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第1部 第2章 第2節 (2)若者の消費者トラブル

第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動

第2章 【特集】変わる若者の消費と持続可能な社会に向けた取組~18歳から大人の新しい時代へ~

第2節 若者の消費行動と消費者トラブル

(2)若者の消費者トラブル

■特に若者の消費者トラブルが多い分野

副業や情報商材等のもうけ話に関する消費生活相談件数が増加傾向

 副業や内職、情報商材や転売ビジネス、投資用ソフトやビジネススクールといった、様々なもうけ話に勧誘される「サイドビジネス商法」に関する消費生活相談件数は、若者、全体共に増加傾向にあります。若者の相談件数が全体の約半数を占めており、特に20-24歳の相談件数が多くなっています(図表Ⅰ-2-2-20)。

 具体的な事例では、「マッチングアプリで知り合った女性に高額なビジネススクールを勧められ、『今やらないといつまでたってもやらない』等と言われて、その気になってしまい入会したが、説明と違う」、「学生の息子が、友人から『将来年金がもらえないので、暗号資産で資産を作る必要がある』と誘われ、消費者金融で借金をして暗号資産の自動売買ツールを契約するように指示され、口座を開設してしまった」等のケースがみられます。このように、事業者が「今がチャンス」、「今やらないと駄目だ」、「将来年金がもらえない」と説明するなどして、若者の意識や不安につけ込んで、合理的な判断を妨げようとする場合があります。

 若者でもうけ話の相談件数が増加している要因の一つとして、若者は経済的な余裕がなく、そこに目を付けた悪質事業者によって勧誘のターゲットにされている可能性があります。

 インターネット通販等で、副業・投資やギャンブル等で大金を稼げるとするマニュアル等を販売する「情報商材」に関する消費生活相談件数は、全体では増減がある一方で、若者では増加傾向が続いており、20-24歳の相談件数が多くなっています(図表Ⅰ-2-2-21)。

 情報商材は、契約前に中身を確かめることができないにもかかわらず、勧誘ではもうかることばかりを強調されたり、具体的な仕組みの説明がないまま契約させられたりすることがあるため、実際に購入してみたら価値のない情報だったという場合があります。

 具体的な事例では、「SNS広告から副業サイトに入り情報商材を購入したら、更に電話で高額なサポート契約を勧誘された。お金がないので払えないと断ったのに借金を勧められ、断り切れずに契約してしまったが、広告とは違う内容だった」等、情報商材を購入させてから次々に高額な契約をさせているケースもみられます。

 消費者に対して、借金やクレジット契約をさせて強引に契約を結ばせる「クレ・サラ強要商法」に関する消費生活相談件数は、20-24歳が多くなっており、若者の契約購入金額の高額化の一因になっています(図表Ⅰ-2-2-22)。この手口は、経済的な余裕がない若者に高額な契約をさせるために悪用されており、若者が「お金がない」と断っても、「利益ですぐに返済できる」等と、借金やクレジット契約をさせてまで強引に契約を結ばせるものです。

 具体的な事例では、「何もしなくても稼げるFX自動売買ツールを友人に紹介され、借金をして契約した。消費者金融まで担当者に付き添われ、『収入は偽っても大丈夫』、『車の購入と言って』と指示された」等、悪質事業者からうそをついて借入れをするように指示されるケースもみられます。

「マルチ取引」に関する消費生活相談件数は20-24歳の相談件数が多い

 「マルチ取引」に関する消費生活相談件数は、20-24歳が多くなっています(図表Ⅰ-2-2-23)。友人や知人、SNSやマッチングアプリで知り合った人等から勧誘されると、相手に対する「今後も仲良くしたい」、「断ることで関係を悪くしたくない」といった心理から、契約を断りにくい状況に陥ることがあります。また、複数の人に囲まれたり、長時間勧誘されたりして契約しなければならない雰囲気にのまれ、契約してしまうこともあります。

 具体的な事例では、「友人に誘われてカフェに行ったら、友人の先輩が同席して、健康食品を購入して他の人を勧誘すれば報酬になると説明を受けた。契約したくなかったが、断ることができず契約してしまった」等、友人や知人に勧誘されて契約を断り切れないケースがみられます。

美容に関する商品・サービスで、若者の消費生活相談が多く発生

 「美容医療」に関する消費生活相談件数は、若者が全体の約4割を占めており、広告とは別の高額な施術を勧められた、カウンセリングだけのつもりが即日施術を勧められたといった相談がみられます(図表Ⅰ-2-2-24)。また、「脱毛エステ」に関する消費生活相談件数は、若者が全体の約3分の2を占めており、中でも「通い放題」、「期間・回数無制限」等の長期間の施術を前提とするコースで、中途解約・精算をするときにトラブルが生じたという事例が目立ちます(注36)(図表Ⅰ-2-2-25)。

 具体的な事例では、「医療脱毛の広告を見てカウンセリングに出向いたら、全身コースを勧められ、クレジットカード決済したが、全身の脱毛は不要なのでクーリング・オフしたい」、「SNS広告で見つけた男性専用脱毛エステ店で全身脱毛コースを申し込んだ。新型コロナで予約が取れず中途解約を申し出ると高額な精算金を求められた」等のケースがみられます。

 また、「脱毛剤」や「他の健康食品」といった美容に関する商品でも、定期購入等のトラブルが発生しています(図表Ⅰ-2-2-16)。

 若者が、美容に関する商品・サービスを契約している背景の一つとして、容姿に関する悩みやコンプレックス、自分を変えたいという思い等が影響していると考えられます。

「定期購入」に関する消費生活相談件数は15-19歳が多い

 通信販売の広告において、初回に無料又は低額な金額を提示し、2回目以降に高額な金額を支払わせる「定期購入」に関する消費生活相談件数は、2019年と2020年に増加しましたが、2021年は減少に転じました(定期購入の全体の傾向については、第1部第1章第4節参照。)。相談件数を年齢区分別にみると、15-19歳の相談件数が多くなっています(図表Ⅰ-2-2-26)。

 具体的な事例では、「500円で試せる除毛クリームをSNSの広告で知り、サイトから申し込んだが、定期購入だった」、「スマホの動画アプリの広告から初回540円のダイエットサプリを購入したら2回目に大量の商品が届いた」等、SNSや動画サイト・アプリの広告をきっかけに契約をしているケースがみられます。

 詐欺的な定期購入商法では、デジタル技術が悪用される場合があります。例えば、「初回無料でいつでも解約・返金・返品可能」といった表示で消費者を誤認させて申込みをさせようとしたり、SNS上の広告でインフルエンサーや読者モデルの写真等を悪用したりしていることがあります(注37)

COLUMN5
若者の美容に関する消費の動向


  • (注36)国民生活センター「脱毛エステの通い放題コースなどでの中途解約・精算トラブルに注意!『途中でやめたら返金なし!?』『解約したのに支払いは続く…』」(2021年12月23日公表)
  • (注37)消費者庁「消費者のデジタル化への対応に関する検討会報告書」

担当:参事官(調査研究・国際担当)