文字サイズ
標準
メニュー

第1部 第2章 第2節 (2)若者の消費者トラブル

第1部 消費者問題の動向と消費者の意識・行動

第2章 【特集】変わる若者の消費と持続可能な社会に向けた取組~18歳から大人の新しい時代へ~

第2節 若者の消費行動と消費者トラブル

(2)若者の消費者トラブル

■若者の性質と消費者トラブルとの関連

 商品やサービスの契約に関する知識や経験が不足している若者は、消費者トラブルに巻き込まれやすくなると考えられます。

「知識や経験の不足」に起因するぜい弱性を抱えている

 社会生活に求められる知識や経験は幅広く、法律や契約に関するルールを始め、生活の知恵や家計管理等、多岐にわたる知識や経験が必要です。消費者トラブルを防止するためには、契約に関する知識を深めたり、消費者トラブルへの警戒心や消費者被害に遭った際の対処能力を高めたりする必要があります。

 一方、若者は、こうした知識や経験が十分でないことが多く、契約内容の熟慮や適切な判断が困難であったり、消費者トラブルに巻き込まれたりすることがあります。そうした意味で、若者は、「知識や経験の不足」に起因するぜい弱性を抱えているといえます。

「経済的な余裕のなさ」によって、悪質事業者からもうけ話に勧誘されるおそれがある

 また、若者の中には、親の所得や仕送りに依存して生活している人や、給与所得が少ない人(注34)もいるため、経済的な余裕がない場合があります。

 悪質事業者が、経済的な余裕がない若者をターゲットにして、もうけ話に勧誘するおそれがあり、実際にもうけ話に関する消費者生活相談の件数が多くなっています(図表Ⅰ-2-2-16)。経済的な余裕のない若者は、消費者トラブルに巻き込まれるおそれがあると考えられます。

「コミュニケーションへの苦手意識」によって、取引相手と適切な交渉ができないおそれがある

 若者は、一般にはコミュニケーション能力も未完成と考えられていますが、第1部第2章第1節でみてきたとおり、若者の約半数は、自分の考えをはっきり相手に伝えることが苦手であると受け止めています。

 契約を締結する場面では、取引相手と適切に交渉することが重要ですが、事業者の中には、様々な手口を用いて強引な勧誘を行う悪質事業者も存在します。「コミュニケーションへの苦手意識」を持っている若者は、取引相手と適切な交渉ができなかったり、勧誘を断り切れなかったりして、消費者トラブルに巻き込まれるおそれがあると考えられます。

 例えば、勧誘に友人・知人や異性が利用されていると、善意や好意を向けてくれた相手を「喜ばせたい」、「力になりたい」と意識したり、勧誘を断ることで「相手を傷つけたくない」、「相手に嫌われたくない」と意識したりして、勧誘を断り切れないおそれがあります。このように、相手との関係性を過度に意識してしまうことは、消費者トラブルによる被害に遭ってしまった人の特徴の一つであると指摘されています(注35)

「悩みや不安等の気持ち、今の自分を変えたいという前向きな気持ち」につけ込むような勧誘に巻き込まれるおそれがある

 第1部第2章第1節でみてきたとおり、若者の中には、自分は役に立たないと強く感じていたり、将来や働くことへの不安を感じていたりする人がいます。若者の悩みや不安な気持ちにつけ込むような勧誘によって、消費者トラブルに巻き込まれるおそれがあると考えられます。

 また、第1部第2章第1節でみてきたとおり、約7割の若者が、今の自分を変えたい、チャンスと感じたら逃したくないという意識を持っています。こうした若者の意識は、成長していくための原動力になりますが、こうした前向きな気持ちにつけ込むような勧誘によって、消費者トラブルに巻き込まれるおそれがあると考えられます。

COLUMN4
デジタル社会特有の消費者のぜい弱性


  • (注34)給与所得者の一人当たりの平均給与は、19歳以下で129万円、20-24歳で260万円、25-29歳で362万円と全体平均433万円を下回っている(国税庁「令和2年分民間給与実態統計調査」)。
  • (注35)消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会報告書」

担当:参事官(調査研究・国際担当)