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第2部 第2章 第1節 3.ぜい弱性等を抱える消費者を支援する関係府省庁等の連携施策の推進

第2部 消費者政策の実施の状況

第2章 消費者政策の実施の状況の詳細

第1節 消費者被害の防止

3.ぜい弱性等を抱える消費者を支援する関係府省庁等の連携施策の推進

(1)成年年齢引下げに伴う総合的な対応の推進

ア 成年年齢引下げに関する環境の整備

 成年年齢引下げの環境整備に関し、関係行政機関相互の密接な連携・協力を確保し、総合的かつ効果的な取組を推進するため、「成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議」を、継続的に開催しており、2022年8月には、第7回会議を開催し、成年年齢引下げの施行を踏まえた現在までの取組状況や課題等について関係省庁間での認識を共有しました。

イ 成年年齢引下げに伴う若年者への消費者教育の推進

 消費者庁では、2022年3月に「若年者への消費者教育の推進に関する4省庁関係局長連絡会議」において策定した「成年年齢引下げ後の若年者への消費者教育推進方針―消費者教育の実践・定着プラン―」に基づき、関係省庁と連携して必要な施策を実施しています。具体的には、高等学校段階のみならず、社会人も含めた若年者への切れ目のない対応を図るため、私立高等学校・特別支援学校や大学等を対象とした出前講座事業、事業者向け消費者教育プログラムの開発、親世代を含めた若年者周辺の人への啓発・情報発信等を実施しています。

ウ 若年者向け貸付けに関する適正な運用及び普及啓発

 金融庁では、若年者が返済能力を超えた借入れを行い、過大な債務を負うような事態が生じないよう、2022年2月に日本貸金業協会が策定した自主ガイドライン(注80)の遵守状況等のモニタリングを実施しています。また、成年年齢引下げを踏まえた金融庁の取組等を金融庁ウェブサイトに取りまとめたほか、過剰借入・ヤミ金融に関する新成人向けのクイズ動画をLINE広告やSNSで配信するなど積極的な広報・啓発活動も実施しました。

エ 若年者のクレジットカード利用環境整備に資する取組の推進及び普及啓発

 経済産業省は、日本クレジット協会と連携して、クレジットカード業者の若年者に対する与信の実態や自主的な取組状況等を把握するための調査を実施し、事業者による効果的な取組を推進する観点から、同協会に対して当該調査の結果を事業者にフィードバックするよう要請を行いました。また、2022年度以降、割賦販売法の規定に基づく監督・検査を強化し、クレジットカード業者による若年者に対する適切な与信審査・管理、苦情対応、加盟店調査や指導等の措置の実施状況等を重点的に検証することを「令和4年度信用購入あっせん業者等に対する検査基本方針及び検査基本計画」に反映しました。さらに、クレジットカード業者によるこれらの取組への対応や若年者とクレジットカード発行契約を締結する際の適切な情報提供や注意喚起等の徹底について、日本クレジット協会を通じて要請を実施しました。

 加えて、日本クレジット協会や経済産業省のウェブサイトに、成年年齢引下げやクレジットの基礎知識等を解説するウェブコンテンツや相談窓口の情報を掲載したほか、全国の高等学校等への教材の配布や講師派遣等を通じた広報・啓発活動を行いました。また、関係省庁で実施する消費者相談ダイヤルの取組に参加し、消費者庁「18歳から大人」特設ページに相談窓口の情報を掲載しました。

 さらに、成年年齢引下げによって懸念される消費者被害の防止に向けて、若年者が学ぶ機会を増やすべく、関係省庁等が作成したクレジット分野に限られない様々な分野の教材等を全国の学習塾等に展開する取組を実施しました。

