コラムVol.11 転倒時に湯漏れしにくい電気ケトルの使用を!

短時間で湯を沸かすことができる電気ケトルは、便利さから多くの家庭で使用されている家電です。しかし、一瞬の隙に、台の上に置いていた電気ケトルをこどもが倒すなどして、こぼれた湯でやけどを負うといった事故情報が、医療機関(※1)から寄せられています。
事故事例
- 「キッチンにある移動式の台の上にケトルを置いていた。保護者がトイレに行っている間に、こどもが台を揺らしたところ、ケトルが倒れて熱湯を頭から浴び、頭と顔のほか、腕や胸にも熱傷を負った。5日間の通院が必要となった。」(0歳10か月)
- 「50cmほどの高さの台に置いた電気ケトルでミルク用の湯を沸かし、いつもどおり冷ますために蓋を開け7~8分ほど置いていた。目を離した際に、ケトルが落下した音と泣き声がして駆けつけると、こどもが顔から肩にかけて熱傷を負っていた。」(0歳9か月)
事故を防ぐには
こどもは大人よりも皮膚が薄く、やけどのダメージが皮膚の奥深くまで影響し重症となってしまうことがあります。次の点に注意し、やけど事故の防止に努めましょう。
- 電気ケトルは、電源コードも含めて小さなこどもの手の届かない場所に置きましょう。
- 転倒時に湯が漏れにくい構造等、安全に配慮した製品を選びましょう(以下の「新しい安全基準での機能」を参照してください。)。
- 使用時は、適切にロックするなど安全機能を活用しましょう。蓋の閉め忘れや部品の破損・劣化(※2)にも注意してください。
新しい安全基準での機能
日本では、生活習慣として電気ケトル等を床に直接置くケースがあること等を背景に、例えば、足等で引っかける、また上記事例のようにこどもが触れるなどして、電気ケトル等が転倒・落下し、熱湯が流出してやけどに至る事故が発生しています。
このような状況を踏まえ、先般、経済産業省において電気ケトル等に関する安全基準(※3)が見直され、2026年6月以降は、日本で製造又は日本に輸入される電気ケトル等の全てに転倒流水対策を施すこと(電気ケトル等が倒れても、その湯漏れが50ml以下であること等の転倒流水試験に合格した製品であること)が必須となります(※4)。
倒れても湯漏れしにくい対策がなされた電気ケトルを正しく使用すれば、万が一の際にも重症化を防ぐことができます。現在、すでに、転倒流水対策がなされた電気ケトルとして「Sマーク」(※5)が付されているものや、2021年1月に改正されたJIS規格(※6)を採用して製造されたものも販売されていますので、特に小さなこどものいる家庭では、これを機に転倒流水対策がなされた電気ケトルかどうか確認されてはいかがでしょうか。
- ※1:消費者庁は(独)国民生活センターと共同で、平成22年12月から、医療機関(令和6年10月現在で32機関が参画)から事故情報の提供を受けています(医療機関ネットワーク事業)。
- ※2:安全機能があっても、内蓋のパッキンなど部品の劣化があれば湯漏れのリスクが高まります。必要に応じて部品を交換するなどメンテナンスを行いましょう。
- ※3: 平成25年7月1日改正経済産業省通達20130605商局第3号「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈について」。現時点において、電気ケトル等については別表第八(経済産業省が定める規格)と別表第十二(JIS規格)の2つの安全基準が存在。
- ※4:2026年5月以前に日本で製造又は日本に輸入された転倒流水対策がなされていない電気ケトル等の在庫については、2026年6月以降も引き続き販売される可能性があるため、購入の際にはよく確認してください。
- ※5: 一定の技術基準や安全基準に適合していることを電気製品認証協議会(SCEA)に参加する第三者認証機関が認証したことを示すマーク。電気ケトルにおいては、転倒流水試験等の安全基準に合格した製品であり、転倒時に湯漏れしにくい構造等となっています。
- ※6:JIS C 9335-2-15:2021。2021年1月20日付けで改正されたJIS規格で、転倒流水対策等の個別要求事項が追加されました。※3の安全基準(別表第十二)への反映は2021年8月2日。
担当:消費者安全課