文字サイズ
標準
メニュー

事例 宮城県農業高等学校

 宮城県農業高等学校の生徒たちは、「地元の海を守りたい」との想いから、プラスチックを使用しない肥料の開発に取り組むとともに、これを用いて栽培した米を飲食店へ提供することで、環境保護とエシカル消費の推進に貢献しています。

海岸の清掃ボランティアでマイクロプラスチック問題を知る

 取組のきっかけは、東日本大震災以降に始めた、閖(ゆり)上(あげ)海岸におけるごみ拾いのボランティア活動でした。ある日、生徒たちは5㎜ほどのプラスチックごみを見つけました。それは水田で利用されている肥料の残骸だったのです。水田で長期間にわたって効果を発揮するよう、プラスチックでコーティングされた肥料の使用が広がっており、溶け残ったプラスチックはマイクロプラスチックとして、水田から川や海へ流れ込みます。これが海洋の生態系に大きな影響を与えることが懸念されると知った生徒たちは、「何とかしたい」と思い活動を始めました。

プラスチックを使用しない緩効性肥料を開発・実証

 生徒たちは、プラスチックを使用しない、新たな水稲用の肥料を作れないかと考え、「ウレアホルム」に目を付けました。「ウレアホルム」は化学合成肥料で、加水分解によって少しずつ有効成分の窒素を放出するため、プラスチックコーティングをしなくても、長期間にわたって肥料の効果が得られることが期待できます。しかし、「ウレアホルム」はこれまで畑作や園芸で利用されていたものの、水田では実績がありませんでした。このため、生徒たちは、地元企業の協力を得て、水田でも長期にわたって効果を発揮する「ウレアホルム」を含む肥料を開発しました。その新しい「ウレアホルム」を含む肥料を用いて、水田で実証実験を行ったところ、長期間効果を発揮することが確認され、収量も十分に確保できることが分かりました。この肥料を用いて栽培した米(ひとめぼれ)は、コラボメニューの御飯として、地元の飲食店が利用しており、地域の人々にエシカル消費の機会を提供しています。この取組は、「エシカル甲子園2020(注1)」で高く評価され、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)賞を受賞しました。

今後もSDGs、エシカル消費に挑戦したい

 生徒たちの取組が学校の内外で高く評価される中、宮城県農業高等学校では、2021年から新たにSDGsに関する授業を開始しました。

 生徒たちは、「本取組を通して、自分たちでも地球規模の社会課題に関わることができることを知った。これからも新たな社会課題に挑戦していきたい」と話します。

開発した肥料で栽培した米

本取組を行った生徒たち


  • 注1:エシカル消費の推進や実践を行う高校生等が、日頃の取組の成果や今後の展望等について発表する大会。徳島県教育委員会・徳島県主催。

担当:参事官(調査研究・国際担当)