高齢者の個性や経験をいかした消費者トラブル防止活動:鹿児島市消費生活センター 地域消費者リーダー
鹿児島市消費生活センターでは、「地域消費者リーダー」が地域へ出向いて消費者トラブルに遭わないための出張講座を実施しています。地域消費者リーダーの多くが高齢者であり、高齢者ならではの経験をいかして地域の消費者トラブルの防止に貢献しています。
「地域消費者リーダー」として高齢者が活躍
地域消費者リーダーのメンバーは18歳以上の鹿児島市民から募集され、2023年1月時点で49名が在籍しています。地域消費者リーダーは昼間に活動することが多いこと等の理由から、退職された60歳代以上の人が多く在籍しており、平均年齢は68歳と多くが高齢者から構成されています。また、地域消費者リーダーになるためには10回の研修会に参加する必要があり、地域消費者リーダーになった後も毎月行われる研修に参加し、最新の消費者トラブルに関して学んでいきます。
地域消費者リーダーは、地域の高齢者が集う鹿児島市のお達者クラブ(注1)等への出張講座を主な活動として行っています。講座では「悪質商法にはだまされもはん」という啓発冊子を使い、契約に関する基本的な内容やクーリング・オフ制度、最近の消費者トラブルの紹介等を行うことで、地域の消費者トラブルの防止に取り組んでいます。2022年度は、70回以上の出張講座が実施されました。
個性や経験をいかして高齢者にとって分かりやすい講座を実施
高齢者に伝わりやすい講座を行うために、地域消費者リーダーは活動に様々な工夫を取り入れてきました。例えば、紙芝居を自作したり、寸劇をしたり、鹿児島弁を交えてユーモラスに語り掛けるなどの、地域消費者リーダー各々の個性や経験をいかした工夫がされてきました。講座を実施する方も受講者も、互いに共感できる高齢者同士であるからこそ、受講する高齢者にとってより分かりやすい講座にすることができています。
受講者からは、「消費生活センターに相談することに抵抗があったが、講座を受けて、もっと気楽に相談してみようという気持ちになった」といった意見もあり、地域消費者リーダーは、消費者トラブルの防止につながる情報を伝えるだけでなく、高齢者が消費生活相談をすることに対するハードルを下げることにも貢献しています。
地域の高齢者と行政をつなぐ懸け橋に
鹿児島市消費生活センターでは、声掛けや広報誌等による情報発信をしてきたものの、市民に情報が届いているかという不安もありましたが、出張講座では高齢者に必要な情報を直接届けることができます。また、出張講座は消費者トラブルの未然防止に役立つだけでなく、消費者の声を直接聞くことで、「この地域ではどのようなトラブルに遭っている人が多いのか」といった情報を知ることにもつながり、消費生活センターへ相談に来ていない人たちの声を集めることにも貢献しています。地域消費者リーダーが地域の高齢者と行政をつなぐ役割を担っているともいえます。
「同じ高齢者同士だからこそ、地域消費者リーダーに対しては、受講者も本音が言いやすいのではないか」と鹿児島市消費生活センターの職員は言います。出張講座を通じて、消費生活センター、地域消費者リーダー、地域の高齢者向けクラブ等が連携することで、高齢者に消費者トラブルに関する情報を伝えるだけでなく、高齢者から得た情報を行政が消費者トラブルの防止にいかしていくような、双方向の取組が今後も期待されています。
- 注1:鹿児島市内に居住するおおむね65歳以上の方で、外出の機会が少ない方や介護予防を目指す方を対象とし、地域の公民館や福祉館で体操や創作活動等を通じて心身の機能低下等を防ぎ、生きがいをもって暮らせるよう、保健師や健康づくり推進員が地域の人々と共に実施している活動。2022年度は、195か所のお達者クラブが活動している。
担当:参事官(調査研究・国際担当)