文字サイズ
標準
メニュー

高齢者等の買物弱者のための移動スーパーで、見守り機能も果たす:とくし丸

 株式会社とくし丸(以下「とくし丸」という。)は、近所のスーパーの閉店等、様々な理由で住んでいる地域での日常的な買物に困難を感じる消費者である「買物弱者」のため、消費者の自宅の玄関先まで行って商品を販売する「移動スーパー」を運営しています。また、とくし丸の移動スーパーは、消費者庁の「買い物支援を通じた見守り活動の実証事業(注1)」で、高齢者の見守り活動も一部地域で実施しています。

買物に行きたくても行けない買物弱者のために

 身体能力や認知機能が低下した高齢者や障害がある方にとって、外出を伴う買物は気軽にはできません。また、高齢者の中には、電子機器の利用に不安や難しさを感じ、インターネット通販等の代替手段の利用が困難な方もいます。このような買物弱者は日本全国に約700万人(注2)いると言われています。

 とくし丸は、買物弱者のために、週に2回ほど冷蔵庫付きの小型トラックで商品を運び、販売する移動スーパーを運営しています。実際に小型トラックの運転と商品の販売を行うのは、個人事業主として契約している「販売パートナー」です。販売パートナーはとくし丸が提携している地域のスーパーマーケットから商品を預かり、販売代行をしています。移動スーパーの利用者は、その約80%が70歳以上の高齢者です。販売パートナーは、販売を行うだけでなく、商品の説明等をきっかけとして高齢者と会話をし、荷物を利用者の家に運ぶなどの高齢者の買物のサポートも行っています。

 現在、全国で1,100台以上(注3)の移動スーパーが活躍しており、山間部や過疎地だけでなく、都市部でも広がりを見せています。

買物支援を通して、高齢者等の見守り役としても活躍

 とくし丸では、新しい地域での運営を開始する際に、地域のスーパーマーケット、地方公共団体及び警察署に「見守り協定(注4)」の締結を呼び掛けています。取締役の佐藤禎之氏は「販売パートナーは、販売で伺った高齢者との会話で、消費者トラブルの被害に遭ったなどの話を聞くこともある。聞いた話を自治体や警察等に共有し、支援につなげることができるように、協定の締結をお願いしている」と話します。

 高齢者は、日々の買物でなじみのある販売パートナーを信頼し、様々なことを話してくれるそうです。買物支援をしながらさりげなく見守り活動も行うことで、高齢者も販売パートナーの見守りを受け入れやすくなっているそうです。

消費者庁の「見守りネットワーク」と連携した実証事業への参加

 とくし丸は、消費者庁の委託事業である「買い物支援を通じた見守り活動の実証事業」に参画しています(図表)。当該事業は、高齢者、障害者等を見守るネットワークの構築及び地域活性化をテーマに、2022年7月から9月までを第1期として、東京都新宿区と鹿児島県奄美市の二つの地域で行われました。移動スーパーでの販売の際に、高齢者に消費者トラブルの被害に遭っていないかをヒアリングし、消費者安全法の規定に基づき、各地方公共団体が構築している「消費者安全確保地域協議会(見守りネットワーク)」を活用して、地方公共団体に被害情報を共有しました。また、4コマ漫画で説明する分かりやすい注意喚起チラシを配布し、被害の未然防止にも努めています。本事業全体を通し、新宿区では2,154件のヒアリングを行い、71件の被害事例を、奄美市では2,241件のヒアリングを行い、28件の被害事例を共有しました。第2期では、2022年10月から2023年の1月までを期間とし、更に7地域(注5)で実証事業を行いました。

見守り方法を他の事業者等にも共有し、高齢者の社会課題の解決を目指す

 とくし丸には、培ってきた見守り方法を、他の民間事業者(宅配や新聞、家事代行等の自宅を訪問する事業者等)にも共有することで、あらゆる視点から高齢者の見守りを実現できるのではないかという考えがあるそうです。佐藤氏は「今後は、他の民間事業者とも連携し、行政とのつながりを更に深めて、買物弱者の問題だけではなく、高齢者が抱える様々な社会課題を解決していきたい」と話します。

図表 

図表 


  • 注1:消費者庁で実施している、民間事業者・団体等をプラットフォームとして、新たな行政手法を構築し、地方においてモデルとなる事業を創出することを目的とした「地方消費者行政に関する先進的モデル事業」。2022年度は、買物支援を通じた見守り活動の実証事業をテーマとして採択。
  • 注2:経済産業省「買物弱者・フードデザート問題等の現状及び今後の対策のあり方に関する調査報告書」(2015年4月公表)
  • 注3:2022年12月時点。
  • 注4:とくし丸が地域の社会福祉協議会やケアマネージャー等と連携が図れるように、市や町と独自に締結している協定。
  • 注5:徳島県徳島市、秋田県秋田市、長野県松本市、長野県長野市、山形県新庄市、青森県八戸市、千葉県船橋市が追加。

担当:参事官(調査研究・国際担当)