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第1部 第2章 第2節 (2)高齢者の消費者トラブル

第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動

第2章 【特集】高齢者の消費と消費者市民社会の実現に向けた取組

第2節 高齢者の消費行動と消費者トラブル

(2)高齢者の消費者トラブル

■高齢者に多い住宅修理や詐欺等の相談

住宅修理に関する消費生活相談は高齢者に多い

 「屋根工事」等の住宅工事や、水漏れやトイレの詰まりの修理等の「修理サービス」といった、住宅修理に関する消費生活相談は高齢者に多くみられ、特に「屋根工事」では高齢者の相談件数が全体の6割以上を占めています(図表Ⅰ-2-2-21)。

 訪問販売で住宅修理を勧誘されてトラブルになることが多く、具体的な事例では、「実家の父が突然訪ねて来た事業者に『屋根瓦がずれている』と言われ高額な屋根修理工事の契約をしてしまった」等のケースや、「高齢の親が、訪問した事業者に『火災保険で屋根修理をしないか』と勧められたが、不審なので解約させたい」等、事業者が「保険金が使える」と言って住宅修理を勧誘するケースがみられます。また、「トイレが詰まり、高齢の父が折込広告を見て事業者に修理を依頼したら、広告と異なる高額な代金を請求された」等、広告よりも高額な費用を請求されるケースもみられます。

「点検商法」や「次々販売」によるトラブルが発生

 事業者が「点検に来た」と言って来訪し、「工事をしないと危険」等と言って商品・サービスを契約させる「点検商法」に関する消費生活相談件数は、近年は増加傾向で、高齢者が全体の6割以上を占めており、その多くは住宅修理に関するトラブルです(図表Ⅰ-2-2-22)。

 具体的な事例では、「突然来訪したリフォーム事業者に『梅雨になるので屋根を点検してあげる』と言われ、見てもらうと屋根工事等の見積書を渡された。工事後の請求額が見積額と異なり高額だったが、言われるがまま契約書に署名した」等、点検のはずが高額な工事になってしまうケースがみられます。

 消費者庁では、訪問販売等による悪質リフォームの被害に遭わないよう、消費者への注意喚起を実施しています。

「悪質なリフォーム事業者にご注意ください‼」

URL:https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/caution_031/

 一人の消費者に商品・サービスを次々と契約させる「次々販売」に関する消費生活相談件数は、高齢者が全体の約半数を占めています(図表Ⅰ-2-2-23)。

 具体的な事例では、「高齢の両親が自宅に来訪した事業者と床下工事の契約を3回もしていることが分かった」、「母が知人に紹介された店舗で毛皮コートや磁気ベスト等の高額な商品を度々購入していた」等、高齢者が多数の契約を締結して高額な請求を受けているケースがみられます。

「送り付け商法」のトラブルが一定数みられる

 契約を結んでいないのに商品を勝手に送ってきて、受け取ったことで、支払義務があると消費者に勘違いさせて代金を支払わせようとする「ネガティブ・オプション(送り付け商法)」に関する消費生活相談は、高齢者でも一定数みられています。2020年は、新型コロナウイルス感染症の影響でマスク等の送り付け商法がみられたこともあり、高齢者の相談件数は2,000件近くまで増えましたが、2021年以降は約1,000件で推移しています(図表Ⅰ-2-2-24)。

「劇場型勧誘」や「還付金詐欺」の相談件数が増加

 複数の人物が登場して契約の成立をあおる「劇場型勧誘」に関する消費生活相談件数は、2021年までは減少傾向にありましたが、2022年は老人ホーム入居権の手口が再び増加した影響で、相談件数が大幅に増加しました(図表Ⅰ-2-2-25)。

 具体的な事例では、「大手事業者を名乗る電話で老人ホーム入居権の購入を勧められ断ったが、『名義を貸して』と頼まれ了承したところ、大手保険会社や国の機関、弁護士を名乗る電話が次々にあり、『名義貸しは犯罪』、『口座が凍結される』等と言われてお金を振り込むように指示され、詐欺被害に遭った」等、老人ホーム入居権の譲渡を持ち掛けた後に複数の人物が登場して、言葉巧みにお金を支払わせる手口がみられています。国民生活センターでは、高齢者を狙った老人ホーム入居権の劇場型勧誘の被害に遭わないよう、消費者への注意喚起を実施しています(注37)

 自治体職員等のふりをして、税金や保険料、医療費等の払戻しや還付があるなどと言い、ATMに誘導して振り込みをさせようとする「還付金詐欺」に関する消費生活相談件数は、高齢者が全体の3分の2以上を占めています。2020年以降は、新型コロナウイルス感染症を口実としてATMに誘導するケースがみられたこともあり、相談件数は増加傾向にあります(図表Ⅰ-2-2-26)。

 具体的な事例では、「市役所の健康保険課を名乗る電話で『医療費の還付金を受け取れる』と言われ、指示されるままにATMを操作したら、400万円以上を振り込む被害に遭った」等、ATMで自分の口座への振込手続をしているかのように錯覚させてお金を振り込ませる手口がみられます。

COLUMN1
特殊詐欺による高齢者の被害について


  • (注37)国民生活センター「高齢者を狙った劇場型勧誘再び!?『老人ホーム入居権』を譲ってほしいという詐欺電話に注意!」(2022年12月7日公表)

担当:参事官(調査研究・国際担当)