鎌倉市くらし見守りネットワークの取組:神奈川県鎌倉市
鎌倉市は、高齢者や障害者(以下「高齢者等」という。)が安心して暮らすことができる仕組みを構築するために、全国でも珍しく、市の条例に基づいて「鎌倉市くらし見守りネットワーク」を構築しています。
「鎌倉市くらし見守りネットワーク」の活動内容
鎌倉市の高齢化率は30.27%に達しており(注1)、高齢者等の中には、判断力の低下や地域社会からの孤立、生活困窮といった様々な課題を抱え、見守りを必要としている人がいます。高齢者等を消費者被害から守り、様々な課題に対応していくためには、地域全体での支援体制が必要です。そこで鎌倉市は、2021年7月に「鎌倉市くらし見守りネットワーク」の活動を開始しました。
「鎌倉市くらし見守りネットワーク」は、鎌倉市と民間事業者等や、行政機関や福祉団体等が連携・協力し、高齢者等の消費者被害を早期に発見して、必要な支援につなげる見守り体制です。民間事業者(宅配事業者・保険会社・コンビニエンスストア等)、行政機関(警察・福祉事務所等)、福祉団体等(社会福祉協議会・民生委員・地域包括支援センター等)が、悪質商法による高齢者等の消費者被害につながる異変に気付いたときに声を掛け、鎌倉市消費生活センターへの相談を促したり、情報提供したりします。さらに、消費者被害による生活困窮のおそれに気付いた場合等は、高齢福祉・障害福祉・生活自立支援・生活困窮支援等の関係部署や福祉団体等が関わり、鎌倉市が取り組む重層的支援体制整備事業とも連携を図りながら適切な支援を組み立てます。
鎌倉市では、「鎌倉市くらし見守りネットワーク」の協力事業者・協力団体の目印となる「見守りステッカー」を店舗や配送車に貼り付けてもらい、高齢者等から「鎌倉市くらし見守りネットワーク」の存在を見えやすくするとともに、支援する事業者・団体が高齢者等への三つの「お節介」(「見守る」、「声かけ」、「相談を促す」)を実践しやすくし、消費者被害の未然防止を図っています。
「鎌倉市市民のくらしをまもる条例」で見守りネットワークについて制定
鎌倉市では、2020年12月に鎌倉市の消費者政策について定めた「鎌倉市消費生活条例」を「鎌倉市市民のくらしをまもる条例」として改正し、この中で「鎌倉市くらし見守りネットワーク」を規定しました。地域の見守り活動は、法令による根拠がなくても実施することが可能ですが、鎌倉市では市条例によって見守り活動についての枠組みや内容が定められている点で先進的であり、消費者庁が開催した2022年の「第18回高齢消費者・障がい消費者見守りネットワーク連絡協議会」でも紹介されました。
同条例では、「鎌倉市くらし見守りネットワーク」を構成する事業者等が、見守りを必要とする高齢者等の情報を得たときに鎌倉市に提供すること、鎌倉市はその状況の把握に努め、関係行政機関等による見守りや「生活困窮者自立支援法」(平成25年法律第105号)等による支援につなげることを規定しています。
あわせて、同条例では、行政における消費者部局と福祉部局の連携促進のため、警察等の行政機関や地域包括支援センター等の福祉団体により構成され、消費者安全法の規定に基づく法定協議会として位置付けられる「鎌倉市消費者安全確保地域協議会」の設置を定めています。また、複合的な課題を抱える見守り対象者に対して包括的な支援を行うため、鎌倉市の消費者行政の担当課以外も含めた関係課等の職員も構成員とする「鎌倉市庁内包括的支援検討会」の設置も定めています。両組織の構成員は「鎌倉市くらし見守りネットワーク」の枠組みにも包含されています(注2)。
担当:参事官(調査研究・国際担当)