制が指針に沿って整備・運用されていないこと
  • 事業者に不利益な事実について、虚偽の報告・公表や不利益な部分を恣意的に伏せた報告・公表がなされたケースが実際にあったこと

などが考えられます。

Q5 「公益通報をすれば、役務提供先が、当該公益通報者について知り得た事項を、当該公益通報者を特定させるものであることを知りながら、正当な理由がなくて漏らすと信ずるに足りる相当の理由がある場合」(本法第3条第3号ハ)としては、どのような場合が考えられますか。
A

「公益通報をすれば、役務提供先が、当該公益通報者について知り得た事項を、当該公益通報者を特定させるものであることを知りながら、正当な理由がなくて漏らすと信ずるに足りる相当の理由がある場合」は、個別の事案ごとに判断する必要があり一概にいえないものの、例えば、過去に不正行為の調査又は是正措置の過程で公益通報者の氏名等が正当な理由なくて当該調査又は是正措置の対象者に伝えられた事案が実際に発生したにもかかわらず、適切な再発防止策がとられていない場合などが考えられます。

Q6 「前二号に定める公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求された場合」(本法第3条第3号ニ)としては、どのような場合が考えられますか。
A

「前二号に定める公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求された場合」は、個別の事案ごとに判断する必要があり一概にいえないものの、例えば、

    • 上司から、役務提供先の通報対象事実について、正当な理由なく、事業者内部又は権限を有する行政機関等へ公益通報をすることを口止めされた場合
    • 内部規程で、外部公益通報が禁止されている場合
    • 社内調査によって通報対象事実の存在が明らかになったにもかかわらず、正当な理由なく、会社の方針として行政機関への報告及び公表を行わないことを決定した場合

などが考えられます。

Q7 その他の外部通報先への公益通報(3号通報)の保護要件の1つである本法第3条第3号ホの「二十日」は、どのように計算しますか。。
A

意思表示の効力が生じる時点や期間の計算方法について、本法には特段の規定が設けられていませんので、民法(明治29年法律第89号)の原則によることとなります。
このため、書面による公益通報は、事業者に到達した時に効力が生じます(民法第97条)が、「二十日」の期間の計算方法については、民法の初日不算入の原則(民法第140条)に従って、書面による公益通報が事業者に到達した日の翌日から起算されることとなります。例えば、4月1日に書面による公益通報が事業者に到達した場合において、「二十日」を経過した日は4月1日の翌日(4月2日)から起算し、4月22日が「二十日」を経過した日に該当します。

Q8 内部公益通報を匿名で行い、事業者との連絡方法も有していなかったことにより、事業者から調査を行う旨の通知がなされない場合であっても、通報者は通報先から20日以上通知がないことを理由に、本法第3条第3号ホの規定に基づき、その他の外部通報先へ公益通報できますか。
A

本法第3条第3号ホにおいて、「調査を行う旨の通知がない場合」が保護要件とされた趣旨は、公益通報者に対して外部公益通報をするかどうかの判断の機会を与えるためです。よって、匿名通報のため事業者から通知を行えない場合や公益通報者があらかじめ通知を不要としていた場合など、公益通報者の側が事業者からの通知を受けることがないような対応をとった場合には、調査を行う旨の通知がなかったことを理由に、その他の外部通報先に公益通報をしたとしても、本法の規定による保護を受けることはできないと考えられます。

Q9 「回復することができない損害」、「著しく多数の個人における多額の損害」(本法第3条第3号ヘ)とはどのようなものですか。
A

「回復することができない損害」とは、事業者の賠償責任によってその損害が償われないような場合のほか、事業者との取引が国外を経由している、事業者の財産が国外にあるなどの事情により費用や手数等からみて回復が相当困難な場合などが考えられます。
「著しく多数の個人における多額の損害」とは、基本的には、1,000人程度の個人に対し、各人において数十万円程度の損害が生じることであれば該当すると考えられます。

Q10 役員が外部公益通報する場合の保護要件の1つである「調査是正措置」(本法第6条第2号イ及び同条第3号イ)とは、具体的にどのような措置を指しますか。
A

調査是正措置の例としては、取締役会への付議や監査役会への報告など善管注意義務の履行として行われる措置が該当します。

担当:参事官(公益通報・協働担当)