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コラムVol.2 エステサロン等でのHIFU施術にはリスクがあります

図:HIFU施術を受けているイラスト

「HIFU(ハイフ)」という言葉を聞いたことがありますか? 顔のたるみや、しわ、ほうれい線の改善効果がある等として、近年、エステサロンや美容クリニックでの施術に利用されています。そのような「HIFU施術」ですが、顔の神経が傷ついて麻痺が起きるなどの思わぬトラブルが、30代女性を中心に幅広い年代で起きています。
令和5年3月に、消費者安全調査委員会がとりまとめた事故に関する調査報告書(1)から抜粋してご紹介します。HIFU施術の利用を考えている方は、リスクについても知り、よく考えてから施術を受けるか決めましょう。

HIFU(High Intensity Focused Ultrasound)とは

超音波を、レンズで焦点を合わせるように、皮膚表面から数ミリ深い場所に集中して照射することで、その部分を高温に加熱するもので、前立腺がんの治療等に使用される技術です。美容で主にたるみや痩身の治療に用いられるものは、その技術を転用したものです。

図:HIFUの仕組みのイラスト

HIFU施術による事故

事故情報データバンク(2)には、全国の消費生活センターに寄せられた相談情報など、HIFUによる事故の情報が登録されています。2015年に初めて登録されて以降、2022年12月までに135件が登録され、近年では特にエステサロンでの施術で増加傾向がみられます。

事故の97%を女性が占めており、20代~50代の幅広い年代、特に30代に多くなっています。受傷部位別では、事故の7割が「顔」で、熱傷や皮膚障害のほか、顔の神経損傷による麻痺・しびれ、目の近くの施術により急性白内障などの事例もみられました。

図:HIFUによる事故情報の年別登録件数(事故情報データバンク)のグラフ
HIFUによる事故情報の年別登録件数(事故情報データバンク)
<事故事例>
  • エステサロンにて、施術後に体がだるく睡眠後の夕刻に口が動かず呂律も回らない状態。約2週間はよだれ、咀嚼もうまくできず。右側の口が麻痺。目を閉じることができないことがある。(40歳代・女性、右顔面神経麻痺)
  • セルフエステにて、頬に照射した際に唇が痛くなった。3年経つが今でも痺れは残っている。(30歳代・女性、末梢神経障害)
  • 美容院内で、顔に10分程の施術を受けた。目の上側と下側にもプローブを当てた。施術終了から3~4時間後に左目にもやがかかったような違和感があり、翌日明らかに目の中心部がかすんで白くぼやけた。(40歳代・女性、急性白内障)

エステサロン等でのHIFU施術の実態

エステティック業界の主要団体では、自主基準によりHIFU施術を禁止していますが、非加盟の店舗でHIFU施術が行われていると考えられます。調査からは次のような実態が明らかになりました。

<使用されている機器>
  • 医師のいないエステサロン等でも美容クリニックと同程度の照射出力の高い機器が使用されている
  • 機器の故障が把握できていないなど、信頼性の低い機器が使用されている
<エステサロン等の施術者・利用者へのアンケート>
  • 施術者に対する機器や施術の教育が十分ではない
  • 施術の際の利用者への説明が十分ではない
  • 利用者がHIFU施術のリスクを認識していない
  • 利用者の約1割が施術後に痛みや違和感があった

トラブルを避けるためには?

HIFU施術は、超音波で皮下組織を高温に加熱するため、施術者が解剖学等の知識を持って、機器の出力や照射方法をあなたに合わせて調整して施術しない場合、皮下の神経や血管等を損傷するおそれがあります。エステサロン等での事故が目立ちますが、美容クリニックでの事故も起きています。以下のチェックポイントを確認しましょう。

<施術を受けるに当たってのチェックポイント>
  • 使用する機器がどのようなものか、自分でも説明できますか?
  • 効果だけでなく、リスクや副作用などについても知り、納得しましたか?
  • ほかの施術方法や選択肢の説明も受け、自分で選択しましたか?
  • 施術の費用や回数、解約条件などの契約内容について十分に理解できましたか?
  • その施術は「今すぐ」必要ですか?最後にもう一度、確認しましょう。
<困ったときには>

いわゆる「エステティック」や「美容医療」のうち、サービスの提供期間が1か月を超え、かつ支払総額が5万円を超えるものは、特定商取引法において規定する特定継続的役務提供の対象です(3)。このようなサービスについては、法定の契約書面を受け取った日を1日目として8日間は無条件で契約の解除(クーリング・オフ)を行うことができるとともに、クーリング・オフ期間の経過後であっても、残りの契約について中途解約を行うことができます。

万一、これらのサービスでトラブルに遭ったときは、一人で悩まず、早めに最寄りの消費生活センターなどに相談しましょう。また、施術により身体にけがや不調が発生した場合には、速やかに医療機関を受診しましょう。

  1. (1)消費者安全調査委員会「エステサロン等でのHIFU(ハイフ)による事故」(別ウィンドウで表示します)
  2. (2)事故情報データバンク:消費者庁が(独)国民生活センターと連携し、関係機関から「事故情報」「危険情報」を広く収集し、事故防止に役立てるためのデータ収集・提供システム(平成22年4月運用開始)。
  3. (3)特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」(別ウィンドウで表示します)
(参考)

担当:消費者安全課