(2)認知症施策の推進

 「認知症施策推進大綱」(2019年6月認知症施策推進関係閣僚会議取りまとめ)に基づき、認知症サポーターの養成を始めとする認知症に関する理解促進、高齢者や認知症等により判断力の低下した消費者を地域で見守る体制の構築の推進、地域支援体制の強化等の取組を進めています。また、行政のみならず経済団体や医療・福祉団体等により設置された日本認知症官民協議会において、業務等に応じた認知症の人への接遇に関する手引である「認知症バリアフリー社会実現のための手引き」の作成や、2021年度に創設した、認知症に関する取組を実施している企業等の宣言制度(認知症バリアフリー宣言制度)の周知等を実施しました。

 認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会を目指し、認知症の人や家族の視点を重視しながら、「共生」と「予防」を車の両輪として、認知症に関する総合的な施策を推進しています。

(3)障害者の消費者被害の防止策の強化

 消費者庁では、高齢者及び障害者の消費者トラブルの防止等を目的とし、障害者団体のほか高齢者団体、福祉関係者団体、消費者団体、行政機関等を構成員とする「第18回高齢消費者・障がい消費者見守りネットワーク連絡協議会」を開催して、「高齢者、障がい者の消費者トラブル防止のため、積極的な情報発信を行う」、「多様な主体と緊密に連携して、高齢消費者・障がい消費者を見守り消費者トラブルの被害の回復と未然防止に取り組む」等の申合せをしました。また、地方消費者行政強化キャラバンによる地方公共団体の長等への働き掛けを行い、消費者安全確保地域協議会の設置を促すほか、「地方消費者行政強化交付金」等により、被害に遭うリスクの高い消費者(障害者等)を効果的・重点的に地域で見守る体制を構築し、消費者トラブルの防止及び早期発見を図る取組等を支援するとともに、障害者の特性に配慮した消費生活相談の体制整備を図る取組等を促進しています。

 2022年度には、地方消費者行政に関する先進的モデル事業として「高齢者、障害者等を見守るネットワークの構築及び地域活性化の実証」を実施し、消費者被害の未然防止や被害救済に資する見守りネットワークの構築・活性化を図るとともに、関係団体間の連携や必要な資材の開発等を行い、取組の検証を行いました。

 国民生活センターでは、引き続き障害者からの消費生活相談を受け付けるとともに、相談体制の更なる整備を行っています。

 また、高齢者や障害のある人のほか、その周りの人々に悪質商法の手口やワンポイントアドバイス等をメールマガジンやウェブサイトで伝える「見守り新鮮情報」を発行するとともに、ウェブサイトではウェブアクセシビリティ対応等を実施しました。

 さらに、「くらしの豆知識(注81)」の作成に当たっては、カラーユニバーサルデザイン認証を取得しています。また、デイジー図書(国際標準規格の視覚障害者向けデジタル録音図書)を作成し、消費生活センターや点字図書館等に配布したほか、国立国会図書館の「視覚障害者等用データ送信サービス」に登録しました。

(4)ギャンブル等依存症についての対策の推進

 ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進するために、「ギャンブル等依存症対策基本法」(平成30年法律第74号)及び同法の規定に基づく「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」(平成31年4月及び令和4年3月閣議決定)等を踏まえ、内閣官房では、都道府県ギャンブル等依存症対策推進計画が速やかに策定されるよう促すなど、関係省庁と連携しながら各種施策を推進しています。

 厚生労働省では、都道府県等において、精神保健福祉センターや消費生活センター等の関係機関における連携協力体制の構築等を図るための支援を行っています。また、各依存症に関する情報や相談拠点機関・専門医療機関等の情報提供を行いました。

 消費者庁では、関係省庁等との連携の下、消費生活相談への的確な対応の確保や地域における普及啓発のための地方公共団体向けの支援や、消費者向けの情報提供等に取り組んでいます。2022年度は、これまでに作成した注意喚起・普及啓発資料を活用した情報発信等に取り組んだほか、国民生活センターでは消費生活相談員向けにギャンブル依存症対策に関する研修を実施しました。

