文字サイズ
標準
メニュー

スウェーデンの高齢者の「まちづくり」への参加

 北欧では、全ての年齢に優しいコミュニティ作りに向けて、高齢者の意見を積極的に取り入れる活動が進められています。ここでは、スウェーデンの二つの都市の取組について北欧福祉センターがまとめた「年齢を重ねるのによい環境(注1)」の報告書から紹介します。

都市計画への高齢者の貢献:スウェーデン第2の都市 ヨーテボリ

 ヨーテボリ市では65歳以上の人口比率が2018年の約15%から2050年までには25%に増加すると予測されています。そのため、高齢者を含めた全ての年齢層の住民に優しい街とすることを目的とする都市計画を積極的に進めており、この活動に高齢者が積極的に参加しています。

(1)ジュビリーパーク計画への参加

 2021年に誕生から400周年を迎えたヨーテボリ市は、その中心を流れるヨータ川両岸で北欧最大の都市開発を進めています。この開発の一環としてジュビリーパークと名付けられた新しい都市公園の建設を進め、2022年にその一部が開園しました。この公園に設置した椅子や各種設備については、事前にワークショップを開いて、複数の試作品について高齢者を含む多くの市民に実際に試してもらい、座り心地や設備の使い勝手等の意見を出してもらいました。これらの意見を基に人々がどのように集い、くつろぐかを考慮して、誰もが集まりやすい公園とするよう計画しています。

 このワークショップの取組は、その後、高齢者の声を聞き、議論する新しい幾つものグループの形成につながりました。こうしたグループを通じて、高齢者の視点で重要だと考える点や、都市環境が高齢の住民に与える影響等を把握しています。

(2)生活撮影プロジェクト

 ヨーテボリ市中心のランドビー地区の高齢者は、市内のアートスクールの学生と共同で「生活撮影プロジェクト」を進めました。これは、高齢者に最新の技術に触れてもらい使ってもらうと同時に、高齢者の知識や経験、必要としているものについて知ることを目指し、高齢者自身が撮影し、映像として残すものでした。最初はタブレット端末に触ったこともなかった高齢者がその使い方を学び、その後街に出て高齢者の目線で良い点、満足している点、そして改善してほしい点等を撮影していきました。例えば、市内を散歩していて街灯がなくて暗い場所で不安を感じることや、長い坂の途中に一休みするところがないことの大変さ等を指摘しており、都市計画に多大な貢献をしています。本プロジェクトでは、高齢者自身が撮影したい内容を決めています。また、高齢者自身が言葉で表現することが難しい考えを伝えることにも役立っており、最初は市の中心で始まりましたが、その後市内の他の地域にも広がりました。

高齢者との対話:スウェーデン第4の都市 ウプサラ

 ウプサラは、高齢者に優しい都市作りに取り組み、高齢者の健康で自立した生活と地域での社会参画の機会を向上させることを目指しています。まず現状を把握するため、高齢者との対話を通じた基本的な調査を実施しました。調査では、10以上の地区で高齢者にカルチャーセンター等に集まってもらい、グループに分かれて高齢者に優しい都市にとって重要となる住宅、医療、社会参画、交通等の分野について話し合ってもらいました。話合いの項目は例えば、除雪、夜の散歩での安全、ボランティア活動への受入れ等多岐にわたりました。この話合いに加え、街頭で配布する調査票によるアンケート等も実施しています。

 これは市にとって初となる高齢者との広範囲にわたる対話であり、その目的は高齢者の視点から市の開発や改良の可能性をより多く見つけることでした。これらの話合いから得られた結果を基に、自治体・ボランティア団体・民間企業とも協力して、都市開発の3年間の実行計画が作られました。


  • 注1:"A BETTER ENVIRONMENT TO AGE IN ― Working towards age-friendly cities in the Nordic region," The Nordic Welfare Centre, 2018

担当:参事官(調査研究・国際担当)