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事例 株式会社イトバナシ

 株式会社イトバナシ(以下「イトバナシ」という。)は、「つくる人とつかう人の暮らしを豊かにする」を目標に掲げ、インドの職人が丁寧に刺した刺しゅうを中心に使ったファッションブランド「itobanashi」を展開しています。

インドでのボランティア活動経験がきっかけに

 イトバナシの代表取締役を務める伊達文香氏は、学生時代にインドでボランティア活動をした際、インドの女性が抱える社会問題を知るとともに、人身売買や強制的な売春の被害に遭った女性を保護するNGOに出会いました。その団体は職業訓練として女性に縫い物を教えており、伊達氏は、彼女たちが作った製品の販売を促進したいと考えるようになりました。その後、伊達氏は、再びインドに滞在しましたが、現地でファッションショーを開催した際、インドの歴史や文化、人々の暮らしを反映した美しい刺しゅうと出会いました。これがインドで刺しゅう生地を生産し、日本で衣服に仕立てて販売する、というイトバナシの事業を始めるきっかけとなりました。

フェアトレードで経済の成長と文化の成熟を実現したい

 イトバナシのビジネスモデルは、中間業者を省くことで無駄なコストを削減するとともに、刺しゅうの技術と作業時間に見合った適正価格を独自に定め、現地の約2倍の価格で職人から買い取ることでフェアトレードなビジネスモデルを実現しています。また、衰退しつつあった刺しゅう文化を守るため、現地の文化を反映した手仕事の刺しゅうにこだわっています。

 起業に当たっては、学生向けビジネスコンテストの受賞をきっかけに、地元企業や行政とつながり、縫製工場の社長や日系企業の海外進出を支援している専門家等に相談することができたことが大きな助けとなったということです。

皆が無理をしないビジネスモデルを作りたい

 イトバナシは、製品を販売するに当たり、あえてSDGsやエシカル消費という言葉は前に出さず、高品質であることを一番に伝えているそうです。刺しゅう部分以外の生地は日本で生産されたものを使い、縫製も日本国内で行っています。伊達氏は、「寄附をしたという感覚ではなく、自分の欲しいものを買ったという感覚の方が、お客様の生活に溶け込みやすく、ビジネスとしても社会貢献活動としても長く続けることができると思う。作って売る人と、買って使う人、両者が無理をしないビジネスモデルを作りたい。今後は国内にも目を向け、地域の若者の雇用や、国内産業の見直し等にも注力していきたい」と話します。

伊達文香氏 刺しゅうをするインドの女性たち

担当:参事官(調査研究・国際担当)