(5)青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備

 「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(平成20年法律第79号)及び「青少年インターネット環境整備基本計画」に基づき、関係省庁が協力して、青少年のインターネットの適切な利用に関する教育及び啓発活動、青少年有害情報フィルタリングの性能の向上及び利用の普及等、青少年のインターネットの適切な利用に関する活動を行う民間団体等の支援等の関連施策を推進しています。

 2021年6月7日に決定された「第5次基本計画」(子ども・若者育成支援推進本部決定)を踏まえ、フィルタリング利用率向上のための取組の更なる推進、青少年のインターネットを適切に活用する能力の向上促進、ペアレンタルコントロールによる対応の推進等、青少年のインターネット利用環境の整備に関する施策を総合的に推進しています。

(6)「多重債務問題改善プログラム」の実施

 消費者金融市場が拡大する中で、社会問題としての多重債務問題が深刻化したことを背景に、「貸し手」に対する所要の規制強化を図るため、いわゆる総量規制と上限金利引下げをポイントとする「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」(平成18年法律第115号)が2010年6月に完全施行されました。同改正法の成立を機に、「借り手」に対する総合的な対策を講ずるため、政府は、関係大臣からなる「多重債務者対策本部」を設置しました。同本部の下で、「多重債務問題改善プログラム(注82)」(2007年4月多重債務者対策本部決定)を取りまとめ、多重債務者向け相談体制の整備・強化を始めとする関連施策に取り組んでいます。

 2022年には、新たな課題等への対応を含めた今後取り組むべき施策等について検討するため、有識者と関係省庁(注83)から構成される「多重債務問題及び消費者向け金融等に関する懇談会」を2回開催(6月、12月)しました。また、「多重債務者相談強化キャンペーン2022」(9月1日から12月31日まで)において、各都道府県における消費者及び事業者向けの無料相談会等の開催、ヤミ金融の利用防止等に関する周知・広報を実施するとともに、潜在的な多重債務相談者の掘り起こし等を図るため、相談窓口周知のためのポスター及びリーフレットを作成し、関係先に配布しました。また、ギャンブル等依存症対策の観点から、多重債務相談窓口と精神保健福祉センター等の専門機関との連携強化に向けた取組を進めています。

 警察庁では、都道府県警察に対して、ヤミ金融事犯の徹底した取締りのほか、ヤミ金融に利用された預貯金口座の金融機関への情報提供、携帯音声通信事業者に対する契約者確認の求め、プロバイダ等に対する違法な広告の削除要請等の推進を指示しています。

【上記取組の実績】
 ・2022年12月31日時点の貸金業者から5件以上の無担保無保証借入れの残高がある人数:11.0万人
 ・2022年度(2023年3月31日時点)の多重債務に関する消費生活相談の件数1万9628件
 ・2022年中の多重債務を理由とする自殺者数:751人(全自殺者数2万1881人)
 ・2022年(4月から12月まで)の金融庁・財務局等・日本貸金業協会における貸金に関する相談・苦情件数:約1.4万件
 ・2022年中におけるヤミ金融事犯の検挙事件数及び検挙人員:627事件、708人
 ・2022年中におけるヤミ金融に利用された口座の金融機関への情報提供件数:9,009件
 ・2022年中における携帯音声通信事業者への契約者確認の求めを行う旨の報告を受けた件数(注84):1,139件
 ・2022年中のインターネット上のヤミ金融事犯広告の削除要請件数:8万6030件

(7)生活困窮者自立支援法に基づく支援の推進

 厚生労働省では、生活困窮者自立相談支援事業の実施、住居確保給付金の支給その他の生活困窮者に対する自立の支援に関する措置を講ずることにより、生活困窮者の自立の促進を図っています。

 また2020年3月31日から2022年9月30日にかけて新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により収入が減少する方に緊急小口資金等の特例貸付を実施するとともに、2020年4月には、住まいの確保を支援するため、住居確保給付金の支給対象の拡大等を行いました。

