第1部 第2章 第2節 (2)若者の消費者トラブル
第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動
第2章 【特集】変わる若者の消費と持続可能な社会に向けた取組~18歳から大人の新しい時代へ~
第2節 若者の消費行動と消費者トラブル
(2)若者の消費者トラブル
■SNSをきっかけとするトラブル
若者のSNS関連の消費生活相談件数は増加傾向
若者のSNS関連の消費生活相談件数は増加を続けており、SNS上の広告やSNSで知り合った相手からの誘いをきっかけに、消費者トラブルになるケースがみられます。
特に、20-24歳の相談件数が多く、もうけ話に関するトラブルや、美容に関する定期購入のトラブル等が発生しています(図表Ⅰ-2-2-27)(SNS関連の消費生活相談全体については、第1部第1章第4節参照。)。
若者のSNS関連の消費生活相談は、もうけ話に関する相談が上位にみられる
若者のSNS関連の消費生活相談を商品・サービス別にみると、「他の内職・副業」や「他の娯楽等情報配信サービス」(情報商材が含まれる。)等の内職・副業に関する相談や、「金融コンサルティング」や「外国為替証拠金取引」等の投資に関する相談といった、もうけ話に関する相談が上位にみられます(図表Ⅰ-2-2-28)。
もうけ話に関する相談の具体的な事例では、「SNSで知り合った人に投資用ソフトを勧められて契約してしまった」、「SNSで知り合った女性からもうかる副業を持ち掛けられ、コンサルティングを行っている男性を紹介されて登録料を支払った」、「マッチングアプリで知り合った男性と会い、暗号資産への投資を勧められて現金を支払った」等、SNSで知り合った相手からの誘いをきっかけに契約しているケースがみられます。
SNS上では同じ話題に興味を持つ人同士がつながりを持ちやすく、相手に親近感が生まれることもあるため、相手への警戒心が低くなるおそれがあります。SNSと若者の消費者被害の関係性についての調査では、SNSが身近なツールとなった反面、それに対して特別な警戒をしていない若者が一定数存在することが分かっています(注38)。
SNSをきっかけに、美容に関する商品や、出会い系サイトのトラブルが発生している
また、SNS上の広告をきっかけに、「脱毛剤」や「他の健康食品」といった美容に関する商品を購入したが、定期購入だったというケースがみられます。さらに、SNSで知り合った相手とのやり取りで、「出会い系サイト・アプリ」に誘導されて登録料等を支払わされるケースや、「コンサート」のチケットを個人間売買してトラブルになるケースがみられます(図表Ⅰ-2-2-28)。
若者はSNS上の広告と接触する機会が多い
SNS上に表示される広告をきっかけに消費者トラブルになるケースがみられているため、「消費者意識基本調査」で、SNSを利用している消費者に「SNS上の広告を見たことがあるか」どうかを調査しました。
「『痩せる』等、効き目を強調する広告」を見たことがある人の割合は、10歳代後半で74.1%、20歳代で82.3%と最多でした。続いて、「商品の大幅値下げをうたうセール広告」を見たことがある人の割合は、10歳代後半で72.4%、20歳代で81.0%と2番目に高く、「ブランド品や正規品をうたう広告」(10歳代後半で65.4%、20歳代で71.9%)、「期間限定や先着順等、限定を強調する広告」(10歳代後半で63.2%、20歳代で69.5%)と続きます。
また、「最初は格安だが定期購入が必要な商品の広告」を見たことがある人の割合は、10歳代後半で55.7%、20歳代で69.7%でした。多くの若者がSNS上で定期購入の広告を目にする機会があることが分かります(図表Ⅰ-2-2-29)。
10歳代後半は、4割以上がSNS上の広告のリンク先までは確認していない
続いて、SNSを利用している消費者に「SNS上の広告のリンク先を確認した経験があるか」どうかを聞いたところ、10歳代後半では42.5%が「上記のいずれも経験がない」と回答しました。10歳代後半は、SNS上の広告と接触する機会が多いにもかかわらず、広告のリンク先までは確認していない人が多いことが分かりました。
20歳代は、SNS上の広告のリンク先を確認した経験がある割合が全体よりも高い傾向にあり、特に「商品の大幅値下げをうたうセール広告」では、20歳代の32.5%が広告のリンク先を確認したことがあると回答しました(図表Ⅰ-2-2-30)。
チャンスと感じたら逃したくないという意識を持っている若者は、「ブランド品をうたう広告」や「効き目を強調する広告」のリンク先を確認する割合が高い
さらに、若者について、「チャンスと感じたら逃したくない」という意識に関する回答と、「SNS上の広告のリンク先を確認した経験」に関する回答の関係を調べたところ、「チャンスと感じたら逃したくない」に「当てはまる」と回答した人は、「ブランド品や正規品をうたう広告」や「『痩せる』等、効き目を強調する広告」のリンク先を確認した経験がある人の割合が高いことが分かりました(図表Ⅰ-2-2-31)。
このような分析結果から、チャンスと感じる場面に対する考え方が、SNS上の広告に対する行動に影響している可能性があります。
COLUMN6
SNSに表示された広告閲覧時の反応とSNS上の広告をきっかけとしたトラブルや困った経験の有無について
図表Ⅰ-2-2-27 若者のSNS関連の消費生活相談件数の推移(年齢区分別)[CSV]
図表Ⅰ-2-2-28 若者のSNS関連の消費生活相談の商品・サービス別上位件数(年齢区分別・2021年4-12月)[CSV]
図表Ⅰ-2-2-29 SNS上で見たことがある広告(SNS利用者)[CSV]
図表Ⅰ-2-2-30 リンク先を確認した経験があるSNS上の広告(SNS利用者)[CSV]
図表Ⅰ-2-2-31 「SNS上の広告のリンク先を確認した経験」と「チャンスと感じたら逃したくない」の関係(15-29歳)[CSV]
- (注38)消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会報告書」
担当:参事官(調査研究・国際担当)