(8)孤独・孤立に起因する消費者被害の防止等のための啓発及び相談・見守り活動等の推進

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大等の影響により孤独・孤立が社会問題化しており、孤独・孤立した消費者は悪質な事業者のターゲットになりやすい状況にあります。

 内閣官房では、深刻化する社会的な孤独・孤立の問題について、関係省庁等と連携し総合的な取組を推進しています。2023年3月には、「孤独・孤立対策推進法案」が閣議決定され、第211回国会に提出されました。

 消費者庁では、孤独・孤立に起因する消費者被害を防止するため、NPO等の支援団体(計3団体)と連携してオンライン相談会(2回)を実施し、孤独・孤立に起因した消費者被害の把握に努め、被害の防止・回復に向けた啓発の促進を図りました。また、孤独・孤立に起因した消費者被害に関するシンポジウムを開催し、被害事例や支援策の周知を行い、NPO等の支援団体に対しても被害防止・回復のための啓発を行いました。

 また、周りに相談ができず、被害の拡大に結び付きやすい傾向もみられる孤独・孤立した消費者に対する地域の見守りを一層強化するため、地方公共団体における孤独・孤立した消費者の消費者トラブルを防止するための取組を重点的に支援するほか、地方におけるモデル事業の実施により、見守り活動の先進事例等を創出し、地方公共団体における消費者の見守り事業の企画、取組を支援します。さらに、消費生活に関して関心を持つ住民又はヘルパー・民生委員等消費者被害を発見しやすい立場にある者や、地域の金融機関、コンビニエンスストア、宅配事業者等の事業者を対象とし、消費生活協力員・協力団体の養成に向けた取組を行います。

(9)「旧統一教会」等の被害者の救済に向けた総合的な対応の推進

 「旧統一教会」について社会的に指摘されている問題に関し、悪質商法等の不法行為の相談、被害者の救済を目的とし、関係省庁間で情報を共有し、連携した対応を検討するため、2022年8月に「『旧統一教会』問題関係省庁連絡会議」が設置されました。

 同年9月5日からは、「合同電話相談窓口」を設置して関係省庁が連携した態勢をとるとともに、既存の各相談窓口(注85)において相互連携を強化して相談対応を行うこととしました。同会議は、合同電話相談窓口において受け付けた相談状況等を踏まえ、同年11月に取りまとめ(「被害者救済に向けた総合的な相談体制の充実強化のための方策」)を行い、法テラスの抜本的な充実・強化、消費生活相談等の強化、警察による適切な関与、精神的・福祉的支援の充実、子供・若者の救済等、被害者の救済に向けた総合的な相談体制の充実強化を図ることとしました。

 本取りまとめを踏まえ、同年11月14日に、合同電話相談窓口の機能等を継承した総合的対応窓口として、法テラスに「霊感商法等対応ダイヤル」を設置するなど、関係省庁で連携した総合的な取組を進めています。


  • (注80)若年者へ貸付けを行う場合には、貸付額が50万円以下であっても、収入の状況を示す書類の提出を受け、これを確認すること等を規定。
  • (注81)消費者トラブル対策に役立つ情報をコンパクトにまとめた年1回発行の冊子。
  • (注82)同プログラムでは、「相談窓口の整備・強化」、「セーフティネット貸付けの提供」、「金融経済教育の強化」、「ヤミ金の取締り強化」の四つの柱に沿って、取り組むべき施策等がまとめられている。
  • (注83)警察庁、金融庁、消費者庁、総務省、法務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省。
  • (注84)出資法又は貸金業法の規定に基づくもので、警察庁が都道府県警察(生活経済担当課)から報告を受けた件数。
  • (注85)「法テラス・サポートダイヤル」、「消費者ホットライン」、警察相談専用電話、各都道府県警察本部・警察署における相談の総合窓口、「みんなの人権110番」、「行政相談『きくみみ』」

担当:参事官(調査研究・国際担当)